90話 17歳 錬金術のお店開店、星の川販売、のんびり考察
1月も中ごろになりまして、とうとう錬金術師のお店を開店しましたよ。どうも、ヘルマンです。とりあえず錬金術ギルドに行きまして、お店を開店しますとの報告をして、看板を貰ってきましたよ。そして、冒険者ギルドへの年間ノルマも貰ってきました。初級ポーション2000本と上級ポーション100本がノルマです。さっさと冒険者ギルドに納品しに行きました。大体の錬金術師が年始に持ってくるらしく、他の錬金術師の方にも会いました。挨拶程度ですが、この町を支えていく仲間ですからね。商売敵では無いんですよ。
だって1人でポーションの供給を担うのは無理だから。錬金術ギルドの錬金術師はほぼほぼ魔石を作っているか、ポーションを作っているか。後は偶に受付でのんびりするかなのだ。それ以外の仕事もあるが、イメージとしてはそんな感じだ。それが楽か苦痛かはその人次第だ。お店をやっている錬金術師は半分道楽なのだよ。研究はしたいが、ギルドは嫌だ。錬金学術院に残ると授業をしないといけない。だからお店をやる。そんな感じ。利益をって考えている錬金術師の方が少ない。まあ、ノルマでもお金は支払われるからね。…小銭なんだよねえ。まあ貰いますが。
錬金術ギルドではケルピーの水晶を2000個程買い込んだ。魔石に加工する分だな。…殆ど僕が狩った物なんだけどなあ。まあ、誰も損しないし、いいんじゃないかな。僕も年金で買ってるから損はしてないんだよ。大魔銀貨2枚で2000個、普通そんなに買うやつはいないだろうが納品も一杯あったから黒字黒字。これでも最高品質の水属性の魔石4つ分と普通の魔石6個分。日にちは3,4日かかるが。少ないよなあ。他の騎士爵様もレイドをバンバンしてくれないかなあ。素材が足りないんだよ。手っ取り早く星を上げるための星の川を買いに来てくれませんかねえ。特にあの3人は早く買いに来てよ。レイドの予定も合わせたいんだから。
そんな感じでスケルトンに畑仕事を手伝わせた成果を回収していると、エイミーから呼ばれた。
「貴方ー、お客さんよー。」
「はーい。」
このお店第1号のお客さんですよ。さて誰だろう? 店に顔を出した。
「よお、来たぜ。あれを買いに来た。年金も入ったからな。」
「マウロさんでしたか。おめでとうございます。このお店第1号ですよ。」
「お? そうなのか。まあ錬金術師の店に入ることなんてまず無いからな。で、あるんだろ?」
「多分ありますよ。僕じゃあ鞭使いの才能なのかは解りませんので。」
「作ったもんが解らんのか? それは難儀な代物だな。」
「とりあえず、10個ずつ出していくのでこれだというのが有ったら直ぐに解りますから。」
「おう、触りゃいいんだな。―――違うと思うな。何も感じねえ。」
「じゃあ次に行きましょう。―――これでどうですか?」
「―――違うな。」
「―――じゃあ、これで。」
「―――おっ! これだな! すげえな。星が振られたときと同じ感覚がしたぜ。久しぶりだなこの感覚は。しかも11個来た感触があった。こいつはすげえ。」
「合うのがあってよかったです。中魔金貨7枚です。」
「しかしめちゃくちゃな値段だな。騎士爵を狙えるようになるが、騎士爵じゃないと買えないぞ。」
「毎度。そうなんですよねえ。とりあえず、中魔金貨1枚で星4つの方を売ろうと思ってるんですよ。100人レイドでスティナラニアを討伐に行けば1体につき小魔金貨1枚ずつ払っていけば何回かレイドに参加すれば買えると思いませんか?」
「…まあ、買えるだろうが、それはなにか? 俺にも手伝えってか?」
「御明察です。それだけの星が振られたはずですよ? スティナラニアを狙いましょうよ。」
「まあ、ミズチで慣らしてからだな。今年の真夏なら行けるな。」
「まだ他の2人には話してませんが、また4人で行きましょう。そうすれば他の騎士爵の人たちにもこの星の川の存在が知れると思うんですよね。そのうち買いに来てくれるでしょ。」
「俺も聞かれたらここを教えとくわ。じゃあまたレイドでな。スティナラニアか…狩りに行くか。」
「ええ、行きましょう。」
「じゃあな…あ? お前らも今日来たのか。」
「なんだおっさんも今日来たのか、奇遇だな。」
「なんだかんだあの時のパーティーが集まりましたね。」
「おう、丁度良かった。お前らもあれを買うんだろ? ちょっと予定を合わせようぜ。」
なんだ、ルカさんもジュリオさんも来たのか。それじゃあ星の川を探して貰いましょうね。槍使いも盾使いも何個かあるだろう。お金は先に貰っておきましょう。そう思っていたら最初の10個で当たりがあったようだ。
「これはすげえな。なんっつうか万能感って言ったらいいのか、すげえ強くなった感じがするな。」
「これほどですか…今ならスティナラニアの一撃も防げそうです。」
「おう! そのことでよ。スティナラニアのレイドをやらんか? 俺らはまずはミズチで慣らしてからヘルマン誘えばいいだろ?」
「規模はどうするんです?」
「星4つ以上に限定して100人規模で行く予定です。でないと死人が出そうですし。」
「星3つだとギリギリだろうからなあ。まだ俺らに余裕がない内は星4つでいいだろ。余裕が出来てきたり、騎士爵がもう少し集まるようなら星3つまで広げようや。」
「星4つで100人集まりますかね?」
「集まらないならそれでも行きますよ。多分4人でも相手に出来ますので。どちらかといえば戦闘中にケルピーやラグーンウルフの乱入を防いで貰いたいんですよ。気が散る方が危険だと思うので。」
「成る程な。連携はどうすんだ?」
「基本ジュリオさんに受けきって貰ってルカさんが地面に縫い付ける役で僕とマウロさんが両側から首を削りに行きます。多分3,4当て目でマウロさんの方が首に届くと思うんですよね。」
「そこまでの自信はねえが、15分もありゃ終わるだろうな。…んで、ヘルマンは何体か倒すつもりなんだろ?」
「そうですね。星の川の宣伝をしつつ、1回で2,3匹は狩りたいですね。鉄迎派の時のように見つけ次第狩るという方式ではなく、1体ずつの奴を狩りましょう。2匹以上いるところに突っ込む自信は無いですからね。」
「2匹は騎士爵10人位は欲しいな。連携されると面倒で敵わんだろうからなあ。」
「私も1体しか抑えられないでしょうからね。」
「あ、そうだ。傲慢には呑まれないでくださいよ。万能感が半端ないと思いますが。」
「わかっとる! もう何度か呑まれかけた後よ。対処は心得とる。」
「盾使いは傲慢は大敵ですからね。敵を見誤ることになりかねませんし。」
「…そうか、これが7つの大罪の傲慢か。初めて来た感触だ。」
「なんだ、ルカは初めてか。その万能感に呑まれるなよ。1人で挑むようになっちまうぞ。」
「ああ、なんとなくだが対処は出来そうだ。…スティナラニアを狩ったらまた来そうだがな。」
「おう! 強敵と戦ったり、死線を感じたりすると直ぐに出てくるぞ。」
「ですね。私もパーティーでミズチをやった時に来ましたよ。」
「強くなるとこんなことにも気を遣わないといけないんだな…解った。一度理解出来たら何とかなると思う。」
「それなんだよなあ。1度解ると対処はそれ程でもない。1回目が1番怖い。」
それなんだよなあ。傲慢さんは何かあったら直ぐに出張ってくるからな。もう対処の方法は覚えましたので、後ろで踊られても無視できるようになりました。そんなこんな話しつつ、今年の真夏にスティナラニアをレイドでやりに行くという約束を取り付け、解散した。まあ、ケルピーのレイドはガンガン起こす予定ですが。ケルピーの水晶を沢山錬金術ギルドに仕入れて貰わないと、僕の計画が台無しである。星11個の星の川のストックが無くなるくらいには騎士爵を増やして領の発展にガンガン貢献しましょうね。
そんな訳で、畑仕事ですよ。上では快命草をスケルトン3体に集めて貰っています。下では魔力茸と水泡茸をそれぞれ1体ずつに集めて貰っています。…割とスケルトンさん優秀なんだよ。キノコもある程度生えてこないと働かないし、というか上で水明草や白糸草も回収できるんだよね。水郷苔と花水晶は流石に採れないけど。庭先に中銀貨が落ちてるんだもんなあ。いい庭を作ったもんだよ。…下にも快命草のスケルトン用意するか。結構生えるんだよな、快命草。殆ど日光も当たらないのに。
上の庭を見ていると平和だよなあと思う訳で。花畑に冬なのに虫が飛んでるんだもんな。…なんで冬に虫が飛んでるんだろうね。冬眠しないのかな? それとも年中活動するのか? まあ、快命草は根っこからも生えてくるから別に受粉してくれなくともいいんだけどさ。むしろ快命草の種を知らんな? 素材に種っていう概念はあるんだろうか。なんかなさそうだなあ。快命草は花を咲かせたらそのままな気がする。永明派でも種については聞かなかったな。種が有ったら真っ先に研究しているのは永明派だから種は無いんだろうね。
虫かあ。虫なあ。品種改良とかやろうとすると受粉が大切なのよな。この品種とこの品種の交配するのに花粉を付けないとっていうのが品種改良よなあ。それがよく解らん錬金術で成してしまうのが錬金術師よな。それ以上によく解らんけど生えてくるのが霊地や魔境よな。多分実はこの草とこの草は同じやねん。って言われる事もあると思うんよな。それぞれの霊地魔境で名前を付けたのはいいけど、実は同じでしたって奴。国を跨げば名前も違うだろうしね。
そう言えば国を跨いで錬金術のレシピとかいってるんだろうか? いってないよなあ。王立だもんなあ。それに星の川なんて代物、他国に渡って戦力増強しましたなんてしゃれにならんもんな。錬金術師でも国が違えば常識も違うのかもしれないな。使ってる道具も違うんだろうか? そこは同じな気がするな。星10個の奴らが広めたって言ってたもんな。始めから解ってるって言ってたもんな。解ってたら作るのも同じものになるよな。…てことは今回僕が作った錬金蒸留器はどうなんだろう。他の国は先に見つけていたのだろうか? 見つけてないといいなあ。この平和なうちに11個の星の川を広めてしまいたい。戦争に出たくはないけれど、出たら負けたくないもんな。
でも、錬金術師の交流はしてみたい。国が違えば常識が違うのは当たり前だろう。他国は錬金術に力を入れているのであろうか? 入れてない訳ないよな…と思うのは僕が錬金術師だからだろうな。入れてない可能性もあるんだよなあ。魔法使いは確実に力を入れているだろう。即戦力だもんね。魔術師は微妙よな。金食い虫だし。…冒険者ギルドはどうなんだろう。基本的にはこの国だけのシステムだと思うんだよね。他の国はどういうシステムをしているんだろう。この国みたいに人口を何故か抑制しているようなシステムをしているんだろうか? 人口爆発してたら戦争してそうだからなあ。人口って増え過ぎても良いことないのかもしれないが、今の王国は少なすぎると思ってしまう。…多分前世に引っ張られているせいだと思うけど。
しかし、戦争にはほぼならんとは思うんだ。あるなら東の王国とだな。北は海だし、西は大魔境、南も王国と隣接してるけど、山脈を跨いでいるからな。その所為で砂糖が高かったんだが。東は平地の地続き。しかし、東の辺境伯の所は基本やせた土地だから戦争になるのか解らん。痩せた土地でも欲しいほど、人口が爆発してたら知らんけど、痩せた土地はいらんよな。同じように錬金術師が品種改良してるだろうし、才能もあるし。それでも戦争をしたいなら戦争がしたいだけか、それ以上に人口が増えすぎたかのどちらかだろう。僕は騎士爵だからな。出ないといけない訳で。…戦争は行きたくないなあ。鉄迎派の面々を連れて行けば楽に終わると思うんだ。あの連中が死ぬ気がしない。
しかし、魔境や霊地があるのに食料が足りなくなるというのがまず解らんからな。それに人口が増えすぎればその辺にゴブリンでは済まない魔物がポップするんだぞ? うちの王国は錬金術師が何とかしてるからゴブリン位しか出てこないが、同じような結界を作っているんだろうか? 無いと大変だよなあ。魔境だと、人間がいる周囲30m位はポップしないけど、普通の場所は解らんというか知らんのよな。町中にゴブリンがポップする世界。嫌だなあ、そんなの。多分、魔境と同じだと思うんだよね。人が歩いたりするから魔力が淀まずに流れるだろうし、…これが町の結界の基礎のような気がするな。自由市の人たちは基本動かない。だから淀みができる。それをネズミにする。夜に沢山湧いてそうだけど、昼も湧くんだろうな。しかし、こんな機構よく考え付いたな、昔の錬金術師は。
もしこの結界がない国ならば、夜に大量の魔物が湧くのか。それは嫌だなあ。朝にゴブリン退治をやらないといけないのは。倒せるからいいけどね。武器さえあれば子供だって負けない。人は魔力を発生させるから30m位は淀まない説が正しそうだな。実際は15mとかもちょっと短いのかもしれないが。考察をすればするほど、戦争は起きない気がするな。余程征服をしたい王が出てきた時くらいか。僕の生きている間は出てこないで欲しいなあ。平和に生きてるのが一番だよ。
しかし、騎士爵は兵役の義務があるが、兵はどうするんだろう? 各貴族が私兵を持っているのかな? 騎士爵が一兵卒なんて言わんよな? でも100人の兵を与えるって言われても指揮なんぞ出来んよ? いいとこ騎士爵を集めて遊撃隊が精一杯だろう。冒険者をまとめさせられるんだろうか? 無理無理、ただでさえ統率のなってない冒険者なのに、戦争に参加するやつは食い詰めの奴らだろう? 魔境で食っていける奴を戦争には持って行けんよな。募集に応じないだろうし。
そもそも、東で起こるであろう戦争に西側の騎士爵が出張らないといかん程兵力が負けてたら戦争にもならんけどな。東の戦争は東でやってくれ。僕は西の騎士爵なのだ。…西の辺境伯が大魔境に兵を起こすとなった場合はいかないといけないけど。今の所、開拓はやってるけど、大規模に魔境に兵を送り込むって話は聞かないから多分大丈夫だと思うんだけどな。でも魔物相手の方が人間相手よりは気楽だよなあ。斬っても罪悪感がない。どうせ魔物は湧いてくるものだし、兵を起こすこともあるまい。兵を起こすときは多分、レイドで倒さにゃならん奴が出たときなんだろうな。そんな奴は大魔境の奥でひっそりとしててくれ。空飛ぶよとかならふざけるなとか言ってやりたいが。
そんな義務から逃げたいという願望がにじみ出ている考察をしながら庭を眺めるのであった。平和だなあ。平和が一番だよ。辺境伯の所のレイドで終わってくれ。他の伯爵に騎士爵を出せという程のレイドなんて止めてくれ。そう言うのは王都にいる鉄迎派に声を掛けて欲しい。彼らなら喜んで倒しに行くだろうから。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。