87話 16歳 空中庭園作り
12月に入ってもう終盤まで過ぎました。徐々に寒い日が増えてきましたね。今は宿暮らしを卒業し、屋敷の方に移ってきましたよ。どうも、ヘルマンです。エイミーと一緒に移り住んでいます。今は2人で一緒に寝ています。敷布団は大綿花のお布団。伯爵領にもあるみたいで受注生産だが冒険者ギルドで受け付けていた。枕は無かったのでこっちでも広めてきた。掛け布団はラグーンウルフの毛皮製。暖か毛皮の掛け布団です。夏場は布の掛け布団でいいんだけどさ、冬場は寒いじゃない。だからエイミーと一緒に寝ながら包まっている訳だ。
にやにやしている輩共には悪いですが、まだそう言うことはしていません。17歳までは相性を確かめようという風になっております。…ヘタレては居ませんので。そう言うこともやっていかないと結婚時の約束を守らないといけないですからね。子だくさん、何人子供を作りましょうか? 何人いても養う用意は出来ていますのでどんとこいですよ。まあ、初めてですので大目に見て欲しい所ではありますが。
一応、裏街というのは何処にでもあるんですよ。この町だと西通りの南側4番通り位の所にあります。激安の食事処で、店員さんを誘って裏にある民家でやるというお店が多いですね。男の方から幾らと話しかけて、オッケーならそのまま一緒に出ていくらしい。店側に何割かマージンを払って働いているという訳だ。必要悪だよなあ。そういう所が無いと強姦なんかが起こるだろうからな。激安でやっていけるのは領主様から補助が出てるからだな。…これのせいで畜産農家や他にも補助を受けているところは肩身が狭いんだが。まあ、仕方ないよね。
命を張って狩りをしている冒険者はどうしても滾るんだよ。命の危機に置かれると命を繋ごうとする生命の機能が働くんだよね。そう言うお店があるのは仕方ないことなんだよ。…男だけだと思うなよ? 女用の所もあるからな。冒険者同士でやる場合も多いが、やって出来た子供は捨てられるんだよな。町の教会には孤児院が併設されている。そう言うこともあって教会には領主様から補助がたんまり行っているはずだ。殆どは才能の維持のためなんだけどね。
お店の方はちゃんと作りました。お店は民家2つ分の広さだけど、売り場よりも作業場の方が広い。錬金陣広げるから場所は欲しいし、色々な素材も置くからな。…研究は辞めないぞ? ここでも色々と混ぜるんだからな。錬金術は仕事でもあるが、趣味でもあるからな。色々混ぜるのは楽しいんだよ。…金食い虫なんだけど、辞められる気がしない。
2階部分にはお風呂を作りました。ちゃんとお湯にする錬金アイテムも作った。これは水属性の魔石と火属性の魔石が維持費にいるんだけど、温度草が魔境で採れるからな。魔境に行けばいいんだから問題ない。それに月に1度くらいのペースだし、必要分も1個ずつでいいからそんなに維持費がーってうるさく言わなくても維持できる。それよりもお風呂が欲しかったんだよ。シャワーだけじゃあ我慢できなかったんだよね。ずっとさ。子供のころから前世の記憶にあるお風呂に入ってみたかったんだよ。結果はやばいねあれは。中毒になるよ。浴槽を広く取って、屋敷の2階から入れるようにしてあるんだけど、そのうち使用人たちにも解放しようと思っている。髪洗液も置いてあるし、使ってくださいね。1つしか作らなかったから、誰が使っているか解るようにしないとなあ。その辺はすぐさま取り掛からないとね。
3階部分には水槽を置いてある。アルキメデスの螺旋からどんどんと水が供給されている。…最大量から溢れたものは現在、2階部分から外に溢れ出すようになっている。今は下に簡易の水を地下に流す機構を作って地下に流し込んでいるが、今日作ろうと思っている畑に繋いで空中庭園みたいにする予定だからな。まあこっちも上手いこと作りますよ。
4階部分にはスケルトンたちがグルグルと回っている。1階から3階の上の方まで水をあげるのには色んな箇所を薄く軽くしても4体は必要だった。まあ、8体でグルグルと回してもらっているがね。水が足りないというのは防ぎたい。風呂に一杯使うから早くタンクの水が無くなるんだよ。風呂はお湯を丁度いい温度で出しっぱなしである。どうせ地下水に戻すんだからいいはず。汚れなんかは土が頑張ってくれるはずだ。汚れで何100年に1回は掃除しないといけないかもしれないが、僕の生きている間にはそんな問題は起こらないはずだ。微生物よ頑張ってくれ。
そんな訳で店部分とそれに繋がる部分を大改造したわけだ。階段の位置も考えて貰ったし、部屋の位置なんかもその辺りと競合しない様にしてある。完全に確信犯である。後悔はしていない。まあ、屋敷の方は全体的に魔力茸をふんだんに使い、強化したがね。それで、店部分を作る傍ら精霊樹の苗木を育てていた。今日で凡そ1か月に満たないぐらい。そろそろこれが成長限界のはず。枝打ちなんかもしつつ、7m位はまったく枝が無い状態にして、残り3m部分の所は枝が密集している。大きなキノコみたいな形になりましたよ。放置してたら枝で全景が丸くなる様に生えたんでなかろうか。
そう言う訳で、今日はここに空中庭園の様な畑を作っていきたいと思います。まずは2階部分を作りましょうね。骨組みは屋敷の2階の高さより少し低めに合わせてズゴゴゴと周りの土を持ち上げる。…畑用の土は魔境の土を放り込む予定だから窪んでオッケー、むしろ窪ませたい。所々に柱を建てつつ、梁を通していく。畑になる真ん中の所には柱がいらない様に魔力茸でしっかりと補強しながら作っていく。そんな訳で、20分位で2階部分から少し低い位置に家6つ分の床が出来ました。精霊樹の周りは円形にくり抜いてある。…この広さだと2本植えても良かったなあ。…いや、駄目か。枝が思ったよりも横に広いからな。太陽が当たらなくなってしまう。
そんな訳で、2階部分に合わせて外側を盛りましょうね。土が零れ落ちない様にするための枠です。そしてその枠の部分に少し、細かめの柵を作ります。精霊樹の周りも枠と柵を作りましょうね。将来、子供達が遊びに入って落ちたら危ないですからね。柵の高さも1.5m位あればいいでしょう。そこまで大きくなって落ちるようなバカは知らん。そしたら枠の中に魔境の土を入れていきましょうね。しっかりと締め固めながら詰めていきます。あんまりにもぎゅうぎゅうにはしないが、柔らかすぎるのも問題なんだ。スケルトンがこける。少し固いくらいで大丈夫。快命草はそれでも生える。奴らは岩盤でも生える生命力を持ってるからな。…流石に太陽は必要だから1階部分の畑には余り生えないだろうが、生えはする。その位生命力が高いからこそ、ポーションに利用されているんだと思う。
そう言うことで2階部分の基礎は完成。後はここに水が流れる様にしますよ。流石に快命草でも、水は必要だろ? 必要なさそうな気もするけど、空中庭園風にするって言ったからな。水路を通していくぞ。まあ、3方をへこませてある程度の間隔で水流を流すための窪みを作っていく。スケルトンはこけるかもしれないが、空中庭園という美学の前には犠牲は付き物。そんな訳で、細い水路を作っていくぞ。伊達に黎明派に所属してませんでしたとも。解らないなりにも聞いていた水路の知識が生きたな。それを屋敷と店の継ぎ目の部分の角から対角の所にまで水路を何本か通して、全体に水が行くようにする。これで2階部分は完成だ。
…ここから1階に行きたいなあ。どうしよう。階段を作りたいが、何処に作るか。…そうだ。精霊樹の周りに作ろう。螺旋状に降りていく階段。おしゃれになりそうじゃない? 早速畑の一部と柵の一部を変更して螺旋階段を作る。…高さ的に4分の3周するくらいで地面に着いたがこれで良し。若干おしゃれ度が上がったんじゃないかな。そうしたら、1階部分の枠を固めます。これは2階でやったのと同じことだね。そうして周りに柵を用意しましょう。こっちは進入禁止って意味合いだから80㎝くらいでいいよね。落ちる訳じゃないし。流石に敷地の中に入る阿呆はいないだろう。そうして2階部分と同じように魔境の土を入れていく。こっちも割としっかりと締め固める。魔力茸も魔力さえあれば生えてくるみたいだから問題なし。そして敷き詰め終わったら2階の水路の排水溝部分を1階に延長してこちらに流れる仕組みを作る。そうして浅い池も何か所か作りながら水路をグネグネと通していく。そして、今通している簡易排水溝の所まで水路を引っ張ってきて接続する。簡易排水溝と言っても井戸に石を詰めた物なんだけどね。水の出る高さまでちゃんと掘ってあるよ。そうしたら店の所の壁から中に入る入り口を作る。これで1階からも2階からも入れるようになった。そして、店の壁側でいいかな。保存瓶置き場を設置する。4段位で大丈夫だろう。2階部分には保存瓶置き場は必要ないので、快命草置き場を作っておく。これも店の壁側でいいだろう。
これで完成したんではなかろうか。では、水を流していきましょうね。…この水全部流すのは不味いから、簡易排水溝はこのまま機能させよう。畑に水を流す量を決めないとな。…管の5分の1くらいまで水路に繋ごう。…水がゆっくりと流れていくな。もうちょっといるか? いや、始めだけだろう。暫く1階に回って待ってみよう。…おっ来た来た。そこから池に溜まって…暫くかかるだろうな。もう一度2階に行ってみる。よしよし、全部の水路にちゃんと水が流れて行っているな。2階は大丈夫そうだ。快命草をばら撒いて行きましょうね。こいつらは勝手に根を生やして増えてくれるからこんなのでも十分だ。2,3日したら快命草が元気に立っているだろう。こいつらはそう言う植物。しばらくしたらスケルトンを放して快命草集めをしてもらう予定だ。エイミーからもちゃんと許可は出ている。アンデッド嫌いだったら嫌だろうけど、我慢してほしい所である。アルキメデスの螺旋の時に見せたときも興味深そうに見てたから苦手では無いみたいだ。生理的嫌悪を覚える人もいるみたいだからな。
さて、1階部分に戻りまして、水の行く先を見つめる。もう3つ目の池まで来てる。池は対角線上に4つ作ったからな。池の外で魔力茸。池の中で水泡茸がとれる予定です。多分2階の部分にもそうだけど、他の薬草学大全に載ってるもの位なら生えてくると思います。子供たちの教育に使いましょう。冒険者として送り出すにしても、しっかりと教育する予定だからな。教会にもちゃんと通わせるし、採取の方法なんかもスケルトンに負けないくらいには教えるつもりだ。冒険者がスケルトンに負けるんだから酷いよな。戦闘力でスケルトンに負けるようならもっとお話にならないが。
4つ目の池にも水が溜まり、排水溝に向かって水が流れ込んでいる。…とりあえず、これで庭造りは終了かな。あ、保存瓶何個並ぶだろう…40個か、1列10個も並べば1日持つでしょ。そんなに頻繁に生えるんならもう少し棚を増設すればいいからな。それか使用人に回収させればいいか。貴族様になったんだし、自分で全部やる必要はない。保存瓶の補充なんかもやらせよう。そうしよう。とりあえず、庭の感想をエイミーに聞いてみようかな。今は4階にいるだろうし、4階には窓ガラスも作ったからそこから見てるかもしれないけどね。
「エイミー、庭兼畑を作ったよ。そこからも見える?」
「ええ、見えるわよ。錬金術師って本当に不思議よね。何であんなことができるのかしら?」
「まあ、そのために王都で勉強するからね。子供にも錬金術師になりたいって子供が出来るかな?」
「1人位はいそうじゃない? 貴方を見てると楽しそうだもの。」
「楽しいよ。お金も時間もかかるけどね。」
「でも、お金は使わないといけないんでしょう? 貴族の仕事みたいに言ってたけど。」
「そうなんだよね。使わないといけないんだよ。…とりあえずエイミーの友達の3人は雇ったけど、後はどうしようね? とりあえず料理人は代官屋敷に募集出してきたけどさ。その時に若い執事さんを伯爵家から引き抜けませんかって聞いてきたんだけど、明日って指定されてるし行ってくるよ。」
「いいように取り計らってくれるんじゃないかしら。…どう? 私の言葉遣いとかちゃんとなっている?」
「大丈夫だと思うよ。そんなに緊張しなくても良いって。」
「そう? なんかヘザー達に奥様って言われるのも変な感じがするのよ。」
「それはしょうがないんじゃないの? 流石に友達呼びは許されないんじゃない? 隠れてならいいけど、人前でやらかしたら解雇しないといけないんだからさ。」
「そうよね。彼女たちも割のいい仕事って言って嬉しそうだったし。大白金貨6枚って言ったら即決めてくれたわ。」
「割がいいねえ。結構大変だとは思うけどね。」
「大変なんてどの仕事も大変よ? 冒険者は知らないけれど。」
「冒険者も生きるのには大変だよ。…大変にしている人の方が多いけど、ここは魔境だし、稼いでいる人たちも結構いるはずだよ。」
「そうなのね。ここの町しか知らないから、他の所はもっと大変なの?」
「うーん、文字が読めないと大変なんだよ。生きるのにも大変なんだよ。」
「…ちゃんと教育しましょうね。私には育児の才能があるからある程度にはなってくれると思うんだけど。」
「そんな才能もあるんだ。因みに他の才能は幾つ振られたの?」
「テイマーに星4つ、裁縫に星2つ、育児に星2つ、算術に星1つ、薬師に星1つね。テイマーギルドに就職しようか迷ったんだけどね。結婚してからでいいかって思ってたのよ。」
「僕は錬金術師に星7つ、剣士に星3つだからね。選ぶ道は錬金術師だけだったよ。まあ、なりたくてお祈りをしていたんだから嬉しかったけど。」
「お祈りの効果ね。…子供たちにも祈らせるように言った方がいいのよね? 最近になって領主様からもお触れが出たもの。」
「そうだね。祈る様に言わないとね。何になりたいか祈りなさいって。」
「そうねえ。ねえ、早く子供が欲しいんだけど。」
「…新年祭が終わってからって、2人で決めたでしょ?」
「なんだか待てなくなってきたのよ。お願い。」
「しょうがないね。今日から頑張ろう。」
「早くできるといいわね。」
「そうだね。…庭を見に行かない? 力作なんだよ。」
「そうね。行きましょうか。」
その後2人で庭を見て回って、ここをこうしたいとか色々言われた所を作り直しながら、レベッカに呼ばれるまで庭いじりをしていました。ゆっくり流れる時間も良いものだよ。夏場は忙しくしてたからね。冬はゆっくりとするのかと思ったけど、忙しくなりそうですね。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。