84話 16歳 ケルピーのレイドでお金をばら撒きたい
朝晩がだいぶ過ごしやすくなってきましたね。スティナラニア、ミズチが魔境から消えて幾分か、秋の何時頃だろうか。どうも、ヘルマンです。夏はミズチ狩りを楽しみました。5日に1回のペースでミズチを納品しましたからね。ウォーターサファイアはいらないから、鱗を全部解体して大白金貨で売ってくれと交渉したら喜んで受けてくれました。お店が出来たらミズチの鱗で沢山星の川を作る予定です。錬金蒸留器で最高品質の魔石にした奴と、スティナラニアの水晶鱗で星4つ分の奴を作る予定です。
…売り先が無いだろうって? 作るんですよ。レイドで。まず金を持っている騎士爵勢に星11個の星の川を買って貰います。そして100人レイドでスティナラニアを狩ります。それを10回位繰り返せば4つの星の川なら届く者が出てきます。中魔金貨1枚ですから。そうすると冒険者の実力が底上げされます。とするとレイドが捗りますよね。もっとスティナラニアを狩れる訳です。…そうするとそのうち11個の星の川が売れるんじゃないかと思ってます。…中魔金貨7枚で売る予定だからなあ。4つ追加された段階で騎士爵になってくれればいいんだけど、厳しめかなあ。いけると思うんだよね。レイドは星4つの制限を掛ける予定ですから、星8つが5人もいれば十分ミズチは狙える。後は11個の星の川を買ってもらって、各々スティナラニアのレイドをしてもろて。がっぽがっぽという訳ですな。…投資の金額が半端なくて、回収できない見込みです。まあ、年金生活ですし? ばら撒きますよ。もう稼がなくてもいいくらいには持ってますからね。還元しなきゃ。
それに星の川も在庫はたっぷりとあるんですよね。錬金学術院の内に一杯作った。そりゃあもう沢山よ。鉄迎派に売るわけでもなく、貯めに貯めこんで来ましたよ。…まあ、沢山って言っても100は超えていない。そんなに量産できる訳じゃないのよ。最高品質の魔杖を使って、本刺繍の錬金陣を使って、1日に3つ、僕の気力が持つときは4つ作れた。まあそれよりも魔石を作るのに困った訳だ。スティナラニア・ミズチレイドをしたって限度がある。沢山の鱗は採れるんだけどさあ、それでも足りない。魔境に潜るだけでなく霊地にも採取にいったよ。泊まり込みでな。冬場に行ったんだよ。ケルピーも狩れない魔境は美味しくない。冬場は霊地に篭った。幻玄派かってくらいには篭った。
そんな訳で売るものは沢山持ってます。納品用の初級ポーションと上級ポーションも残弾はたっぷりです。…ポーションは暫くは作らなくても大丈夫だけど、快命草畑は作る。空中庭園を作る。…前世の太古の時代の空中庭園に比べたら庭だけどさ。2階部分から快命草畑、1階部分は魔力茸と水泡茸の採取場所を作る。…スケルトンさんの有能さに心を震わせるがよい。なんと保存瓶に保存してくれるんだぞ。水泡茸も保存瓶に水を汲んで保存してくれるんだぞ。そこらの冒険者よりも有能なんだよ。この話を聞いた時はマジで心が震えた。スケルトンに負ける冒険者って一体…。『エクステンドスペース』が使えないことが難点か。そんな訳で、畑仕事用にもスケルトンは確保している。20体もいれば動力と畑仕事に割り振っても十分に足りると思っている。足りなければ500体単位で冒険者ギルドから買いましょうね。中金貨1枚で売ってくれないかな。魔鉄は残してもらわないといけないけれど、冒険者ギルドの儲けを考えたらもう少し値段を払った方がいいか? 金は潤沢にあるんだし、問題無いよな。大金貨位は払おうじゃない。…まあ足りるとは思うんだけどな。
で、今の魔境は旨味が少ない。ミズチがいないのが悪い。ケルピーやラグーンウルフはいるんだけど、いかんせん数が狩れない。夏場の様なボーナスステージと化してないんだよ。遭遇するにはそれなりに歩かないといけない。それじゃあ効率が悪い。もっと効率よく狩りたい。そんな訳で考えました。そうだレイドをしよう。200人規模でいいよね。ってことで、とりあえず星3つを下限としてレイドを起こしました。集まる場所は北門西側に行った所で待ち合わせ。現地集合にしてあるので何人になるか解りません。凡そ200人になればいいかなって所。募集要項には効率よく沢山狩ります。と書いてある。何事かと思うかもしれないが、簡単である。奥に行って、皆にトレインしてもらえばいいんですよ。
魔物の押し付けは私刑にしても許されるが、私刑にしないから沢山連れてきてってお願いするのだ。他の冒険者にとっては何を言ってるんだ? と思うだろうが、効率よく狩るにはこれが一番だと思ったわけだ。なんてこった、魔物がこっちにやってくるぜ作戦。僕の狩るペースが早いか、トレインの規模が勝つか勝負です。まあ、負ける気はしませんが。とにかく斬って斬って斬りまくれれば効率よく稼げるはずです。…まあ、何人集まってくれているのかが問題。1週間しか期間とって無いからなあ。冒険者がどれだけ集まるのか、今回がレイド主催者初めてですから。予定外に少なくても行きますが。
そんなことを考えていたこともありましたが、…300人位ですかね? 予想よりも集まりましたね。遅れてきたやつは知らん。主催者が着き次第出発と書きましたから。…ここに今度、井戸作っておこう。泊まる人も出てくるんじゃないかな。今後もやる予定だし。さてさて、主催者からの声明を発表しないとな。
「集まってくれた冒険者諸君ありがとう! 僕はこの度パーティーでミズチを倒し、騎士爵になったヘルマンだ! 諸君! 中白金貨が欲しいかー!」
「「「おー!」」」
「では作戦を通達する! まずは1時間かけて奥まで行く! 全員でだ! 離脱した奴は最後に合流しても報奨金は無いからな! そして! そこから各地に散らばり僕に魔物を押し付けてくれ! 倒すのは任せろ! 諸君は僕に魔物を押し付けてくれればいい! 怪我をしない程度に引きつけて来ればいい! 上級ポーションもたっぷりある! 怪我をした奴は言うように! 死人は自己責任! 報酬は中白金貨1枚! 以上だ! 質問を受け付ける!」
「やることが無茶苦茶だ! 無理だろ!」
「無理かどうかはレイドについてきてから判断しろ! 無理でないことはついて来れば解る! 命が惜しければ今すぐ引け!」
「星は幾つだ!」
「9つと5つだ! 他に質問は! ―――ないな! では、出発する! 駆け足! 僕に続け!」
さて、初めて主催のレイドです。…見た感じ200人位に減ったな。100人はここに置いていく。当初の目論見通りだ。さあ行くぞ。いざ出陣。普通のレイドは星の少ないものが外側にいて、どんどん削れて行くんだろうが、今回は僕が先頭に立ってのレイド。他の冒険者も経験のないレイド方式だろう。主に鉄迎派でやっていることの真似なんだが。…鉄迎派のレイドは皆戦えるからな。基準にならんけど。スティナラニアまで行くけど離脱者なんていなかったもんな。化物ぞろいの鉄迎派…僕は一応黎明派なんですが。
さて、魔境に入り、向かってきたゴブリンを飛剣で斬り飛ばし、目の前にいたウォーターウルフを斬り飛ばし、ラグーンウルフも群れごと斬り飛ばし、ケルピーも軽く斬り飛ばす。どんどん奥に進んでいく一行。脱落者は無し。だって僕以外戦って無いんだから。しかも駆け足が止まることもない。奥へ奥へと進んでいく。そして、ラグーンウルフの群れとケルピーしか出なくなったところで声を掛ける。
「全体止まれ!」
どたばたとだが、一応皆止まった。さて、ここから放射状に散って貰う事になるんだが、人が一杯いるところに帰ってくればいいだけだから簡単だろう?
「ここから各パーティー毎に散って貰う! 準備はいいか!」
「「「「「「おう!」」」」」」
「では散開!」
さて、散って行ったぞ。近くにいるのからどんどんと連れてきてくれ。とりあえずこれの効率を図るところから始めないといけないんだからな! 走り回るよりは効率がいいだろう。どうせ錬金術ギルドを通して僕が買うんだけど、金のばら撒きには成功するだろう。…多分領主様もお金をばら撒いて欲しいだろうし。それに僕にもメリットがあることなんだよ、余裕のある冒険者を増やすことは。
…飲食店がまだまだ発展していないんです。野菜や果物、肉に油と材料は一杯あるのに食べる場所が少ない。それは儲からないからだと思ったわけだ。沢山の材料を使って料理をすると流石に値段が上がる。…そうすると冒険者が寄り付かない飯屋の出来上がりだ。味は美味しくても客が金を持っていないと流行るわけがない。そんな訳で、冒険者に金を落とす。そうすると、冒険者が普段頼まない高い料理にも手を出す。酒なんかは絶対だと思う。つまみも出るよな。そうすると料理の美味い所に、酒の美味い所に冒険者が集まるだろう? そうするとほら、店をやってる料理人が研究を始める訳だ。もっと美味い料理はないかと。売れ筋はないかと。そして金を冒険者が落とす。好循環の始まりだ。インフレの始まりだ。まあ、食材の価格に上限がある以上、ある一定のレベルで落ち着くだろうが、美味いものを食いたい僕にとっては願ってもないことなので、どんどんお金を落としますよ。…店屋もそのうち出しましょう。料理人を雇ってある程度、僕も料理を伝えよう。5,6件店を持とうかな。それぞれに切磋琢磨してくれると嬉しいな。いいねいいね、飽食の時代が到来するんじゃないか? 火付け役は任せろー。
さてさて、5分程経ちまして、すでに何組かはトレインに成功している。もちろん即殺斬で斬り捨て次のトレインに向かわせた。驚かれましたがね。1度かと思ったか? 時間いっぱいまでだよ。さあさあ斬り捨てられないくらいは連れてきてくれ。この効率次第では次回以降の報酬も考え直さないといけないんだから。一応ケルピー100体で黒字になっちゃうんだもんな。黒字はいかんよ。赤字で無いと。そうで無いと金をばら撒けないじゃん。効率よくばら撒きたいんだから。
そんな訳で7時間程、この狩りを続けました。…もうね。『エクステンドスペース』ってこんなに入ったっけ? っていうくらいには魔物を詰め込んでおります。ケルピーも150体を数えてから覚えてない。…確実に黒字だ。見直しは必須だな。『エクステンドスペース』も成長したよなあ。魔力操作が上手くなってからぐんぐんと容量が増えて行った。魔力総量じゃ無いんだよ。操作の方が関係してくるの。…魔力総量で限度が決まってるのかもしれないけど、まだ限界じゃない気がするんだよね。まあ、隙間とか関係なく体積計算っぽいんだけどさ。隙間もカウントされたら入るんだろうか? 入りそうだなあ。
そんな訳で、1時間ほど待ったこれ以上は連れてきてないと思う。死んだ人は解らん。最初の数も覚えていないからな。そんな訳で帰宅ですよ。また1時間ほどの駆け足。そして魔境の入口より手前で止まり、報奨金を渡す。…でないとレイドにこっそり紛れ込む狡い奴がいるかもしれないしね。その対策。まあ、あそこまで行ける人たちにとってはゴブリンやオークは雑魚ですよ。一応、上級ポーションが必要そうな人にはちゃんと支給しましたよ。ポーションは経費。これは覚えてもらいたい。盾使いが不遇というのはあり得んのですよ。皆一緒の金額です。今回は中白金貨1枚だけど、ギルドで幾らになるかで報奨金の額も決めないとなあ。
そんな訳でギルドで大量に買い取って貰いました。金額は小魔銀貨10枚と中白金貨45枚。中白金貨未満は冒険者ギルドの取り分にしてくれと頼みました。小銭は皆で飲んでくれ。冒険者ギルドには解体でお世話になりっぱなしになると思いますんで、今後ともよろしくお願いします。あ、解体の人員は確保しておいた方がいいと思いますよ。7日に1回はやると思いますんで。その代わり、中白金貨を一杯下さい。今回は出て行った中白金貨が213枚。入ってきたのが1045枚。…5枚に値上げしよう。次からは中白金貨5枚でレイドを開催しよう。とりあえずケルピーが出なくなるまで続けるとは思います。
流石にケルピーがいないとやる気が起きない。ラグーンウルフもいなくなるんだよ? 淡血晶も採れないじゃん。後で錬金術ギルドに回収に行くんだからさ。冒険者ギルドでそんな話をしたら驚かれたからな。わざわざ売って買い戻すのかって。…解体作業が苦行じゃないですか。幾ら食べないから簡単だと言っても、レイドとレイドの合間に真っ赤になりながらやる作業じゃない。僕は日に日に大きくなっていく家を眺めるのに忙しいんです。…家は4階建てみたいなんだよなあ。その位の大きさになりそうです。家の方が精霊樹よりも大きくなりそうだよ。精霊樹は10m位で止まるって話だし。
そんな訳で、無事にレイドも終了しましたし、次回のレイドを7日後にしてもらいましょうね。ギルドの人が皮紙を削って後何日っていうのを変えてくれるんだよね。…張り出されてるから、朝仕事を欲しくて皮紙をとる人たちには邪魔者扱いされてそうだけど。そんなことは知ったことじゃ無いからな。さてさて、今回でこのレイドの事は大々的に広まるでしょう。ミズチのレイドでさえ大金貨なんですよ? ケルピーで中白金貨が貰えるとなっては人気も出るでしょう。…星2つ以下が入り込むでしょうが、その辺は自己責任という事で。美味い話には危険も付き物なのです。そんな訳で、騎士爵としての役目も果たすとしましょうね。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




