80話 13歳 12月15日 ゼミの日、錬金蒸留器の発表
5番棟0304号室からおはようございます。今日は12月の15日、ゼミの日ですよ。どうも、ヘルマンです。あれからも錬金蒸留器を使い続け、土属性と水属性の魔水を作成しました。純粋な魔水も保存瓶に2本と少し溜まってます。…最高品質の魔石を使ってガチャをしたい症候群が出てきましたよ。無駄だと解っていてもガチャりたい。そんな気持ち。解ってくれると思います。鉄迎派じゃ無いんだから8つもあれば十分だからな。…騎士爵狙っちゃうか? 暇なら狙おう。持ってても悪いもんじゃないし。…戦争に出ないといけないのはデメリットだけど、戦争の気配は無いからな。
シルビオやグレン、エドにテッドとは連絡は取れて星の川を売った。エド以外のはあったんだけど、槍使いが3つに、盾使いが4つ、鎌使いが1つあった。それぞれ全部買ってゼミに売りに行くらしい。…僕が思っていたのと違って武器ごとのゼミに入ってるんだってさ。同じ才能同士で教え合っているらしい。交じりの派閥もあるとの事だったので、そっちは自分で探すしかないという訳で、昨日売りに行ってきた。スティナラニア討伐部隊というゼミだった。名前で何がしたいか丸わかりのゼミだったが、景気よく全て完売した。50人もいるゼミだったからね。スティナラニアの水晶鱗で星4つだから喜んで買ってくれました。因みにミズチの鱗は星3つらしい。意外と星5つは貴重品という訳だ。あ、テッドはやっぱり満月茸を持っていたので交換した。
そんな訳で、懐も温かくなりーの豊穣会です。今回は凄いんだからな。過去1のびっくり具合だと思われる。新たな錬金道具の作成だからな。8000年ぶりの快挙なんでは無かろうか。…因みに魔石では出来なかったんだよね。素材だけ。何でかは解らない。とりあえず理屈抜きの錬金道具だからだ。それに一応、普通に使えるものでもあったのは確認済みだ。初級ポーションも作れた。錬金釜とほぼ同じだったよ。ただ、固体を作るのに向いていない感じだった。錬金釜の劣化版なんだよ、基本性能は。才能を叩き付ける作業においてだけ、錬金釜を上回る感じなんだよね。というより、特性が変わると表現した方がいいのかもしれないね。液体にするってことに特化してる感じなんだ。だから魔水として属性を取り出せたんじゃないかとは思う。さて、セレナさんが到着して豊穣会スタートだ。
「時間だな。今年最後の豊穣会を始める。私からは特にはない。次に報告したいものはいるか?」
「はい! 僕からでいいですか?」
「ヘルマン君が積極的なのは珍しいな、何かできたのか?」
「新しい錬金道具が出来ました。」
「…は? おい、ちょっと待て。なんだって? 新しい錬金道具? そりゃあなんだ?」
「錬金陣を刻んだ道具の事です。魔布と錬金釜と同じ特性を持つ道具です。」
「ちょっと待って。それが出来たってことは8000年以来の新しい物よ? 才能が10個の奴らが残したものと同等の物が出来たっていうの?」
「残念ながら性能的には錬金釜の劣化です。しかし、技の領域になるとその道具の特性のおかげで錬金釜とは違う物ができるんです。」
「技であるか⁉ これは俄然興味が湧いて来たのである。して、その実物はどのような物なのである?」
「これが僕が作った錬金道具、錬金蒸留器です。」
「こりゃあ、前に作った蒸留器よりも簡単な作りだなあ。上の蓋の機構は保存瓶のもんだしよう。」
「錬金陣を刻印したのは錬金釜用のインクね。同じもの?」
「同じものです。」
「女神の涙が無い分、錬金釜の劣化版って訳なのね。…という事は普通の錬金術に使えたって事よね?」
「はい、初級ポーションしか作って無いですけど、一応作れることは確定してます。他も作れると思うんですが、液体に特化してる分、錬金釜の方が使いやすいと思うんですよ。」
「成る程、既存の錬金道具を超えたわけではないのか。あくまでも劣化版って訳だ。」
「それよりも技であるな。技の領域になると特性が生かされると言っていたであるが、どのように生きるのである?」
「それはとりあえず、この属性魔石をみて欲しいんです。」
「…随分と大きな魔石なのである。これほどの光属性の魔石は見たことが無いのである。」
「…このサイズになる魔石ってなると何があるよ? 満月茸でも無理ってなると、光属性の魔境の騎士爵が狙えるレベルの奴か?」
「…恐らくだが、存在しないと思う。これを作り出すのが技の領域という訳だな、ヘルマン君。」
「その通りです。これは月光茸600本分の光属性の魔石です。」
「待って。魔石の作成には1つの素材で1つの魔石が原則よ。その原則が崩れるというの?」
「その通りです。こちらが竜宮之使の実を使った魔水です。」
「魔水? 魔水とはなんだ?」
「便宜上使っている造語です。属性魔力の水。魔力の水。魔水と命名しました。」
「保存瓶1本分用意してあるが、これは何でだ?」
「それ以上になると2個の魔石が出来そうだったからです。多分その光属性の魔石もそれが限界だと才能が感じました。」
「…成る程、才能が反応したのか。…使ったことが無いがそう言われるとそう言う気がしてきたな。保存瓶1本分が限界、苔と一緒のような特性だな。」
「そう言う訳です。この錬金蒸留器を使って素材から魔水を取り出すんです。その時に普通に使うんでは無く、技を使うことになるんです。」
「技と言った根拠は何よ? 技って言った根拠があるんでしょ?」
「はい、鉄迎派の技とほぼほぼ同じだからです。」
「鉄迎派と同じって言うと、錬金陣の刺繍をした魔布に錬金釜を乗っけるってやつ?」
「そうです。これも刺繍の上に乗っけて使います。そうして才能で地面を掘り続けるイメージで才能を使い続けます。」
「成る程ね、それで技って訳ね。で、竜宮之使を複数個使って作ったのがこの魔水と。」
「この魔水を魔石にしてもらえれば解ると思いますが、属性魔力を引っ張り出した後の様に固めるだけで魔石になります。誰かに試して貰っても構いません。」
「では、代表して私がやってみよう。―――――――――ふむ、成る程。確かに大きな魔石になったな。感覚も普通の属性魔石を作るのと同じだな。」
「であれば、早速この錬金蒸留器を作ってみるのである。作り方はガラスを固めて、錬金陣をインクで描き、魔力を込める。でいいのであるか?」
「はいそれで出来ます。大きさは、これくらい、錬金釜位が丁度いいんじゃないかと思います。大量に素材を入れないと技を使う回数が増えるので。」
「保存瓶が30本分もあれば十分そうねー。インクも簡単に作れるし、皆で作ってみましょうねー。」
そんな訳で皆、錬金蒸留器を作り始めた。…やっぱりうまいよな、皆。保存瓶と同じ機構をガラスを弄って作るのが結構難しかったんだが、すんなりと作ったな。流石だ。インクで各々の錬金陣を描き、作成は10分程で完成した。受けるための大き目の瓶も一緒に作った。…月光茸でも保存瓶から溢れるからな。
「さて、実物は出来たであるが、何を入れるであるかな。魔力茸でもいいのであるか?」
「いいと思います。複数の属性を持っていても両方の属性の魔力が取り出せますので、本当に何でもいいです。でも、魔力を多く持っているものの方がいいです。魔水の量に関わってきますので。」
「何と、それは悩むであるな。」
「とりあえず、1回やってみない事には解らないでしょ。まずは失敗を恐れずにやることよ。」
そんな訳で皆思い思いの素材を入れてみていざ錬金。僕は狐藁火苔を大量に入れました。後は火属性と風属性だけだからな。全属性の魔杖までもう少しだ。…僕は30分位なんだが、ブルースさんやセレナさんは僕よりも早く終わっていた。…時間は才能の星の数で決まりそうな感じかな。後は交点の数。使った材料にも因るのかもしれない。1時間もすれば全員終わっていた。
「…これは確かに技の領域だろう。星の川と同じく理屈では無かったからな。」
「そうね。でも傾向はなんとなくだけど掴めたわよ。恐らく、星の川もそうなんだろうけど、終わる時間は星の数や交点の数に因ってくるわね。」
「取り出せた魔水は本当にそれぞれの属性に沿ってますね。…1素材1魔石の原則が崩れるなんて。」
「…ただなあ。」
「…どうしたのである?」
「これを作って喜ぶのは黎明派じゃ無いんだよなあ。造命派か鉄迎派だろ? 魔石の質が物を言ってくるのは。」
「…まあ、確かにそうね。特に鉄迎派ね。これで魔石を作ったら星の川で星9つ位足されるんじゃ無いかしら?」
「これを公開したら数年は荒れるわね。…というか授業内容の見直しが必要じゃ無いかしら?」
「そうねー。1500年ぶりに授業内容が変わるわねー。黎明派の10月に入れたいわねー。今は来年の準備物が3か月続くんですもの。1つにまとめてもいいと思うのよねー。どうせ余り人が来ないんだし。」
「ヘルマン君、報告書はもうできているか?」
「出来てます。しっかりと書いてきてます。」
「よろしい。…これも私との連名になってしまうが、大丈夫か?」
「その辺は大丈夫です。」
「これだけの物だ、報奨金も期待できるぞ。…黎明派にも技がついに出来たか。」
「そうね、…幻玄派と永明派は除くとして、他は技と呼べるものがあるものね。」
「であるな。喜ぶ者が違えど、派閥の技には違いないのである。」
「激流に呑まれない様にしないとねー。時代が動くわよー。」
色々と感想はありましたが、確かに鉄迎派と造命派が喜びそうですね。特に鉄迎派は。星の川ガチャもやりたいですし、やりたいことが沢山出てきましたね。これを即公開するんですから来年の授業には間に合いそうですよね。黎明派の人が皆理解してくれないといけないけど、直ぐに試すだろうし、直ぐに普及するだろう。これに合わせて他にも錬金道具が出来てくれるといいなあ。僕だと思いつかないんだよね、これ以上は。何かあれば直ぐ作るけどさ。そんな訳で技の公開がなったことで錬金学術院も忙しくなりそうです。豊穣会も毎回楽しくなっていくなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




