74話 13歳 9月6日 授業のおさらい、魔境リターンズ、剣士の技
自分の部屋からおはようございます。今日は9月の6日、普通の日ですよ。どうも、ヘルマンです。9月の授業は何処も特出したものは無かった。永明派の授業は上級ポーションの作成だ。…自分で作ってしまったからな。わざわざ行かなくても良かったんだが、自分の作った物がちゃんと上級ポーションであるか確認のために行った。結論、作り方は間違ってなかった。エンドレス初級ポーションも無かった。漸く普通の先生に当たったみたいです。
鉄迎派の授業は属性魔鉄の作成だった。素材を魔石に変えて鉄と混ぜるだけだった。これも簡単でお手軽な錬金術でした。授業中に鉄ではなく銀を持って行って王土通草の魔石と混ぜて属性魔銀も作ってしまった。これで武器も調達出来ますよ。…今日届くはずなんですよ。その剣が。ブロードソード2本とレイピア2本作って貰う事にしました。4本も購入しましたが、素材を持ち込みという事でそこまで費用はかかってないんですよね。
そして造命派の授業は4足歩行のゴーレムの作成。ゴーレムの作成自体は才能さんが利くんですよ。ネバネバやスライム作成と違って技の領域では無いようです。魔石を関節に当てこむことくらいでしたかね。その方が効率が良くなるんだと。後は魔力茸と土の魔石で固めて完了。こっちも難しいことは無かったよ。もう少し魔石を使った方がいいんじゃないかなとは思ったが、授業でどの関節に魔石を使うべきかを考えろと言っていたので、それも授業の内なんだろう。まあ、作ったゴーレムさんはお亡くなりになりましたが。
黎明派の授業は2階建ての住宅の作成。鉄インゴットを一杯使いました。前世の知識が生きましたね。鉄筋コンクリートの要領で鉄筋を張り巡らせて土属性の魔石で鉄を固める。そしてそれに土を纏わせて魔力茸で固めて終了。強度も2階で暴れたが問題無かった。…一部素材をケチった人たちの住居は潰れていたりしていたけど、作って壊して覚えるしか無いんだよなあ。土の厚みなんかで重みが変わる以上、定量の素材でできる訳ではないんだよ、黎明派の授業は。…ケチりたくなる気持ちも解らんでもないので、何とも言えない結果になったが。
最後、幽明派の授業はスケルトンの強化、ガミラクラブ編です。骨の硬さが上昇します。違う魔物の物を混ぜるには闇属性の魔力茸が必要らしく、ガミラクラブごとき素材だと非常に効率が悪いそうだ。…スティナラニアの水晶鱗をスケルトンに混ぜるといいという有り難いお言葉を貰ったが、スティナラニアの水晶鱗、錬金術ギルドで保存瓶当たり小魔銀貨3枚で売っていた。そこまで強化しても硬くなるだけで力は強くならないし、頭も良くならない。マジで無駄すぎる。力が上がるなら考えたんだがなあ。そこまでしてスケルトンの強化に高級素材をぶっこむ余裕は流石に無い。
という訳で授業はパパパッと終わったわけですよ。そして今日はオーダーメイドの武器が届く予定です。…鍛冶屋で色々聞いたんだけどさ。取りに行く派の方が少ないらしく、僕も面倒だったので配達してもらうことにした。…費用が1割増しになるくらいなのでそんなに大した仕事ではないのに利率がいいので、鍛冶屋としては配達の方がいいんだと。まあ、打って貰う本数が4本なのに素材持ち込みなので中白金貨までしかかかっていないことを考えれば安いもんである。…高い武器はもっと技術料を取られているだろうし、属性魔銀から用意してもらうとなるともっとすることになるし、属性が弱くなること必至なので、自分で用意した方が無難である。自分の命を預ける物だからな。しかも細身の剣だから余計にね。それに明日は予定あるし。
エドからまた魔境行きのお誘いがあった。そろそろケルピーを狙えるんじゃないかと。上級ポーションも習ったし、属性金属の作成も習った。じゃあ一狩り行きませんかとね。そんな訳で、多分皆武器を新調しているんだろうな。テッドは解らんけど、元貴族組は間違いなく支度金もたっぷりと貰っているだろうし、武器の1つや2つ準備したんだろう。テッドはどうなんだろう。竜巻草からの風属性の武器なら手軽で強い武器を作れるんだよね。鉄か銀で違うだろうけど、銀位は買えるだろうからね。霊地を回ったなら土属性の属性素材も持ち込んでるかもしれないし、どっちにしても何とかなると思うんだよな。中白金貨なら多分いける。属性金属を多目に持って行って買い取って貰えばいいんだから。…その辺気付くかどうかはテッド次第なんだが。
『09001号室、荷物が届きましたよ。』
おっときたきた。この拡声の錬金アイテム、壁貫通して来るんよな。横壁だけは。何故か縦は貫通しない。何でか知らんけど、横に特化してるんだよね。だから地下1階で叫べばこうなるわけだ。手紙の時も同じである。号室、手紙が届きました。と一報貰える。大体朝の1時から2時の間くらいなんだよ。取りに行かなきゃ夕方の11時頃にもう一度呼ばれる。魔境なんか行っていると何回もアナウンスされる羽目になる。郵便受け位作っておけばいいのにとは思った。なんでこんなシステムにしたんだろうか。
さてさて、受け取ってきましたよ。注文通り、ブロードソード2本とレイピア2本。部屋で軽く素振りをした感じ問題なさそうですね。重心の位置も注文通りですし。意匠は少し豪華ですね。セレロールス子爵領の領都の鍛冶屋よりもやり手なんでしょうね。魔境の所の鍛冶屋だしね。こういう意匠1つで食っていける程の鍛冶屋もいるんだから、僕の頼んだ鍛冶屋は当たりの部類でしょう。何もないよりかはあった方がかっこいいので。これでケルピーもばっさばっさと倒してしまいましょう。エドのツヴァイハンダーも新調するんでしょうか? 一度魔鉄製の物に新調してましたが、お誘いがきたという事は新調したんでしょうね、きっと。
さてさて、9月の7日、幻玄派の4番棟の前で待っております。僕が一番早かった。2時集合なのに1時半にいるんだもんね。でも準備が出来たら来てしまう癖が。豊穣会の時も同じくらいに部屋を出るからね。そうすると20分前くらいに到着するんだよ。そうして待っているとテッドが先に顔を見せました。
「おはよう、ヘルマン。」
「おはよう、テッド。テッドも武器を新調したの?」
「はい、僕も新調しました。土属性の属性魔銀にしました。ちょっと値は張りましたが、今用意できる最高の物を準備したつもりです。」
「おー、僕と同じだ。僕も土属性の属性魔銀で作って貰ったよ。素材は錬金学術院より先に採取してきた感じ?」
「そうです。土属性の霊地で採取したものです。王都から近い場所に土属性の霊地があるんですよ。」
「テッドは王領の出身だったっけ?」
「そうです。なので王領の霊地は回りました。その時に土属性の物を用意しておけって行商人の錬金術師さんから聞きまして、それで用意した感じですね。」
「そっか、僕も他領で霊地回りしたからね。その辺は一緒だ。」
などと武器の談義をしながら待つこと15分程、3人が3人とも一緒に来るんだもんな。やっぱり貴族は生活習慣が似るんだろうな。貴族学校のせいで。
「おはよう、皆も武器を新調した感じ?」
「ああ、属性魔銀の武器にした。今回はケルピーまで行きたいと考えているんだが、どうだ?」
「おはよう、私も属性魔銀の盾にしましたから、これならケルピーの突進も耐えられると思います。」
「皆武器を新調したみたいだな。俺も属性魔銀製の両手剣に変えたからな。多分ケルピーもいけると思うが、盾って属性魔銀にして防御面も変わるのか?」
「不思議なことに変わるんだよ。ケルピー自体が水属性だからか知らないけど、若干反発してくれるんだ。反動も耐えられない一撃ではないと思う。この間みたいに両腕が折れる事は無い。」
「僕もそれだけが唯一の不安材料だったので問題無いならいいんですよ。…一応、突進を弱めるために風属性の錬金武器を作って来ましたが、要らないならそれはそれで。」
「ある方が助かるので、私も作ってきていますよ。少しでも弱められれば余裕で受けられますからね。」
「そこまでは考えていなかったな。…まあ使っても材料費は気にしなくてもいいか。ケルピーを倒せたら十分にお釣りが来るだろう?」
「ええ、それで問題ありません。さて、リーダーはいつも通りで行きましょう。さっさとレイドに混ぜて貰いましょうよ。」
皆の今回の目標はケルピー狩りな訳だ。12月の授業までに狩っておきたいだろうからね。僕は満月茸で行く予定でいますが、ケルピーの水属性の水晶は星3つ分、満月茸は星5つ分才能が上乗せされるらしいです。一応、豊穣会で確認済みです。…豊穣会では戦える才能を持っているのは平民組だけで、アルベルトさんとデボラさん、ローラさんにケリーさんの4人だけだそうです。…まあ、貴族だと戦闘の才能持ちは鉄迎派を望まれるみたいだし、仕方ないのかもしれないが。
さて、日が変わりまして魔境です。ケルピー狙いなので少し遅く出発しましょうね。ここの門を使うのは貴族学校、魔術師学校、錬金学術院の3施設の生徒たち先生研究者だけ。今は魔術師学校の生徒が多かったです。鉄迎派の人たちは当然の様にいますがね。鉄迎派は7,8,9月が熱いシーズン。ミズチとスティナラニアが出ているのがこの3か月だけなんだよね。ケルピーは4月から11月位だと言われています。その時期以外に見た場合はスタンピードの可能性があるそうです。
スタンピードとは、魔境が活性化しすぎて大量に魔境から魔物が出てしまう現象ですね。まあ基本的には最下層の魔物しか出て行きません。でも稀にケルピークラスは出てしまう事もある。騎士爵、魔導爵を貰える魔物はまず出ない。出たら被害がやばいけど、出ないから何とかなるってのもある。スティナラニアが出てくるとかふざけるなって話だからね。そんな訳で、スタンピードの兆候は有ったら必ず報告をすることを冒険者の心得に書いてある。戦えない人たちにとってはカーバンクルでさえ脅威なんですよ。…オーク程度なら農民が狩ってしまう。農民マジ強い。大鎌は伊達じゃないですよ。
さて、コッコドリッロさえ無視してケルピー探し。まずは1戦して手ごたえを確かめねば。おっと、いましたよ。ケルピーは悠々と塩湖を泳いでいます。…淡水でも海水でもいけるみたいなんだよね、ミズチもスティナラニアもだけど。まあ、そんな強敵は僕らでは相手にならんので、ケルピーすらまだ危ういかって考えているんだから。さーて、どうやっておびき出すんだろう? するとグレンが魔力を使って盾を叩き始めた。…何それ⁉ なんかスキルみたいなのあるの⁉ ヘイト関係のスキル持ちとか、かっこいいじゃん盾使い。
「さあ、来ますよ。まずは何もしないで受けてみます。」
「任せた。止めたら後は総攻撃だな。俺とテッドは顔を、エドとヘルマンは首を狙ってくれ!」
さあ、水中から上がってきて突進をグレンが受け止めた。2m位後退りましたが、止めましたね。じゃあ、側面から首を落としますよ。…一斬りでは骨まで行きませんでしたが、燕返しですよ。下段から振り上げて首の骨を断ち切った。エドの斬った所まで到達した感じだな。というかエドの一撃で骨寸前まで行ってるじゃん。僕のは7分の2、7分の4と削り切ったって感じだったからな。
「1回で首を断てるのか。それなら俺とテッドは顔を地面に縫い付けにいった方がいいな。…グレン、どんな感じだ?」
「受けるのも、腕も問題ない。ポーションも要らない。ここまで違うとは思わなかったな。」
「僕はグレンが敵を呼んだように見えたんですが、なんですかあれは?」
「あれは盾使いの才能がある人で習熟してくると使える敵呼びですね。魔力を使って対象に呼びかけるんですよ。そうすると、突っ込んできてくれる訳です。」
「ヘルマンは知らないのか? 剣士の才能にもあるぞ? 俺はまだ使えないが、飛剣がそれだな。魔力を纏わせた剣閃を飛ばす技だ。」
「…鉄迎派に入れば教わるんだろうが、ヘルマンは黎明派だからな。星の川を作ったら才能が上乗せされるからそれで使える様になるかもしれないな。」
「…という事は皆は鉄迎派に入ったんだ?」
「テッドは知らないが、俺たちは鉄迎派に入ったな。グレンもそこで教えて貰ったんじゃないか?」
「御明察です。鉄迎派でもゼミはそれぞれ違いますからね。盾使いを集めているゼミがあるんですよ。そこで教えて貰いました。」
「俺はゼミに入る前から存在は知っていたぜ? 剣士には飛剣と他にも色々あるみたいだけどな。」
「マジかー、さすが鉄迎派だなー。テッドはどうするんですか?」
「僕は幽明派にしようかと思っています。アンデッドと相性が良さそうだったんですよね。感覚共有の時にそう言われましたし。」
「成る程な、違う派閥でも偶にはこうして討伐に誘ってもいいか? 別に縛りは無いんだし。」
「僕はいいですよ。というか有り難いです。鉄迎派の技も教えて欲しいですし。」
「僕もいいですよ。色々な死体を集めないといけないと思いますから。」
「なら偶に集まって魔境に潜ろうぜ。3年までは錬金学術院にいることは確定してるんだし。」
損な話でもないのでもちろん了承しましたよ。それに星の川を作ったらそれの使い勝手を確かめるためにまた潜ろうと思っていたところだしな。黎明派でも戦闘はやりますとも、才能があるんだし。そんな訳で、1日中ケルピー狩りをして、1人7死体確保して帰った。今回は授業じゃないから西門でレイド待機じゃなくて普通に宿に泊まりましたよ。ぐっすり眠れる方がいいからなあ。そんな感じで、パーティー狩りを楽しみ寮に帰った。また少ししたら豊穣会だし、…でも今回は成果無しで参加になりそうなんだよなあ。そんなことを思いながら今日も1日頑張りましょう。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




