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【書籍化】転生少年の錬金術師道  作者: ルケア
少年編

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42/201

42話 13歳 王都の新年祭、もしかして食文化低すぎ?

 心地良い冬晴れが続く今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。今は明日が新年祭といった時期、もう冬ですねえ。王都に来てからあっという間でした。採取採取の毎日でしたからね。採取採取火事採取とそんな日々でした。…時間が飛びすぎているとの言葉は2回目でしょうか。レールの林の時も言いましたよね。採取して寝るの繰り返し、偶に火事はありましたが、そんな日々を聞いていて楽しいのかと。僕は楽しくないと思います。


 いやー幻獣とかもいるはずなんですけどねえ。いる欠片も見つけられなかったんですよ。いったい何の幻獣がいるんでしょうか。それは幻玄派になったら教えて貰えるのか、はたまた授業でやるのか。まあ幻獣のことは忘れましょ。…何か発見できればいい金になったんだろうが、そんな欲を出しているから発見などできないのだ。欲のない頃、マルマテルノロフの大発見は神が私に錬金術師に成れとの啓示だったんだろうと思っています。…幻玄派には興味が無いんですがね。


 ところで今は錬金術ギルドの近くの宿、冬の間部屋を借り切ったのでかなり勿体ない事をしてしまっている自信はあります。だって日割り計算面倒なんだもの。あと何日かって聞いて解らないと言われたからしょうがないから借り切った。この世界の人は基本的に日付にルーズ、教会が新年祭の日付を言い渡しに来るときくらいしか日付というものを意識しないそうです。なんともまあ豪快なことで。貴族は多分カレンダー的なのがあると思いますよ。誕生日が何月の何日っていうのがあると思います。平民は皆新年祭で歳を数えます。だから世代は皆一緒の誕生日。僕自身も何月の何日に産まれたのか知らないですし。赤ん坊だったころから前世の記憶はありましたが、脳が朦朧としていたので覚えているかと言われたら覚えていないんですよね。


 ただ、錬金学術院では日付は結構意識するみたいです。一応錬金術ギルドに通って情報収集は欠かしておりませんとも。…まあ、単純に暇なんですよね。自由市でまたネズミ退治をしてもいいんですけど、いかんせん冒険者ギルドが遠い。往復だけでも体力を使う。もうこの際思いっきり休もうということで休んでいます。初めてなんでなかろうか、こんなに休んでいるのは。


 しかし、もう少ししたら休みも終わってしまうんですねえ。明日は新年祭ですし、お店が色んなところでやっているそうです。一昨日あたりから錬金術ギルドがあわただしくなっていましたからね。恐らくお店の屋台骨だけ作りに行ってるんでしょう。大変ですね、ギルド職員も。そして、新年祭が終わったら漸く錬金学術院に入学ですよ。いやー長かった。色んなところに採取に行きましたしねえ。ヨルクの林から始まった僕の錬金術師になりたいとの夢、遂にかなってしまう訳です。感慨深いけど、まだこの新年祭で13歳なんだよね。生き急いでる感じは多々あると思います。


 まあ、この世界の人間種は60歳位が寿命ですし、よく生きても100と言われています。長寿種のエルフなんかは800年は生きるみたいですし、ドワーフでさえ500までいくみたいですよ。…他にも人類の種類はありますが、代表的なのがその2つでしょう。前世の僕はエルフが魔法を得意としていて、ドワーフが鍛冶を得意としているとか言っていますが、この世界、才能が全てなんですよねえ。得意か不得意かは才能で決まる。種族では決まらない。まあ、才能が無くてもやれなくは無いみたいなんですが、やはり才能もちと比べると、比べるまでも無いんですよ。星0と1の差は大きいんです。1と2の差はそんなにないんですが。この世の中ほんと理不尽ですよね。才能もちが努力しないと生きられない世界なんですから。領都だったかは覚えていないですが、何処かの鍛冶屋のおっちゃんが言ってたよな。才能で打って半人前、才能を超えて一人前って。技まで昇華させないといけないって。剣士の才能はそれでいいとして、錬金術師の技ってなんでしょうね? 未だ錬金術のれの字も触ってないので残念ながら解らないのですが、鉄迎派はまだ解りやすいですよね。技は戦える才能の方の技まで持っていくことでしょうし、錬金術の才能をどう技まで持っていくのかは解りませんが。


 昔、ジュディさんが言ってましたっけ。どの派閥も寿命を取り払うことを至上としていると。…そこまで行って技なのであれば、技までは要らないかなあ。寿命はあって欲しいですよ。そりゃあ死にたくないのは皆一緒です。でも永遠に生きたいかと言われたら人それぞれじゃないですか? 僕は永遠には生きたくないです。多分精神が耐えられません。途中で発狂する自信があります。エルフの寿命でも長いと思うくらいには人間してますよ。


 さてさて、入学してどうなることやらですよ。錬金術師としての第一歩なわけです。ここまで送ってくれた御者さんが言ってましたよね。まずは黎明派の魔力操作を受けるべきだと。おすすめされたらそれを受ける方がいいということですもんね。『エクステンドスペース』を使えるし、保存瓶作成魔道具も冬の間に常にというレベルでではないですが、よく触っています。しかし、任意に魔力を操作しているかと言われたら解らないですね。『エクステンドスペース』はやって貰った様に真似をしただけですし、保存瓶作成魔道具に至っては流すだけ。魔力操作と言っても奥が深そうというか深堀りした先が技に繋がっていそうなレベルです。


 でもまずは新年祭を楽しみましょうかね。出店も出ることですし、食べ物屋だけではないでしょう。装飾品や錬金アイテムも売っているかもしれませんからね。色々と物色してみましょう。前世の僕は粉物屋があればいいなあとか甘味が欲しいなあと言ってきていますが、そんなものが売っているんでしょうか。…麦の粉すら見たことが無いんですが。でもパンがあったんだから粉もあるよな? もしかして、この世界の食生活低すぎる? …それは明日解ることだろう。魔法文明らしい何かで解決しているはずだ。多分。


 そんな訳で、新年祭当日。出店が凄いことになっております。肉串が殆どなんだけど、ハムっぽい物もあるな。多分オークだろうが、燻製にしてありそうもない。塩漬けの干し肉と大差なさそう。ソーセージっぽいものもあった。…ソーセージがあるのに燻製は無いのか? 魔境や霊地は木材取り放題だし、できそうなもんだけどな、燻製。後、心配してた粉物はあった。クッキーみたいな奴やクレープみたいな奴。クレープの中身は甘味じゃない。肉なんだなこれが。クッキーも甘くなかった。小麦粉と水が混ざっているだけっぽい。卵すら入ってなさそう。後はパンにジャムを塗った物もあったが、砂糖は入ってないっぽい。素材の味を活かしたジャムだ。美味しいがそうじゃない感が漂っている。


 前世の僕が想像しているような、楽しい屋台じゃない。普段食べている物のちょっと豪華になりましたってだけの品ばかり。スープはあるが、甘味もない、麺すらない。ラーメン食いたいなあ。…そうか、スライム燃料主体だから灰が無いのか。だから灰汁が無い。だから麺が無い。…いや、パスタは灰汁要らんだろ。中華麺は無理でもパスタはあってもいいじゃないか。小麦粉があんだろ、水と塩はあるし、卵だってある。もしかして食文化発展してなさすぎじゃね? パスタくらいはあってもよかろうよ。貴族様は食べてるのかもしれないけど、パスタって平民食よ? あってもよさそうなのに麦粉が高いのか? 動力はゴーレムかアンデッドでいいじゃん。手でやらなくったってさ。商会が錬金術師囲ってさ、麦は大量にあるんだから。…商会すらないのか? 行商人が主体だから? そんなバカな。…『エクステンドスペース』の弊害か? 移動に苦労しないから大規模商会が必要ないのか。だから商業ギルドすらない。これは難儀な世界だ。


 後、油物もない。フライドポテトやドーナツすらない。芋! 芋くらいはあるでしょ? それ揚げるだけよ? 油なんてオーク油でいいじゃん。動物油の方が美味いでしょ、癖が強いかもしれないけど。トンカツならぬオークカツがあってもいいよね。パンをすりおろしてパン粉は作れんじゃん、卵もあるし。砂糖が無いからドーナツが無いのはまあわからんでもない。ただの揚げパンになるだろうし。あ、バターが無い。牛乳は見たことある、酪農はやっているはずだ。まってまって、食文化育てよ? もっとおいしいもの食べようよ。


 後の希望は貴族様がどんなものを食べているかだ。…ちょっと想像ができたぞ。嫌な想像だけど。ここに香辛料の効いた肉串がありまして、大変美味しいんですが、ちょっと高い。ここから想像できることは香辛料を沢山使った料理を食っていないか? 味重視じゃなく手間と金が掛かって美味しくない奴を。カレー、カレー系統なら救いはある。ナンは作れるぞ、小麦粉、小麦じゃないかもしれないがとりあえず麦はある。それに水、あと酵母。…酵母? 酵母なんてあるか? いや、ある! エールがあるんだ。麦を煮詰めて樽に放置だけど、酒があるんだから最悪エールを入れりゃあ膨らむ。ナンはいけるな。砂糖もバターも無いが、最低限のナンなら作れる。


 ちょっと色々考えたが、カレー貴族であってくれ。貴族の食生活がただ辛い痛いの料理じゃなく、美味しいものを食べていてくれ。切実な想いだ。頼む。だけど、平民食がしょぼい。錬金術師もいるのに! 魔法使いもいるのに! なんでそもそも麦粉が普及していない。本当に『エクステンドスペース』が諸悪の根源の可能性があるぞ。粉にしなくても運べるもんな。麦は粉にしなくても食べられるもんな。農家の才能のせいで。トントンってするだけで脱穀終わるもんな。あれは神がかっているといっても過言ではない。いや実際に神の才能とかいうとんでもなものの集大成だからな。…あれか? 才能も料理の発展に邪魔してないか? おいおい、この世界の不思議概念才能様も食文化の発展を妨げているのか? そりゃないぜ神様。料理神か食事神でもいないのか? 多神教だよな。太陽神がいることは解ってるんだ。だからちょっとくらい食事面にもテコ入れをお願いします。


 絶望と渇望に苛まれながらお宿に戻りました。お腹は一杯なんだけど、心が満たされない。暴食に呑まれる以前の問題だわ。高い料理というものはあるんだろう。美味しいかどうかは別として。美食方面に進化していないんだな。商会なんてものもない。普通、食料品なんかを大量に運ぶためには大量の人と大量の馬車がいる。それを行うために商会というものを作って大きな倉庫なんかを作ったりして物流を担う。…それが『エクステンドスペース』があるから大規模な商会なんて要らない。人も1人で大量の物を運べてしまう。


 …農家にしたってそうだ。才能があるせいでマンパワーが下手な機械よりも強い。範囲開墾をして種まきも種麦を投げるだけで満遍なく散らばる。1人で大量に沢山の人が飢えることもない程の麦を簡単に作れてしまう。…野菜なんかも作っているがメインは麦だ。野菜だけを作っている農家ってのはいなかった。税が麦だから。他の領の事は知らないが、少なくともセレロールス子爵領はそんな感じだった。全部を見たわけではないが、何処の村に泊まった時も基本は麦畑だった。


 魔法や才能がある世界、前世と違うように発展するのは解る。…だが、文化の低迷は前世では余りなかった。飽食の時代と言われていた前世の僕の世代。それ以前も、美味いものを食べるために色々なものを食べてみたり色々な組み合わせを試してみたりしたはずだ。一見腐った物も食べたり、傷んだものも食べたりしながら美味しいものを探していたはずだ。その結果が前世の僕の世代なんだろう。様々な食材が、色々な調理法が、世界各地で行われていた。


 …それに比べてこの世界はどうなのだ? 食べるのに不自由はしていない。…一部冒険者たちは食い詰めているが、麦は安いので生きていけている。お腹いっぱい食べられる。塩も安い。魔境や霊地なんかで塩が大量に作られているから。町の人たちはどうか。家畜も簡単な物だけだと思う。後は乗合馬車を引く動物を飼っている位じゃないか? 肉の主な産地は魔境だ。魔境からは魔物が湧く。美味しい魔物が。だから酪農や畜産が余り育っていないのはなんとなくだが納得できる話ではある。魔境が近くに無いときくらいだろう。セレロールス子爵領の領都では多分小規模なんだろうけど酪農をしているはず。牛の乳があったんだから。…僕の思っている牛じゃないかもしれないのか。牛自体を見たわけじゃないもんな、前世基準の牛というものをいったん忘れよう。


 食い詰めている訳じゃないんだから美食系統に派生していてもいいと思うんだ。下地は無い訳じゃない。食料品は自給率100%を優に超えているはずだ。麦を酒にするくらいには余っているんだから、余っていない訳がない。何でこんなに料理が発達していないんだろう。…情報か? 情報が止まっているのか。基本町を移動するのは行商人と乗合馬車の御者位で後は冒険者か。冒険者は無理だな。情報の伝達に向いていない。彼らは基本的に最低限の食事で生活しているものが殆どだ。後は行商人と乗合馬車の御者だが、村には家庭料理で何かあるかもしれないが、食事処がそもそもないからな。町でも食事処はあるが、冒険者が使うようなところだ。最低限の料理しか出していない。恐らく料理の才能はあるが、値段を考えるとまあ、そうなるんだろうな。メインの客層が冒険者だと安い多い腹にたまるが優先されるんだろう。


 それを考えるとセレロールス子爵領領都の宿屋のおっちゃんは料理研究に熱心だったな。美味しい飯が食えて満足だった。そんな情報はある程度稼いでいる冒険者しか知らないはずだ。…駄目だな。個人レベルでは美味いものを求める料理人がいるが、それが周りに伝播していないんだ。家庭料理の範疇で止まってしまって、その味で食っていこうとする料理人がいない。…そんな問題をどうにかできるか? 無理だ。そんなもの個人には、伝手も何にもない個人には発想があっても手が足りない。情報をばら撒く伝手が無い。…無念だ。


 無念なのは本当に、本当に残念だが、明日からは錬金術師として一旗揚げるのだ。どの派閥に属したりするかは解らないが、とりあえずできるだけ頑張ってみよう。どんな錬金術師に成れるだろうか。色々とやってみてから決めようと思います。そんな訳で、明日の朝、錬金学術院に入学するためにさっさと寝て朝にしよう。お布団を敷いたベッドに横になりながら、夢の中に落ちていくのであった。

面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここで☆ポチしました。 ありがとうございます。
[良い点] 食欲に忠実なちょっとおバカな主人公が見れて面白かったです。普段枯れた中年みたいな思考なのでたまにはおバカに騒いだり、必死になったりする姿が見たいです
[良い点] この話の世界観がめちゃくちゃすき!
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