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4話 2歳 素材をザックザク、初めての錬金アイテムを買いました。

 朝、いつも通りに起きて、朝ご飯を食べる。そして朝の仕事をとっとと終わらせ、ジュディノアまでダッシュで行く。今日からは時間が金だ。頑張って採取をしよう。目標は6歳までに入学金を揃えたいけど、そもそも入学金が幾らか解らないから、とりあえず目標は大金貨1枚としよう。現金でもいいし、素材の状態でもいい。


 ジュディさんはここの素材は雲母茸以外は要らないらしいし、それ以外は錬金術師の行商人さんが来た時にまとめて売り払えばいいとのことだったが、なんでもこの林には闇属性の高価なキノコや苔が多くあるらしい。一部の素材はマージンを取られるよりも特定の錬金術師に売りに行った方が高く買い取ってくれるらしい。


 …なんか錬金術師には派閥があるそうだ。その中でも幽明派と呼ばれる派閥はアンデッドなんかの研究をしているらしく、闇属性の素材なら高値で買い取ってくれるとのことだ。難しいことは解らないが、その判別くらいは出来るようになれと言われたので、高値の素材は一通り覚えている。


 林の浅い所にも探せば結構あるらしく、僕はその高値の素材を狙ってしばらくは浅いところで頑張る予定だ。帰ってくるためのアイテムを確保するまでは、油断は禁物である。早いところ素材を集めてアイテムを作ってもらわないと。


 そんなことを考えているうちにジュディノアまで来た。今日は保存瓶を貰って、幾つかの保存瓶に、10個くらいでいいかな。それに井戸水を満杯にして『エクステンドスペース』に保管して、頑張って採取だ。今日の目標は土竜の爪草2本と網目蔓茸か黄鐘茸を3つだ。そのくらいは見つけないとね。


「ごめんください。」


「ちょっと待っとくれ!」


 いつも通りの返事に若干の安心感を覚えつつ、定位置に座る。カウンターの前には1リットルくらい入りそうな保存瓶がずらりと並べられている。これが僕の注文したものだと分かっていても、まだ流石に手は付けない。勝手に作業してたら怒られそうだもの。…カウンターの前というのが何とも優しさを感じる。上だと手が届かないからね。


「ああ、保存瓶は約束通り50個用意しておいたから、確認しながら『エクステンドスペース』にしまっておくれ。」


 僕は1つ2つと数えながら保存瓶を回収していく。…丁度50個確かに受け取りました。


「あの、井戸だけ貸してもらってもいいですか?」


「ああいいよ。裏の庭のところにあるから、今後も好きに使ってくれ。…魔力を体に流しながら作業してみな。身体強化が出来るから。滑車があるとはいえ、井戸の水汲みは大変だからね。後はこれはおまけ、普通の鉄の短剣だけどあげるわ。採取には必要だからね。」


「あの、ありがとうございます。」


 お礼を言って、そそくさと井戸のある裏庭に回る。そう言えば、この体のことを考慮していなかった。身体強化を教えて貰わなければ、…教えて貰っても井戸で作業出来るだろうか。案の定裏庭の井戸の壁が身長ほどあって、水汲みに大変苦労しましたとも。何回か井戸水をぶちまけたけど、被害は無かった。ちょっと濡れただけだ。この季節だし問題ない。


 林の中に入ると、朝早くなのに夕方のような暗さだった。初めての時は興奮してたからすいすいと入っていったけど、よくこんなところを速足で入っていったなと思う。薄暗いし、日が射さないから若干じめっとしているが、早速採取開始だ。今日の目標は再度確認するが、土竜の爪草2本と網目蔓茸か黄鐘茸を3つだ。だから木の根や蔓を中心に見ていく。後は、木の根の北側、日の光が絶対に当たらない場所の確認もする。そう言うところには、闇属性のいい素材があることが多いと本に書いてあったから。


 林の切れ目が見えるところくらいまでしか入らずに、探索をしていると、木の根の裂け目から生える草を見つけた。…図鑑の絵に間違いがなければ、これが土竜の爪草のはずだ。花の色は白、土属性が濃くなると黄色い花が咲くそうだが、ここのは白だ。…一か所に1本とかじゃないだけ有り難い。3本とも木の根から短剣で削り取り、保存瓶の中に入れる。別に保存瓶の中に1本ずつ入れないといけない訳じゃないって聞いてるから、とりあえず3本そのまま保存瓶の中に入れる。順調順調。


 土竜の爪草の採取を終え、周りを見る。まずは素材の近くにまだないかを確認する。キノコなし。苔なし。花…赤のみ。赤い花は快命草だ。お金にはならない。よし次の採取物を探そう。辺りを見渡す。木の周りにある蔓も確認する。…あれはキノコか? 近づいてみたがキノコだが、素材ではなかった。…素材かどうか解らなかったというべきか。このキノコは図鑑には載っていなかった様に思う。…一応、採取して笊の上に置いて『エクステンドスペース』の中へ。


 その後も、図鑑にないキノコや花も一応採取しながら進む。後で素材になるかどうかの判断はジュディさんにお任せだ。素材に、金にならないなら捨てればいいだけだ。なるべく慎重に、こまめに林の切れ目を確認しながら採取をしていく。…あれは、知っているキノコだ。近くに寄って再度確認する。やっぱりそうだ。魔力茸だ。魔力茸はヨルクの林のような魔力の高い所に生えるキノコらしい。傘は青く、真ん中に星型の黄色い模様が特徴の1つだ。ただし、この黄色が変色している場合は特定の属性の魔力を帯びている証拠らしい。ここにある魔力茸は6本、内2本は黒っぽく変色しているからこれは高値のキノコだ。やったぜ。機嫌よく保存瓶の中に入れる。高値の魔力茸と通常の魔力茸は分けて保存しておく。こうしておけば分かりやすいだろう。


 そして、採取した場所を再度見渡す。そこにいたのに採取し忘れたなんて事は犯したくないから。苔も花も蔓も、お? これは網目蔓茸ではなかろうか。蔓から生ってるし、網目模様だし間違いないだろう。数は…2本か。いや、こっちの蔓にも生えてる。5本、今日の目標は達成だ。これでアイテムを作ってもらえるだけの材料は揃った。…太陽を見る限り恐らくまだ午前中だな。幸先がいいな。順調なことはいいことだ。


 その後も土竜の爪草や魔力茸、雲母茸を順調に採取。基本素材は採りつくして問題ないとの事なので、1本も残さずに採取。魔力茸なんかは瓶に10本は入れたものが4つもある。高値の方の魔力茸はまだ瓶に空きがあるが、それでも何本かは見つけた。うむむ、1日目がこんなにも順調だと、後の揺り返しが怖いな。


 …お? また新たな素材を発見してしまったぞ。泥の上に浮くように生える紫色の苔。泥濘蔓苔だ。苔の上にコイルのような蔓があるのが特徴…うんちゃんと蔓もある。…ただこいつは保存方法が面倒だったはずだ。3日以上天日干しをした後に保存瓶に入れると本に書いてあったはずだ。ぐぬぬ、持ってきていた麦藁編みの笊が4つ全て埋まってしまった。1つは素材になるかも解らない物をまとめてある奴だから、苔を採りつくせたのはよかったが、また笊を調達しないといけないな。


 あれは…多分黄鐘茸だな。鐘のような黄色のキノコ。土属性が強いと何故か傘が小さくなるという、不思議なキノコ。ここのは傘が小さい…のか? よくわからんな。通常のサイズが解らんからな。しかしこれも、8本もあるのか。一か所に多く在ってくれるのは有り難い。これも保存瓶にそのままでいいから楽でいいな。この調子で見つかるといいんだけどね。


 採取は順調も順調。昨日は3時間半程さまよって雲母茸を7つだったとは思わないほど順調だ。特に魔力茸は沢山といっても過言ではない程には採れた。…保存瓶に10本入れるようにしているんだが、それでもこの採取地で8瓶目だ。闇属性を帯びた魔力茸でさえ2瓶目に入っている。…これほど採れてしまっていいのだろうか。土竜の爪草も5瓶目だし、雲母茸も4瓶目だ。網目蔓茸はまだ2瓶目だが、泥濘蔓苔も笊4つ分、恐らく瓶4つ分くらいはある。黄鐘茸も3瓶目。この林は金の生る木の林だったのではないか?…そろそろいい時間だし、いったんジュディノアまで帰ろう。帰ってこの成果を報告してみよう。これが普通なら瓶を入れる『エクステンドスペース』が足りなくなりそうだ。…流石にそこまでは言いすぎか。


 帰りながら採取をしてきて…1時間くらいかかった。林の切れ目が見えているってのに、この林魔力茸が多すぎる。両親が1年で稼ぐ収入をかるく超えている自信がある。なんぞこれ。錬金術師になると覚悟をした僕を笑っているかの如く銀貨の音が聞こえるぞ。こんだけ毎日のように採れるんならお金に困る奴はいないんじゃないかってくらいの量が採れる。…値崩れしないだろうな。


「ただいま帰りました。」


「ちょっと待っとくれ!」


 いつも通りの返事に少しだけ安心感を覚え、今日採取した物を取り出していく。魔力茸が普通のが103本、闇属性のが16本。土竜の爪草が64本、黄色い花が12本、泥濘蔓苔が凡そ4瓶分。黄鐘茸が36本、雲母茸が52本、水色のが9本、網目蔓茸が28本。持って行った瓶の半分以上を使ってしまった。…いいのかなこれ。採れすぎじゃない?


「お帰り。おっ、なかなか採れたじゃないかい。…ふーん、大銀貨5~7枚ってところかね。1日にしてはまあまあじゃないかしら。」


 ⁉ これだけ採れて大銀貨5~7枚⁉ もっといっていると思った。…そうか、大金貨1枚と目標を立てたからには、この成果で200日はかかる。今2歳だから、1年は360日、6歳までは凡そ1440日…あれ? 毎日この成果なら余裕か? いやいや、今日が採れすぎって可能性もある。それに値崩れしたりしたら…余裕があっても難しくないか?


「あの。えっと、これだけの成果物なので、値崩れをおこしたりはしませんか?」


「値崩れ? この程度の成果で値崩れなんかおこしやしないよ。この後10万倍は毎日採ってこなきゃ、値崩れさせるんなら。」


「そんなに⁉ でも、今日が採れすぎって可能性はないですか? このペースだと明日にも瓶が50個は欲しいんですけど…。」


「ヨルクの林でしっかりと勉強した奴が採取したんだ。この位は採取の成果としては普通さ。…保存瓶を毎日50個も作るのはめんどくさいね。1日に500個くらいは用意してあげるから何日かに1回にしとくれ。」


「…わかりました。あと、これ図鑑に載ってなかったんですけど、素材になりますか?」


「ん? ん~なるのもあるけど、買い取り価格は中銅貨以下よ。そんな小銭よりも魔力茸を採っていた方が何倍も儲かるわよ? いい? 魔力茸は行商人相手でも一律小銀貨2枚からよ。属性付きは中銀貨1枚って所ね。属性の無い土竜の爪草や泥濘蔓苔も小銭よ。黄鐘茸と網目蔓茸は大きさに因るから小銀貨1~5枚、行商人は多分一律小銀貨1枚で買い取ると思うわ。雲母茸は私が買い取るから大銅貨5枚でも採ってきて欲しいわ。これは錬金ギルド価格よ。属性付きは小銀貨2枚位にはなると思うからそっちは行商人に売っちゃいなさい。」


 キノコヤバい。小銀貨が飛び交うくらいにはヤバい。キノコ儲かる、凄く儲かる。


「後、本当に高いのはこれよ。漆霊闇苔っていうの。図鑑にも載ってたでしょう? 行商人相手でも瓶いっぱいで中金貨5枚からよ。出すとこに出せば大白金貨数枚って所かしら。少なくとも幽明派に出せば大白金貨3枚は堅いわね。後は、黒いキノコは高いわ。真っ黒な奴ね。図鑑にも載っていたはずだから詳しくは言わないけど。」


 …僕はまだ、本当に高値のものを手に入れてなかった、それまでですら大銀貨5枚にはなる。…知識は力、知識は金だ。知らないと何の変哲もない林だが、知ってしまえば大金が転がっている林なのだ。これは勉強した、『エクステンドスペース』を使えるようになった僕の特権だと思うことにしよう。


「それじゃあ、ここにあるものでサクッと作っちゃうわね。」


 そういうと、土竜の爪草2つと網目蔓茸3つを持って奥に行ってしまう。…そう言えばそもそも今日の目標は森で迷子にならないためのアイテムの素材集めだったな。大銀貨を前にして我を忘れていた。目の前の目的は遠くの大きな金の力に追いやられていたようだ。…そういや、明日瓶を500個貰えばしばらくはここに来なくても、村から林に入ればいいのか。保存瓶を取りに来るときは来なきゃならないが。ともかくこの場をいったん片付けよう。そして片付いた後、5分くらいして奥からジュディさんが出てきた。


「はいこれ。指方魔石晶の首飾りよ。片方が片方に常に引き寄せられるから、この村の誰かに持っておいてもらえば絶対に帰ってこれるわよ。使うときは魔力を流しなさい。そうしたら―――ほら、こんな感じに水晶のある方向に動くから。」


 おお、水晶が何かの力に引き寄せられているかのように動いている。…母さんに渡しておこうかな。母さんなら村から出ないだろうし。アクセサリーにもなりそうだしな。


「じゃあ雲母茸を買い取るわよ。52本とアイテムの小銀貨3枚を引いた中銀貨2枚と小銀貨3枚ね。これからも雲母茸を頼むわね。じゃあまた明日ね。」


 そういわれ、保存瓶の中にお金を仕舞い、家の方に帰るのだった。帰ってすぐに自分の仕事をして母さんに指方魔晶石の首飾りを渡す。対になっていて、魔力を流すと対になる水晶に引っ張られるっていうのを実践して見せたら母さんも驚いていたが、迷子にならないために身につけておいて欲しいと言うと了承してくれるのだった。明日からもがっつりと稼がせてもらう予定です。


面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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[一言] ここまで読んでもまだヤマらしいヤマがないですね。 森での話しもただ迷ったで話しで止まり、ドラマ性がなく経過だけを読まされた印象です。 そのために話し全体にテンポがなく冗長に流れ、 内容は物…
[気になる点] 一日で親の年収以上稼いでる……。 その上更に上がる余地があるという。 更に更に基本素材は採りつくして問題ないし、この10万倍取ってこないと値崩れを起こさないという。 と言うことは誰でも…
[気になる点] 2歳児でもこれだけお金を稼げる林があるのになぜ誰も同じことをしないのかちゃんと説明する描写が欲しい。知識がないからだとしたら何故主人公には教えてくれたのか。それにこのぐらいの知識なら絶…
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