37話 12歳 やってきました王都です
特急馬車の中からこんにちは、多分2回目ですね。どうも、ヘルマンです。馬車旅も10日目を迎えておりまして、明日のお昼ごろには王都北方神殿に到着する予定です。…早くね? そう思った方、正解です。そうです。早いです。予定ではもう少し襲撃が有って途中の村で一晩明かす事も予定に入っていたそうです。
原因は僕にもあったみたいです。襲撃があったこと都合18回。全て1人で速攻で片付けて馬車を止めることを極力少なくしたせいで、順調に町から町にたどり着き、気が付けば最短の11日での走破らしいです。聖職者組だけだとここまで早くは無かっただろうと言われてしまいました。これも全て才能のおかげですね。謙遜なしにそんな気持ちです。途中にはオークも出たんです。3匹まとめて。流石にこれは無理かもなー、応援が必要かもなーと思っていたんですが、殊の外オークが鈍く、簡単に首を刎ねることが出来たので直ぐに終わってしまいました。ゴブリン3匹分の力とはなんだったのか。敏捷性がまるで足りてなかった。
オーク3匹よりもコボルト7匹の方が苦戦らしきことをしたと思います。マンゴーシュまで使わされましたからね、コボルトたちには。まあ、爪を受け流した時に使ったくらいなんですが、レイピアを使用した戦い方は基本受けないことを重視した剣術ですからね。受けさせられた時点で後手に回りやすいんですよ。まあ、それまでに5匹の首を刎ねてしまっていたので後は流れ作業の様に首を刎ねただけなんですが。おかげでマリー姉からは首狩り剣士なんて呼ばれましたが、仕様がないじゃないですかね。レイピアという武器の性質上、首を刎ねるか頭か首か心臓を突くしか無いんですから。首を刎ねるのが一番簡単なんです。突くと次の動作にひと手間掛かりますからね、抜くという動作が。
そんな訳でまだ開墾種まきの時期にはまだまだ寒い時節に王都についてしまいそうな訳ですが、別に早いに越したことは無いですし、いいんですがね。それに明日は襲撃祭りになる可能性があるといわれている、王都までの道。町から直ぐに王都なんですが、魔境の真横を通るんです。襲撃が何回もあると予想されています。まあ、その区間長引いても到着が昼前から夕方になるまでには着くとの事なので何も問題は無いんですが。襲撃回数が増えると面倒なんですよね、単純作業がただ増えるだけなので。…そんなんだから首狩り剣士なんて呼ばれてしまうんですよ。嫌ですよ、そんな呼び方が定着するのは。せめて錬金術師と解る2つ名というか異名を付けてもらいたいですね。
でも、ここも魔境の近くのはずなんだけど、襲撃も何もない。襲撃の多かった2か所辺りのは冬に活性化するタイプの魔境だったのだろう。それに比べて王都のは恐らく夏に活性化するタイプなんでしょう。でないとこの辺りにもはぐれの魔物が来ていてもおかしくないですからね。幾ら冒険者が多そうな王都であっても魔境から出ていく魔物を全て狩れる訳もなし、特に活性化する時期には夜に大量に出てしまう。…まあ、冒険者のお小遣いになるだけなんですがね。
そんな訳で何もなく10日目が終わりましたとさ。普通に町に着いてしまった。書かれたから襲撃があると思ったそこのあなた。残念、襲撃はありませんでした。襲撃は明日、11日目にお預けですよ。そして夜の就寝時に必ず奪われる僕のお布団と枕。悲しいかな、聖者様さえも遠慮なく使ってくれてやがりますよ、此畜生め。まあ大体はマリー姉のせいなんだがな。
朝、農民の朝は早い。厳密にはまだ夜だが、まあ、朝だよね。日が出ていなくとも起きたんだから朝だ。そして顔を洗う。この冬時には辛いが、王都方面は南側だから少しは暖かいのかなとか思っていたがちっとも変わらないぞ。寒いのは寒い。凍えるほどじゃないのが救いだよね。で、朝飯の干し肉入りの麦粥。これも大概食べてきたが舌が高級品の味を知らないせいか飽きがこないんだよね。まあ有難いことだけどね。飽きてもそれしか食べるものが無いんだから。
聖職者組も朝ご飯を食べている。聖職者も大概朝は早いよね。この世界の宗教事情が星振りの儀位しか知識がないからさ、どういう神様なのかとかよく知らない。…一応文字を覚える際に多神教なのは解っているし、精霊信仰なんかもあるっぽいからそこのところはよく解っていない。ただ太陽神が一番偉い神様だってことは知ってる。才能を振るのも太陽神だ。だから正午に鐘が鳴るし、その時間に才能が振られる。前世の僕が創造神はいないのかなんて言っているが、いないんならいないんじゃないのかな。皆で少しずつ作ったのかもしれないし、太陽神が作ったのかもしれないが、そこんところは宗教家さんにお任せだ。とりあえず太陽神偉い。太陽神ありがとう。これくらいで十分。
そんな訳で馬車の旅、11日目スタートですよ。毎度の如く僕のお布団は4人に占領されている。もう慣れたけどね、僕だけ枕を使っているのも心が痛いからこれでよかったのだ、うん。さてさて何度襲撃されるんでしょうかね。1度は襲撃を受けたいと思っているんだよね。王都の魔境に何がいるのかの確認をしたいし、最下層の魔物が出てくるはずだからね。ゴブリンかコボルトか、はたまた知らない新種か。あまり強い魔物は来なくていいぞ。
ピー-----
さて、馬車が走り始めて30分弱で早速襲撃が来ました。
「ゴブリン2匹、右前からだ!」
「行ってきます!」
最下層の魔物はゴブリンでしたか。ゴブリンは慣れているから余裕だな。…一応強い個体とかいるかもしれないから油断はしない。馬車が止まったのを確認してから右前に向かって走る。2匹が横並びか、一気に首を刎ねてしまおう。2匹の間を目掛けて走る。剣先が触れるだろう一歩手前の間合いまで行き、左足を軸に下段から大きく円弧を描く様に首目掛けて振りぬく。1体目の首を刎ねた勢いそのままに2匹目の首も刎ねる。一振りで2つの首を刎ねた。戦闘終了。この魔境のゴブリンも他の所のゴブリンと大差ないな。後片付けも終了。さっさと馬車に帰りましょう。
馬車に戻ってきてレイピアの手入れ。手入れは怠りませんとも、負けるのは嫌だからね。しかし、王都の水属性の魔境は湖か。幾つか地平線と水平線が入り混じっているな。…木が生えてないから見通しがいいなあ。こんなんでも魔境なんだよな。どのくらい広いのか解らんけど。とりあえず魔境は王都の北西にあることは判った。錬金学術院在学のうちに何度もお世話になるだろう。
ピー-----
さて、先ほどの襲撃から10分も経たずに立て続けに襲撃だ。今度はなんだ? ゴブリンか?
「ゴブリン2匹、前方だ!」
「了解しました!」
編成は先ほどと同じ、ただ今度は2匹の間が広いな。…一振りじゃ無理か。間を抜けるように走りぬきその間に左側のゴブリンの首を刎ねる。これで1匹。もう1体のゴブリンも止まりこちらを向き飛び掛かって来る。なんで飛び掛かってくるかなあ。的になりたい系魔物ですか? というよりも通り過ぎるなよって言いたい。まあ単純に頭が悪いだけなんだろうが。空中に浮いていては回避行動は取れないというのに…。飛び掛かってくる2匹目のゴブリンの首に合わせてレイピアを振りぬきこれで2匹目。戦闘終了。『エクステンドスペース』に死体を放り込んで後片付けも終了。さっさと馬車に戻りますよ。
もう、教会勢の方々は武器すら抜かずに待ちの体勢だ。ある程度の魔物であれば僕だけで十分なのを認識しているから準備すらしてくれなくなってしまった。まあ、任されていると思えば悪い気はしない。2方向から攻められることもないし、安心安全の旅を楽しんでいるといっていいだろう。聖者様なんて馬車の中でうとうとしてるからな。一応あんまり気を抜きすぎない様に侍従が起こしたりしているが、聖者様は元農民ではないな。朝に弱い農民なぞいない。
そんな訳で思ったよりも襲撃が少なくてもう王都に着いてしまいました。時刻はまだ午前様、運が良かったといえばいいのか、身構えた覚悟を返してくれと言えばいいのか。まあ何ともなく王都に着いてしまったわけだ。そして王都で検問、御者さんが色々と聞かれておりますが何ともない、普通の事をつらつらと聞かれているだけだ。何処から来たのかとか訪問の目的はとかそんな感じ。高圧的でもないし、いたって普通の検問。そりゃそうだよな。2頭立ての特急馬車に乗っているのはそれなりに地位がある人だもんな。警戒はしても、高圧的にはならんでしょ。前世の僕、物語の読みすぎですよ。彼らだって仕事なんですから、きっちりと熟すでしょうよ。
そして、王都の門をくぐってゴールイン。ここが王都か。…基本的に石壁に囲まれただけで領都とそんなに変わらなくない? 遠くにお城が見えるけどさ。…て言うか遠く? 王都の真ん中だよねお城なんてものは。え? 広すぎない? あの距離感村から村の半分位は行けそうな雰囲気してるんだけど。王都に入った直ぐのところで馬車が止まる。
「少年はここまでだな。冒険者ギルドがここにあるから、襲撃の報告をしてくるといい。因みに錬金術ギルドは王都の南側だ。そこまで結構遠いけど、歩いて行ってね。俺はこのまま王都北方教会に行かないといけないからさ。」
「分かりました。…さあマリー姉、膨れてないでお布団を返してくださいな。あとちょっとなんだろうから我慢しなさい。」
「はーい、解っておりますよ。じゃあねヘルマン、楽しかったわ。」
「今度こそ本当にお別れだと思うよ。じゃあねマリー姉。」
聖職者組からお布団2つを回収し、馬車を降りる。…北門の所に冒険者ギルドがあるってことは、各方面の門の所に冒険者ギルドが建っているんじゃなかろうか? 王都に8か所か? いや4か所って線もあるな。…まあギルド内で聞けばいいか。襲撃の報告もしないといけないし。そんな訳でいざ、王都の冒険者ギルドへ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。