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【書籍化】転生少年の錬金術師道  作者: ルケア
少年編

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36/201

36話 12歳 強請の聖女マリー姉、教会の内部事情

 特急馬車の中からこんにちは。どうも、ヘルマンです。特急馬車に乗りましてもう5日、何事もない旅路を行っております。…初日は色々とあったんですがねえ。もう慣れたというか達観したというか。マリー姉がちょーっとわがままを言いましてね。


 まあ初日は普通に次の町まで一直線に行ってたんですよ。その特急馬車は普通の馬車の3倍ほどの速度が出ているわけですね。別に赤くは無いですが速いんです。そうなると馬車内の揺れも3倍かそれ以上なわけで、お尻が痛い訳ですよ、お尻が赤くなりますね。聖職者たちも冒険者と同じテントセットを使っているのだろう。寝袋も一緒なわけだ。薄いペンペンの寝袋という名の布袋。当然衝撃を吸収などしてくれるわけもなく。…そこで僕の寝袋だけ厚く膨らんでいるのを発見したマリー姉。そう僕は寝袋だけでなく枕もお尻の下に敷いていた。


 当然の如くずるいと言い出しました。しかもお上品な言葉遣いで。自分が今どれだけの痛みに耐えているやらなんやらとつらつらと言い放ちまして。枕の事はすでに領都に知れていたようで、教会でも、一部の地位の者たちはすでに枕を使っているとのこと。そして当然の如く枕を使っていたマリー姉。枕を持っているならお布団もあるはずだと、文句を言っている途中で気が付いたのか自分の尻の下に敷きたいのでお布団を要求。


 当然断れない僕、女性組が4つ折りにしたお布団をお尻に敷きマリー姉もご満悦の様子。…ところが、聖者とその侍従の分は無いのかと、当然の如くもう一つ持っているだろうと要求するマリー姉。何故ばれたのかと仕様がないのでお布団を出す僕。それ見たことかと勝ち誇るマリー姉。どうやらマリー姉、僕があったか布を自分用に持っていたことに村にいたときから気付いていた模様。この弟なら譲渡用か予備のお布団も持っているだろうと性格から読まれた訳だ。そんな訳で無事、聖者とその侍従の申し訳なさそうな顔と、同時に痛みから解放された安堵の顔を見ながら枕に座っている僕。尻に枕とお布団事件はここに閉幕したかに思われた。


 その夜。せっかくお布団があるのだからと馬車でお布団を使いたいと言い出すマリー姉。そして何故か参戦してきた聖者ミカエル。その時に初めて聖者様のお声を聞かせていただいたと思います。結局お布団2枚と枕2つを聖者聖女組に盗られ、僕は侍従たちと一緒に冒険者広場で寝泊まり。寒空の下、宿でいいじゃんと思いながらも冒険者広場で就寝。当然の権利だからあったか布は死守しました。あったか布は本当に1枚しかないからね。上布団が寝袋だと寒いからとあったか布まで要求してきたマリー姉、鬼か。そこまで色々遠慮なく要求したり出来るなら王都でも上手いことやるだろう。


 まあ、そんなことがありましてね。現在も快適な馬車旅を続けているわけです。才能についても色々聞いたりしていた。マリー姉は聖女に8つの星を振られていたのは知っているが、他に何に振られたのか気になっていたんだ。そうすると鍛冶に1つと裁縫に1つ振られているようだ。裁縫は生きるかもしれないが、鍛冶は完全に死に才能だな。まあ、無駄な才能が無い方が稀なのだ。僕の様に必要以上に錬金術師に振られたり、錬金学術院が無料になるだけなら4つで良かったんだからね。何故か祈ってもいない剣士に3つも振られたりと本当に様々なのだ。


 因みに聖者ミカエルは聖者に7つの星が振られているようだ。他は聞いていないから知らない。僕も7つだが祈り倒して7つと振って湧いた7つでは認識が違う様で。祈り倒して得た7つの星はそれはそれは輝いて見えた。まるで北斗七星を見つけたときのような感動があったのを覚えている。たとえ星が4つで十分に足りていたとしても、僕は満足しているわけだ。一方の聖者ミカエルはというと、急に与えられた才能と地位に戸惑っている様子。マリー姉程肝は据わってないんだな、まだまだ平民のつもりでいるんだろうなとひしひしと伝わってくる。


 …恐らくだが、教会社会では聖者や聖女は貴族位と同じ意味を持つのだろう。王都で何年かお勤めをした後にまたセレロールス子爵領に戻るのかどうなのかは知らないが、冒険者でいうところの騎士爵魔導爵辺りの地位なんだろうと思う。しかも、狙うならば教会のトップ層にだって食いこんでいけるであろう才能だ。騎士爵魔導爵の様に一代限りではなく、王都の教会に陣取る地位にだって昇っていけるほどの。そんなものを一平民の何も知らない男の子にポンと与えられたわけだ。戸惑うのも無理はない。むしろなぜそれほどに堂々としていられるのかが判らないマリー姉よりも素直な反応だと思う。…こういうので性別どないやとやかくいうつもりは無いんだが、女の人の方が肝が据わっているんだろうなと思う。まあ、一例しか知らない訳だが。


 後は聖職者組だが、神父ロマンは槍使いの才能を星2つ、シスターパトリシアは剣士の才能を星1つ授かっているらしい。後は2人とも聖職者に星3つとなかなかに振られている。星の数が結構多いことと、戦える才能もちということで、侍従って結構地位がある方なんじゃなかろうか。貴族の侍従と平民との地位の差がどれだけあるかと言われれば、ほぼない。が、王子王女付きの侍従ともなれば選ばれた貴族家からの推薦で仕えることだろう。聖者聖女は教会社会では後者だと思うんだよなあ。侍従と言えどもエリート街道まっしぐらって感じがするんだよ。…ただし、聖者聖女が上に興味が無ければ左遷と一緒なんだろうけど。


 そんな感じで色々聞いていた訳だ。会話の無い馬車旅は本当に詰まらないからね。特に意味も無い話をつらつらと話すことも大いにある。というよりも意味のある話の方が少なかったりするわけで、色々話をしましたよ。特に食事の話、教会の食事はどのようなものなのか興味があったんだよね。…で、聞いてみたら特に面白味も無いものだった。でもマリー姉は卵が食べられることを大いに喜んでいた。ゆで卵を塩で食べるのが気に入ったそうだ。後は季節の野菜やキノコ類を塩で炒めたものや焼いたもの、スープの具にしたものとありふれた物ばかりだった。高価な香辛料なんかが入ってきていないかとか、魚系統が入ってきていないかと思ったんだが、ない様だ。セレロールス子爵領は地下水は豊富なんだけど、川は中央東寄りに1本北向きに流れているだけなんだよね。川上はラーラの沼地、霊地が上流だと、魚はいないのかな。ラーラの沼地は魚がいなかったんだよね。


ピー-----


 おっと、この馬車旅初めての襲撃だぞ。相手はなんだ?


「前方にコボルト3体! 少年出番だぞ!」


「はい! 行ってきます!」


「ヘルマン、頑張って!」


 マリー姉にも応援してもらって、馬車が止まってから降りて前方に走る。縦に3匹、サクッと倒してしまいましょう。敵に走って向かい、最初の1匹が飛び掛かって来る。それを横に飛びながら下から上にレイピアを振り上げ首を飛ばす。まず1匹。4足で走ってくる2匹目のコボルトに向かってレイピアを振り下ろし、首を落とす。これで2匹。その流れで右足を前に3匹目の脳天を右こめかみ辺りを目掛けて下段から体重を乗せて突き刺し、これで3匹目。戦闘終了。レイピアを引きコボルトから抜くと血糊を払うように一振り、後で布で拭くが、落ちるなら振って落としたいんだよね。布も只じゃ無いんだから。コボルトを『エクステンドスペース』に仕舞う。後片付けも終了。馬車に戻ってレイピアの手入れだ。これを怠ると血糊が固まって持ち味の切れ味が鈍る。体重を乗せて叩き切る武器ではない以上、切れ味は生命線だ。欲を言えば水で洗いたい。しかしここは馬車の中、贅沢はいうまい。


「なかなかに良い戦闘だったぞ少年! 鉄迎派でもやっていけるんじゃないか!」


「ありがとうございます! 才能に恵まれました!」


 大きな声で話さないと御者さんとの会話は出来ない。…幌馬車内でもある程度の声を出さないと聞こえないくらいにはうるさい。爆走中の馬車内は全ての会話が大声になってしまう。


「ヘルマンやるじゃない! あっという間に3匹もやっちゃって! 剣士の星3つなんでしょ! 凄いじゃない!」


「ありがとう、マリー姉!」


「これなら全部任せても良さそうね!」


「油断はだめだよ! 一応準備しておいて貰わないと!」


 とりあえずコボルト相手ならどうとでもなるということは判ったが、オークはどうなるか判ったもんじゃないしな。それに2方向から来られたら対応できないからね。普通に手が足りない事態になりかねん。まあ、オークなんて早々出てくることは無いみたいだし、とりあえず今は2方向から襲ってこないことを願いつつ、レイピアの手入れをするのだった。

面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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― 新着の感想 ―
[一言] 家族である聖女のわがまま(布団一組)はともかく、聖者のわがまま(布団一組)に対価なく従う意味が不明。 こんなんでは、この先読む気が無くなりました。
[良い点] 面白いです [気になる点] 7つの大罪でてるけど聖女の姉が弟から物を取るのは強欲とかに当てはまらないんですか?
[良い点] あまりにも面白くてツボにはまったので3周目です。毎日更新楽しみにしています。 チートもハーレムもいらんのです。積み重ねの日常が大事ですよね。ヘルマン君は予備知識を得て採取に励んで星を呼び込…
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