33話 11歳 レールの林の時間は飛びました、王都行きの情報収集
馬車の中からこんにちは、そろそろ冬ごもりの時期ですね。どうも、ヘルマンです。いやーレールの林に3年もいたからな。領都は久しぶりだよ。…2年ほど空白の時間が無いかって? 何も特段したことは無かったんだよ。採取して寝て採取して寝て採取して火事の後片付けをして寝てを繰り返していただけだからね。他の採取地の様に冒険者がいなかったら何かイベントでもあったかもしれないが、周りは冒険者だらけ。碌に交流もせずにただひたすらに採取していた話を聞きたいか? 僕は聞きたくない。本当に面白いことは何も無かったんだよ。
あ、ネラ町でも冬場はネズミ捕りをやっていたよ。冒険者ギルドの依頼はそれしか受けてないけど。後は、服を買いました。今現在11歳。この年越祭で12歳になるけれど、今で大体180㎝位の身長になりました。農民の大鎌を見るに平均くらいなんだよね、180㎝が。歳的にはもう少し伸びそうで、185㎝位にはなるんではなかろうか。実際にどうなるかは解らんけどね。
採取の方は正直、思っていたよりも順調に行き過ぎたような気がする。月光茸も多分使い切れない程には確保したし、満月茸に至っても50瓶は確保しました。ざっと500本強、十分でしょ。至高のポーションが大魔金貨1枚からだから、実質大魔金貨500枚強のお金が入ってくる計算ですよ。傲慢さんが後で踊っていそうですよね。
後はそうだな、火事の回数が半端じゃなかったくらいかな。1月に1回位のペースで火事が起こってたからね。しかもヨルクの林の様に農民が手伝ってくれない。冒険者だけで後片付けをしないといけない事態には、あれだけ火事があったんだからもう慣れた。ゴミ捨て場には麦藁で作った箒なんかを沢山置いてくれててとっても役に立ちました。箒の柄は木製だったのが驚きだったってこと位だろうか。後は焼死体を教会に引き取ってもらって、その次の日に起こる格闘大会での撲殺死体を燃やして教会に届けてを繰り返し。正直3年で何人死んだんだろうか。数えるのも億劫なくらい死んだ。闇に呑まれたりはもうしていない。その辺の昇華の仕方はなんとなくだけど覚えたから。大罪に呑まれるようなことには僕はなっていない…と思う。
本当それくらいしかイベントは無かった。この乗合馬車も何人か一緒に乗ってはいるが、座れるくらいにしか乗ってないし、道中の波乱も無かった。何にもイベントが無いと、話すことも無くなるんだよ。後は領都に戻って何かあるのかって位だと思う。
そんな訳で、何の波乱も無く領都に到着した。時期としては新年祭までは結構前、春になってから移動しても良かったんだけど、なんとなく早めに帰って来た訳だ。情報収集もしないといけないからね。この春には王都に向かって出発出来たらしておきたいんだよな。夏でもいいんだけど、少し早く王都に到着しておいて王都の側の霊地や魔境を確認しておきたい。どんな素材が採れるかとかどんな魔物がいるのかとか錬金術ギルドや冒険者ギルドで情報収集しておきたいんだよな。
そもそも王都まで何日かかるかも解っていない。本当に初歩の初歩から情報収集をしないといけないのだ。…これで1年以上かかりますなんてことにはならないと思っている。王国だって流石にそこまで広くはないだろう。1年以上かかるようなら情報収集を甘く見すぎていたと言ったところだ。ということで錬金術ギルドにやってきました。早速聞き込みだ。
「すみません。王都まで行きたいんですが、何日くらいかかりますか?」
「王都ですか? ということは錬金学術院入学希望者ですかね。今から行っても入学にはギリギリか間に合わないかだと思いますよ?」
「あ、いえ。今年の新年祭で12歳なので行くとしたら何日くらいかかるか聞きたかったんです。」
「あ、そうだったんですね。順調に行けば大体50日位だと思います。…ちょっと待っていてください。確認したいことがありますので。」
そう言うと奥に引っ込む受付さん。別にきっちり何日って教えてくれなくてもよかったのに。大体50日、これだけで十分だ。最悪次の秋ごろに向かえば入学には間に合うだろう。そんなことを思っていると受付さんが戻ってきた。
「確認してきました。錬金術ギルドに依頼が来ていますね。この春に王都に向かう為の馬車を出して欲しいと教会から依頼が来ています。それに相乗りさせて貰うのが一番いいと思いますよ。確実に王都に、最短で行きますので。…ただし、料金は小金貨1枚貰います。それでもよろしいのであれば乗って行くといいと思いますよ。おすすめです。」
「教会からの依頼なんですよね? 相乗りさせてもらってもいいんですか?」
「いいですよ。どちらにしろ冒険者ギルドに護衛依頼を出さないといけなかった可能性がありますからね。…御者が平民落ちした貴族ですので、戦えるので必要ないとは思うんですが、教会側がそれでは不足だと思われた場合、冒険者ギルドに信頼できる冒険者を紹介してもらわないといけないため、戦力が増える分には何も言わないでしょう。…因みにある程度は戦えますよね?」
「まだゴブリンとしか戦ったことは無いですが、3体までなら問題なく相手に出来ました。それ以上が来られるとどうかは判りません。一応剣士に星が3つ振られていますので、戦えないということは無いと思います。」
「星が3つの剣士ならば問題なく戦力になるでしょう。殆どがゴブリンかコボルトで稀にオークが出るくらいですので。一応初級ポーションと解毒ポーションを幾つか持っておけば十分だと思います。基本的には毒のある魔物は出てこないとは思いますが、念を入れておくのがいいと思いますよ。」
「初級ポーションを20本と解毒ポーションを10本確保してあるんですが、十分でしょうか?」
「それだけ持っていれば十分だと思います。…乗って行かれるなら何度も言いますが小金貨1枚です。これは依頼では無く、相乗りという形ですので報酬ではなく相乗り料金になってしまいますが。」
「問題無いです。ここで先払いですか?」
「そうですね。先払いです。―――はい、確かに受け取りました。一応、新年祭が終わってから5日に1回くらいの頻度で錬金術ギルドに来ていただけると有り難いです。10日前くらいには出発の連絡が来る手配になっておりますので。」
「分かりました。恐らく春頃なんですよね?」
「はい、種まきの少し前くらいと聞いておりますので。…他の職員にも話は通しておきますので、私じゃなくても大丈夫ですからね。」
「はい分かりました。ありがとうございます。」
これはいい情報が貰えたし、王都行きが確実になったな。50日程度であれば夏の最盛期までには着くかな。王都に隣接しているという霊地にもいけるな。魔境についてもしっかりと調べる時間が出来たし、一度行ってみるのもいいかもしれないな。奥にはいかないよ? 周辺の、ほんの入り口だけ。多分ゴブリンやコボルトなんかの最下層の魔物と戦うだけだ。もしかしたらオークくらいまではいけるかもしれないが、王都の魔境がどの程度の魔境なのかが解らんのが辛い所だな。この辺は王都に行ってから情報収集をしないとね。
そんな訳で、錬金術ギルドを出て宿屋に移動中。いつも泊まってたあそこに向かい中だ。だってご飯が美味しいから。それだけの理由で十分だ。宿屋なんて泊まれれば十分だと思っていたが、冬場に食べ物屋に行って撃沈してからは宿のメニューを大人しく食べることにしている。麦粥と干し肉のスープくらいしか出てこないんだもの。宿のメニューは春や夏に採れた野菜を保存瓶で保存してあるからメニューが豊富なんだ。だったらわざわざ食いに行く必要がないからね。目的の宿屋に向けて、西通りのメイン通りを歩いていくのだった。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
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素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。