30話 9歳 夜の採取だレールの林、夜しか取れない月光茸
テントの中からこんばんわ。もうすっかり夜ですね。どうも、ヘルマンです。因みに今は晩御飯中。テントの数も一時的に4割くらいまで減っているが、明日にはすっかり元通りどころか、まだまだ増えるだろうと予想できる。…限界突破して前後左右全部危険域になるんだろうな。食事をするにはどうしても火を使わないといけない。そんな危ない所をただでさえゾンビのような冒険者が歩くのだ。まあ、火事になるよなあ。僕の火葬場にならない様に気を付けよう。
さて、そんな訳で夜でございますよ。図らずも徹夜に成功してしまったので、これからゆっくり採取をしていこうと思います。…テント群にはちゃんと同業者もいるらしく、夜のレールの林に入っていくものもいる。…流石であるな。高いものは夜にしか生えない、月光茸と満月茸だからな。これらを狙ってのこの時間だろう。…他の冒険者の真似で夜に入っている奴もいるかもしれないが、結構な数の冒険者が昼間に入っているのを確認している。昼間と夜中に採れるものが同じ、というか同じ値段でしか買ってもらえない冒険者は昼採取してるだろう。幾ら月光茸や満月茸を採取しても、ちゃんと綺麗な水の入った保存瓶で保管されてない奴は品質が下がる。
多少の劣化は防げても完ぺきではないんだよね、たとえ保存瓶であっても。昔の人はよく材料を観察したんだなあとしみじみ思う。資料が残っているのも、長い間研究してくれた人たちのおかげなんだから。感謝して活用させてもらわないとね。…因みに今夜は半月くらい。満月は30日に1回だから月齢を把握している冒険者、ネラ町に住んでいる冒険者だな。にかかれば満月茸何かも直ぐに見つけてしまうんではなかろうか。
まあ、少なくとも冬以外の3年はこの村にいることが決定している僕はまずは1瓶に一杯、10本の満月茸を目標にしようかなとは思っている。…がっつり取れたらいうこと無しなんだけど、そこまで採れるもんなのかが解っていない。図鑑にも満月の夜にしか採れないとしか書いてないからどれだけ希少かまでは判らないんだよね。使い道としては”至高のポーション”の材料になるという情報と、とても強い光属性と闇属性を持っているって事くらいなんだよ。
因みに回復系ポーションには現状5段階まで存在している。初級ポーションから始まって、中級ポーション、上級ポーション、最上級ポーション、至高のポーションの5つだ。もひとつ因みに至高のポーションは部位欠損すら治してしまうらしい。とりあえず飲んどけば5体満足になるという摩訶不思議な薬だ。一応最上級ポーションでも指とかの小さい欠損は治るらしい。至高のポーションは最上級の上を作るために命名しました感が凄いからな。これ以上の効果を持つポーションは生まれないと思うが、至高のポーションの上は何なんだろうね。
ポーションついでに解説をしておくと、ポーションは魔力も回復する。ただし、魔力回復ポーションも存在する。そちらは傷の治療が一切ない代わりに魔力だけ回復する。作り手によって効果が変わってしまわない回復系ポーションに変わり、魔力回復のポーションは作り手によって効果が変わってくる。ただし回復系ポーションの方も魔力の回復量はばらばらだ。材料の多い少ないも関係あるが、才能の星の多い少ないも関係あるので、魔法使いは信頼できる錬金術師と取引をすることが多い。自分の魔力量以上回復するポーションは必要ないからね。自分の魔力の8割位回復する薬が一番いいとさえ言われている、お財布的に。高いんだよね魔力回復ポーション。回復量的には判らないけど、とりあえず小金貨2枚からなんだよ。原価は中銀貨5枚から。魔力茸10本がとりあえずの原料だからね。まあ、魔境に向かっていく冒険者の魔法使いには高いのか安いのか解らんけれど、僕は高いと思う。…まあ絶対に必要な物なんだろうけど、小金貨2枚以上の成果を上げられないと赤字だから買う人も限られるんだろう。
そんな話もしつつ、夜の採取でございますよ。夜通し眼鏡のおかげで昼間と殆ど変わりない視界を持っている僕はかなりのアドバンテージを持っていると言ってもいい。一応、夜に採取に向かう人たちも観察していたんだが、眼鏡をかけている人はいなかった。夜中の林は視界が悪かろうに、錬金アイテムを知らないだけでやっぱり損をしているよなあ。満月茸と月光茸の区別も付かないと思う。いや、他のキノコでも迷いそうだよな。間違えて星彩茸なんかを水に浸けてしまったら素材としての価値が下がってしまう。実に勿体ない。でも夜通し眼鏡も普及しているようには見えないんだよね、不思議なことに。これくらいは冒険者ギルドもサービスしてあげればいいのにね。…冒険者ギルドの受付さんが知らないということもあるかもしれないな。知っていたら黙ってはなさそうだし。錬金術ギルドには冒険者は殆ど来ないからな。素材を売りに来る時くらいだし、素材を納品してる人が錬金アイテムを知らないって事も…知っていそうだな。何で情報絞ってるのか知らんけど。
夜もまだまだ始まったばかりだから、まだ月光茸なんかも生えてきていないんだろうか。まだ30分位しか探していないが、月光茸はゼロだ。魔力茸や旋風茸、空風茸に星彩茸は沢山あるから有り難く採取しているんだけど、本命がなかなか見つからない。魔械時計を見る。…一応夜と言われる時間帯には属しているはずだ。初日だがもう少し奥まで行ってみようか。これも指方魔石晶の首飾りを持っている強みだし、使って損もなし。どんどん奥に入っていってみよう。
そう言えばここの幻獣は何なんだろうか? 別に幻獣ハンターをやるつもりも無いので見つけなくてもいいんだが、マルマテルノロフやタルタランドランの時の様に一攫千金の情報がポロっと落ちていてくれてもいいんじゃよ? まあ、カンパノの森でも野生の幻獣はみなかったし、ヨルクの林でもマルマテルノロフはジュディさんの所に飼われている奴しか見ていない。野生のタルタランドランを見つけられたのは運が良かったとしか言えぬわけで。そう簡単に見つけられていれば他の幻玄派の錬金術師も苦労していないだろうしね。
暫く奥までやって来たんだが、漸くと1本目の月光茸を見つけた。この辺を拠点にして周辺を採取していきましょうか。漸くと生えてきたのか、それとも見落としていただけなのかは判らないけれど、同じ環境なんだからこの辺を探すのがいいだろう。どっしりと構えて採取を続行、沢山採取できるといいなあ。
時刻は朝日を迎える時間。そろそろ林の外に出ないとな。月光茸も引っ込んだし。そう、朝も近い時間に見つけた月光茸を放置して観ていたんだ、魔械時計で時間を計りながら。月光茸はそれなりに見つかったのだ。夜にしか採れないから1日1本とかのペースなのかなとか思っていたんだが、思いのほかあるんだよ。今日だけで30本は見つかった。血眼になりながらの採取にならなくて良かったと思う。そんな訳で、朝に近いと思った時ふと思ったのだ。夜にしか採れない月光茸を放置しておいたらどうなるんだろうと。結果はその場に引っ込んだのだ。キノコが生えてくるVTRを逆回しするかの如く引っ込んだ。魔械時計は確かに朝と夜の境目を指している。この朝に引っ込むキノコも不思議だが、魔械時計も大概に不思議だよな。時間が狂わないのは大変に有り難いし、これでキノコの引っ込む時間も判った。恐らく生えてくる時間はまちまちなのかもしれないが、採れなくなる時間が判ったのは大きなことだ。辞め時が解るんだもんな。
そんな訳で、今日の所は終了。ゆっくりと帰って朝ご飯を食べましょう。そして寝る。完全に昼夜逆転に成功したが、これからはずっと月の下を歩くことになるのだ。…まあ、林のせいで月は見えないんだけど。でもトイレなんかは日中に行かないと悪いよなあ。夜中にトイレを貸してくれは冒険者の心得には書いてなかったが、完全にマナー違反だろう。夜活動するけどその辺は昼の人に合わせないといけないのか。…実に面倒だけど、仕方ないよなあ。そして今回は先払いは無理だろう。この冒険者の数だ、識別してもらうのにも限度ってものがある。今回のトイレは一回一回払うことにしよう。これも面倒だなあと思いながら自分のテントに帰るのだった。
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