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28話 9歳 貴族も色々とある、領地一の火事場

 三寒四温を実感する気温差のある季節、いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。季節の巡りは早いもので、もう少しすれば春がやってくるだろう。そろそろ馬車旅の準備をしなくちゃいけない時期です。こういうのは早いのに限りますからね。遅いと出遅れた感一杯になりますから。


 この冬の間にマリー姉とは会ってきた。普通に教会に行って「マリーという聖女はいますか? 弟ですが。」という問いかけで普通に会えた。マリー姉はとても元気だった。色んなところが女性としての主張をしてきていたが、一番は言葉遣いだな。荒っぽい村娘から、都会のお嬢さんに変わっていた。教会のお仕事も色々あるらしく、今は魔法の勉強や戦闘訓練をしている最中らしい。回復魔法と対アンデッド特効魔法だな。神官戦士よろしくメイスの鍛錬もしているそうだ。メイスの扱いも聖女の才能の内らしく、かなり強くなったよアピールをされたが、そんなところまで才能はカバーするんだな。本当に物語の魔王でも退治しに行くんじゃなかろうか。久しぶりに会ったけど、根っこの部分は変わっていない優しい姉で良かったよ。人が変わったように接されたらどうしようかと思っていたが杞憂だったようだ。


 僕はといえばこの冬は基本的に休みというものを堪能したと思う。主に冒険者ギルドの受付さんや錬金術ギルドの受付さんと話をしていただけなんだが。知らない事や判らないことを色々聞いたさ。多少貴族について詳しくなったり、錬金学術院でどんなことをしていたのか情報収集をしたり、何でもない話もいっぱいした。特に貴族関係の話は知らないことが多すぎて聞くのに大変だったが、錬金学術院に行ったら、平民落ちした貴族たちとも勉学を共にするんだからと少しは知っておいた方がいいのかと思い聞いていたら、予想以上にめんどくさそうなのと、一杯覚えることがありすぎて全ては覚えていられなかったが、要点くらいは掴めたんじゃなかろうか。


 貴族といっても色々あるらしく、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵、魔導爵とあるらしい。大体上から並べたが、侯爵と辺境伯は一緒くらい、騎士爵と魔導爵は同じく1代貴族となっているようだ。そして、何でかよく解らなかったが、この国では公爵が7つ在って、その7つの内一番王に相応しい才能を与えられたものが王様をやるらしいのだ。王様は世襲制では無いらしい。まあ、その所為で派閥がどうのこうの、大臣ポストがどうのこうのと色々あるらしいのだが、錬金学術院にはそれほど関係ないので良しとした。…うん、だってよく解らんかったし、関係ないなら関係ないで良くないか? って思っちゃったが最後、余り頭に残らなくなってしまった。仕方ないね。


 後は、貴族にも領地を持っているものと持っていないものがいるらしい。貴族年金も持っている方が少なく、持っていない方が多くもらえるんだってさ。これは騎士爵、魔導爵にも当てはまるらしく、彼らは一律領地を持たない貴族だから結構な額の貴族年金を貰えるらしい。…まあ、その分屋敷にお金を使わないといけなかったり、使用人を雇わないといけなかったりで結局使ってしまう分も多いとのことだ。多分、貴族にお金をばら撒いて国内の経済を回しているんだと思う。税で取るだけだとまずいもんね。使って回してなんぼの世界ですから、経済なんてものは。


 そして、貴族の義務として、戦争への参加があるらしい。…ここ数百年は大きな戦争は起こっていないらしく、貴族の一部には何処かに攻め入りたいという過激派がいるらしい。ただ、どの公爵も戦争を良しと思っていないらしく、戦争は遠そうである。平和なことは良いことだ。それよりも大規模な魔境の方が今の王国は熱いらしくそっちの開拓に力を注いでいるらしい。この王国の西側には前人未到の大魔境があるのだ。そこの開拓に2つの辺境伯家が力をいれているらしい。大魔境の名前の通り、国1つ分程の魔境があるのだ。そこを開拓しているんだから凄まじい物なのだろう。他の魔境とどう違うのかとか興味はあるが、そっちに行くのは無しかなあ。忙しくなりそうだし。


 辺境伯といえば、海に面した北の辺境伯家も面白いことを考えているようだ。この大陸は、大魔境も含めて、海に囲まれているらしいのだが、海の先にも新しい大陸があるのではないかと言われている。それを探しに行くために大船団を用意しているとの噂が立っている。なんともまあ大きなことを考えるもんだ。海にも魔境や霊地はあるらしいのだが、それらを避けて行った先があると思っているのだろう。僕の生きている間には無理そうだがそんな大冒険もサーガになりそうで面白い話だと思った。まあ、行きたいかと言われれば行きたくないが。


 そんな訳で、貴族も色々らしい。ここの領主であるセレロールス子爵は貴族界隈では微妙な評価らしいことは分かった。魔境を単独で1つ抱え、もう一つを他の貴族家と分けて持っているのにも関わらず、騎士爵や魔導爵と言った1代貴族が他の貴族家に比べて少ないそうだ。そしてそのことを知っていても、余り手を打っていないとのことで、もう数代このままだった場合、領地の切り取りが行われる可能性があるんだと。…まあ、隣の領主もどっこいの評価らしいので、当分は安泰だろうと言われているが、隣がやり手の子供が生まれてしまったらどうなるのか判らないとのことだった。…まあ、平民にとって変わることといえば、何処に税金を納めるかだけなので、セレロールス子爵がどうなろうと知ったことでは無いのだが。


 まあ、そんな話は置いておいて、僕は今、冒険者広場にいる。早くも宿を引き払い、馬車待ちだ。ネラ町までは7日間の旅だ。乗合馬車を探しているのだが、生憎ネラ町行きがここ2日ほど無かったのだ。今日もどうやらネラ町行きの馬車は無いらしく、大人しく錬金術ギルドで採取物の復習でもしようかなと思っている。乗合馬車運は僕にはこれといってあるわけでもなく、これまでがさっくりと乗れ過ぎていただけなのだ。


 乗合馬車には2種類ある。行先が決まっている馬車か決まっていない馬車だ。決まっているのはここの領主様に依頼をされて各町を回り、村長や各町の代官から要望苦情を拾い上げるものだ。1年で全てのこの領の町村を回るのだ。余裕は十分にあるけれど、予定を立てて何時何処を回るかは馬車主が決めているのだ。なるべく早く仕事を終わらせるために、ルートなんかの設定を頑張らないといけない訳だ。行先の決まっていない馬車は基本的には何処かのギルドの職員だったりする。行先の変更を受け持ってもらえるのはこの馬車だ。錬金術師の行商人なんかも、乗合馬車の1種のような物で、錬金術ギルドの雇われが多い。まあ、乗合馬車ってよりも素材の買取をやってくれる馬車って方が強い印象だな。乗合馬車として運用している場合は村に1日しか止まってくれないから注意が必要だ。何のギルドの雇われかは判らないが、殆どの乗合馬車が行先の決まっていない乗合馬車だ。


 それでも、今は馬車業が忙しくなる少し前の時期。だから乗合馬車自体が余り多くない。多いのはジェマの塩泉の方面行きだな。それでもレールの林も人気の霊地だろうから早めの馬車があるだろうと思っていたんだが、当てが外れてしまったという訳だ。もう少し、宿でゆっくりしてても良かったか。…まあ結果論だ。そんな不毛なことは言うまい。ちょっと張り切りすぎて我慢が出来なかっただけなのだから。こういう時間にはちゃんとやるべきことがあったりするんだよね。準備不足だったり、何か足りないものがあったりと、警告してくれていると思っておいた方が心の安寧が訪れるものだ。…何か足りないものはあるだろうか。装備は…メンテもしたし十分だろう。アイテムの方はしっかりと確保している。あったか布、飛沫除け布、ピッタリ長靴、夜通し眼鏡、指方魔石晶の首飾り、魔械時計。うんうん。足りないものはないだろう。後は…無いよな? しいて言うなら予備のテントくらいか? ヨルクの林では火事が数年に1回ほど起こっていた。冒険者広場でも年に数回は起こるらしい。ならば宿無しになってネラ町に帰るよりかは予備のテントを買っておいた方がいいのかな? まあ、テントなんてほぼ布と同じなんだし、そんな高いものじゃなし、買っとくか。


 テントは最初に冒険者ギルドで貰ったんだよな。なら冒険者ギルドに売ってるんじゃないか。という訳で冒険者ギルドに来ました。冒険者ギルドの受付さんとは冬の間話し込んでいたし、仲良しになっております。何人かいるんだけど、皆快く雑談に興じてくれるので有り難いよね。…まあ、朝を除けば暇なんだろうけど。


「すみませーん。テントの布を売ってください。」


「テント? ええ、売ってるわよ。大銅貨2枚ね。―――はい、毎度あり。どうしたの? 火事は最近は無かったはずよね?」


「レールの林に行くので火事対策に1つ買っておこうかと。レールの林は人気の霊地みたいですし。火事もあるだろうと思いまして。」


「ああ、レールの林に行くのね。ならもう何枚か買っておいてもいいと思うわよ。あそこがこの領地の一番の火事所だから。」


「そうなんですね。じゃあ、もう3枚買っときます。」


「はいはーい。大銅貨6枚ね。―――はい丁度ね。それにしてもレールの林に行くのね。ネラ町は他の町とは少し違うから面白いわよ。」


「? 他の町と違うんですか?」


「あそこは布の生産地だから町だけど広い畑があるのよ。大綿花っていう植物があるんだけど、見たことある?」


「無いです。初めて聞きました。」


「何でも年中育てることができる植物でね。花の後に実を付けるんだけど、その実から綿を取るのよ。それが人の頭より大きい実でね。実が種を落とすときに割れるんだけど、その中に大量の綿が入っているのよ。それが一面にあるからあそこは雲の上に町があるみたいに見えるの。馬車で行くときに遠くから見てみなさいな。運が良ければ綺麗なのよ。直ぐに綿農家さんが刈っちゃうから見れるかどうか判らないけれど。」


「へー、そんな町なんですね。初めて聞きました。」


「そうそう。余裕があるならお布団をそこで買いなさいな。ネラ町には引退する冒険者が沢山住み着いているんだけど、そこで人気なのが綿をたっぷり使ったお布団でね。高いけど、気持ちいいらしいわよ。ここの何代も前の領主様肝入りで作られたそうなんだけど、雲の上で寝ているようだって感想もあるくらいなのよ。お金に余裕があるなら買っちゃいなさいな。お宿の布団の上にも敷けるんだから、あったらお得よ。」


「いいですね。お布団。何処で買えるんですか? 自由市ですか?」


「冒険者ギルドで受注生産だから時間が掛かるのよ。でも春に注文しておいて秋に回収すればいいでしょう? レールの林でちゃんと採取できるならお布団くらいは買えるわよ。布が安い分、お布団は高いけど、買えるでしょう? レールの林でちゃんと採取しようとしてるくらいなんだし、ラーラの沼地にも行ったんでしょう? 保存瓶の存在を知っている採取者なら手の届くくらいのものだから買ってみなさいな。」


「布が安い理由は平民でも買えるようにって事なんですか?」


「そうよ。場所に因っては領主様が人を雇って育ててるところもあるそうだけど、ここはお布団の売り上げがあるから自立できているわね。でも、布が安いことは良いことよ。服だって高いと手が出ないし、買い換えるだけで足が出るようじゃあだめだもの。」


「それは確かに。でもいいことを聞きました。ありがとうございます。」


「いいのよ。いつもいつもお話に来てくれていい暇つぶしになったもの。じゃあレールの林の採取も頑張ってね。」


「はい、頑張ります。」


 テントの購入だけだったが、いい情報が聞けた。お布団か。麦藁の布団でも十分かと思ったが、綿100%の布団の方がいいに決まっているじゃないか。それにしてもお高いのか。まあ大金貨で済むよな、どれだけ高いって言っても。しかし、雲の上にある町か。時期が良ければ見えるんだろうけど、多分無理だよなあ。まあ、お布団は購入決定なんだけどさ。


 しかし、テントも沢山買ってしまった。火事所って言われれば買うよな。まあテントの布なんて2m×5m位の一枚布だし、そんな値段だよね。このテント真ん中に支柱があって、2面だけ覆うものだから1面はがら空きなんだよね。前世の僕が何処がテントだと怒ったくらいには対雨性能は低い。横雨なんて防ぐどころじゃない時もある。上手いこと風上を2面で抑えておかないと悲惨なことになるんだ。…まあ、他の人のテントの張り方見て判ったけどさ。1度はやらかすぞあれは。現にカンパノの森の時にやらかした。雨の中作業したもんさ。テントに入ってても入ってなくても一緒だもんあんなの。


 さてさて、用事も終わってしまった。服もこの冬に買いそろえたからまだいらないだろ。他に何か要るものあったかな。自由市を冷やかしながら、足りないと思うものを探すのだった。

面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本の混みあったテント場で、テントを立てずに寝袋だけで直接寝るのは危険だから注意しましょう。夜中に誰かに蹴られたり踏んづけられるから(^-^;
[気になる点] 荷物の無い世界観なのだから、テントの必要性は低いかなと。 雨風が強ければ、テントなんて立てずに、防水布にくるまっている方がマシかと。 実際、日本のような気候じゃ無い国での野外活動時は、…
[気になる点] 他の方のコメント返しで、冒険者蔑みは傲慢の傾向と書いてありましたが、他の住民もみんな揃って見下して村八分というか国八分っていう感じに思えます。雑用係という名の低賃金便利屋を作るために誰…
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