表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/201

27話 9歳 町の新年祭は村とは違うようです

 雪がしんしんと降り積り、家の屋根が白く化粧をする季節、いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。今日は新年祭。おめでたい日ですねえ。ということはもちろん、星振りの儀があるって事ですよ。去年は村と同じような感じだろうと思って宿に閉じこもっていたんだ。村では冒険者が追い出されていたからね。その次の日も惨憺たる光景だろうからと閉じこもっていて町の新年祭というものを見ていなかったんだ。


 冒険者ギルドの受付さんと話して分かったんだが、どうやら町の新年祭は冒険者や旅人ウェルカムのようらしく、出店や酒売りがあるらしい。随分と町と村で違うもんなんだな。村の新年祭は外部の人間お断り状態だったのに。まあ、出店なんかは冒険者っていう客が増える方が儲けが出るからそれの方がいいのは解るが、問題は人が多すぎないかって所だよな。村でも星振りの儀を行う子供たちは20人ほどいたんだ。領都ならその10倍、200人くらいは子供たちがいるんじゃないか? そんなに教会に入るのも凄いことだが、200人の両親兄弟親戚その他で冒険者広場が一杯にならないのか? そんな中でよく店なんてできるなと思ってたんだけど、どうもその辺は錬金術ギルドの人たちが出店の基礎を作ってしまうらしい。出店も普段店屋をやっている人や畜産家位しか店を出さないとのことで、利益はそれなりらしい。まあ、お祭りだからね。基本は星振りの儀がメイン。出店やなんかは賑やかしらしい。それでいいのかとは思うけどね。


 そんな訳で僕も冒険者ギルド前広場に来ているんだが、人人人の大渋滞。出店の場所も把握できているし、良い匂いがするんだけど、そっちに行けない。酒は村と変わらぬ麦のエール。作り方も一緒だろう。樽に麦と水を入れて放置、酵母か何かが頑張ってくれるのだろう。詳しい作り方までは知らないのだ。村でも呑みたいだけの男衆が頑張って作っていたが、作っているところまでは見ていないからなあ。


 そんな人混みの中をかき分けて出店の前までやってきました。売っているのは酒、スープ、肉串、肉串、肉串。肉串推しだね、串なんて木で出来てるよ。木でできているものは意外と少ないから貴重品だよね。…僕は知らなかったんだが、ヨルクの林には樵さんもいるそうだ。んで町に丸太を売りに行ったり、加工して扉を作ったりしているんだって。そう言えば、村の唯一といってもいいくらいの木工品の中には扉や窓、後は樽があったなと思っていたが、霊地の林からも木材を採っていたのか。気が付かなかったぜ。…これも冒険者ギルドの受付さんに聞いたんだが、霊地や魔境の木の成長速度は異常らしい。3年で丸太まで成長するんだってさ。普通の場所だと何十年とかかるのに不思議なんだと。だから木工品には困らないんだけど、錬金術師が土と石で何でも作っちゃうから基本軽いものしか木では作らないらしい。…あ、お貴族様のお屋敷は違ったよ。全部木で作られていた。高級品なんだって。その感覚はよく解りません。土と石の方が丈夫にできるんじゃない? 頑丈な方がお高いイメージがあるんだけど、違うみたいなんだよね。よく解りません。


 まあ、そう言うことで肉串でも頬張りながら、祭りの行く末を見守りましょうか。…そう言えば、マリー姉もあの教会にいるんだよなあ。この冬に挨拶でも行っとくか? …聖女ってのが何処まで偉いのかは知らんけど、領都にまで連れてこられたんだから、聖職者の中では凄い才能なのだろう。なんか何処かの魔王でも退治に行きそうな才能だもんな。そう言えば、聖職者と光属性魔法使いとはまた違うんだとか。聖職者は聖属性の魔法を使うんだと。そのあたりもよく解らんのだが、聖属性と6属性は別物。ただし、光属性にも対アンデッド特効やら回復魔法やらあるらしく、聖属性と似たような魔法のラインナップなんだって。違うのは自分の魔力を使うかどうかの話らしいよ。聖職者の魔法は自分の魔力を使わないらしい。だったら魔術師寄りなのかと言われてもそれもまた違うらしいので現在研究中らしい。研究者はそういう才能だからで片付けてはいけないらしい。理屈が必要なんだって。


 それにしても、酒飲みは何処にでもいるもんだなあ。酒も安いとは言え、飲み比べをやったり他の人に買った酒を飲ませたり、何処でもやることは一緒だ。主役は子供たちだろうに、呑兵衛共は今日は酒の日とでも認識しているんじゃなかろうか。まあ、一度手痛い覚えのある僕としては二度と酒などごめんなのだが。この辺は前世の僕と意見が一致している。酒は好きな奴が飲むもんで、僕の飲む飲み物じゃない。僕は水でいい。…前世の僕はコーヒー派らしいんだけど、コーヒーなんてものは聞いたことも無い。見た目は黒い水で苦いらしいが、そんな飲み物もあるんだな。後はお茶。これはこの世界でも普及していてもおかしくないと前世の僕が言っていたものなのだが、お茶ねえ。何でも葉っぱを煮だしてその汁を飲むらしいのだが、そんなものが美味いのか? …今度快命草でやってみようかな。どうせ雑草扱いだし、ポーションの材料だから普及はしているというか農家が沢山採って売っている。まあ、はした金なんだが。20本で鉄貨1枚と破格の安さを誇る。それでも麦の敵である快命草は農家の敵である。放っておくと少しの根からでも7日もあれば花が咲くとまで言われている雑草だ。非常に生命力が強く、ポーション作りに必須の草だから栽培している人も多いんだって。錬金術ギルドでも裏庭で栽培しているようで、錬金術ギルドのポーションはそうやって生み出されているようだ。


 後は魔力回復ポーションもあるんだが、これが不思議なんだが材料は魔力茸だけなんだ。とりあえず魔力茸10本でできるんだが、魔力茸を使えば使うほど魔力の回復量が上がるんだって。…飲む量は変わらないのに回復する量だけ変わる不思議な薬だ。この特徴のせいで大量生産が出来ないのだが、世の魔法使いには必須の飲み物らしい。大量生産といえば、基本錬金術で作られるものは大量生産が出来ないらしい。ポーションも大量生産が出来ればいいのだが、出来ないから困るとのことだ。1本作るのに10秒ほどとはいえ、同じ作業をひたすらにやらされるから大変なんだってさ。魔境に行ったらポーションの納品ノルマが課されるんだと。…大変に面倒でござる。まあ、学術院生のうちに死ぬほど作らされるらしく、面倒なだけで困ることは無いんだってさ。そう言えばジュディさんもお金のために上級ポーションを大量に作っていたって言ってたし、初級ポーションも同じ勢いでやらされるんだろうな。


 色んな事をみて考えてをやっていたが、時刻はそろそろ正午、鐘の鳴る時間だ。…鐘が鳴るのは何処の教会でも一緒らしいし、どの教会も一斉に鳴るんだよなあ。前世の知識だと世界は丸いそうなので、鐘が鳴る時間も少しずつズレるはずなんだけど、魔械時計は時間がズレないっていうし、時計の通り鐘も鳴るそうなんだよね。その辺どうなっているんだろうか。研究している人とかいそうだよね。世界は平面なのか丸いのか。前世の知識だとそういうのは昔の人が星の動きで見分けたらしいが、僕には解らんのでその辺は研究者にお任せだ。世界が丸くても平面でもやることは一緒だからな。僕のやりたいことは錬金術師になること。このことだけ違わなければ、世界が丸くても平面でも変わらないからな。


 教会の鐘が鳴る。ゴーンゴーンと10回きっちり鐘が鳴る。…教会の中で才能に星が振られるのはいいが、教会の外にいたら振られないんだろうか? その辺は謎だが、実験で教会の外にいたら才能が振られないとかなったらその子が不憫だもんな。…なんかもう昔に研究してそうな事だろうが、気にはなるよな。なんで教会に入っていないといけないのかが判らないが、教会に入っていないと恐らく星が振られないから入っているんだろう。その辺は神様が何かしら見ているんだと思うんだよね。全部見るのは大変そうだけどね、神様も。


 暫くすると子供たちが一斉に教会から飛び出してきて親に才能を報告している。領都には農家はいないから農家の才能で一喜一憂する姿はみえないが、跡継ぎに必要な才能が貰えるかどうかは必須だろう。歴代鍛冶屋なら鍛冶師の才能が、服飾関係だと裁縫士の才能とかか? 料理屋だったら調理師の才能とかになるんだろうか。まあ、それぞれが必要な才能が振られたことを祈るしかできないが、そう都合よく付いてくるのが才能だもんな。農家の長男長女に農家の才能が振られるように、何かしらあるんだろう。星の多さは人それぞれなんだろうが、出来れば星の多い方がいいだろうし。


 まあなんにしても、今日はめでたい日だ。早速才能を振られた若人たちに酒を振舞う酒飲み共もいるが、これはどこの町村でも一緒の光景だな。…こりゃあ明日の冒険者広場はやっぱり悲惨なことになっていそうだな。明日は僕はお休みにしよう。でないと冒険者広場の片付けの依頼とか出ていそうだもの。そんな仕事はごめんだからな。…でも、もうちょっとだけこのお祭りの空気を満喫してから帰ろう。今日は別に急ぐ予定も何もないのだ。せっかくのお祭りだ。どんな子にどれくらいの星が振られたのか聞いて回ってみよう。その程度の娯楽ぐらいは許して貰えるだろう。

面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 文量 [一言] 前世があって達観している上に、自分よがりで才能持ちだから自己完結した人間が出来上がるのは当然でしょう。 自分だって痛い目見ないと成長しなかっただろうに棚に上げてる人って多い…
[気になる点] 物語を通して、「文字も読めない愚かな冒険者」というのが主人公に周りにいますが、その冒険者達に主人公が直接的に何か被害を受けたという描写はなかったような気がします。(後始末やらで大変な思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ