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25話 8歳 錬金術ギルドに駄弁りに来ました、初めて来ました代官屋敷

 朝、冒険者ギルドを冷やかしに行きつつ、ネズミ捕りという名の投げナイフの試験を行った次の日。いつも通りに顔を洗って朝食。ここの食事はおやっさんが作っているんだけど、やっぱ美味いわ。料理人の才能とか持っているんだろうか。在りそうだよな、料理の才能。さて、朝食も美味しくいただいたし、細剣の受け取りに行きましょうか。自由市の鍛冶屋コーナーに行く。そしてお目当ての鍛冶屋を見つけた。向こうも僕の事が判ったみたいで話しかけてくる。


「おう坊主、剣ならちゃんと出来てるぞ。…重心なんかも同じように作ったが違和感があれば言えよ。てめえの命を預ける武器なんだからよ。」


「はい、ちょっと素振りさせてもらいますね。」


 そう言って何度か素振りをしてみる。…うん、問題なさそうかな。重心もちゃんと手元にあるし、取り回しも問題ない。意匠は少し違うのはその鍛冶師の腕とセンスの問題だからな。悪趣味じゃなきゃ問題なしなし。


「…大丈夫そうです。ありがとうございます。」


「おう、こっちも仕事だからな。手は抜いてねえ。―――ほら、手入れをしたお前さんの武器だ。」


 レイピア2本とマンゴーシュを受け取り、邪魔にならない様にさっさとその場を離れる。…さあ暇になってしまったぞ。2日連続でネズミ捕りもなあ。…よし、錬金術ギルドに行ってみよう。そこで受付さんとちょっと駄弁ろう。そうと決まれば早速錬金術ギルドに出発だ。っと意気込んでも徒歩10分圏内、自由市から中央の冒険者広場に行くだけだからね。早速声を掛けよう。


「こんにちは。」


「ようこそいらっしゃいました。ご用件はなんでしょうか。」


「駄弁りに来ました。」


「あら、じゃあ私も休憩かしら。他のお客もいないしいいわよ。何を話そうかしら。」


 聞くなら昨日疑問に思ったことを聞いて行こう。あの後も宿屋で色々と悶々としてたからね。暇だと考えることが多くなっていかんよな。まあ考察は楽しいんだけどね。そんな訳で、早速聞きたいことを聞いて行こう。


「町だと結婚ってどんな感じですか? 村だと親同士が決めているので町だとどうなのかなって思いまして。」


 村では結婚は親同士が決める。シャルロ兄にもリュドミラ姉にも許婚がいたんだよね。年回りが同じくらいで、農家の才能を持っているかどうか。村の結婚事情はこのくらいなのだ。歳が12歳を超えたら一緒に住むかどうかを決めたり、畑をどうしたりってのがあるが、基本はそんだけ。だから町だとどうなんだろうって思ってさ。町でも知り合い同士で許婚とかがいるのだろうか。


「えっ結婚? そんなの当人同士が合う合わないじゃないの? 私も旦那がいるけど、合うから結婚しただけで、別に大したことはしてないわよ。」


「それ以前に出会いが無いじゃないですか、旦那さんとはどうやって出会ったんです?」


「出会いは普通に代官屋敷の書類からよ?」


「書類?」


「そうよ。代官屋敷にこの町に住むことに決めたら住民届をするでしょ? 税だって払わないといけないんだから。そこで結婚相手を探すのよ? それ以外に何があるのよ。」


 ちょっと脳が追いついていない。結婚相手を代官屋敷で探す? どういうことだよ? 住民届はまあわかる。税金払うんだからね。村でも税は払っていた。村長にだけど。村長もそっから住民税を領主様に運ぶ。まあ、大半は町の代官に運ぶだけなんだが。町の代官も何人かで税を領主様まで持って行っていると思う。金に変えるのかどうかまでは知らない。村長が先に金に換えてんのかもしれないが、基本は麦で納めてた。


 そんなことはどうでもよろしい。代官屋敷で結婚相手を探すってどういう意味だ? 代官屋敷は婚活会場か何かなのか? 何番って番号を振られてその番号と照らし合わせてどうですかってやるのか? ちょっと意味が判らない。


「ちょっと意味が判らないです。代官屋敷で結婚相手を探すんですか? 錬金術師も?」


「そうよ。私は錬金術師じゃないけどね。仕事やなんかもそうでしょ? 基本は代官屋敷に求人なんかを出すのよ。それと同じじゃない。私は何処で働いています、旦那を募集してますって代官屋敷に届けるのよ。そうすれば私と結婚したい人がやってくるし、私だって条件に合いそうな人を探しにも行ったわ。それで今の旦那と会ったのよ。…なによ、別に変でも何でもないでしょう? そりゃあ親同士が許婚を決めることもあるわよ。でも殆どが代官屋敷から合う人を探すんじゃないの?」


 いろいろと衝撃過ぎて、前世の僕ですら絶句してるんだけど。代官屋敷がハローワークみたいな機能を持っているのは、まあ解る。前世の知識だと物語なんかで商業ギルドなんてものがそれに当たるだろうか。この世界は代官の屋敷が商業ギルド的な役割を果たしているんだろう。住民管理も仕事の内なんだし、丁度いいのかもしれないな。でも、結婚相談所のようなことも代官屋敷がやってんの? 代官屋敷のキャパシティやばくない? ギルド並みに人数必要になるんでないかい? いや、商業ギルドと結婚相談所を兼ねてるんだったら錬金術ギルド以上に人がいそうだな。頭を落ち着ける意味でも、違う質問をしてみよう。


「税は皆一律なんですか?」


「そんな訳ないじゃない。職業で決まっているわよ。錬金術ギルドの職員だと錬金術師じゃないなら年間で小金貨1枚よ。大体所得の半分くらいを目安に取っているんじゃない? ああ、食べ物や生きるのに必要な産業からはそんなに税金は取ってないはずよ。畜産なんかから税金を高く取りすぎると肉の値段が上がっちゃうじゃない。その辺は領主様や代官が必死になって考えてるはずよ。税金は取れるところから取るのが基本って旦那が言ってたからね。」


「旦那さんは代官屋敷で働いているんです?」


「ええ、毎日忙しそうよ。でも魔境の代官屋敷に比べたら仕事の量なんて半分だって言ってたわよ。領都よりも魔境の外周の町の方が栄えてるっていう話だから。物価もその分高いのよねえ。冒険者でも乗合馬車で魔物狩りをする人たちがいるでしょう? あれは魔境の町の物価じゃあ生活できないからそうやって稼いでいるのも多いって聞くわね。…ちょっと頭を使えばいいだけなのにね。物価の安いこっちで買い込んで魔境で生活すれば多少は収入も上がるでしょうに。まあ、だから駄目なんでしょうけど。気付いてる連中はとっくにそんなことをしているわよねえ。」


「なるほど、稼いでる冒険者は基本魔境にいるんですね。」


「だと思うわよ? そりゃあ採取で食っている冒険者も多いけど、魔境で1発当てる方が収入は大きいから。錬金術ギルドに素材を持ち込んで生活している冒険者もいるにはいるけど、数はそんなに多くはないわね。大体1日に2人位よ、売りに来るのは。」


「魔境の方がやっぱり稼げるんですね。」


「そりゃあそうよ。戦う方が、戦わない素材よりも高価ですもの。そりゃあ安い素材も一杯あるわよ? でも、本命の素材は小魔銀貨からだからね。ゴブリンなんかとは訳が違うわ。」


「でも、レールの林の月光茸や満月茸もめちゃくちゃ高いですよね?」


「そんな例外と一緒にしちゃだめよ。月光茸と満月茸は超高級ポーションの材料だし。…でも、余り大きな声で言っちゃだめよ。採取の専門の冒険者でも知らない人は知らないんだから。それに夜目の利かない冒険者には採取できない代物だからね。…まあ、夜通し眼鏡でどうにでもなっちゃうんだけどさ。そんな便利なアイテムも知らない人は知らないからね。知っている人は一山当てて何処かの町で隠居生活しているのも多いのよ。この領都にも多いけど、やっぱり多いのはネラ町よね。働かない人には高額の税金が課されるのよ。どうしても働くようにね。でも、その高額の税金でもびくともしない程持っているのは冒険者との掛け持ち組よね。数年に1回、満月茸を1本でも見つければ大黒字なんですもの。その時期になれば採取に行って、後は家で休む。そんな冒険者もいるのよ。」


「因みに働かないとどれくらいの税金が取られるんですか?」


「魔境以外では大魔銀貨1枚って聞いたことがあるわ。魔境はまた違うらしいのよ。でも因みに満月茸は錬金術ギルドに売ってくれるなら小魔金貨8枚で買い取るわよ。行商人に売っても小魔金貨5枚って所でしょうね。そんな買取額だから、1本採れれば楽に、2本採れれば遊んで暮らせるわ。それを知っているからこそのこの税額よ。あ、そうそう。基本的に町に住んでも冒険者は職業とは見なされないから。冒険者ってのは働いていないのと一緒よ。宿屋や冒険者広場にいる冒険者は町民として見なしてないから無税だけど。」


「魔境は戦えなくなった冒険者が住み着くからですか?」


「そうそう、よく解ってるじゃない。流石に魔境でも年に大魔銀貨1枚も取られれば干上がっちゃうだろうからね。そのあたりは魔境に合わせた値段設定になっているはずよ。」


「でも、無職に無茶苦茶厳しいですね。」


「当然ね。町を支えているのは町人だもの。働かないただの重しは冒険者にでもなればいいのよ。生まれ持っての欠損持ちでも出来る仕事はあるもの。…因みに無職といっても12歳までは許されるわ。13歳からが税金の対象よ。まあ見習いなんかの税金なんて一応取ってるだけで本命は働いていない人からの税金よね。一番課税額が大きいって聞いてるわよ。無職でいれるってことはそれだけ金を持っている証拠ね。」


「…因みに税金を払わなかったらどうなるんですか?」


「そんなの死罪に決まってるじゃない。税金を納めに来なかったら死んだ判定されるわ。それで後で生きて町にいることが分かれば死罪決定よ。代官の手を煩わせた罪に取られるわ。町から出て行っているなら別にいいんだけど、いたら死罪。覚えておきなさいよ。」


「分かりました。後、錬金学術院にいる間の税金はどうなるんですか? 13歳から税金を取られるなら錬金学術院に通っていても取られるんですよね?」


「その辺は学費が税金の代わりみたいなもんだから。星4つ以上は只よね。まあ、錬金術師になれば後で幾らでも徴収できるからいいんでしょ、それで。―――あら、お客さんね。駄弁るのはこれでおしまいよ。」


「あら、じゃあ代官屋敷の看板を教えてください。」


「開いた本にペンの看板よ。それじゃあね。」


「そんじゃあお邪魔しました。」


 お客さんが来たので退散だ。向かうは代官屋敷、住民登録所兼職業斡旋所兼結婚相談所のようなお役所だ。この領地の貴族様の仕事場とも言える。貴族様のお屋敷は代官屋敷から直ぐ近くの場所にある。東通りの北側にあるのがお貴族様のお屋敷だ。代官屋敷もそれに倣い、東通りと北東通りの間にある。お貴族様が仕事に行くのにわざわざ冒険者広場を横切る訳なかろうて。場所自体は知ってはいたが、一応看板は確認しておかねばなるまい。


 でも、看板の確認は必要ないよなあ。東通りと北東通りの間なのはすぐ後ろの貴族屋敷をみればすぐわかる。しかし、町民になる予定もないが、一度見たいですよね。まさか結婚相談所のようなこともやっているなんて思わんだろ。まあ、相手に会ってみないとわからんから博打みたいなもんだけどな。似顔絵なんかないだろうし。


 さて、やってきました代官屋敷。近づくとは思ってもみなかった場所だ。まあ今は必要ない所なんだけど、今後使うこともあろうからな。さあいざ行かん。


「ごめんくださーい。」


 小声になってしまうのは無理もないだろうよ。お役所みたいな場所だと思っているからな。しかし、前にカウンターはあるが、右左後の3方が掲示板だ。右の掲示板は仕事の斡旋をしているようだ。宿の従業員やギルドの職員もここで募集しているようだ。後、扉側だな。そこも両面が掲示板だ。扉を向いて左側が男が女を募集するもの、右側が女が男を募集するもの。…すっごく一杯張ってある。とりあえず、ここにあるものは結婚待ちの人たちなんだろうな。入って左側の掲示板は税金関係の確認用紙や住民登録の手順などが書いてある。こっちは業務連絡用の掲示板だ。ここが一番少ない。


 そして、町人になろうと思ったら文字の読み書きが必要と確定してしまった。魔境の町は、冒険者枠とかがあるんだろうが、この町は少なくとも文字の読み書きが必須だわ。業務連絡用の掲示板が読めなければ登録すら出来ない。そして、町人出身の冒険者は文字の読み書きができることが濃厚だということも分かってしまった。一部出来ないんだろうが、殆どの町人が文字の読み書きができる、でないとこの代官屋敷も利用できないし、その情報すら入ってこないんだろう。


 しかしなんだ、旦那嫁募集掲示板はやけにカラフルなんだな。普通の紙、多分何かの皮紙が殆どなんだが、若干赤っぽい色や黄色っぽい色、青っぽい色もある。…なんで色が分かれてんだ? 何もないはずが無いよな。っよし、ちょっと聞いてみようっと。受付の人は、…優しそうなお姉さんだな。ちゃんとお姉さんだぞ。おばさんなんて言っちゃいけません。


「すみません、ちょっと質問があるんですが。」


「はいはい、なんですか?」


「なんであの掲示板の紙の色が違うんですか?」


「ああ、あれは税金が高い奴の紙だね。色の順番に普通の色、黄色、青、赤の順番に税金が高くなっていくんだ。税金が高い奴の方が金持ちだという訳だね。赤いのが少ないだろう?」


「逆に赤なのに残ってるってことは、性格が難しいとかあるんですか?」


「あっはっは、そうだよ。今の時期に赤が残ってるってことは性格に難がある証拠さ。優良物件はすでに売れちまってるんだよ。今残ってるのは結婚が難しいかもしれないねえ。歳がいってから性格が変われば多少は合うやつがいるんだろうが。後は普通の色で残ってるのは若い連中だね。見習いだからとか低い理由は色々あるが、今後黄色になったりもするんだ。普通の色でも優良なのはすでに売れちまって後は数年後にどうかって所だろうさ。結婚ったって焦る必要は無い。…まあ、20になるまでには結婚しときたいね。特に女の方は。歳をとった女の方は子供が望めないからねえ。男は多少老けてもそれがいいってやつは一定数いるもんさ。」


「なるほど、これは自分で書かないといけないんですか?」


「ああ、そうだよ。町人には読み書きは必須さ。出来ない奴は冒険者しか道はないよ。町がパンクしないためにも篩は必要だからね。」


「町人は何処で文字の読み書き計算を習うんですか?」


「基本的には自分のところである程度教えるだろう。忙しいところは教会にやるんだろうけどね。」


「町人は子供全員に文字の読み書きを教えるんですか?」


「そこはまちまちだねえ。普通は教えるだろうが、教えない家もあるかもしれないねえ。冒険者に文字の読み書きが必要だと分かっていても、自分で学ぼうとしない限りは継嗣以外には教えない所もあると思うよ。」


「…元村人が町人になることはありますか?」


「殆ど無いんじゃないかい。事情は知らないが、村人だったって人が来たってのは聞いたことないねえ。」


「そうですか。ありがとうございました。」


「そうかい、あんたはもう来そうも無いねえ。そういう顔をしてるよ。」


 まあ、もう来ないだろう。この町に住む予定はないし、別の町、魔境に面した町がいい。このセレロールス子爵領じゃない可能性が高いんだよなあ。どうなることやら。そしてまた暇になってしまった。もうそろそろ正午かな。2日連続でネズミ捕りというのもなんだから、今日は宿屋でゆっくりしよう。今日は色々聞いたし、頭が疲れた。休息も必要だよね。そんな訳で宿屋でゆっくりした。


面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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