24話 8歳 領都セロニアに帰りたい、才能を超えた先に技がある
麦の刈り取りも早々に終わり、寂しくなった畑を見つめる晩秋、いや少し初冬に掛かっているかも。いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。そろそろ寒くなって来たのでセロニアに帰りたいんだが、都合のいい乗合馬車が来ない。ブラス町まで歩いて行ってもいいんだが、それは最後の最後だ。歩き旅は勘弁願いたいので乗合馬車を待つつもりだ。馬車旅も馬車旅で辛いもんがあるんだが、それはそれ。これはこれだ。
という訳で、乗合馬車が通るまで採取の日々を送っているのだが、季節は晩秋か初冬、寒いったらありゃしない。流石の不人気霊地、こんな季節にラーラの沼地で採取やってる奴なんてどんな物好きだって話だ。答えは歩きたくない無精が乗合馬車がくるまでの合間、手持無沙汰で採取しているだけだ。まあ、一種の物好きだわな。流石に確実に初冬に入ったら歩いて帰るが、それまでは寒いのを我慢してでも採取をするぞ。
寒いのを我慢しながらも採取をし帰ってきたら、念願の乗合馬車が来てくれていた。…まだだ、まだ喜ぶんじゃない。行先がセロニアとは限らんだろう。まずは話を聞いてからだ。そう決して安心しちゃいけない。数日前にラーラの沼地の周回の馬車だったときは膝から崩れそうになったからね。
「こんにちは。何処行きですか?」
「セロニア行きだよ、少年。やっぱりまだいたみたいだね。僕だよ、覚えてる? ここに乗って来た時にも挨拶しただろう。」
「ああ! ここに来た時の御者さん! こんにちは。」
「ネラ町からセロニアに帰る予定だったんだけどね。そういえばラーラの沼地で晩秋までいるって言ってた冒険者がいたなあって思ってね。とりあえず予定もなかったし、帰るついでだと思って寄ってみたんだ。やっぱりまだいたようだね。」
おお、あなたが神だったか。いやー、有り難い。まさかここに来るときにお世話になった御者さんにまたお世話になるとは。それに一度しかあってないのに覚えてくれていたのはちょっと嬉しかった。僕も顔を見たら直ぐに分かったけどさ、顔に×印の傷があるんだもの。最初はちょっと怖い人なのかと思ったくらいだ。でもまさか向こうが覚えてるなんて思わないじゃん。お客を沢山乗せるのが仕事の乗合馬車だ。一々個人なんて覚えていられないと思うんだよね。まあ、ラーラの沼地に晩秋まで行くっていう特徴がなければ僕のことなんて覚えてなかっただろうけど。
「そんな訳で、どうする? セロニア行きだけど、乗るかい?」
「乗ります!」
「ははは、分かったよ。じゃあ大銅貨8枚だ。―――確かに受け取ったよ。明日の朝出発するからそれまでに準備をよろしくね。」
「分かりました。」
見た目は怖いけど、優しい御者さんが来てくれて本当に助かったよ。もう少ししたらブラス町まで歩く予定だったからね。初冬はもうすぐそこまで来ているかもう来てるか。…今から行って去年の宿屋さんは空いているだろうか。去年よりも帰るのが遅くなっちゃったからなあ。去年も遅くなったとは思ったんだけど、まさかそれよりも遅れるとは。向こうは魔境に近いから乗合馬車自体はよく通ったんだよね。それに比べてこっちは殆ど来なかったよ。錬金術師の行商人も見なかったんだ。どんだけ人気が無くても1年に1回は見るって錬金術ギルドで聞いてたんだけどなあ。まさか見ないとは思わないじゃん。
ともかく馬車が確保できて良かった。これで明日にはセロニアに向かって帰れる。漸く帰る用意というか伝手というかが揃ったから今日は豪勢に肉を全部使い切ろう。…最近は麦粥ばかりで寂しかったんだよね。1食分は残してあったんだけど、今日は食うぞー。そして今度からは余ってもいいからいっぱい買っておこう。肉のない生活は侘しい。食いきりの美学なんて捨てちまえ、食事は豊かな方が絶対にいい。暴食に呑まれない程度には豊かにしたって罰は当たらんだろう。肉ぐらいで暴食に呑まれてたまるかってんだ。
朝、何時もの様に起床し顔を洗いに行く。寒くたって洗うぞ僕は。これだけは譲るつもりもない。そして食事の準備。まあ鍋に麦と水を入れるだけなんだがね。保存が効いて美味しいもの募集中。生ものや野菜は保存瓶を使わないと保存できないから何かないかな、長期間保存ができて美味しいもの。まあ、そんな都合がいいものが有ったら流行っているだろうし、有っても高いんだろうな。手軽なのは肉ですよ、やっぱり。
そんな訳で食事も終わり、後片づけをしてテントを片して馬車に乗り込む。…今回も僕だけだから襲撃が有ったら出動しないといけない。でもこの辺には魔境がないから魔物も基本はいないんだけどね。…何だったかな魔物の湧き条件。魔境以外にも魔物が突然湧くことがあるらしいんだよね。まあ湧いても殆どがゴブリンなんだけどさ。人が一定以上近くにいて、魔力の淀みができた場合に魔物が生まれる…だったかな。
確かそんな事を錬金術ギルドに置いてあった本に書いてあった。魔力の淀みは基本的に町中にはできない様に昔の錬金術師が結界を張っていたはず。村にはないけど、村には一定以上の人がいないから大丈夫だとかその本には書いてあった。村の人数を増やさないのにも理由があったのはその時初めて知りました。畑とか沢山作ればいいのにとか村と村の間に村作れそうとか思ってたけど、それなりに考えられて今の配置になっているのだろう。…それでも町の周辺にはどうしても魔力の淀みができるのか、魔物が湧くみたいなんだよね。まあ、冒険者の小遣いになるんだけどさ。
まあここまで魔物の話があったんだから襲撃でもされたのだろう。そう思った人もいるかもしれないが、何もなかったんだよな、これが。幾ら淀みができ易いからって早々襲撃のようなイベントは起こりませんとも。そんなに魔物が出やすかったら町の周辺を探索する冒険者が増えるだけですよ。淀みで魔物が湧くのは良くて1年に数回。こんな回数で僕がエンカウントするはずがないじゃないですか。主人公補正みたいなのはありませんよ。…前に3回連続で襲撃されたのはイレギュラー、僕はそんなに運値が低い訳ではないと思いたい。人によっては運値が高いって言いそうなイベントだったけどね。
そんな訳で何事もなく、前の宿屋に泊まりましたよ。金額も前と同じく大銀貨5枚。部屋を冬の間貸し切りだ。今回は306号室、最後の部屋だって言われたよ。良かったまだ空いてて。新しい宿を探すのも一苦労なんだよね。それはともかく、この宿屋12部屋しかないのか。…まあ、大部屋宿に比べれば部屋数は多い方だし、利益が上がってるんだから問題ないよね。冬ごもりで小金貨6枚だもんね。結構な額だとは思うよ。他の季節に泊り客がいるのかは判らないけれど、小金貨もあれば夫婦2人と子供がいても十分に食っていけるからね。農民が多いから麦は安いもんね。麦が安いから酒場とかあっても流行りそうなんだけど、冒険者が金を持っていないからな。多分魔境なんかだとあるとは思うんだよ、酒場。あそこで活動している冒険者は金を持ってるからね。酒もよく売れるだろう。まあそんな訳で、今日は美味しい夕飯を堪能して寝るだけだ。食事つきの宿のいい所だよね。ここの飯は美味いし、いいことづくめだ。
朝、久々にベッドで寝たから気持ちよくて熟睡した気がするな。さて、顔を洗って朝飯にしましょうね。ここは共同井戸も近いから有難いよほんと。…顔を洗う奇行をするのは僕ぐらいなんだけどさ。さて、朝ご飯も食べたことだし、自由市に行く。今年はちょっと鍛冶屋のコーナーに用事があるんですよ。第一番は今使っているレイピアとマンゴーシュのメンテナンス。去年もやっとけよと去年の僕に言ってやりたい。
…まあ、毎年メンテナンスが必要というか、本当はもっとメンテナンス回数が多くてもおかしくないと思うんだが、いかんせんそのあたりの常識が判らない。前世の僕も知らないといっているし、どうなんだろう? ただ突き重視、切れ味重視のレイピアだ。メンテナンス回数は普通よりも多い気がする。重量で叩き斬る訳じゃなく、切れ味が物を言う武器だ。幾ら『エクステンドスペース』で保管しているからって、切れ味が鈍らないとは限らない。鈍ると話にならないからな、レイピアは。それにマンゴーシュもだ。投げナイフとしか使ってないが、これだってどっちかといえば切れ味重視の武器だ。今はネズミ捕り位にしか使ってないが、水で濡らした布で拭いているとはいえ研いでなんていないし、こっちもメンテナンスが必要だろう。だから鍛冶屋に預けに行こうと思っている。
そしてもう一つの目的は、予備の武器を持っておきたいと思ったからだ。今はレイピアとマンゴーシュを使っているわけだが、2つとも剛の武器ではなく、どちらかといえば柔の武器。幅広肉厚の剛剣ならともかく、幅狭肉薄の柔剣だと折れる危険性もある。才能にそって動かせればなんとでもなりそうな気はするが、過信はいけない。念のためにもう一本同じ武器を持っておいた方がいいと思う。お金がないなら考えないといけないが、幸いにして金はある。この際、レイピアをもう2本とマンゴーシュを9本仕入れておきたいと思う、ちゃんと鉄製で。
そんな訳で、鍛冶屋のコーナーにやってきました。細工と違って剣だから、この前と一緒の鍛冶屋という訳にはいかんだろうし、武器の出来や鉄製の武器を扱っているかで決めよう。…武器の出来は才能だより。頭でわかっていることは、重心が先ではなく手元にある方がレイピアは扱いやすいということ位か。まあ、持ってみて判断だな。最悪オーダーメイドだ。でも、何処でも似たような武器は作っているようで、レイピアもそこそこ売っている。ただし、殆どが魔鉄製だ。鉄の武器がいいんだよな。安い魔鉄製よりも丈夫だし。…おっ、ここの武器は鉄製だな。レイピアは…無いか。でもここはキープ。オーダーメイド先に出来ればいいからね。
そんな訳で、鍛冶屋コーナーをぐるっと回ったが、鉄の武器を扱っているところが少なかったな。やっぱり冒険者の質のせいかな。安い魔鉄製が売れ筋なんだろう。鉄製の細工も去年の眼鏡のところ位しかなかった。眼鏡はあそこに頼む他無かったってことか。鉄製の剣の候補も3つ程に絞られる。いや、別に3軒しか鉄製品を扱ってなかったって訳じゃないよ。
他の所には剛剣が多かったんだ。最初にキープした店もそうだ。出来れば細剣を主に扱っているところの方がいいじゃない。こういうのは造り手にも癖があるものだ。剛剣は重心が剣先にあるほど威力が上がるからな。細剣は威力というよりも切れ味重視。手元に重心がある方が取り回しが利くってもんだ。だから細剣をメインで扱っていた3軒が候補に上がったわけだ。その3つで一番いいのが何処かは解らん。レイピアほど細い剣はなかったんだ。だから一番細い剣、ブロードソードがあった店にしようと思う。ブロードソードも切れ味重視の剣、比較的細い剣だからね。名前の意味は幅広の剣なのにね、不思議だよ。
そんな訳で、ブロードソードが売っていたお店にやってきました。もう一度品ぞろえを見る。細剣中心の鍛冶屋の様だし、レイピアも作ってくれるだろう。マンゴーシュは…ないね。投げナイフはあるが、んーパリィングダガーなら何もマンゴーシュに拘る必要は無いんだよな。というかレイピアも使い勝手がいいからこれにしているが、ブロードソードも買っておいて損はないよな。体格が追いついてないから今はレイピアの方が使いやすいが、ある程度大きくなったらブロードソードに切り替えるかもしれないし。予備の武器だし、レイピアは作って貰うとして、もう一本はブロードソードにしてみようか。それに合わせてパリィングダガーも色々使ってみよう。どうせ直近の使い道は左手武器よりも投げナイフとしての取り回しだ。一番いいものがどれか試してみよう。
まあ、そういう方針で行くとすると、ブロードソードも選ばないとな。片手剣だし、切れ味重視の剣だからやっぱり手元に重心がある方が取り回しがいいんだよね。うーん、思ったよりも重心が先にある。もうちょっと手前の方が手首の使い勝手がいいんだよな、…うん、これなんか丁度いい感じ。ブロードソードはこれにしよう。後はパリィングダガーだが、主に投げナイフだな。これは沢山の種類がある。…とりあえず1種類ずつ買ってみて使い勝手を確かめるか。9種類選んでみて使い勝手の悪い物は最悪売ればいいんだし。…9種類もないけどね。ここにあるのは4種類だ。
「すみません、この剣と投げナイフをこの9個お願いします。」
「お? おお、色々確かめていたが、納得がいった感じか。そうさなその剣は小金貨5枚だ。投げナイフは一律小金貨2枚だな。〆て小金貨23枚だ。―――毎度あり。」
「あと、これと同じ武器を打って欲しいんですが、出来ますか?」
「ああ? …やけに細い剣だな。重心は手元、切れ味も必要だな。主体は突きか。まあ打てるぞ、1日だな。どうする?」
「出来るなら同じ剣を打って欲しいです。あとメンテナンスもお願いします。あ、この投げナイフもメンテナンスをお願いします。」
「ああ分かった。だが、投げナイフは分かるが、この細剣も研ぎ直すのか? …まあやれってならやるが。研ぎ2本で大銀貨2枚。この細剣を打つのに小金貨3枚だ。―――毎度あり。坊主、結構稼いでんな。いい冒険者じゃねえか。広場に屯している奴らとは違うようだな。」
「まあ、鉄製を買える程度には冒険者してますよ。」
「鉄製を買えるなら十分立派な冒険者だ。この細剣を見る限り魔境に潜ってる感じはしねえしな。しっかりと採取してんならこれくらいの武器は当然持てるからな。それに予備の武器を持とうって考えは正しい。特にこんな細剣は折れたらどうしようもないからな。」
「そうですよね。この細剣だと折れる危険性もありますよね。一応斬れるのも確認はしてますけど、斬るのは控えた方がいいですか?」
「いや、鉄製だし作りもしっかりしてるから斬るのも問題ない。ただ余り大物の相手はせんことだ。こいつじゃ体重を乗せた一撃には耐えられねえ。上手く斬らんと肉の途中で止まる羽目になる。腕の見せ所だぞ、坊主。こいつは叩っ切る武器じゃねえ。切り裂く剣だ。腕で振るうんじゃなく体全体を上手く使って裂く様に斬らんとな。」
「解っているつもりですが、才能次第ですね。才能の思うように刃を当てていく感じで使ってますから。」
「才能があるなら才能が上手く使ってくれるな。…つうかその歳で才能が剣筋を教えてくれてんのか。愛されてるな、才能に。」
「そういえば前にも言われましたね。才能に愛されているって。そんなに違うもんなんですか?」
「おお! 俺らも少なからず鍛冶士の才能もちだが、鎚を振るうところが解るようになるには少し時間が掛かったってもんよ。いい剣を打つには、才能が何処を叩けば思い通りの武器になるかってのが判るときが来るんだ。それが出来て漸く半人前よ。そっから才能を上手く使いながら才能を越えた物を作れて一人前だ。剣士も同じだろうよ。才能の動きはあくまで基礎だ。そこから自分の技に昇華してくのが修行ってもんだ。…まあ、星の数が多ければ多いほど技の域まで達した道筋をつけてくれるんだがな。俺も受け売りだからよう、人のことを言えねえが、才能を越えたところに本物の技ってものが見えてくるらしいぜ。それもまずは才能に愛して貰わにゃ始まんねえんだ。坊主はもう才能に愛してもらえたんだから、後はそれをどう技に変えていくかだ。剣士の道に進もうってんなら極めんのは大変だぞ、坊主。」
「アドバイスありがとうございます。でも、僕の道は錬金術師になることなので、剣の道には寄り道程度にしか進まない予定です。」
「なんでえ、他の道に進むって決めてんのか。錬金術師は才能じゃ計れねえらしいからな。俺も聞いた限りだから判らねえが、金が思っくそ掛かるって話じゃねえか。極めるんなら貴族くらいの金持ちじゃないと難しいってくらいは知ってらあ。」
「みたいですね。なので魔境でお店をやれるくらいには成ろうと思っているので、剣の方も技までもっていきたいですね。錬金術は言わずもがなですが。」
「魔境で店か、いい夢じゃねえか。応援してるぜ。」
「ありがとうございます。剣の方、明日また取りに来ます。」
「おう、俺はこれから坊主の剣を打たにゃならんからもう上がりだな。明日またこの辺で待ってるぜ。」
買い物だけじゃなくて色々な話が聞けたな。才能を越える技か。錬金術師の鉄迎派は多分技まで持っていくことを目標の1つとしているんだろうな。…僕のやっていることって、鉄迎派に似ているというかそのまんまなんじゃなかろうか。んじゃあ僕の入る派閥は鉄迎派になるんだろうか? どうなんだろうなあ。錬金学術院に行く楽しみがまた増えたような気がするな。とりあえずジュディさんの様に、幻獣を追いかける幻玄派には魅力を感じないから無しとして、後はどうだろうか。
ゴーレムは作ってみたいよな。錬金術師を目指す切っ掛けになったのもゴーレムだったし。でもジュディさんはどの派閥も最終目標的なものは寿命をなくすことを目的としているといっていたが、ゴーレムがどう寿命をなくすことに繋がるんだろう。自分がゴーレムになるのか? …それは嫌だなあ。まあ僕は寿命がってのは抜きでいいかな。永遠の命ってのに魅力をいまいち感じないんだよね。だから庶性派の鉄迎派辺りになるのかな。鉄迎派がどうやって寿命をなくすのか知らないけど、何か討伐したい魔物がいるんだろうか。…前世の記憶とかだと、物語になっちゃうけど竜の生き血なんかが不老不死の素材として使えそうよね。多分、そんな強い魔物を倒して不老不死の霊薬を作るとかそんなところなんじゃなかろうか。
まあ、何派でも店はできるって錬金術ギルドで聞いているし、多分鉄迎派にはお世話になるだろう。魔境でお店をやるんだ。戦えないと素材採取も捗らないだろう。…でも、魔境でお店って成り立つのかな? ポーション売るだけになりそうな気もするが、まあ、最悪自分のために錬金術を使うことにして、お店はついででいいのかもしれないが。もう一生を生き抜くだけの金はあるんだよなあ。錬金術師になってお店をやってみたいってのが1つの夢なんだが、なるべく錬金術でアイテムを作って生活したいよね。ポーション製造機にはなりたくないけど。
お店に商品を並べるにしても、錬金術大辞典に載っているものは商品になる物もあるが、半分くらいは公開されているけど、使わないよって物も多いんだよね。まあ、売れ筋商品は非公開にするよね。公開したら儲からないんだから。僕も売れ筋商品を考えないとなあ。庶民でも使えるものがあるといいよね。…庶民が使えそうなものって何だろう。洗濯用洗剤とか? 女性だと化粧品とかトリートメントとかか? …売れそうだよな、知って貰えればって注釈は付くが。水仕事をするから手荒れを治すものとかも売れそうだよね。これらは要研究だな。でもなんとなくだけど、男性よりも女性の方が錬金アイテム使いそう。男は化粧よりも筋肉だったりするからなあ。後お金。お金のない愛はこの世にはなかなかない。生活苦を許容してくれる女性って少ないのよね。現実的なのよ、女性の方が。
そうなると、錬金術だけで食ってくのって難しいのかもしれない。魔境にお店を作って、半分冒険者の真似事しながら運営ってところなのかな。上級ポーションが売れれば何にも問題無いんだが、上級ポーションも中金貨1枚するんだよね。それ以上稼げる冒険者がいて、かつそれ以上の値段になる魔物がいないと意味がない。中金貨1枚以上。最低でも小金貨数枚の獲物がいる魔境か。
…そう考えると結構ありそうというか、深い所には絶対にいるだろうな。鉄の剣だって中金貨からなんだ。ジェマの塩泉の魔物がどれくらいになるのかは知らないが、鉄製品を売っているってことは売れる見込みがあるってことだからな。そう考えると上級ポーションも結構売れそうだな。それだけで生活は出来てしまうな。…錬金術だけで食っていけそうだな。…ポーション製造機は嫌だが。
しかし、現実はポーションが主力なんだろうな。他の錬金アイテムは知られていないのが殆どだろう。錬金術師に相談して解決策を模索する位の冒険者でないと客にならないからな。となると他の客は町民となるわけだが、町民が錬金アイテムをわざわざ買うかという話になる。…村しか知らないから判らないんだけど、買い物って基本自由市でだよな。錬金術師のお店に来たいと思えるような商品を作っても一旦は自由市で知名度を上げないといけない、というよりも自由市がメインになりそう。こうなってくると売り子を雇わないといけないんだが、売り子なあ、多分そこらへんは配偶者がやるんだろう。ってなると結婚しないといけない訳で。結婚相手なんてどうやって探せばいいんだ? 町民から探すんだろうけど、何処で出会えばいいんだろう。…食い物屋で店員をやっててばったりと位しか思い浮かばんぞ。
脱線に脱線を重ねて色んなところに思考が飛んで行ったが、ゆっくりと歩いている間に宿屋に到着してしまった。むう、続きはまた明日考察しましょうかね。…でも宿屋に帰ってきてもやることが無いんだよなあ。時刻はまだ午前中。休んでもいいんだが、どうしようか。また冒険者ギルドを冷やかしに行って、ネズミ捕りでもしましょうかね。今来た道をまた戻り、冒険者ギルドへと歩いていくのだった。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。