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2話 2歳 錬金術師を志しました

 僕の名前はヘルマン。父のアツィオと母のノエリアから産まれた、農村の農家の3男だ。今は2歳だが、実は前世の記憶が残っている。前世は日本という国でサラリーマンをやっていたようだが、詳しくは覚えていない。でも此処は記憶にある前世の世界とは違う、それだけは間違いない。前世では見たこともない動物を見つけたり、魔法使いがいたりと色々違う。何の因果なのかは知らないが、僕は転生した事になったみたいだ。


 前の世界のことは置いておいた方がいいだろうというのが、今世の僕の結論だった。だって常識から何から違う世界に産まれてきたのだ。この世界にはこの世界の常識というものがある。それを狂わせると碌な大人にならないだろうとの考えだ。多少、前世に引きずられてしまうこともあるだろう。子供らしからぬ子供であろう。…ある程度は許容範囲だと思われる。すでに家族には頭のいい子として扱われてしまっているし。


 しかし、精神が大人なのだ。今さら童心に返って他の子たちと泥遊びという訳にはいかない。…子供に戻りたいと、1度は思ったことがあるだろう。なら戻ってみるといい。下手に戻ると孤独しか友達が居なくなるから。事実僕は、村の子供たちの中に入っていっていない。楽しそうに何かをしているが、何が楽しいのかよくわからない。しかもこの世界、娯楽らしい娯楽が無い。


 見るもの全てが新しいが、見るものの大半は感動を覚えない。知らない生活、でも結果の見える生活。両親が猟師から鳥を分けてもらった。知らない鳥だ。綺麗だと思う。しかしそれだけだ。結果は腹の中に収まるのだ。感情が大人なのだ。無邪気に今日のご飯は? との質問すらしない。


 しかし、そんな大半が灰色だとしても、この世界には前の世界にはない色があった。魔法、前の世界には無かったもの。この世界で初めて感動を覚えたもの。それが、魔法だった。


 初めて見た魔法は、錬金術師がやっている行商で見た。ゴーレムが馬車を引いていたのだ。ゴーレム車とでも言えばいいのだろうか、それを見たのだ。初めて見たときは「おぉ~」と思わず声が出た。近づいて触っていいのか聞いてもみた。4足歩行するケンタウロスのような荷運びをするゴーレム。それに触れた瞬間にこれだと思うものがあった。こんな不思議を学びたいと思った。行商人に聞いた、どうすればこんなことが、魔法のような事が出来るのかと。その答えは錬金術師になるといい、という答えだった。


 どうすれば錬金術師になれるのか、それが問題だった。行商人が行った後、両親に錬金術師になりたいと正直に告げた。…答えは苦笑いだった。そこからは僕に言い聞かせるように言った。曰く、6歳になると、教会で星振りの儀と言うものをやるらしい。そこで神様に才能を振り分けてもらうのだという。その星振りの儀で錬金術師になれそうなら目指してもいいとのことだった。


 錬金術師の才能を持っている確率は10人いれば1人くらいは持っているとのことだ。…ただし、星の数がどうなのかは解らないとのこと。人には10個の才能の星があるらしい。その10個を神様が振り分ける。1個を10の才能にかも知れないし、10個全部を1つの才能に振り分けることもあるらしい。…要するに才能というガチャで錬金術師を引かないと無理だと、そういうことだ。


 それでも、目指すのならば金を貯めないといけないということも解った。いや、それは解っていたと言うべきか。両親曰く、錬金術を学ぶ学校が王都にあるらしい。そこに行くだけの金を貯めないといけないとのことだった。幾ら貯めればいいのかの目安も解らない。しかし、諦めるつもりは無い。まず、ガチャを当てないと話にもならないが、ガチャが当たってから準備しても遅いだろう。どうせ俺は3男だ。家に残り続ける理由はない。やれるだけのことはやってやろうとそう思った。


 であれば早速行動だ。朝、両親にこの村に錬金術師はいるのかと聞いた。居なければ居ないでもいいが、いるのであれば突撃しようと思っている。そして幸いにも、この村には錬金術師がいるという。村といっても村はずれにだが、林の前に家を建てて住んでいるらしい。時々ポーションを買いに村の人も行くという。いない時も多いらしいが、基本いるとのことだ。子供の足で走って15分。善は急げと早速突撃した。


 走って15分。林の前に土造りの家があった。一応店としても構えているらしく、家には読めないが看板もあった。…走ったせいで若干興奮が冷めてきて、怖い人で無いことを祈りながら扉を開けた。扉を開けると、扉についていたベルが鳴り、店の中に響いた。


「ごめんください」


「ちょっと待っとくれ!」


 奥から女の人の声がした。張りのいい声がしたので、若いのではないかと思う。声の通り少し待っていると、カウンターの向こうから30になるかどうかの女性が入ってきた。


「あら、いらっしゃい坊や。お使いか何かかい?」


「違います! あの、錬金術師になるにはどうしたらいいですか? 何を準備すればいいですか? 幾ら必要になりますか?」


「ちょ、ちょっと待っておくれよ。…坊や、星振りの儀をしてからの方がいいんでないかい? まだ終わってない歳だろう」


「終わってからじゃ遅いんです。お金も貯めないといけないから。何か出来ることはありませんか?」


「お金って、親からもらえば…無理か。平民だものね。わかったわ、まずはこれを出来るようになりなさい」


 そういうと、女性の右手の辺りが白く裂けた。そして中から瓶や何やらを取り出し、戻した。


「これは『エクステンドスペース』という魔法よ。まずはこれを使えるように頑張りなさい。魔力は…ちょっとこっちに来て両手をカウンターの上に載せなさい」


 そういわれたので、両手をカウンターの上に載せる。…ちょっと届いてないけどしょうがない。まだ体は小さいんだもの。すると両手を握るように持たれ、その手と手の間にエクステンドスペースを発生させた。


「これが魔力の感覚よ、覚えたわね。それでさっきの魔法を発動させなさい。後は教会に行って文字を教えて貰いなさい。文字を覚えたらまた来なさい。それまでに魔法を発動出来ていたらなおいいけど、先に文字よ。…がんばりなさいな」


 最後に小さく応援してもらった。とりあえずやることはわかった。『エクステンドスペース』の魔法を覚えることと、文字を覚えること。…まだまだ時間は午前中。次は教会に行って文字を教えて貰わなきゃ。教会の場所はわかる。十字に丸が付いているものが屋根にあるのが教会だ。行ったこともある。さっき走って来た道をまた戻り、今度は教会に向かった。


 教会は村の真ん中にある。村長の家の井戸を挟んで前が教会だ。立派な石造りの教会で、扉も大人よりも倍ほど大きい。観音開きの門は両方開いており、出入りが自由になっている。恐れずに足を踏み入れる。悪いことをするわけでもなし、堂々と入っていく。中には掃除をしている神父さんとシスターさんが居て、足音で気付いたのだろう。こちらを見る。


「ようこそ教会へ、お使いか何かかな?」


「あの! 文字を教わりに来たんですけど…どうしたらいいですか?」


 神父さんもシスターさんも驚いたような顔をしたが、ふと優しい顔で神父さんが言った。


「なるほど、文字のお勉強ですね。シスターカミラ、説教室に案内してあげてください。そこで文字の読み書きを教えてあげてください」


「わかりました、神父シモン。さあ、こちらにいらして」


 そういわれたのでシスターに着いて行く。礼拝堂の前を曲がり、奥へと続く道の直ぐ近くの部屋に入れられた。その部屋には何組かの椅子と机があるだけの部屋で、中を見まわしながら待っていると、シスターが教本をもってやってきた。


「さあ、こちらに座って。では、始めから読み聞かせていきます。文字のところを指さしながら読んでいくので、何度も聞いて覚えましょう。ではまず最初から。かみは――――――」


 聖典の文字を追いながら文字を覚えていく。どうやら表音文字らしく、日本語のひらがなを覚えるのに近い感じがした。…これなら早い段階で文字を覚えられそうだ。後は文字が何文字あるかだが、どうなのだろう。…とりあえず1文字1文字覚えるしかない。


 …何も言わずに勉強しているともう夕暮れ時になっていた。文字の方も1日でだが、なんとなく読める部分もあった。この感覚が増えていけば読みは全ていけるだろう。書く方は読めさえすれば何とかなる。1月もあれば十分やれると思う。…魔法はまだ試してないが、1月じゃ難しいと思う。前世でもやったことのないことだ。全然自信がない。魔力を感じることは出来たのだ。後は動かし、事象を捻じ曲げるだけだと思う。そういう感覚が手の中に残っている。


「今日はこの辺りで終わりです。よく長時間頑張りましたね。またお勉強がしたいときは教会に来てくださいね」


 シスターさんからまた来ていいとの言質をもらい、教会を後にする。後は親に報告するだけなのだが、気が重い。朝と夜に糞尿の処理をしているだけの身で、独立後の色々をやらせてもらっているわけだからな。しないといけない事とはいえ、まだ2歳。成人とされる12歳までまだまだ時間はある。しかし、やっと自分のやりたいことを、将来なりたい自分が見つかったのだ。どうかこのまま自由にやらせてほしいものだ。


 家に帰って今日あったことを伝えた。錬金術師さんには頑張れと言ってもらえたこと。課題を与えられたこと。教会に行って文字の読み書きを教えて貰う予定のこと。全部、今日あって明日からの予定も全部話した。


「…どうせ家から追い出さにゃいかんのだ。頑張ってみろ」


「そうね。ちょっと早すぎるとは思うけど、昔から手のかからない子だったものね。頑張りなさい」


「わかりました。精一杯頑張ってみます」


 ちょっと人より早いかもしれないけれど、独立のために、今から頑張ることにしますか。あ、『エクステンドスペース』の練習は寝るまでみっちりとやったけど、欠片もできる気がしなかった。


面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 〜。毎に行変えないのですか? 読みにくい
[一言] 段落分けが少なくて読むのを断念。 ページを開いた瞬間のパッと見の印象が活字の暴力って感じで、視覚がお腹いっぱいになってしまいました。 逆に一文ずつ改行とかしちゃうと今度はのっぺりとしてしま…
[一言] 4-5歳ならともかく流石に2歳は早すぎる、やっと話せるようになってきたくらいの幼児が流暢にこんなこと言い出したら気味悪い気がする
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