184話 28歳 開戦、勝利、愉悦
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戦場からおはようございます。今日あたりに開戦となりそうですね。12月の下旬ですよ。どうも、ヘルマンです。
いやー到着から待たされましたね。こっちも向こうも戦力が揃うのに時間がかかったかかった。向こうは前評判通り200万人位、こっちは100万人弱位まで増えていそうな感じですね。
それに伴い、陣幕も右へ右へと動かして行きましたからね。最右翼なのは変わらずです。横一列陣形も変わらずです。全体の陣形も横列陣形、流石に1列では無いけどね。10列位はあるんじゃないかな。
軽く準備運動をしながら待っているわけですよ。向こうさんも隊列組んでるし、中央で舌戦をしてからの開戦でしょうかね。……舌戦は聞こえないだろうけど。興味はあるんだけどねえ。
鎖帷子も着てバンダナも巻いた。準備は万端ですよ。開戦はまだかなあ。早く終わらせて帰りたいんだけどなあ。普通はどのくらい戦うんでしょうか。
200万対100万だから20日とか普通に戦いそうだよな。当たっては引き、当たっては引き、削って削って最終的に痛み分けで終わりとそんな感じなんでしょうか。
ポーションがあるからなあ。一撃死とかで無い限り回復は可能なんだよね。何処まで面倒を見てくれるのか知らんけど。僕はとりあえず至高のポーションも貯えて来ていますが、使うことは無いでしょ。
多分、キリがないからなあ。僕1人の持ち物は僕が自分で使う用です。万が一の時の物です。そこは譲れません。全ての人を救える善人でもないつもりです。
出来ることといえば、なるべく早くこの戦争を終わらせることくらいですかね。……多分、1日で終わりますよ。3000人の騎士爵が、1人500人も斬れば本陣まで到達するでしょう。
流石にもっと早く撤退するとは思いますがね。……撤退の時間を与えることなく呑み込む可能性も有りますが。向こうもこっちの騎士爵レベルの戦力を持って来ていたら流石に撤退されるだろうけど。
親衛隊くらいかな? 居ればだけど。王が来ているのか、王候補が来ているのかで全然違うと思うんだが、流石にその辺の情報は来ていない。上層部は知っているんだろうけど、一兵卒である僕らが知っていてもね。
まあ、警戒はしておきましょうね。向こう側に一騎当千の猛者がいる可能性は捨てないで置きます。何があるのか解らんのが戦闘ですからね。戦争も同じですよ。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」
おお、なんか向こうで声が上がってますね。舌戦の最中でしょうか。それとも舌戦の勝負が着いたんでしょうか。聞きたかったなあ。何を言い合ってたんだろう。
最右翼なのが惜しいですね。中央当たりで聞いていたかったなあ。拡声器を使う訳でも無かったので、大声での舌戦だったんだろうなあ。
おおー、魔法が飛び交ってますね。舌戦が終わったんですね。魔法戦ですか。……敵に動きは無いですね。とりあえず、魔法戦の行く末を見守りましょう。
色とりどりの魔法が飛び交っているのは綺麗ですねえ。……巨大な火球も飛んでますね。多分魔導爵の誰かだろう。魔力の効率が星の雫のせいで上がってるからなあ。戦術級の魔法も使える人は使えるんですよねえ。
おお、相手方も反撃が激しい。……ファイアートルネードと言ったところでしょうか。火属性と風属性を合わせて使って来てますね。魔法使いに力を入れているというのは嘘では無いようです。
迎え撃つのは、濁流の渦潮。水属性と土属性と風属性でしょうか。こちらも負けていませんね。……対消滅ですか。威力対威力のド迫力の戦いですねえ。
うーむ、敵軍に動きなし。自軍にも動きはなし。魔法戦が終わるまではこのままと言ったところでしょうか。魔力切れになるのを待つのか、いい感じの頃合いに突撃するのか。判断は将軍と軍師さんがしてくれるでしょう。
魔法が飛び交いつつ、30分程でしょうか。敵陣がゆっくりとこちらに戦線を上げてきました。魔法戦は不利と見たのかな。攻めて来ましたね。
『各員、戦線を上げろ。そのまま左へ左へなだれ込む』
さて、指令が来ましたよ。隊列が崩れない程度の速度でぶつかりに行きます。……馬鹿正直にぶつかってはやりませんがね。
戦線を上げつつ、ぶつかる30歩手前から、飛剣乱舞を飛ばす。他の騎士爵たちも一緒の考えだったのか次々と閃が飛ぶ。……ぐろい無双ゲームの様な感じで敵兵が飛び散って行きますね。
負けるわけには行きませんので、手加減は抜きです。同士討ちにならないようにはしますが、まだそんな時間じゃない。飛ばして飛ばして飛ばします。
一瞬の内に、敵左翼が崩壊して、左へと雪崩込む。……斬り飛ばすのは他の人に任せましょう。僕らは包囲に動きましょう。
すでに逃げの態勢に入っているのは無視だ。逃げるならどうぞ。……他の人が斬り飛ばしました。慈悲は無し。戦線を敵左翼から囲む様に後へ回り込もうとします。……当然の様に防御に出る敵方ですが、まあ斬り飛ばされて完全に敵左翼が崩壊しました。
このまま中央まで戦線を押し上げますよ。……足元には死体の破片が残っているが、無視して戦線を押し上げる。……僕の仕事が殆ど有りません。
最初の目の前の敵兵を10から20程斬っただけで、後はもっと中央に近かった人たちがどんどんと戦線を上げていっているので、付いて行くだけになっております。
ケルピーのレイドの様な感じで、魔物の代わりに人が飛んでますが、こりゃあ昼までに片が付きそうですね。敵本陣が何処にあるのか知りませんが。
魔法戦はこちらが優勢で決着が付いたのかな? ひたすらに中央付近に魔法が飛んで行っている。反撃は無しだ。多分魔力が切れたんだろう。
普段はどんなのかは知らないが、魔導爵300人は大きいだろう。魔法使いを重視しているとは言っても、才能を望む子供が居なければ増えないからな。祈ってるのかどうかも知らんし。
そんな訳で、包囲する前に戦線が押しあがって行くので付いて行くだけになっております。なんだかなあ。味方が強いとやることが無いですね。楽でいいですが。
普通とは違う戦闘になってるでしょうね。敵左翼が崩壊しながら中央に戦線が伸びて行っているんですから。伝令が間に合うのかな。
ああ、中央付近が後退していきますね。あれが本陣でしょう。流石に大将首は取らせて貰えませんか。まあ、仕方ないでしょう。向こうも緊急事態なのは解っているようで、凄い速度で引いていく。
本陣が引くのと同時に色んなところの戦線が崩壊した。……もう勝ちですね。これ以上やる意味はあるんでしょうか。
『これより掃討戦に入る。10年は戦を仕掛けようと思わない様に殲滅する』
あっちゃー。手を緩めない訳ですか。まあ、僕の仕事は有りませんが。付いて行くだけだ。崩壊した戦線を包囲しに行くが、流石に全部は無理だからな? 100万人以上は逃げ帰ると思いますよ。
まあ、包囲の構えだけは見せないと。逃げ遅れた者には仏になって貰って。中央へ中央へどんどんと向かっていく。本陣には逃げられたが、このままだと敵右翼まではいけるかもしれないな。
どれだけ逃げ帰れるんでしょうかね。ここまで兵士の質が低いとは……考えては居ましたが、まさかその通りになるとは。はあ、面倒だなあ。
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」
3時間程の戦闘で、戦争が終わりました。……逃げ帰れたのは50万人程でしょうか。結局敵右翼まで包囲したからな。敵右翼は完全に逃げ遅れた感じですね。
まあ、こんなに早く終わるとも思ってなかったでしょうからね。味方ですら思ってなかったでしょう。かなり酷い被害になりましたねえ。
……傲慢には呑まれていない。大丈夫。それよりもこの惨劇だよ。どうするんだこれ? 放置って訳にはいかんよな。アンデッド化する……以前に魔物が湧くな。
聖属性が大量に放出されたはずだからな。ケルピーレベルの魔物が出現してもおかしくない程人が死んでるからな。魔境にはならんよ。龍脈が噴き出して居ないから。
死体を回収しても意味がない。死体には聖属性は殆ど残っていないはずだから。……暫くの間は定期的に魔物が湧くだろう。
まあ、魔物が死体を掃除してくれるかな。魔物が餓死することは無いんだが、餓死寸前になる前に何か食うからな。錬金生物は餓死するよ? そこは何でかは解らない。まだ解っていない。
さて、こちらの被害は殆ど無しに等しい。死んだ者も多くいるよ? 殆どが底辺冒険者だけど。正規兵にはほぼ被害は無さそう。被害が出る前に終わったからな。
陣幕に戻ってきて、温かい飲み物を貰う。戦闘後なのに心が凪いでいるんだよなあ。なんかここで人が沢山死んだっていう実感が余りない。
なんでなんだろう。荒ぶってもいいはずなのに。……傲慢に呑まれていない。……はず。……うん、大丈夫。問題はない。他にも呑まれていないはず。
余りにも早く終わりすぎたせいで、実感が湧いていないのか? それともこれから波が来るのか。ふー。考えても埒が明かないな。でも何かしら異常は出ている気がするんだよなあ。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」
遠くで声が聞こえるな。勝ったもんな。勝鬨を上げてるのか。終わってからも上げたじゃん。なんでまた声を上げているんだ?
『各員傾聴、声を挙げよ。気持ちが高ぶっているものもいるだろう。逆に凪いでいるものもいるだろう。それは悪い感情だ。声を挙げよ。その感情は戦場に置いて行くものだ。声を挙げよ』
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫んだ。腹の底から叫んだ。……静まっていた感情が高ぶってくる。それでも声を挙げ続けた。全てを吐き出すように。この場に置いていくように。
気が付くと涙が溢れていた。別に悲しいことが起こったわけでもない。負けてないし。勝ったんだし。他人が沢山死んだが、他人が死ぬことなんてよくあることじゃないか。
それでも涙は止まらなかった。叫び声と共に、体の底から溢れてくるように。各所で響く雄たけびが、鎮魂歌のように響き渡る。
そのまま、仰向けに寝転がる。ああ、空が青いなあ。終わったんだな。漸くと実感が湧いてきた。……終わったんだ。戦争が。
「ははっはははっははははははははーっはははははは――――」
この感情はなんなんだろうな。解らない。けど、とても楽しい感情だ。でも置いて行かなきゃいけない感情だ。7つの大罪以外の感情だろう。それでも悪い感情は置いて行かなきゃな。
一通り叫び、泣き、笑ったところで、落ち着いた。……正直すっきりした。何か悪い物が中に居た気がしてたんだ。傲慢でも強欲でも憤怒でも無い何かが。
何だったんだろうな。あの感情は。戦争に身を置くものは、あれにやられるんだろうか。とても、愉快で、楽しい感情だった。戦争が好きで堪らなくなるような。
一種の麻薬なのかもな。あれに堕ちてはいけない気がした。……もう大丈夫。落ち着きました。さて、一通り叫び泣き笑ったせいで、お腹が空きました。
温かい飲み物じゃなくて何か食べたい。そんな気がしてきましたよ。戦場ではお昼を食べる習慣が無いんでしょうか。……一応つまめるものは有りますが、空気は読みましょう。
時刻は朝の7時を過ぎたところくらいかな。太陽がちょっと傾いてるし。夕飯まではまだまだ時間が有りますね。
……暫く寝転がって居ましょう。少し寒いくらいが丁度いい。火照った体を冷やしてくれている。叫び声はまだ聞こえる。皆も何かの感情に囚われているんでしょう。
その声を聞きながらゆっくりと空を見つめる。何で戦争なんかしてるんだろうな。何がしたくて戦争なんかするんだろうな。ああ、空はこんなにも青いのに。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。




