153話 25歳 アリス才能を振られる
すっかり寒くなりまして、冒険者広場からこんにちは。どうも、ヘルマンです。スタンピードという名のお祭りが終わって直ぐに新年祭ですよ。早いですねえ。もう1年ですよ。今年はアリスが星を振られる日です。緊張しますねえ。
スタンピードも12月の下旬には治まりまして、そこから一気に気温が落ちました。ついこの間まで残暑厳しい日取りだったのにも拘らず、もう冬がやってきているんですから。昨日は雪も降ったんですよ。落差が激しすぎますね。
普通なら風邪を引きますよ。…家は空調の結界を張っていますから影響は少ないですが。子供たちの中には風邪を引いた子もいました。教会に勉強しに、遊びに、祈りに行ってるからね。まあ初級ポーションを飲んで1日も寝れば回復しますが。
初級ポーションも大抵の病気に効くくらいには万能薬ですね。…恐らく茎の成分なんだけどなあ。解ってないからなあ。快命草も大概不思議な物なんですよ。なんでポーションが出来るのかを突き詰めているのは永明派の仕事なんだけどなあ。
不思議があれば挑戦したくなりますよね。…寿命が足りないでしょうね。考察は幾らでも出来ますが、実験したりと色々と足りません。…被検体が足りません。死刑囚なんて手に入らないし、入ってもやりませんが、実験するにはその位呑まれてないと、正気なんて保ってられません。
茎の何が作用しているのか。これは永明派に任せましょう。僕はそこまで呑まれていない。やっぱり呑まれないと駄目な分野もあるんですねえ。…呑まれたくないので深入りはやめましょうね。興味はあるんですが。
今年はルクスがいませんので、ちびっこたちにも歩いてもらっています。…エイミーがドミニクを抱いており、僕がアニーセとシリルを抱いているが。まあ、他の3人はいつも教会まで歩かせてるからな。このくらいは慣れてるさ。
さて、家はアリスだけじゃ無いんだよなあ。他にも4人才能を振られる子供がいます。ヘザーの所のトム君、サラの所のルイス君、レベッカの所のシーラちゃん、フローラさんの所のドロシーちゃんの4人も星が振られる。計5人ですよ。保育園してますでしょ?
さて、今年も出店で食べる余裕がありません。…両手が塞がってるからさあ。2人抱えているから何にも出来ない。ルクスみたいにデュークも育ってくれないと。まだそこまで大きくありません。連れてきているが。…シャウトは付いてきませんでした。寒いのは嫌だそうです。
アランの時のようにまったく余裕がない訳でも無いんですよね。慣れって怖いね? お腹空いたなあ。…今年はお店を出していない。フローラさんも出待ち組だからさあ。クレアも子供が産まれたばかりだし、他の子の面倒を見る人がいないから子守中です。
留守番の子供も結構いるんですよ。うちor僕たちみたいに全員参加の所は珍しいらしいですよ。子供を1人で置いておく方が怖いんだけど。何するか解らないし、泣いたら最後だ。誰も助けに来ないからな。どうするんでしょうね?
「貴方、今年は大丈夫そうね?」
「うん。なんかもう慣れちゃった。慣れって怖いね。」
「そう? アランの時はそんなに問題にしてなかったわよ。あの子はちゃんと祈ってたもの。」
「そうなんだけどさあ。祈っても叶えられない事もあるって聞くし。」
「うちの子でその可能性があるのはギュンターだからまだ先でしょ。…ギュンターまだ何に成りたいのか決まってないの?」
「まだ!」
「ね? もう5歳になるのにこの調子よ? 適当に振られないか心配なのはギュンターよ。」
「ギュンターは冒険者に成りたいの?」
「成りたくない。」
「魔法使いか?」
「成りたくない。」
「錬金術師は?」
「成りたくない。」
「…じゃあ何に成りたいんだ?」
「分かんない!」
「ほら、これなのよ。文字の読み書きと計算はできる様になっているから最低限の仕事は出来るでしょうけど、これじゃあ星3つ位が精々よ?」
「祈ってるのは祈ってるんだよね?」
「祈ってるよ。」
「…じゃあ、聖職者に振られそうだね。」
「…聖職者に振られるの? どうしてよ?」
「いやー、多分だけど祈ってるのは伝わってると思うんだよね。願いが無いだけで。じゃあ神様が都合のいいように振るでしょ? 祈ってるんだから星は多く貰えるとは思うけど、神様に都合のいい才能ってさ、教会関係者じゃない? だから聖職者なんじゃないかなあって。」
「だから聖職者って訳ね。」
「うん。でさ、教会の仕事って勉強を見るとか子供の世話じゃん? …僕のせいでさ。だから聖職者とか育児とかそう言うのに振られるんじゃないかなって思ってる。」
「ギュンターは教会で働くかもしれないけどいいの?」
「いいよ。」
「…ならいいんだけど。まあ、ギュンターの将来だもの。自分でしっかり考えなさいよ。」
「うん!」
そっかー。決まってないのか。まあ遅いが、多少は軌道修正が利くとは思うけどね。ラファエルは魔法使いだろ。ミレーナは錬金術師とテイマーと欲張り。シリルはなんだろうね? まだ教会に通ってないからまだ祈るのも先なんだけど。
「シリルー。シリルは何に成りたいのかなー?」
「冒険者!」
「冒険者かー。…なんだろうね? 一杯候補があるけど。」
「冒険者がいい!」
「じゃあ一杯お祈りしようねー。」
「冒険者って祈ると何に振られるのかしら?」
「さあ? なんにでも振られそうだけど。とりあえず1つの才能に沢山振られる方がいいんだけど。」
「なんだかばらけそうな願い方よね? シリルは戦いたいの?」
「戦う冒険者がいい!」
「取り敢えず武器系統の才能に振られればいい感じかな。」
「まあ、そのうち何に成りたいか決まってくるでしょ。最初はこんなもんよね。」
そんな事を考えているとゴーンゴーンと鐘が鳴り始めた。…あの鐘も生きているわけでは無いんだな。聖属性だろうけど。…聖属性って維持できるんだよね? 疑似聖銀も維持されそうだし。…聖金か。疑似聖銀とどっちが硬いだろうか?
聖金は作れないからなあ。聖職者の領分ですね。…金を使うのか魔金を使うのか。どっちにしてもいいが、どうやって作るのかだよな。星振りの鐘を見るに、形を作ってから聖属性を付与できる感じなのかな。…疑似聖銀でもそれでいいとは思うんだけど、無理そうなんだよな。
疑似聖銀は他の魔銀なんかとは違って混ぜたんだよな。だから始めに形を作ってってのは無理だと思う。…作り終える際に剣に近づける事は出来るかもしれないけど、それじゃあ剣じゃ無い可能性もある。聖金、何とか手に入らないものか。
そんな事を考えている間に10回鳴り終わって、子供たちがすでに散っている。…アリスはまだ来ないな。まあ、時間がかかってもしょうがないが。こんだけいるんだもんね。見つける方が大変だよなあ。…なんで見つかるんだろうね?
「ママ、パパ。」
「おかえりなさいアリス。」
「おかえり。どうだった?」
「ちゃんとテイマーに振られたよ。9つも!」
「良かったわね。」
「最良の結果だね。良かったよ。残りはなんだったの?」
「料理! 何でも良かったけど。」
「目標の才能が9つならそれ以上は無いでしょ。いい才能を貰ったわね。」
「そうだね。良かった良かった。」
「さて、帰りましょうか。」
「食べ物だけ買って行こうよ。アリスにお金を渡すから手を出して。―――はい。なんか買って帰ろうか。」
「アリスの好きなのを選んでもいいわよ。…人が一杯で選べないでしょうけど。見える?」
「見えない!」
「じゃああっち側から回っていきましょう。行くわよー。」
「「「はーい。」」」
子供らと人をかき分けながら食べ物屋を回って、買って帰った。他の子たちはどうなっただろうか。欲しい才能に振られただろうか。帰ってから聞きましょうね。とりあえず僕はあそこの焼きおにぎりが食べたいです。醤油を塗ったであろうあの焦げた匂いが堪らんのですよ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。