152話 24歳 第8子産まれました、厄介物疑似聖銀、魔鉄は有や無や、快命草の秘密
魔境が舞い踊るスタンピードはまだまだ続くよ。12月の中旬ですかね。どうも、ヘルマンです。まだまだお祭りは終わりませんで。延長戦が続いていますよ。街道も複数の乗合馬車で出ていかない様に周回してるし、問題はありませんね。
ああ、そう言えば、第8子が産まれましたよ。ドミニクです。男の子です。エイミーが名付けました。…僕が名付けたのってアリスだけだな。まあ、いいんですが。母子ともに健康なのでよしですよ。それ以外に何があろうか。
ちょくちょく錬金術ギルドに素材を買い足しに行きつつ、駄弁っているんだが、錬金術ギルドってもの凄くデカいことがこの度分かりましたよ。なんと地下に20階もあるそうです。嘘だろと声が出た位には驚きましたね。
何でも素材の保管庫らしいです。…にしたって地下20階はやり過ぎでは無かろうか。よく当時の錬金術師は掘ったと思いますよ。岩盤ぶち抜いているんじゃないだろうか? 不安になる深さなんだけど。…6割程埋まってるんだって。マジかよ。一体どれだけの素材を抱え込んでいるんだろうね?
それでもここ最近は出ていくのと入ってくるのでトントンらしいです。出ていくのも早いからな。11個の奴を作るから。入ってくる量も尋常じゃないけど、出てくのも勢いよく出ていきますからね。僕もがっつりと買いますし。
後は王都と行き来する便ですね。貴重な素材を錬金学術院に売りに行っております。水属性と風属性も含めて売りに行っている。…向こうも素材が足りないだろうからなあ。というか、向こうの方が足りないだろうからね。
錬金学術院はなあ。恐らく造命派のゼミが酷いことになっていると思われます。魔石が、品質のいい魔石が大量に必要だろうからね。ガンガンと魔水にしていることだろう。全属性の魔石とは違うものが全属性の魔水で出来るんだろうか? 試してないからなあ。僕もやってみたいなあ。
…そんな訳で試しましたが。普通の全属性の魔石になってしまいました。『エクステンドスペース』にも入ります。…残念過ぎる。違うものが出来るはずだったのに。普通の虹色の魔石になってしまいました。…黒灰色の魔石になる予定だったのに。
この全属性の魔石も暫くは死蔵ですね。勿体ないことをしました。…6個も出来たんですよ。何に使おうか。新しいペット用ですかね。またジャンさん辺りに頼みましょうね。次はどんな動物を飼おうかな。…造命派じゃ無いんだけどね。
造命派志望はミレーナですからね。家の次女、第5子ですね。成りたいものが錬金術師とテイマーですからね。これで幽明派だったりしたらどうかとも思いますが。まあ、動物が作りたいみたいだから多分造命派になるんだろうねえ。
そんな訳で、僕は相変わらず星の川製造機をやっておりますとも。巷はスタンピードで盛り上がっているんだけどね。相も変わらず作っておりますよ。今日も朝一で作り、先ほど魔水を作り終わったところです。暫くは暇になりますね。
「旦那様、お客さまが来ております。」
「はいはーい。今行くよ。」
お客ですか。誰だろうね? 今は騎士爵の人たちもスタンピードの対処で忙しいと思うんだけど。
「おう、ヘルマン。」
「ああ、親方でしたか。…武器は出来ませんでしたか?」
「ああ、ほれ。これが材料だ。これは返す。」
「…どうでした?」
「どうもこうもねえよ。炉にぶち込んでも水に浸けても何の変化もねえ。色々と試したが、ハンマーが曲がっちまった。それだけ打ったのに変形1つしねえ。なんだこれは。」
「…僕が今現在作り得る最高難易度の金属のつもりです。」
「これは厄物なんて生易しいものじゃあねえぞ。どうすればいいか才能すら答えねえんだ。…普段は才能に頼ることなんて無いんだがよ。才能に頼ってもこのざまだ。」
「親方でも駄目だとすると、どうしましょうかね。」
「こいつを鍛えるにはこれ専用の道具がいるぞ。こんな厄物を打つハンマーもとんだ厄物だとは思うがな。そいつを考えてくれ。そしたら何とかしてみらあ。」
「うーん、どうしたもんですかねえ。」
「…自分で作ったもんなんだろ? 何か解るんじゃないのか?」
「自分で作っといてなんですが、一応答えは用意してあるんですが、それがあってるのかさえ分かりません。」
「本物の厄物じゃねえんだな?」
「厄物では無いはずですよ。…厄介物ですけど。まあ何か考えますよ。」
「おう、俺も中途半端な仕事はしたくねえからよ。協力はする。だがこれを打てる何かは用意してくれ。普通のもんじゃあ無理だ。これはそう言うもんだ。」
「普通じゃ無理ですか。…分かりました。何か考えてみます。直ぐに出てくるかは分かりませんが。」
「そりゃあしゃあねえだろ。直ぐに用意できるんなら今日にも用意してただろ? というか俺が打てないことも解ってたろ?」
「…まあ、無理だろうとは思ってましたが。鍛冶師なら何とかなるかもしれないと思って渡しただけですからね。魔力操作も何も受け付けないんですよ。…同じ素材でハンマーを作ったとして、打てそうですか?」
「…いや、多分無理だ。熱して柔らかくなるもんならそれでいいが、これは熱しても何ともならなかったからな。別の何かを考えにゃ無理だとは思う。」
「とりあえず、ありがとうございました。次は何か答えを持って行きます。」
「おう、そうしてくれ。俺もすっきりしたいからよ。」
そう言うと親方が帰って行った。…やっぱり無理でしたか。うーむ、どうしたものか。疑似聖銀を打たないといけない。…しかも硬いままの奴を打たないといけないとなると、硬いだけじゃあ無理だろうなあ。
親方に渡してからも色々と考えてはいたんだが、想定しうる中でも最悪の想像の部類ですよ。…どうしたものですかねえ。疑似聖銀で出来たハンマーでも無理となるとどうしたものか。考えるのは好きですが、本当にどうしましょうかね。…構想が出てくるまで死蔵するしかないよなあ。
どうしたもんですかねえ。確か親方のハンマーは魔金で出来ているって話だったが、魔金のハンマーが曲がったんだろ? 金属で一番硬いのが魔金だからなあ。白金も硬いんだが魔金には負ける。…金は柔らかいんだけどね。
何か錬金アイテムで溶かす様な物が出来るんだろうか? ヘルマン式精霊学の魔力の考え方だと…これ以上の金属を思いつかないんだよね。疑似聖銀が最高の硬さだと思うんだ。これ以上となると作れない…と思う。どうしましょうか。
溶かすのは駄目な気がするんですよね。魔力まで溶けそう。普通の銀になっちゃいそう。全属性の魔石かなあ。これを使えば溶けるとは思います。全属性の魔銀が出来上がるんでしょうが。疑似聖銀のままで維持したいんだよなあ。
…そう言えば、これはテイム出来るのか? 一応、錬金生物…みたいなものだと思うんだけど。どうなんでしょう。とりあえず、エイミーに試してもらいましょうか。3階に行きましょう。今日はレベッカの部屋だったはず。…ここだな。
「エイミー、ちょっといい?」
「何? 貴方。」
「ちょっとテイム出来るか試して欲しくて。これなんだけど。」
「…金属じゃない。テイム! …無理ね。言葉も聞こえないし、まあ当然よね。」
「…無理なんだ。…なんでだろう?」
「金属は無理よ。意思が無いんだもの。意思のある金属なら解らないけど。」
「…意思はないのか。あってもおかしくは無いんだけどな。」
「そんな不思議な金属なの? でも言葉は聞こえないわよ。生きてはいないんだと思うわ。」
「そうなんだ。…わかった。ありがとう。もうちょっと考えてみる。」
「ええ、でも根を詰め過ぎないようにね。」
テイムは出来ないのか。…て言うことは錬金生物では無いという事だな。…ゴーレム系統の魔物とも違う訳だ。まあ、魔鉄が無いからな。錬金生物になるには魔鉄が必要なのかもしれないな。…人に魔鉄を埋め込んだら幻獣にならないだろうか?
待てよ、ドランって魔鉄があるのか? …無いよな。ハニードランは解らん。解体したことないし。…ドランは寿命がありそうだな。ハニードランは無さそう。魔鉄を持っていそう。人間には魔鉄は無いよな。…不老不死になりたければ魔鉄を獲得しないといけないのかな。
しかし、生きていないなら疑似聖銀は魔力が抜けていくことは無いんだろう。聖属性があれば生きている訳ではないのか。…ヘルマン式精霊学に新たな項目が出来た可能性があるなあ。不老不死になりたければ、魔鉄の様な機関が必要っと。
人体解剖をしているのは、永明派位だよなあ。してたら魔鉄があるかないか解っているだろうけど、あるのかな? …ありそうだな。人にも魔鉄が。問い合わせて見るかあ。豊穣会宛でいいよな。…こうなるとドランも気になって来るよな。…ちょっと解剖してみましょう。
畑で1匹だけ捕まえて、殺す。…ごめんね。いつも蜜を集めてくれているのに、都合のいい時だけ殺して。…あるんだ。かなり小さいけど、これは魔鉄だな。これは人間もすでに魔鉄を持っていそうだな。まじかあ。前世の僕が絶句してるぞ。
ちょっと疑問が出来たぞ。…ネズミはどうだ? 冒険者ギルドに納品しているけど、魔鉄はあるのか? ちょっと聞いてくるか。思い立ったら即行動。時間はあるし、早速行きましょう。…手紙だけ書いて行こう。二度手間になる。
代官屋敷に手紙を出して、冒険者ギルドにやってまいりました。さてさて、暇をしている人に話しかけましょうね。…普段はこの時期は暇なんだろうけど、今は忙しいんだよなあ。
「こんにちは。ちょっと聞きに来ました。」
「はいはい、何でしょうか?」
「ネズミに魔鉄はありますか?」
「はい、小さいですけど。ゴブリンよりも大分小さいですがありますよ。」
「…人間に魔鉄があるか知りませんか?」
「人間ですか⁉ ごめんなさい。ちょっと知りませんね。流石に人間は解体しないので。教会の方が詳しいんじゃ無いですかね?」
「…成る程。ちょっと聞きに行ってみます。」
「はい、またどうぞ。」
教会か。そういや死体なんかの処理は教会にやっていたな。…燃やすだけだから魔鉄も燃えてそうだなあ。溶けてると解らないだろうし。教会も知らないかもしれないなあ。
そんな訳で教会でも聞きました。…知らないそうです。まあ、そうだろうな。解体している訳じゃあ無いもんな。アンデッド化しない様に聖属性の魔法を使って、体から完全に聖属性を取り除いて焼却処分って感じで灰まで燃やすからな。その過程で鉄が溶けて無くなるんだろ。
これは豊穣会からの報告待ちですかね。…なんてことを聞いてくるんだとは思われてそうですが。多分魔鉄はあると思います。…ないと不自然になってしまう。ヘルマン式精霊学が間違っていることになるからなあ。
しっかし、銀には魔鉄が無いから生き物にならないのか。疑似聖属性だけど、生き物ではないと。生き物の魔鉄の品質が低いのって聖属性がたんまりと入っているからなんだろうか。…たんまりと入っているねえ。死ぬほどの怪我をすると一気に抜けていくんだろうなあ。
もしかしたら、ポーションはそんな聖属性を補充しているのか? …いや、それなら永明派の寿命があることが説明がつかないし、それなら解っていそうだ。ポーションが何を作用させて体を治しているんだろうか? 多分快命草に秘密がありそうですね。
特に茎。ここに何か秘密があるはずだ。…何かとはなんだろうね? 肉体を再生させる何かがあるはずなんだが、ここまでしか解らん。しかもあってるかも解らん。魔力で治しているのか。それとも錬金術の不思議パワーで治しているのか。…魔力で治していると思うんですよね。
でないと、薬師がポーションを作れるという説明がつかない。冒険者ギルドの職員も詳しくは無いとは言っていたが、ポーションは出来るだろうって話だったし。永明派が解っていない快命草の秘密があるんでしょうね。
まあ、暇があれば研究しましょうね。僕は僕でやりたいことが他にあるし。まずは魔剣の作成からですよ。現在一番硬いと言われている魔金よりも硬い疑似聖銀。これを打つためにさらに硬い物を準備しないといけないのか。まったく、厄介な物だなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。