149話 24歳 暇つぶしの集まり、心配してんじゃねーよ
暑い暑い真夏。魔境が最盛期ですよ。8月の中旬ぐらいでは無いでしょうか。どうも、ヘルマンです。1日にスティナラニアのレイドが2つも3つも動いていて魔境がやばいんですが、いったいどうしたらいいんでしょうね?
まあ、僕らもジョンさんの所のパーティーと合同でスティナラニアのレイドを10日に1回行っているので、人のことを言えないんですが、複数パーティーいる方が効率がいいですね。しかも安定感まで付いてくるおまけつき。…ばら撒ける金額はそれほど増える訳でも無いんですが。
しかし、後5年程は星の川製造機をしていないといけないだろうなあとは思いましたね。だって、まだレイドに100人近く人が集まるんだもの。レイドが2つ3つ同時に動いていて100人集まるんだよ? どうしようもないよね。道場計画が拍車を掛けていますね。…自分のせいです、はい。
まあ冒険者が強いことに越したことは無いので。いいじゃんみんな強くて、みんな騎士爵になれば。お金がどんどん伯爵領に流れますね。お金の使いどころを考えるのが大変そうですね。…みんな金持ちになればいいのに。
まあ、そんな伯爵領だけインフレになっても困るんですが。でも、農家が必要以上に作物を作るから食べ物はインフレにはなりませんね。…食料品が安ければ他が高くても何とかはなります。最低限度の生活は守られますね。
道場の方も、この時期は人の入りが多い。戦える人たちがレイドに参加するから。…ケルピーのレイドに参加できる位なら金はあるんですよね。そしてその中でも才能に愛されてない人たちが道場に一定数やってきます。…戦える冒険者が増えますね?
…10年は星の川製造機をやらないといけないでしょうか? 研究時間が欲しい。色々と作りたい。…でも自分の蒔いた種は刈り取らないと。面倒くさいなあ。星の川がポーションの様に作れればいいのに。出来ないんだよなあ。
そんな訳で、錬金術の方は停滞しておりますよ。…構想もあるんだけど、作る時間がない。まあ、ぼちぼち作っていきますよ。間を見て作らないといつまでたっても作れませんから。一番先にやるのは魔剣作り。…その過程で不老不死の薬が出来るような気がしてますが、魔剣作りなんです。
そんな訳で、今日はジョンさんたちと僕の店に集まって話し合い中です。…なんで話し合ってるかって、暇を潰す物が無いんですよ。魔境に行くのも違うじゃないですか。レイドが一杯なんだもん。ソロだと限度があるじゃんね。
「そんな訳でよ。ヘルマン、お前さんなんか作れ。」
「暇を潰すのに忙しいのは僕も一緒なんですけど。…ちょっと待ってくださいよ。」
暇を潰せるものねえ。パッと思いついたものでいいか。前世の僕に聞いたら手軽に作れて奥が深いもの。んで、飽きずにできて、何人かで遊べるもの…リバーシなんて手軽じゃないですかね。色は違いますが、赤と青でいいでしょう。最悪2色あればいいんだもんね。
土台を作って、丸い石を着色しながら作って。…全部ガラス製ですが、まあ、いいでしょう。さくさくっと4つ作りました。これでとりあえず、遊んでくださいね。
「これは?」
「リバーシという遊び道具です。まあ、簡単にルールを説明しますので。」
そんな訳で、大人8人に遊び方を教えて暫く放置。僕だって暇を潰すのに忙しいんだよ? 才能を使っているために構想を降ろすことが難しいんですよね。…シャウトは池の近くの木陰で休んでおりますよ。マイペースですねえ。デュークはみんなと遊び疲れてお昼寝中。
「おいヘルマン。これはおもしれえじゃねえか。なんで隠してやがった。」
「いえ、隠してませんよ。やる相手が居ないと意味無いじゃないですか。最低でも2人いるんですから。」
「おうよ。これなら食い物屋で待ってる時の暇つぶしにもいいじゃねえか。くれ。」
「いいですよ。持って行ってもらっても。」
「じゃあ後4つ作ってくれ。俺も欲しい。」
「分かりました。作るので遊んでてください。」
…まあ、保存瓶と赤と青の色液位ですから、別に持って行って貰ってもいいんですよ。これはうちの子たちにも遊ばせようと思ったんですが、小さすぎて遊び方を教えるのに苦労しそうだったため没になったものです。
6歳や7歳ならいいんだけど、基本この家に残るのは0歳から2歳の子供。リバーシでもハードルが高すぎる。…覚えても負けたら泣くじゃん。そんな訳で没。まさか、暇な大人の為に作ることになるとは思っても見ませんでしたが。
ところで才能を使っているから錬金術は駄目なんじゃないかと思っている方へ。魔力操作位は出来ますよ。…難しいのは無理ですが、リバーシ位の簡単なものなら作れます。難易度的には中級ポーションより低い感じですかね。
「おいヘルマン、置ける場所が無いときはどうすりゃいいんだ?」
「その場合は手番を相手に渡してください。」
「2人とも手がねえんだがどうしたらいい?」
「…2人とも手が無いんですか? 珍しいですね。無くなったらそこで終わりです。自分の色の数を数えて多い方が勝ちです。」
「なら俺の勝ちだな。」
「がー、負けたぞ畜生! もう1回だ!」
「酒屋でやって負けた方が払うとかになりそうですね。」
「おっ! いいじゃねえかそれ。今度誰かに持ちかけようぜ。」
「ああいいな。誰かに奢らせようぜ。」
「お前が負けて払うことにならないといいがな。」
「違いねえ。」
「「「「はっはっはっは。」」」」
「追加で作るときは細工師さんかその辺の才能で自由市で作って貰ってくださいね。流行るのはいいですが、僕に作ってくれと言われても困りますので。」
「おう! こんなもん、細工師ならちょいちょいと作るだろ。」
「色付けんのも別に半分だけでいいんだろ? わかりゃいいんだからよ。」
「まあ、そうですね。…しかし、なんで家に集まったんですか?」
「そりゃあお前、お前ん家が涼しいからよ。この夏はいつも以上に暑いだろ?」
「だよなあ。前の夏より暑いよなあ。」
「それに錬金術師だからよ。なんか暇つぶしがあるかもしれねえと思ってよ。」
「いいもん貰っちまったしな。来た甲斐があったってもんよ。」
「…すみませんね。皆が行くというので。」
「いえまあ、ジュリオさんに謝って貰う事では無いので。この時間はお客も来ないですし。」
そうなんだよなあ。別に客が来るわけでも無いしな。この時間は暇を潰すのに忙しいんだよなあ。もっぱらギルドに情報収集に行っているんだが。
「そういやよお。ヘルマン。お前戦争について聞きまわってんだってな。戦争が起きんのか?」
「ええまあ、そうみたいですよ。東の戦争に駆り出されるようです。」
「なんでえ、心配性だな。騎士爵貰ったからにゃ行かにゃならんだろ。」
「おうよ。その位の覚悟決めて騎士爵貰ってるからな。」
「毎回勝ってるあれだろ? 俺らが行かにゃならんのか?」
「何でも向こうの王が死にそうなので、近いうちに大きな戦争があるみたいですね。」
「おお! 大きなのがあるのか。そりゃ楽しみだ。」
「だな! 皆でなぎ倒してやろうぜ。」
「おう! 心配すんじゃねえよ。勝つんだろ?」
「いやまあ、そうなんですけど。勝ちすぎないかと思いまして。勝ちすぎると面倒かもなあと。」
「なんでえ! 勝つ負けるの心配じゃねえのかよ。」
「違えねえ。勝った後の心配してやがる。」
「知らんが今の王さんは無能なんだろ? 無能が攻めに出る訳がねえよ。心配すんな。」
「おう! 無能は負ける心配をするもんだ。勝ったらなんも言わねえよ。」
「ですかねー。まあ、戦争は1回きりで終わって欲しいものですよ。」
「そりゃそうだ。2回も3回もなんて面倒くせえ。」
「1回ガツンとやりゃあ大人しくなんだろ。」
「まあ攻めるって言やあ周りがガツンと王さんをやるだろ。」
「違えねえ。無能は殺されるって言うしな。」
「じゃあ今の王は殺されてなきゃいけないだろ。」
「「「はっはっは。」」」
「まあ、皆さん心配事はあっても、吹き飛ばすぐらいの意気込みで行くってことですよ。」
「そんなもんですか。…傲慢に呑まれる人がいないといいんですが。」
「そりゃあ無理だ。何人かは呑まれるだろ。」
「だな、まあ、心配はしてねえ。」
「軍の偉いさんが活を入れんだろ。心配するこたあねえよ。」
「おうよ。お前さんが心配することじゃねえよ。俺らは自分が呑まれないか気を付けておかないとな。」
「違えねえ。」
「そっちの心配もしないといけないんですよねえ。人は切ったことが無いですから。」
「人を切ったことがある奴の方が珍しいだろ?」
「まったくだ。俺だってまだ1人しか殺してねえ。」
「お? いつ殺ったんだ?」
「レイドでよお。嫉妬に呑まれた奴がいてよ。人間を襲いだしてな。そん時だな。まあ、今のレイドじゃねえよ。昔のレイドの時だ。」
「嫉妬に呑まれたか。珍しいな。レイドってこたあある程度はやる奴だったんだろ?」
「いや、知らねえ奴だったな。流れのもんだったんだろ。」
「嫉妬に呑まれるくらいだ、他の所も追い出されたんだろ。」
「だろうなあ。それくらいしか思いつかねえな。」
「嫉妬は面倒くさいですよ。盾使いには結構居ましたからね。呑まれかけた人が。」
「盾使いはなあ。昔は取り分が少なかったからなあ。」
「1人はいるんだがな。受けて貰わにゃ昔のレイドは始まんなかったからな。」
「ここ最近は関係ないからな。しかしあの盾はすげえな。ほぼ剣だろあれは。」
「ですね。騎士爵にも何人かなっていますし。盾使いの地位も上がりましたよ。」
「まあ、そういうこった。ヘルマン、人を切ったことがある方が珍しいんだよ。心配すんな。」
「…分かりました。頑張って切り替えましょう。」
「おう! 傲慢に呑まれそうになってる奴は分かりやすいからな。なってたら殴ってやらあ。」
「ああ、あれな。分かりやすいよな。」
「? 分かりやすいんですか?」
「おう! 顎がでんだよ。上を向いてるように見えんだ。」
「見下したように見るために顎が上がんだよ。」
「あー、成る程。そうなるんですか。」
顎が上がるねえ。成る程、見下すから顎が出るのか。しっかし、誰も自分が死ぬ心配はしてないんですね。それ程覚悟を決めて騎士爵になったんですねえ。僕なんてお得だと思ったから取っただけなのに。みんな覚悟を決めてるんですねえ。日暮れまでリバーシをやって大人共は帰って行った。こんな日も偶にはいいかもなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。