144話 24歳 アランの訓練、食い倒れ紀行作家ロマン
今年の冬は普通の冬のようで、雪も薄く積もるくらいで済んでおります。1月の中頃ですよ。どうも、ヘルマンです。雪もそんなに積もることも無く、今年の冬は平和ですねえ。…11個の星の川を買いに来る人が結構な数いますが。無い人も居るからなあ。申し訳ないんだけどね。
星の川も鋭意製作中でございますよ。目指せ1日4つを1個と11個を1個としておりますが、まあ、難しいよね。特に11個の奴が。素材切れですよ。仕入れる素材が無ければ作れませんので。レイドで沢山狩っていても無くなるんだもんなあ。11個のは暫く買いに来る人が途切れないでしょうね。
星の雫は貯め始めましたが、そんなに作ってないんですよね。…星の川を作らないといけないからさ。その合間を見て星の雫を作っておりますが、こっちはそろそろ限界が来るだろうからねえ。…卒業生の数は考慮に入れてないので、増産はしないといけないんですが。
騎士爵魔導爵は凄まじく増加の一途を辿っておりまして、マルク君も家の建築に30年待ちとかいうもう家は要らないんじゃないかな状態になっているみたいで、家に住む前に寿命が来る人も今後出てくるんじゃないかなとは思う訳でして。
…それに、使用人も人材不足。沢山の求人票が代官屋敷に張られておりますよ。行商人になる人が、割の良い使用人になるケースが多いらしい。…今度は行商人が足りなくなりそう。嫌だよ? 物流が滞るのは。食に一家言ある僕といたしましては、使えない冒険者諸君に是非とも文字の読み書きを覚えて貰って行商人や使用人になって貰いたいところです。
領都にさあ。使えない冒険者も増えてきているんですよ。…多分、領都が景気が良いという噂が立っているんだろうと思います。他の魔境の周囲にある町も景気が良くなっていっているので、そのうち散らばるとは思いますが、文字の読み書きさえ出来ればなあ。使用人に使えるんだけどなあ。
まあ、僕にはあまり関係ありませんので。…使用人の雇用はもろに打撃ですが、それはまあ、今の体制で回りますので。伝手があれば割と増やすのは簡単なんだよね。…何処かから引き抜くので、困る場所も出てくるでしょうが。
そんな訳で、僕はというと、星の川を作り、クールタイムには道場で檄を飛ばしております。…この時期だと、気絶する冒険者は余りいない。星の足りない冒険者たちは今が稼ぎ時なので、ある程度星があって才能に愛されていない人しか集まらない訳だ。
まあ、そんな人は珍しい訳でして、道場は道まで占領することは、この時期は余りない。…アランも頑張っているけど、流石にまだまだですよ。鞭は連節鞭で才能が反応したので、それを使わせていますが。何の属性で作らないといけないことになるんだろうか。
今は魔金で出来た、まだ研いでない連節鞭で振らせています。…鞭を振るという表現が合っているのかは知りませんが、とりあえず、魔金の鞭でやらせてます。その鞭もあげるつもりでいますので。…戦争にはアランも徴兵されることになりますからね。対人武器は必要だと思います。
僕の練習用に作った鉄のもあるんだけど、これはどうしましょうかね? …まあ、そのうち使う子が出てくるかもしれませんから取っておきましょうか。別に腐るわけでも無いし。誰か鞭の才能かテイマーの才能を貰うでしょ。
…アリスのはもう魔銀の奴を準備しております。属性は付けてないけど、自衛には十分でしょう。テイマーギルドで働くんだから、移動があるもんね。戦えた方がいいとは思うんですよ。…星の川までは要らないとは思いますが。
アランも鞭だからか、気絶するまで時間がかかるんですよね。まあ、体をあまり使いませんし、鞭を気絶するまで振らせるのは危ない気もしますが、才能に愛されるまでは頑張って貰いたいですね。ルクスも見守っておりますが。
デュークは2歳以下のチビ達に囲まれてもみくちゃにされています。エイミーに大丈夫か聞いてみたんだが、デュークも楽しんでいるようなので問題無いとの事だった。…アランの時はルクスは抱き枕だったからなあ。…僕から逃げるときの。
3歳になった子供たちはアリス達6歳の子供たちの引率で教会に行っています。文字の読み書きの勉強ですね。エイミーたちはもうこの時期に『エクステンドスペース』を教えているようです。…早いとは思うが、こんなもんだったかなあ。
まあ、半年くらいは頑張って覚えないといけない訳ですが。…一度できるまでが長いんだよな。飽きがこない様によくやっていると思いますよ。僕? 僕はあの時は必死でしたから。錬金術師になるためになりふり構って居られませんでしたからね。
この辺りはエイミーの育児の才能が働いているんだろうか。多分何かしら効果があるんだろうと思います。子供たちの教育が何の苦労もなく行っているんだもんね。…僕は何もしていないんですが。エイミー任せなんだよなあ。
おっと、アランが気絶しましたね。…2時間位ですか。鞭という特性もあって長いこと振れていますね。バドランの木に持たれかけさせて、バドランを齧る。…美味しいんだけど、これの報告書はどうなっていますかねえ。出したはいいが、返事が帰ってきていないんですよ。来年には来ますかね?
報告書といえばお風呂の報告書ですが、追加で大魔金貨50枚のお金が来たんですよね。…なんで追加で来たのかは解らないが、貴族たちが気に入ったんだろう。色々とあったんだろうなあ。主に錬金術師が出張に行かされたんだろうな。…王都内の移動は1日仕事だからなあ。
さて、お店に戻りまして、魔水の製造と行きますか。…錬金術ギルドに無くてもストックはあるからな。使わないと死蔵するだけだし、どんどん使っちゃいましょうね。死ぬまでには余裕でストックが無くなりそう。あんなに一杯採取したのに。
「旦那様、お客様です。」
「お? はーい。」
誰だろう。星の川はメイドさんに持たせてるから僕は持ってないんだけど。誰が来たんだ?
「こんにちは、ヘルマンさん。やってきました。」
「ああ、野菜の行商人さん。待ってましたよ。…名前だけ教えて貰ってもいいですか? 前に聞いてなかったので。」
「言ってませんでしたっけ? ロマンです。」
「ロマンさんね。どれくらい書けました?」
「冬に合わせてきたので、とりあえず5枚ですね。…でもいいんですか? よく解らない仕事なんですけど。」
「いいんですよ。とりあえず、明日また来てもらえます? 読み込んでから感想を伝えたいので。」
「はあ。まあいいですが。この時間位で大丈夫ですか?」
「はい、この時間位で。ではまたお願いします。」
さてと、先に魔水を作ってから読み込みましょう。フローラさんやクレアにも読んでもらいましょうね。さてまずは作業をやらないと。才能さん、出番ですよ。
とまあ、30分くらい才能さんで穴を掘るような作業を行いまして、食い倒れ紀行を読むとしましょうか。まずは1つ目。どれどれ。…---…---…---…ふむ。文章がやっぱりうまいな。読みやすいし分かりやすいな。
まずは、普通の料理だった。特殊な調理方法でもなさそうだし、材料も大体で書いてくれているが、解らない名前も無い。ふむ、凡そ味の予想が付きますが、多分食べたことがあると思います。これなら僕でも作れると思います。
そんな感じで5枚読みました。…1つだけ知らなさそうな料理がありました。しかも知らない野菜が使われています。…領都に入って来ていないんじゃないだろうか。行商人も全ての村を回るわけじゃ無いからなあ。大体ルートは同じだったりする。
それじゃあ、フローラさんとクレアにも読んでもらいましょう。…これを見て、蒸し料理がそう言えば無いなあと思いつつ、蒸し器は簡単に作れるから作りましょうね。…何処かにはあるとは思いますがね。家にないんだから作らなければ。…肉まんとかいいよね。
「フローラさん、クレア。これ読んで欲しいんだけど、時間ある?」
「旦那様、ありますよ。今からヘザーの部屋に行こうかと言っていたところだったので。夕飯の準備も終わりましたし。」
「ちょっと新しい試みをね。料理のレシピを書かせてるでしょ? それを旅をしながら食べた感想なんかを書いてきて貰ってさ。これ、5つ分あるから読んでみて。とりあえず、僕は新しい調理器具を作ってくるから。」
「分かりました。クレア、読みましょうか。」
「はい。」
とりあえず、紀行を渡してお店の方へ。…魔鉄でいいよな。品質はそこそこだけど、十分でしょ。別に厨房で作っても良かったんだけど、錬金陣がある方が楽だし、時間も暫くかかりそうだったしね。さて、蒸留器もいわば蒸し器。それを魔鉄で作るだけだから簡単簡単。
サクッと魔鉄で作りまして、…竈に合うよな? 勢いで作ったが、こんなもんだろ? 小さいのは問題だが、そこまで小さく作ってないから大丈夫大丈夫。大き目の鍋の感覚で作ったからさ。まあ、問題ないでしょ。『エクステンドスペース』に放り込んで厨房に戻る。
読んでいる横を通って竈に設置。…問題なし。良かった。ちょっと大きいかなー位のサイズだけど。問題なしなし。うんうんと頷いているとフローラさんから声がかかった。
「旦那様、これを書いたものは中々の才能がありますね。そう言う才能持ちですか?」
「うん、そう。文章の才能持ちに料理の才能持ちだよ。よくかけてるとは僕も思ったよ。」
「読んでいて味が分かりそうな感じがしました。…一つは私も知らない料理でしたが。材料も多分領都で扱っているかは分かりません。初めて聞いた物でした。」
「あー、そうですよね。…これですよね?」
「クレア貸して。…そうそう。これこれ。僕も食べたことないと思ってたんだよ。作れそう?」
「この野菜があれば。…野菜の入手は可能ですか?」
「…分かんない。これを書いてる人がさ、野菜の行商人をやってるから持ってるかもしれない。明日一緒に聞いてくれる?」
「かしこまりました。時間は旦那様が来た時間位でよろしいですか?」
「あー、一作業した後だったからそれより1時間位前かな。呼びに行かせるよ。」
「分かりました。恐らく厨房かサラの部屋にいますので。」
「了解了解。クレアもなるべく一緒に来てね。」
「はい、分かりました。」
「あ、そうそう。家に多分ない調理器具を作ったから。これね。使い方を説明するよ。」
蒸し器の説明をしつつ、明日に備えましょうね。…専属の野菜行商人を抱えてもいいよね。…レベッカの所のジャンさんも野菜の行商人だけど、扱ってる野菜が違うもんな。ジャンさんからはそもそも、もう買ってるからな。…ちょっと割高で。
そんな訳で今日。日付が変わりましたよ。朝一で星の川を作り、アランの訓練を見て気絶したのを見届け、お店の方に戻ってきました。…この時間位だったよな。魔水を作ろうかとしたところに来たんだっけか。
「旦那様、お客様です。」
「お! はいはーい。あ、ヘザー、フローラさんとクレア呼んできて。」
「かしこまりました。」
さて、お店の方に向かうとロマンが待っていた。よしよし。
「よく来てくれました。ささ、座って座って。」
「はい。…どうでした?」
「すごく良かったよ。あの感じでよろしく。…ところでさ、トーキラージっていう野菜を僕らは知らないんだけど、扱ってる? 良かったら買いたいんだけど。」
「扱ってますよ。売るのは全然問題無いです。」
「ありがとう。こうやって、報告書に使われていた野菜なんかも買うことがあると思うから、なるべく色んなところに行って色んな野菜を仕入れて欲しいんだけど、出来る?」
「出来ますよ。…領内とその近辺の村くらいになりますけど、いいですか? 一応領主様から補助を受けている身なので、余り領地からは離れないようにしているんです。」
「いいよいいよ。この領が一番野菜なんかの種類が多いから。―――あ、フローラさん、クレア。こっちこっち。」
フローラさんとクレアが合流して報告書の内容をこうして欲しいああして欲しいと言いながら、話をどんどんと詰めて言った。そして野菜を買うことになったんだけど、トーキラージ以外にも知らない野菜が何種類かあったのでそれも購入。…臭いを嗅いだが、生姜っぽいものは無かった。…作らないと駄目かもなあ。豊穣会のメンバーが一体何種類の種を渡したのか知らんけど。
「とりあえず、こんな感じかな。色んな町で食事をしてもらって、それの作り方や味、材料なんかをとにかく詳しく書いてもらう感じで。そして、そこに使っていた野菜や香辛料なんかも仕入れて貰う感じで動いてもらうから。出来る限り広く浚う感じでお願いね。あ、今回のお代を渡しておくから。」
「はあ、これでよかったんならこれからも続けますが。…え⁉ これ小魔金貨ですよ⁉ こんなに貰えるんですか⁉」
「そんだけ払うに相応しい内容だったからだよ。旅するのにもお金がかかるでしょ? それに当てて。」
「いや、小魔金貨も使うような旅では無いとは思うんですが…。」
「それ程未知の野菜や香辛料、料理を求めてるんだよ。頑張ってくれればいいから。」
「はあ、頑張ります。そうした方が良さそうなので。」
「そうした方がいいんです。ではまた、何か月後かに。」
「ではまた何枚か書いたら戻ってきます。」
「お願いね。」
ロマンはまた旅立って行った。…これで色んな場所の料理を記録していくんだ。…レシピ集は教会に収めるつもりだ。調べたところ、書物の所蔵は教会が行っているようだったから。観覧も出来るんだよ。知らなかったけど。
そして、各料理人にもレシピ集を教会に収めさせるんだ。料理の歴史を作っていくんだ。…各料理人にも休みの日には教会のレシピ集を読んでもらうのもいいな。同じ発想でも違う料理が出来上がる可能性もあるし。料理は無限大だよ。
地道に食事の錬金術師をやっていますよ。魚料理も流行らせている最中だし、色々とやっておりますとも。…1人じゃなくてもいいんだよな。紀行を書くのは。代官屋敷の募集はしたままにしておこう。何人かに書かせることで、同じ料理も違うものになればいいんだ。楽しみは多い方が良いしね。
そんな訳で、さっさと才能を使う仕事に戻りましょうね。蒸し器の使い方も教えたし、今日からまた色んな料理が増えるだろう。楽しみだなあ。何が出来てくるかな。…不味いのだけは勘弁してほしいけど。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。