143話 24歳 新年祭、アラン星を振られる、アランとお風呂
小雪舞い散る寒空の下、冒険者広場で今か今かと待っています。今日は新年祭ですよ。どうも、ヘルマンです。今年はアランが星振りの儀で星を振られる日です。…大丈夫、きっとテイマーに振って貰えるさ。ちゃんと祈ってたんだから。
いつもは食べ物を食べながら今か今かと待っているんですが、今日は喉を通りません。…僕が緊張してどうなるんだとは思うが、こればっかりはどうにもならん。…慣れるしか無いだろうなあ。いつ頃になったら慣れるだろうか。
僕の緊張が解っているのか、シリルが僕の頭をぺちぺち叩いてる。…解ってるよ。でも心配なんだよね。こればっかりはしょうがないと思うんだ。流石にシリルの時には慣れてるから、そんなに叩かないでください。
ルクスは皆を乗っけて、何を思っているんだろうね? いつもと変わらないとは思いますが、…しっぽがふらふらとしているんだよなあ。嬉しい時もそんなにぶんぶん振らないしっぽをふらふらさせる位にはルクスも心配しているのかな。
「もう、貴方もルクスも心配し過ぎよ。ちゃんと振られるわよ。」
「いや、だってさあ…。」
「クゥン…。」
「デュークだって産まれたんだよ? ちゃんと成功したんでしょ? ならアランだって大丈夫よ。」
そう、新しい小狼の名前はデューク。…起きたらエイミーがすでに名前を付けていた。今はルクスの上でアリスに抱かれている。…まだ30㎝位だからさ。踏まれそうだからルクスの上に乗せている。…今は大人しくアリスに抱かれている。
家ではやんちゃしてるんだけどね。ルクスに甘えたり、子供たちと遊んだりしている。…ルクスと一緒で、食べるのは生のオーク肉をあげていればいいので楽なんだけど。トイレもルクスが教えていた。ルクスは面倒見がいいんだよなあ。
しかしまあ、ルクスもやっぱり心配か。いつもより落ち着きが無いもんなあ。…デュークと子供たちは食べ物を食べながらやいのやいのやってます。…ルクスの背中が油でべたべただけど、しょうがないなあ、後でデュークも一緒に風呂に入るか。…アランも一緒に入るかな。
ゴーンゴーンと鐘が鳴り始めた。ついに来たか。…願いよ届いてくれよ。見てるんだろう、神様さあ、太陽神様さあ。うちの子は十分に祈ったと思います。だからどうぞよろしくお願いします。
10回の鐘が鳴り終わり、教会の扉が開いた。沢山の子供たちが色んな所に散っていく。…アランは何処だ? おおいたいた。こっちに向かってきてるよ。…アランからは分かりやすいか。ルクスがいるもんな。
「やりました。父様、母様。ちゃんとテイマーに才能が振られました。」
「やったわね、アラン。ちゃんと祈っていてよかったわね。」
「良かった…。良かったよ、アラン。心配だったからさあ。」
「ウーッウォン」
「ありがとう、父様、母様、ルクス。ルクスの声が解る様になったよ。これがテイマーなんだね。」
「ウォンウォン」
「心配してたくせに、もう、ルクスったら。」
「…僕にはルクスの声が解らないんだけど。」
「心配してなかったって強がってるのよ、まったく。」
「ウーウー。」
「はいはい、分かった分かった。」
「兄様、おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「? おめでとう?」
「ありがとう。やったよ。」
「兄様、ルクスの声ってどんな感じ?」
「なんか頭に入ってくる感じ。言いたいことが解るよ。」
「うー、私も早くテイマーに成りたい。」
「アリスは来年ねー。頑張って祈りましょうね。」
「うん!」
「とりあえずアラン、何に幾つ振られたんだ?」
「テイマーの才能に星7つ、嗅覚の才能に星1つ、脱兎の才能に星1つ、算術に星1つでした。」
「そうか、7つか。おめでとう。」
「ありがとう、父様。これで騎士爵に成れますか?」
「ああ、十分に狙える才能だよ。…でもまずは訓練だ。春までに才能に愛されることだ。訓練が終わるまでは家から出さないからな。」
「分かった。頑張る。」
「まずは鞭が合うかどうかだが、今日はお祭りだからな。僕はお腹が空いたよ。」
「僕も何か食べたい。」
「あらあら、喉も通らないって言っていたのに。」
「緊張が過ぎたらお腹が空いたんだよ。何か買っていこうよ」
「僕も何か食べたいです、母様。」
「そう? じゃあ移動しましょうか。」
その後色々買いながら食べながら出店を回った。…今年もお好み焼き屋の屋台を出してますよ。…繁盛してるんだよなあ。まあ、休みの日に何をしてもいいんだけど。休めばいいのに。
その後なんだかんだ買い食いして帰った。いつもはもっと才能を冷やかすんだけどさ。体力が持ちませんね。緊張で体力を使い果たしました。これが親の気持ちか。…僕の時は多分緊張してなかっただろうけどな。シャルロ兄の時くらいだろう。…リュドミラ姉の時も緊張してたんだろうな。
帰ってきて、子供たちをエイミーと一緒に4階に置いてきて、アランとルクスとデュークを連れてお風呂に来た。髪洗液で髪と体を洗って風呂に入る。…あー、身に染みるー。よっぽど疲れてたんだなあ。
「なあ、アラン。」
「なんですか、父様?」
「僕もさあ、アランと同じ年のころにさ、錬金術師を目指して家を出たんだ。」
「父様も星振りの儀が終わった春に家を出たんですか?」
「うん、それで各霊地を回ってさ。錬金術師になるために素材を集めてたんだ。…お金はなんでか知らないけど、十分に貯まってたからさ。」
「はい。」
「そして、錬金学術院に行って錬金術師になる勉強をして、ここの領都に来たんだよ。…それでさ、アランはこの領都を離れるつもり?」
「はい、他の魔境に行ってみたいです。ルクスと一緒に、騎士爵になって何処かで過ごすと思います。」
「そうか。ここから離れるんだね。場所は決めてる?」
「まだ決めていません。でも土属性の魔境はやめておきます。ルクスって水属性なんですよね? 母様に聞いたんですけど。」
「多分。水属性が一番強いと思うよ。…それはデュークも一緒かな。…うん、土の魔境はやめておいた方がいいかな。」
「なので、春までには決めたいと思います。…父様が武器を用意してくれるんですよね?」
「そうだね。仕上げは鍛冶師さんにお願いしないといけないけどね。…練習用は普通の鉄で作ってあるから、行く魔境の属性に合わせて作るから。」
「ありがとう、父様。」
「出来ることと言えば武器とお金と星の川を渡すくらいしか出来ないからね。」
「普通はそれも無いんですよね?」
「…まあ、それはそうなんだけどさ。そう言えば『エクステンドスペース』は教えて貰った?」
「はい、3歳になった年に母様から。」
「…僕はすっかり忘れてたからなあ。容量はちゃんと増やしてる? 大量のオークの死体をあげることになるんだけどさ。いるでしょ? ルクスのご飯が。」
「そうですね。ちょっとずつ増えていっています。」
「騎士爵でレイドをしようと思ったら大量に入れないといけないから、頑張って増やすんだよ。」
「はい、頑張ります。」
「後は何を話しておかないといけないだろうか。…特に思いつかないなあ。」
「ねえ、父様。なんで母様と結婚したの?」
「んー、なんでだろうね。代官屋敷で募集の皮紙を見てさ。そこに行ったら決まっちゃってね。でもエイミーのこと、母様の事は好きで結婚したよ。そこは間違いないかな。初めて会ったとき、かわいいなあって思ったからね。」
「ふーん。僕も結婚するのかな?」
「するんじゃないかなあ。15歳位に成ったら探しなよ。それまでは早いかな。」
「代官屋敷で探せばいいの?」
「そう。代官屋敷でね。まあ自分で探さなくても皮紙を書いて貼っておけば来るけどね。…でも探した方がいいとは思うよ。碌な人が来ないから。」
「そうなんですか?」
「僕は、父様は貼らなかったから解らないけど、多分ね。自分で探してみなさい。」
「分かった。そうしてみます。」
「ウォン。」
「何? 解ってるよ。」
「何って?」
「ルクスもその時は連れていけって。ルクスを気に入ってくれる人じゃないと駄目だからね。」
「それはそうだね。…後はアランが町に住むようになったらスライムを錬金術師に作って貰うんだよ? テイマーの義務だからね。」
「はい。誰でもいいんですか?」
「誰でも作れるから安心していいよ。困ったら冒険者ギルドに聞くか、領都のテイマーギルドに行けばいいからね。」
「はい。そうしてみます。」
「後はそうだなー…あらら、デュークは寝ちゃったか。溺れると危ないから出しとかないと。」
アランと色々と会話をしました。…こんな時間を取ってやることも出来なかったからなあ。エイミーに任せっぱなしだったし。僕も何かしないといけないのは解ってるんだけど、何をしていいのか解らないんだよね。なんだかなあ。
アランもしっかりとしてるし、他の魔境に行っちゃうんだなあ。寂しくなるなあ。…毎年こんな思いをするのか。親って大変だなあ。父さんと母さんは元気だろうか。…爺さん婆さんはまだ生きてるだろうか。…帰る予定も無いんだけど。
ルクスよ。アランのお守は任せたよ。デュークも誰かに付いて行くんだろうか。…もう作りたくないんだけど、もう1匹作る予定だからなあ。それは死体が来てからだけど。材料は似た感じになるとは思うけどね。予定はあるんですよ。…造命派じゃあ無いんだけどなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人作家の私も文章に反映できると思います。
…多分。