137話 23歳 新年祭、何処も彼処も忙しい、這い寄る傲慢
雪がチラつく今日この頃、今日は新年祭ですよ。どうも、ヘルマンです。いやー、23歳になりましたねえ。早いですねえ。この頃何をやっているかって、レイドばかりやっていますからねえ。…星の川製造機をやってるんだよなあ。
錬金術での進展が無い訳ですよ。星の川しか碌に作ってない訳ですよ。他の物も作りたいよねえ。構想がカチッとハマるものが作りたいわけですよ。自分の蒔いた種なので、泣く泣く刈り取ってるわけですが、手広くやりすぎた感があります。
まあ、領軍を巻き込んだのは間違いではないとは思いますがね。軍が強くて困ることは無いし。…騎士爵を増やし過ぎて戦争に連れていかれそうなんですが。まあ、負ける気はしませんし、死ぬ気もありません。…傲慢さんは後にいますが、呑まれてませんよ。
まあ、過剰戦力とのことですし、遊撃隊か右翼左翼の端っこがいい所でしょう。中央軍は辺境伯の所が務めるでしょうし、連携を取れと言われて取れる戦力では無いですからね。…将軍の才能と軍師の才能持ちが、領軍には居たんでしたっけ。
将軍の才能は自軍に対して命令を行き届けやすくなるという才能ですね。そして、命令を受けた方にも行動に補正がかかります。まあ、何とも不思議な話なんですが、軍として動きやすくなる能力を持った才能なんですよね。
軍師の才能は自軍に対して行動の一体感を与えるという才能なんですよね。将軍の様に命令するわけじゃないんですが、自軍の動きが解るといいますか。将軍の才能と相性が抜群にいいんですよ。命令するのは将軍の才能持ち。その隣に軍師がいるだけで、軍としての一体感がでる。
まあ、1軍に1人ずつでいい才能ですね。別に2人以上いても問題無いが。命令権がどっちかを決めておけば軍が混乱することもないし。そんなに沢山出る才能でも無い。大抵は年長者の将軍が指揮を取るでしょうし。
ま、とりあえず、戦争のことは忘れましょう。多分どうにもならないので。…一応、この国の王の話も仕入れたんだけど、まだ30と数歳みたいですし、死ぬことは無いと思います。…経済の事が解らない無能が就いているだけで問題な気もしますが、言ってもしょうがないですからね。
統治の才能が沢山振られた子供が産まれても、死ぬまでは代わらないらしいから、僕が生きてる間に代わるかどうかだろう。まあ、王の事を気にしてもしょうがないので、多分これっきりになるとは思いますがね。…錬金術も冷遇してた無能なんだよなあ。
まあ、王のこともいいでしょ。今日は新年祭ですし。楽しんでいきましょう。…今年は才能が振られる関係者はいませんし、気兼ねなくガヤを出来ますね。…娯楽ですよ? 楽しまないでどうするんですか。今回までなんだから。
次回からは毎年才能を振られるのを緊張しながら待たないといけないんですよ。…自分の子だけでも入年です。6人いるから最低でも6年は緊張して待ちの態勢ですよ。エイミーはもっとと言ってるのでもう少し長くなるとは思いますが。
しかし、まあ、それでも娯楽にするんだろうな。…自分の子供の才能はおいておいて。自分の子供にはいい才能にたっぷりと振られて欲しいですからね。アランだとテイマーの才能ですね。星が5つは振られて欲しいですよね。
欲を言えば8つ位振られて欲しいですが。…9つはまず無理でしょうし、10個はあり得ないみたいだから。8つ位…自分よりも振られて欲しいというのは親心かなあ。まあ、まずは祈りが届いていることが前提ですが。
出店は今年も盛況ですねえ。酒屋が多いのは毎年のこと。各店味が違うのだ。…出所は同じ酒屋なんだが。後はいつも通り各料理屋が各々得意料理を出している。揚げ物屋は、…あれはなんだろう。パンみたいだが、流石にただの揚げパンじゃないだろう。
購入して早速食べてみる。…成る程。これは良いな。オーク肉のミンチと野菜のみじん切りの炒めたものを揚げパンの中に入れてるのね。これは美味しい。アランとアリスとエイミーはオーク肉の唐揚げを齧っている。ラファエルは鳥の唐揚げの方が好みなのかな。
ギュンター以下はまだ買い食いは早いですよ。流石に脂っこい物は早いです。ラファエルもいいんだろうかって感じだけど、美味しそうに食べてるしなあ。…ギュンターはクッキーを食べましょうね。よく噛んで食べるんだよ。
ミレーナは流石にまだ幼児食で我慢しましょうね。…シリルは離乳食もまだだからな。はいはい、ミレーナも何か食べたいのね。鳥のつくねを作って貰っているからそれを食べてね。…こぼすのは仕方ないか。
…帰ったらルクスもお風呂に入れて上げるかあ。アランは乗ってないけど、アリス、ラファエル、ギュンターと3人乗っけてるし、みんなこぼしてるしでちょっとかわいそう。
「ごめんねルクス。今日1日は我慢してね。」
「…ウォン。」
「ほら、これ食べていいから、元気だそうね。」
「帰ったらお風呂で洗ってあげるよ。」
「お願いね、貴方。」
「まあ、偶にはね。ルクスもお風呂好きだし、苦じゃないからね。髪洗液使うと怒るけど。」
「匂いが消えるのが嫌なんだってさ。よく解んないけど。」
「ふーん。まあ、お湯に浸かるだけにしますか。」
まあ、ルクスはお風呂自体は好きなんだよね。泳がずに大人しくのんびりしているし。縁にあごを乗せて寝てる時もあるくらいだ。…水属性の素材を沢山使ってるし、水が好きなのか。それとも単にお風呂が好きなのか。まあ、入れるのに四苦八苦するよりはいいよね。
買い食いもいい感じでお腹が溜まってきた。…今年も屋台をやってますよ。お好み焼きの屋台です。…屋台の料理を買う際、基本的には器なんかも一緒に出てくる。器は錬金術ギルドが格安で沢山作ってるからなあ。他の町でも錬金術師が作ってる。売るのは雑貨屋さんだけど。
食器は基本土や石で出来ている。…ゴミ捨て場にゴミとして捨てる人もいるんだけど、スライムは土や石を食べないからな。そう言うのを回収する仕事が所謂底辺冒険者の仕事だったりもする。最近は大変なんだってさ。処理が終わりごろの今の時期頃に漸く回収できるようになるくらいにはゴミが出るからな。
この食器もゴミとして出されて、冒険者が回収して、錬金術師が作り直して、雑貨屋が売るというサイクルを通るだろう。捨てずに死蔵する奴もいるだろう。雑貨屋さんも補助を貰ってやってる仕事だからなあ。無いと困るけど、補助が無いとなり手がいないんだよね。
最低限の生活を成り立たせるための補助は何かと必要になるんだよ。でないとなり手が無い職業とかもあるからな。服飾関係の仕事も今でこそ、刺繍の入った高級な服を要求されているけど、今までは布を張り合わせただけの服だもんな。
それに布職人もそう。領主が補助を入れないと布製品自体が高くなる。高くなれば村の農家さんたちの服を買う金がかかる様になる。そうすると農作物が高くなる。そうすると今度はと別の所に波及していき、物価が高止まりするまで上がっていくだろうさ。
そうなると一部の才能を持ったものしか生活出来なくなる。自給自足の生活に戻ってしまう。それじゃあいかんよな。補助も大切なんだよ。出さなくても皆が幸せになれるんならいいんだ。でも出さないと誰も幸せにならない。
出し過ぎも問題だとは思うけど、領内がうまく回っていればそれでいいと僕は思います。…農民には農民の、町人には町人の生活がある。農家だって困っているわけじゃ無いしな。…この領は特に野菜なんかも豊富だし、肉類も流通させてるし。
でも畜産農家や狩人も生活が成り立つようになっている。よく回っているならそれでいいじゃない。わざわざ口を挟むときは、必要だと思うときでさ。だから行商人に補助を出した方がいいと口を出したんだし。全てが前世と一緒と思うなかれ。こっちにはこっちの生活がある。
まあ、前世の僕から見て、一番文明をかき回していると思うものが錬金術だからなあ。学べば学ぶほど、これでいいのかと思うこともある。酒屋にしたってそうだ。ネバネバで酒が作れてしまう。…じゃあ、今までの酒造りの技術が要らないのかと言われれば、答えるのは難しい。
事実、酒屋では今までの方法で作った酒も扱っている。…僕は知らなかったんだけど、一定の需要があるから作っているらしい。ネバネバの方が楽に大量に出来ても、錬金術に頼らない酒造りも残しているところを見るに、この店主もネバネバを融通する僕がいつまで生きるか解らないからそうやってるんだと思う。
テイマーギルドだってそう。錬金生物だけでなく、普通の動物も馬車用の動物として飼っている。錬金術を使って発展してきたような王国だけど、錬金術に頼らない所も一定以上作っているような感じがするんだよね。
でも僕は錬金術師。黎明派の錬金術師。錬金術を使って発展を願う派閥に所属してる。でも、錬金術を使わない技術も大切なんじゃないかなとは思ってる。自己矛盾しているような気がするが、そんな気分になることもある。
「なーに考え込んでるの?」
「ん? ちょっとね。」
「いいじゃないの、貴方の信じた道を進めば。」
「そうかなあ。」
「駄目なら誰かが何とかするわよ。自分で全部を背負い込む必要はないもの。別に神様じゃ無いんだから。」
「そうかもね。」
「それに、自分で何でもできるって思ってると傲慢に呑まれちゃうわよ。」
「…そうかもね。」
「パーパー。」
「ほら、ミレーナも元気出せって言ってるわよ。」
「あらあら、ミレーナに言われちゃしょうがないな。」
「しっかりしてよね、別に悩むなとは言わないけど、抱え込まない様に。何でも自分で出来ると思わない様に。本当に傲慢に呑まれちゃうわよ。」
「パパ、傲慢は悪いんだよ。近寄ったらダメ。」
「アリスは偉いわねー。ちゃんと解っているようねー。」
「うん、解ってるよ。大罪に近づいちゃ駄目なんでしょ。」
「そうよー。近くに来たら離れるのよ。」
「うん!」
「しっかりしてよね、パーパ。」
「はいはい、解っておりますよ。」
油断も隙も無いよなあ。思考に耽っていただけなのに、すーぐ傲慢さんが出張ってきてさあ。まあ、僕のやったことが全部正しいなんていうつもりもなし。間違ったこともしてきてると思いますよ。僕は勇者では無いので。…勇者ってなんなんだろうね。前世の知識なんだけど。
ゴーンゴーンと鐘の音が鳴る。…おっと、もうこんな時間か。星振りの儀だなあ。さてさて、今年はどんな才能に振られた子供たちがいるのかな。とりあえず、今年で一度ガヤは終了しないといけないんだから。来年からは緊張して待つ立場、どうなることやらだ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




