135話 22歳 出張から帰ってきました、子供とお風呂、託児所の件
日増しに寒くなってまいりました。魔境は鳴りを潜めて大人しくなりました。12月の始めですよ。どうも、ヘルマンです。今年もお仕事が終了いたしました。レイドの規模も申し分ない規模で出来ていたと思います。
毎回120から130人位来るもんね。赤字をだせることは良いことだよ。今年もしっかりとお金をばら撒きました。…他の人たちに払った報酬が少なすぎたでしょうか。1人大魔金貨8枚で足りるかなあと思ってたんですが、追加で払った方が良いかもしれません。
そう思って、ルカさんたちに聞いたらいらんとの事なので。若干申し訳ないような気がするんだよねえ。足りないならもっと渡しておけば良かったと思いますよ。でも今のペースだと足りるって言うからさ。…本当に足りてる? 計算してないから僕は分かりませんよ。
まあ、要らないならいいかという事で、切り替えることにしました。…ケルピーのレイドの出費は誤差。中白金貨だろうから。ミズチでお釣りがくるからなあ。スティナラニアは時間と労力と精神がかかる。慣れてきたけど、それでも余裕とはいかんしね。
スティナラニアを余裕で倒す人たちも騎士爵の中にはいる。別に僕らが最強パーティーって訳でもなし。…僕が足を引っ張ってるからなあ。装備で誤魔化しているけど、僕の星は3つなんだよ。星の川のブーストがあってこそなんだし。
もうすでに、武器の品質の差を考えればルカさんやマウロさんに技量は負けてる。僕も鉄迎派の事を考えれば弱い方だし。錬金術師全体で考えれば強い方だと思うけど、専業冒険者には勝てませんよ。
マウロさんには連節鞭を持ってもらったんだけどね。…鱗鞭の方が使い勝手がいいとのことなので、そのままで行くそうだ。この感覚は大事だったりするんだよな。僕も今さら剛剣に変えてもなんか違う感じがするし。鱗鞭は手入れが大変なんだけどなあ。
そんな訳で、馬車を飛ばして帰ってきましたよ。襲撃がなければもうちょっと早いんだけどなあ。魔境の周りだし、仕方ないと言えばそうなんだけど。どうせ町の中では飛ばせないんだ。危なすぎるからな。
そんな訳で、ルカさんたちを冒険者広場に置いてきて、僕は自分の家に帰る。領都も久しぶりに歩くなあ。3月以来だもんな。…8か月の出張はやっぱり長いよ。でもなあ、活性化させるためにはケルピーのレイドも必須だしなあ。あと1年なんだ。頑張ろう。
「ただいまー。」
「おかえりなさいませ、旦那様。お子様が産まれておいでですよ。」
「あー、やっぱり? 男の子だった? 女の子だった?」
「旦那様、その辺りは奥様からお聞きください。」
「了解。4階だよね?」
「いえ、今の時間ですと3階のレベッカの部屋かと。」
「あらら、そうなんだ。じゃあそっちに行ってみるね。」
さてと、じゃあレベッカの部屋まで行きましょうかね。…メイドさんの部屋まで覚えてないよ。声で解るさ。子供たちの声で。…おーおー、誰かが泣いてるなあ。誰が泣いてるのか、まあ子供は泣くもんよ。ノックをして中にはいる。
「アノン! メッ!」
「やぁあ!」
「はいはい、ドロテアはこっちね。痛かったわねー。」
「マァマー!」
「まったく、元気ねえ。ああ、貴方。おかえりなさい。」
「ただいま。忙しそうだね?」
「いつもの事よ。アノンがいたずらするのは。ほんと誰に似たのか。」
「旦那に似たのね。私はそうでも無かったもの。」
「あら、レベッカは心当たり有るでしょう?」
「いいえ奥様、特にありませんわよ?」
「もう。子供の頃だからって忘れてないわよ。」
「楽しそうで何よりだけど、子供が産まれたんでしょ? その抱いてる子?」
「そうよ。シリルって名前にしたから。男の子よ。はい。」
「シリルか。パパだぞー。」
「あらあら、シリルは嫌みたいね。アランみたいに泣かないけど。」
「…割と嫌がられるのは堪えるんだぞー。…はい。」
「はいはい。パパの何が嫌だったのかなー。血の臭いでもついてたかなー。」
「…お風呂入ってくる。」
「んもう、冗談よ。それなりに綺麗にしてきてるんでしょ?」
「多少はね。でもこっちにいる時みたいに毎日水浴びはしてないからね。」
「それはしょうがないでしょ。」
「アラン達は教会?」
「ええ、3歳組は文字の読み書きをしにね。他は遊びに行ってるだけよ。」
「ちゃんと祈るようには言ってる?」
「もちろんよ。テイマーになるのを諦めてない様だから。…鞭はあれを使わせるの?」
「そっか。…あの連節鞭が一番強い鞭だと思うんだよね。保守も簡単だし。アランの才能が嫌だって言ったら別のを買いに行くけど。」
「知っていたけど、冒険者の使う鞭って凶悪よね。普通のテイマーはぺちぺちする用の短鞭だもの。まあ、そんなものを使わない様に関係を作るのが大事なんだけど。」
「まあ、あんな凶悪なのは僕の作ったの位の可能性があるけどね。普通の鞭は皮で作ってるからさ。ウォーターウルフかラグーンウルフ製のが今は一番多いんじゃないかな。」
「あらそうなの? 鞭にも色々あるのねえ。でも魔鉄じゃないのね。私の持ってる短鞭は魔鉄製よ?」
「まあ、短鞭は皮じゃ無理じゃない? 鞭って長いものだからさ。まあ、持ち手は魔鉄だろうけど。」
「パーパ。」
「あら、ミレーナ。パパが解るのねー。偉いわねー。…教えてないのにね?」
「…ね? まあ、いいや。パパだぞー。」
「やー!」
「…抱かれるのは嫌なのか。やっぱり風呂入ってくる。」
「ふふふ、んもう。行ってらっしゃい。久しぶりなんだし、ゆっくり入って来なさいな。」
「そうする。…ミレーナもお風呂に行くか?」
「お風呂!」
「そうかそうか一緒に入ろうね。…抱っこするからな?」
「お風呂!」
「はいはい、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
久しぶりのお風呂ですよ。…遠征中はこれがないのが辛い所よな。維持費の支払いは普通の人でも出来るのがいいよな。錬金アイテムに放り込むだけだし。考えられて作られてるよなあ。髪洗液もメイドさんたちに持たせてるし、ここに補充するまでもないみたいですね。
30分ほど入ってましたか。ミレーナが飽きたようなので出ましたよ。しっかりと拭いてあげて風邪を引かないようにね。…まだ階段は上がれないかあ。流石に小さすぎるなあ。よじ登るのは出来そうだけど、危ないし。
「あじゃー。」
「はいはい、ちょっと待ってね。皆の所に行くからねー。」
抱きあげて3階に持って行きます。まだ部屋に居るだろ。抱っこしたまま部屋に入ると降ろせと暴れるので降ろす。とてとてと遊びに行くミレーナ。かわいいなあ。
「パパー、抱っこ。」
「ん? …誰の子だ? まあいいや。パパじゃないぞー、おじさんだぞー。」
「抱っこ!」
「はいはい。エイミー、この子は誰の子?」
「ん? ああカタリーナちゃんね。ヘザーの子供よ。何? パパと間違えたの?」
「そうじゃない? …あんまり帰って来てない感じ?」
「ヘザーの旦那さんは鍛冶見習いだから。鍛冶場に7,8日泊まり込みの事も多いのよ。…髪の毛の色も違うんだけどね?」
「いや、僕みたいに付け根が茶色でだんだん金髪になるような変わった色、なかなか居ないでしょ。」
「それもそうね。まあ、そのうちちゃんと覚え直すわよ。」
「家の旦那と同じ年だし、同じ名前だから髪の毛の色くらいしか違わないのよねえ。」
「あれ? レベッカの所もジャンさんだったっけ? ヘザーの所もジャンさんだったわよね。」
「そうよ。私の所の方が帰ってこないものね。野菜の行商人だから。」
「最近の野菜は年中とれるもんね。何でか知らないけど。忙しいのは良いことじゃない。」
「あー、錬金術のせいだね、それは。ここの領地、実験場みたいになってるから。」
「あらそうなの? 冬でも仕事が無くならないって愚痴ってたわよ。忙しいことは良いことよね?」
「偶には帰ってきて欲しいけどね。まだクロエの顔も見せてないもの。」
「この夏に産まれてからまだ帰ってきて無いんだっけ? 色んな町を回るのね。」
「野菜売りも色んな場所に行かないといけないみたいでね。ノルマがあるのよ。何処で何をしているのかまでは知らないけど、代官屋敷に報告に行かないとって言っているもの。」
「あー、あれじゃないかな。僕が行商人を紐づける様にして村々の情報をあげさせた方が良いって言ったからかなあ。多分その報告書を作ってあげてるんだと思うよ。」
「あら、家の旦那が忙しいのは旦那様が原因だったんですね。」
「まあ、多分ね。補助金貰ってるでしょ?」
「最近になって行商人にも補助金がでるようになったって言っていましたね。それを旦那様が?」
「まあ、半分以上は思い付きでね。行商人が居ないと食べ物が村から町へ回らないでしょ? だから補助を出した方がいいと言った覚えがある。そのついでに情報も上げさせるべきだって言った覚えもある。」
「あら、本当に旦那様が原因だったんですね。まあ、毎日居られても子供の面倒を見させるだけですが。…そう言えば、教会で子供を預かると触れがありましたね。」
「そう言えばそんな事も言ってたわね。…夏の終わり位だったかしら?」
「あー、それも僕かなあ。前の冬に代官屋敷に報告書を上げたかなあ。教会で子供を預かる仕事を任せられないかって領主様に言った覚えがある。もう実行されたんだ。」
「結構評判いいみたいよ? 孤児たちも沢山いるし、面倒見るのもまとめてだからね。それにアラン達みたいに遊びに行っている子供たちもいるし。ルクスはもみくちゃにされてるようよ。私に愚痴ってくるくらいにはルクスも人気みたいよ。」
「ここの屋敷は私たちみたいなメイドが交代で見ればいいですが、服飾関係の人には有り難いんじゃ無いかしら。今は忙しい時期なのに、子供の面倒も見ないといけないんですものね。それが無いだけでも有難いと思いますよ。」
「家も預けに行っても良いのよ? レベッカ、どうする?」
「文字の読み書きまではここで面倒を見ましょう、奥様。見れるなら見れる方がいいでしょうし。」
「だねー。見れるんなら自分の子供は自分たちで見た方がいいよ。でないと教会の手が回らなくなりそう。」
「…貴方が仕事を振ったのではなくて?」
「…いやまあ、そうなんだけどね。報告書を上げるときは、画期的な案だと思って出してるから。」
「画期的であったことは間違いないと思いますよ。教会の手間までは考えが行っていなかったようですけれど。旦那様もうっかりをおやりになるのですね。」
「割とうっかりは多いよ。今だって、自分を忙しくして子供の面倒も店の番も出来ないし。」
「貴方はもう少し大人しくしていることを覚えた方が良いと思うのよ。何かをしていないと駄目な人なのかと思うときもあるもの。」
「ほんと、それは自分でも思うときがあるよ。…多分何かしてないと駄目なんだと思うけど。」
「…重症かもね。ポーションで治らないかしら?」
「奥様、こういう欠点も無いと面白くありませんよ。」
「そうかもね。でももう少し生き急ぐのを何とかならないものかしら?」
「…皆に散々言われてきてるから。多分何ともならないと思う。」
「そう…。早死にだけは止めてよね。」
「それは鋭意努力します。」
僕だって早死には嫌だ。少なくとも60までは生きるんだ。…目標が小さいが、あんまり長いだけってのもなあ。まあ、その時はその時だ。…生き急ぐのはやめられないんだよ。癖みたいなものなんだ。まあその分結果は出しますので。
そう言えば、お風呂屋の報告書の結果が遅いなあ。向こうでも作ってから結果が来るんだろうか。あれば直ぐに送られてきているはずだからなかったんだろう。…貴族にも無いのかは知らないところ。貴族の生活なんて知らん。
…一代貴族になったけど、標準的な貴族生活とは違う気もするし。食べてるものだって貴族よりもいい物を食べている自信はある。高いだけで唯々辛い食べ物とは違うのだよ。旨味を求めていかないと。まあ、そんな感じ。この冬はゆっくりするぞ。…星の川は毎日作るけど、ゆっくりするんだ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




