133話 22歳 またまた長期出張、老騎士からのお願い
農家が快命草を駆逐しようと躍起になる季節、3月の終り頃ですよ。どうも、ヘルマンです。今日からまた遠征ですよ。今度の町はロネ町ですよ。ここから3つ目の町ですね。あと2年、それでとりあえずは終わりだから、景気よく行きましょうね。
ルイジ町では驚かせて貰いましたが、ロネ町はどうでしょうね。…悪い方にびっくりさせられないといいけどなあ。まあ普通なら普通でいいんですよ。というか変に拘りが無い方が有り難いかもなあ。変に拘りがない方が受け入れ態勢が整ってるってこともあるかもしれないし。
朝早くからオルソンを出て、ロネ町に着いたのは昼過ぎだった。…これなら次の年も一日で行けるな。まあ特急馬車並みの速さだしなあ。4つ分は行けるよな。…襲撃があるたびに町で報告が必要なのは面倒だけど、まあそれだけだし。
各冒険者ギルドではまたかと思われたようですが。…ルター町はもう終わりましたよと伝えましたが、ルイジ町にはもう一組が来ますと伝えてきた。僕らの担当は、今年はロネ町だからさ。前半組なんですよ。…もう来てるのかもしれないけど、どうせやるのは4月から。誤差誤差。
ケルピーが出ないと仕事にならんのですよ。冒険者ギルドで聞きますがね。何でか知らんけど、余程の事が無い限り、出るのは4月の1日、出なくなるのは12月の1日。偶に早く出なくなることもあるが、大体は一緒。出る時期がずれることもあるらしいが、出なくなるよりも珍しいとの事なのでまあ、そんな時には当たらんでしょう。
出なくなるのが早くなったのは当たったことがあるんだけどね。まあ本命はスティナラニアだし、ケルピーのレイドがずれる分には別に構わんかったりする。スティナラニアがずれ込むと予定が大幅に狂う。早く出られても困るんだよ。
ケルピーのレイド中に…ミズチならまあいいんだけど、スティナラニアには当たりたくない。だから冒険者ギルドではレイドの前に必ず日付を聞く。5月とかだと暫くは聞かないんだけど、6月は把握しとかないとレイドの日が7月の1日ですってなるのだけは不味いんだよ。
ミズチ、スティナラニアが出るのは7月の1日だからね。出なくなるのは10月の1日。これは余程が無いとずれないと言われている。なので安心してケルピーのレイドをやれてるのはある。僕らがこの仕事に従事している時にはずれるなんて非常事態は無いと思いますよ。
あったら本当に問題だからね。1日でもずれるとスタンピードの傾向って言われているからね。騎士爵をまだ増やし切っていない現状、スタンピードはちょっとまずい。出来れば騎士爵にスタンピードを抑えて貰いたいからね。…戦争の時にも起きて欲しくないよね。
まあ、魔境のスタンピードなんて中々おきない上に、起きたら起きたで騎士爵が一杯いればボーナスステージでしかないんだけど。ミズチやスティナラニアが出てくることは無い。めいっぱいでケルピーだ。ケルピーが時季外れに出るんだよ?
レイドを続行するだけだよね。中白金貨が欲しい冒険者がレイドに詰め掛けるだけだよね。なので、騎士爵が広まり終わったらスタンピードばっちこいな訳で。冬も遊べるドン。やったね、冒険者たち。
でもまだ来て欲しくない訳で、広め終わってからにしてくださいね。さて、冒険者ギルドに着きましたね。…ちょっと他の町より冒険者広場のテント群が多い。気のせいでなく多い。なんでなんだろうね? この町の冒険者の質は低いんだろうか?
でもまずは襲撃の報告ですね。ルイジ町からロネ町に来るまでに2回襲撃がありました。…こんな小銭いらんけど、報告は義務です。それが冒険者の心得。サクッと報告して受付さんに聞かないとね。
「すみません。今日は何月の何日ですか?」
「今日は―――3月の28日ですね。3日後にラグーンウルフやケルピーが出る予定です。…あの、もしかして、あの人たちですか?」
「あの人たちとは?」
「魔境を荒らしまわっているという騎士爵様たちのことです。」
「あ? 荒らしてはねえだろ。…他から見たら荒らしてるように見えるのかもしれんが。」
「ですね。騎士爵を増やしに来ただけですし。」
「俺らもやりたくて別にやってるわけじゃねえよ。主にこいつが悪い。」
「皆忙しくなればいいんです。という訳で、あの人たちです。」
「支部長呼んできます!」
なんか酷い噂になっていませんか? …恐らくルター町からの噂でしょう。ルイジ町からの噂ならもう少しまともな噂になっているはず。怒られたのはルター町だからなあ。
「おう、ついにこの町にも来たか。まあ、去年はルイジだったんだから順当に行けばうちだよなあ。」
「まあ、オルソンから回ってきてるだけですからね。…逆回り組も居ますので、ここと次の町で終わりですが。」
「なんでえ、他の魔境にも行くのかと思ってたぜ。」
「他の魔境は領主様に任せてきました。去年に話が来ましたので報告書に上げてきました。早ければ今年か来年には動いてくれると思います。」
「は⁉ おい、そんな事聞いてねえぞ。」
「その位は馬車で話しとけこの野郎。」
「報告が来ていませんよ?」
「なんでえ、お前らの中でもおかしいのはこいつだけか。」
「おかしいとは失敬な。…ちょっと生き急いでる気はしてますが。」
「ちょっとじゃねえよなあ。」
「同じ人間でもヘルマン位なのは珍しいぞ。」
「ですね。長寿種には無い感覚です。」
「まあ、生き急いでてもいいからよお。ここの魔境も他んとこみたいに、存分に荒らしてけよ。魔境なのに騎士爵が老騎士しかいねえのは外聞が悪いからよお。」
「おや? もしかして騎士爵さんですか?」
「おう、他の奴らはもう死んじまったがな。後は俺だけだ。ドワーフで700年生きてる。俺もいつ迎えが来てもおかしくねえ。」
「…死にそうに見えないくらいには元気なんですが。まあいいです。騎士爵はきっちりと増やして帰りますので。2,3年で芽が出ると思います。」
「おう、最近の腑抜け共に喝を入れてやってくれ。頼んだぞ。解体要員は準備してあらあ。」
「なら、老騎士に応えてやらにゃあ騎士爵が廃るな。」
「おうよ同朋よ。ガンガン魔境をかき回してくれや。」
「それじゃあ4月の1日からケルピーのレイドを始めて行きますね。」
そんな訳で、皮紙にレイドの予定を書いて宿に向かう。…多分南東通りだろう? 魔境に近い所にあるだろ。料理の美味しい宿屋があればいいんだけど、期待薄だよなあ。まあ、3日後から頑張りましょうね。この町の錬金術師も忙しくしてやるからな。覚悟しとけよ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
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素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。