122話 20歳 シャーリーの旅立ち、長期出張ルター町
魔境が活性化し始める春。別れの春。シャーリーちゃんが旅立って行きましたよ。どうも、ヘルマンです。シャーリーちゃんはまずはゲシュケ高原に向かうそうです。近場だからね。乗合馬車で10日くらいだっけか。いい感じの近場です。そこである程度稼いでから不人気の霊地に向かうようです。…不人気の所を狙うあたり渋いですね。まあ、競合しませんし、楽なのはある。それに第六感が働いたんだと、それならしょうがない。何かを受信したんでしょう。解らんけど、重要なときは働くからなあ。才能に従っておけば失敗はするまい。それになんだかんだしっかりと採取も出来ていたし、問題なさそうである。
そして、僕も暫く家族とお別れです。エイミーに行ってくると伝えました。…多分だけど、妊娠してるような気がするんだよね。帰ってきたら子供が増えていそうです。子供の出産に立ち会えないのは悲しいけど、この4年間は仕方ないかな。…帰ってくるのは12月だもんね。無理だろうなあ。
そんな訳で、冒険者広場の北側にて皆を待っております。馬車は僕が運転しますよ。…錬金術師ですから馬車は持ってますよ。錬金学術院で作ったやつです。ゴーレムも一緒、2体立てだよ。ここに来るのにも使った奴だよ。まあ、使わない事の方が多いからなあ。でも偶にゴーレムの方は整備してます。いつ使うか解らんけれど、必要になってから作るのも面倒だからさ。今回使うことになったし、無駄にはなってなかったってことだよ。使用人に今日だって連絡を入れさせたからそろそろ来ると思うんだけどな。いつもそうだけど、待つことの方が多いんだよなあ。
「おう。待たせたな。…他の奴らはまだか?」
「まだですよ、マウロさん。今年から4年間よろしくお願いしますね。」
「まあ、どっちにしろ毎年ここでやることだからよお、何処でやろうが問題ねえよ。お前やルカみたく結婚してるわけでもねえんだから。」
「エルフやドワーフは結婚は遅いんでしたっけ?」
「まあ基本な。早え奴は早えよ。でもまあ200歳くらいは1人でいる奴の方が多いんじゃないか?」
「人間だと死んでるんですよねえ。マウロさんにはいい人は居なかったり?」
「寄ってくるのはいるが、金目当ての女は嫌だな。幾ら騎士爵でも干上がることはあるんだからよお。」
「まあ、そんな嫁は僕も要りませんね。エイミーはもう少し使ってくれてもいいんですが。」
「お前んところが干上がる奴はよっぽどだろう。錬金術師は今儲かってるんだろ? 魔導爵になる何かを見つけたんだろ? 結構噂になってんぞ。それに使用人をくれって奴が増えたからな。…流石に1人は残さねえと回らんから4人までしか出せんしよ。雇うにしても中々集まらんくなったぞ。」
「家もあと1人欲しいんですが、雇えてないんですよね。募集を張り出してるんですけど、…何処も彼処も使用人の募集用紙で埋まってますからねえ。」
「一気に増えたからな。原因はお前だぞ? 毎度毎度金をばら撒きやがって。おまけに星の川だったか? あれが出回ってから魔境が変わったんだからな。」
「まあ解っていますが、こうも上手く活性化するとは思ってなかったんですよね。もう少し保守的かと思っていたんですが。」
「魔境に潜る奴が保守的なわけがないだろ…。お前さんの読みは外れたんだな。まあいい方向に外れたと思っとけや。」
「ですねえ。悪い方向でなくて良かったとは思いますよ。」
「何が良かったんだ?」
「ああ、ルカさん。おはようございます。」
「おおルカか。いやな、ヘルマンが魔境の連中を保守的かと思ってたらしい。」
「いや何でそう思った? 保守的な奴らが魔境に潜るわけ無いだろ。」
「だよなあ。保守的な奴らなら霊地に行っとるわな。」
「認識不足でしたね。殆ど霊地で育ってきたもので。」
「おや、皆さんお揃いですね。」
「ジュリオさんおはようございます。…早速出ますか?」
「おお、揃ったんなら出ようや。どうせ今日は移動だけだがよ、馬車で話しながら行こうや。」
「じゃあ馬車に乗ってください。戦闘は任せましたので。」
「任せとけ。出番なんて無いからな。」
「基本はルカに任せますか。盾使いだと処理能力が低いですから。」
「誤差の範囲だろ? まあ、任せて貰っていいぜ。」
そんな訳で馬車は出発しますよ。まあ隣町までですし、魔境の側ですがまだ春ですし。そんなに敵も出ないでしょ。馬車では色んな話をしました。主に作戦会議ですね。ケルピーのレイドは僕らの所は4日に1回のペースで行います。他の所は5人ですから5日に1回ですね。これで毎日ケルピーのレイドが起こるわけですね。どれだけの冒険者が参加するか楽しみですね。領都よりは少ないですが、領都よりも人が集まるでしょうから。…領都の冒険者はレイドに参加しなくても大半の人たちはやっていけるようになっちゃいましたからね。新人の育成に取り掛かってもいい頃合いなんですよねえ。まあ村からどんどんと人が供給されるので困りはしませんが。…領主様は騎士爵が増えすぎて困ってそうですが。お金の使い道を考えないといけないですからね。年に幾ら入ってきてるんだろう。
そんな訳で、一度の襲撃もなく次の町、ルター町に到着。時刻は昼前よりも早い時間帯です。…今からでも魔境に行けますね。行きませんが、先に冒険者ギルドにレイドの告知を張ってもらわねば。…もうケルピーが出ていることは確認できているんですよねえ。トップバッターは僕なんですが、…明日にレイドをセットしましょう。人が集まらなくても普通に行きますよ。少なくても問題ない。レイドをやっていると少なからず認知さえしてもらえれば。
「いや、今日着いて明日は流石に早すぎじゃないか?」
「まあ、様子見で魔境にも潜ってみたいですし、最悪10人くらい集まれば良いと思っています。」
「10人なら、まあ何とかなるか。星は3つで行くんだろ? それは皆で合わせとかないとな。」
「初めですし、3つでいいでしょうね。慣れれば2つでもいいんでしょうが。」
「順番はヘルマン、俺、マウロ、ジュリオで良いのか?」
「俺はいいぞ。やることは変わらんのだし。」
「私も異存ありません。私のレイドが一番難しいかもしれませんが。」
「盾使いがまともに戦う姿を見るのはこれが初めての奴らが多いだろう。そんな剣の付いた盾なんぞ言われんかったら思いつかんぞ。」
「ケルピーくらいなら余裕ですよね? 僕もその盾で戦ってるのを見ている訳じゃ無いので。」
「ええ、余裕ですよ。5,6体まとめて来られても余裕です。これでも飛剣は使えるんですよ?」
「それでも飛剣が出せるんですね。知りませんでした。」
「まあ、本命は両手盾で受けて貰わにゃいかんからな。スティナラニアのレイドまでの繋ぎみたいなもんなんだからよ。」
「だな、夏にやるって伝えとけばいいんだよな?」
「そうですね。そっちは星4つで切りますが。」
「ケルピー相手だ、仕方あるまい。それよりもここの町の錬金術師は準備出来とるんだろうな? 流石に星の川は俺らには作れんのだぞ?」
「そこは冒険者ギルドから通達も素材も行っているので大丈夫なはずです。怠惰な錬金術師が居た場合は知りません。稼ぎ時を逃すだけです。」
「まあ、私たちはお金をばら撒くだけです。成功するかどうかはこの町の錬金術師次第でしょうが、少なからず活性化はすると思いますよ。」
「それにスティナラニアのレイドの後に錬金術師の所に行けって伝えるんだろ? 作ってなかった奴らも慌てて作るだろ。」
「その辺は錬金術師次第だからなあ。まあ、俺らの仕事じゃ無いわな。」
「後の梃入れは領主軍の人たちにやって貰いますし、大丈夫でしょう。」
「領主軍も今年は騎士爵を狙うやつらが結構いるんだろ? 俺らが魔境を回るうちに殆ど全員が騎士爵になってるだろ。」
「そうでしょうね。ここの領主様は優秀な部類だと聞いていますし、ぬかりないでしょう。」
さてと、皮紙にも記入しましたし、明日にとっととレイドを起こしましょうね。10人居ればいい方。20人なら御の字。ケルピーのレイドになるのかどうか。星2つも混じるんだろうなあ。流石に初日に混ざることは無いだろうが。さてさて、次は宿選びですよ。前情報はまったくなし。冒険者ギルドで聞き込みましょうね。
「すみません。料理の美味しい宿屋は何処ですか?」
「…流石に料理の味までは。料理を出してる宿屋なら分かりますが。」
「そこでいいので教えてください。」
「南西通りの西寄りの宿で、ここからだと…4つ目だったと思います。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「…お前さんは宿の料理にも口を出すのか?」
「口は出しませんよ? 美味しいものが食べられるかを聞いてるだけで。料理人を雇っては居ないんですか?」
「料理人か。使用人に普通に作らせてたな。外で食べてもいいんだからさ。」
「ですね。料理専属を雇うのはヘルマンさんくらいなんじゃないですか?」
「ええ…、食生活は重要ですよ。日々の生活の4割は食事ですよ?」
「いや、流石にそこまで比重を占めてんのはお前さんくらいだろ。俺は酒が飲めればそれでいいな。」
まあ、見解の相違ですね。美味しい食事は重要だと思うんだけどなあ。さっさと宿を決めてしまいましょうね。冒険者ギルドを出て南西へ。ルカさんたちは近場から当たっていくらしい。僕は目的の宿屋に直行。宿の食事が美味しいといいなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




