12話 4歳 エドヴィン兄星を振られる
雪降る寒空の中、立つのも億劫な人の波に呑まれて居る最中、いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。今日は新年祭。星振りの儀の日でございます。今年はエドヴィン兄が星を振られる年。文字の読み書き計算も一通り終え、他の冒険者に混じって採取の日々を送っていたようだ。僕は林の奥に行っていたので、別行動だったのだが、ジュディさんに確認をすると、保存瓶を売って貰いに来ていたようで。怠惰に呑まれていないようで何よりである。
時間は正午になるちょっと前、まだ鐘がなってないということは、正午になっていない、才能がまだ振られていないということだ。
もうそろそろだと思うんだけどな。エドヴィン兄の振られた星によってお祈りの効果が分かる。エドヴィン兄がどんな感じに祈っているかは解らないが、少なくとも冒険者になりたいと祈っているはずなので、戦闘系の才能を得ることになると思う。得られなくとも、冒険者に不利になるような才能ではないはずだ。ここが僕のやってきたことの分岐点になると思う。
正午になったのだろう。鐘がなり始めた。1回2回とどんどんと鳴っていく。そして10回鳴り終えた。…結果はどうだったのだろうか。教会の扉が開く。子供たちがわっと出てくる。エドヴィン兄もこちらに向かって走ってきた。結果、結果はどうだったんだ。
「父さんやったぜ。剣士の才能に6つ星が振られたんだ! これで冒険者になれるぜ!」
エドヴィン兄は無事に冒険者になれる才能を貰っていた。…これで僕の方にも希望が出てきた。お祈りをちゃんとすれば欲しい才能が手に入る確率が高くなるというのは事実かも知れない。エドヴィン兄の1例だけでは解らないが、そうかもしれないというだけでも大きい。希望はあった方が良い。
周りへと気を配ってみると、どうやら今年は農家は星4つが最高らしいな、でも星4つでも珍しいらしく、騒いでいる野郎どもも多い。また、エドヴィン兄の友人、パーティメンバー候補の子供たちも冒険者になれるような才能を貰ったらしく、戦士星4つだか槍使い星3つだとかいう声も聞こえる。…最悪、戦えなくても冒険者はやれるんだが、義務もある以上、戦えた方が良いのは確かだ。それに魔境に潜るような冒険者になるには、確かに才能が必要だ。エドヴィン兄は魔境に挑む予定だから剣士星6つはかなりいいところまでいける才能だろう。
僕も少なくとも錬金術師の才能に星4つくらいは振って欲しいな。錬金術師として大成したいとかは、余り思っていない。どちらかといえば、錬金術を使って、気軽に生活したいというのが僕の目標だ。特に波乱を求めているわけでもなく、動乱を求めているわけでもない。普通の、ジュディさんところみたいに、平凡な店ができればいい。…もうちょっとお客が来てくれるとなおいいけど。
まあ、家は次男の星振りの儀だったわけで、早々に退散することにしましたよっと。…父さんと爺さん、シャルロ兄とエドヴィン兄は居残りで酒だ。どうせ明日の夜にしか帰ってこないんだろうな。去年と一緒で。
朝、いつも通り起きて顔を洗い、朝食を食べ、朝の仕事を終わらし、教会へ行く。…今年の教会前広場も混沌としているなあ。ゾンビが幾人も発生しているし、真の呑兵衛はまだ飲んでいる。毎年これだもんな。すげー酒臭い。とっとと教会の中に避難する。そしてお祈りだ。エドヴィン兄や他の子供たちからのデータでは、祈ればある程度の星は振られるようである。であれば、祈らいでか。本当にお願いしますよ。錬金術師の才能を。
それが終わればいつも通り採取に向かう。死者の園から林の中へ、そして奥の方へ進んでいく。そして採取だ。今は量より質で素材が欲しい。どの道魔力茸は沢山になるのだ。ならば他の素材を重点的に狙っていかないとね。見る場所は北側の木の根の部分、日の当たらないところを重点的に探していきますよ。…目に入った魔力茸は採取。もったいないと思ってしまう自分がいるんだ。しょうがないね。
そんなこんなで夕方、教会前広場まで帰ってきました。多少酒臭がするものの見事に片付けられている。奥様方が皆で片付けるんですよ。旦那も一緒に片付ける。手伝うんじゃないよ。片付けられる側だ。そんな訳で、夕方のお祈りを済まし、家に帰るとぐったりとした男4人を眺めつつ、自分の仕事をこなし、夕飯だ。まあ、今はこんなんでも、明日の朝になれば復活してるんだもんね。そして来年は呑まないと誓うところまでが様式美。結局飲むんだよ。酒飲みってそんなもん。
朝、いつも通り起き、顔を洗う。冬だからよく目が覚める。…寒いけど、日課なんだよね。で、そこから皆で朝食を食べる。そんな中エドヴィン兄が、この春になったら冒険者として村を出ていく宣言をした。一応、村のルールとして、12歳の成人までは、家に居ていいルールになっているのだが、エドヴィン兄は早々に出ていくことに決めたようだ。まあ、そうだろうさ。僕だってそうするつもりだもの。12歳ってのも早いような気もするが、この世界の人間は早熟なんだよなあ。エドヴィン兄もなんだかすっかり大人びてきているし、そういう種なんだろうと思うようにしている。前世の記憶は当てにならんのだ。
―――そんな訳で、春。この冬も例年通りの冬で、雪も10㎝も積もっていない。それが畑の土色が見え始めた、そんな頃。エドヴィン兄たちが村を出て行った。…まあ、直ぐに帰ってくるんだろうけど、一応、見送りをした。多分カウツ町で冒険者登録をして、ヨルクの林で採取。ここまでが黄金パターン。文字の読み書き計算を覚えていない奴はここで教会行きか怠惰の冒険者行きが決まるがエドヴィン兄たちは文字の読み書き計算はできるもんな。そしたらギルドの資料室で採取物の勉強をして、まもなくしてヨルクの林に出発という感じだろう。装備も碌に無く、体もまだ成長期の段階で、魔境になんて挑まないよな? 少し心配ではあるが、装備もないし無茶はすまい。そのくらいは分別があったと思う。
まあ、こうして無事に旅立って行ったエドヴィン兄たちであるが、冒険者として大成できるかといえば、別の話ではあるが、それを祈るくらいはするさ。家族なんだもの。教えてあげられる範囲で、僕の得た知識も教えてあげたし、無駄にはなるまいて。それよりも僕は自分の星振りの儀に備えないといけない。準備期間はあと3年、十分な時間がある。ゆっくりと地に足つけて頑張るとしましょうか。
こう書かないと評価をしてもらえないらしい?ので一応書いておきます。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。