108話 18歳 道場計画再び浮上、科学とは違う世界、冒険者ギルドに駄弁りに行きます
レイドを何回かこなし、お風呂屋も宣伝してきましたよ。今は5月の中頃だと思います。どうも、ヘルマンです。今年もレイドは平常運転です。多い時には500人位いるかなあ。まあ今回も中白金貨5枚でレイドを集めてたから冒険者が結婚する事も増えてくるだろう。この領都、無職の税金は中白金貨2枚で良いらしい。ケルピー1体分でいいんだって。それくらいなら僕が来る前ならまあギリギリ払えるかなあって感じだったのが、今は余裕でお釣りが来るからな。住み着く冒険者も出てくるだろう。
ハリー君の稽古も順調です。いやー才能が意地悪し過ぎですね。振り向いて貰えたので後は体力作りなんだけど、今は2時間と少しでダウンする。才能が急に無茶な剣閃を要求してきているんだろうね。剣を振る速度が圧倒的に違うんだけど、その所為でダウンが早い。…才能さんにも色々あるんだなあ。ハリー君の才能は厳しすぎる。要求が強すぎる。多分それに頑張って答えようとしている結果が、2時間とチョットしか持たないという結果なんだろうな。まあ、頑張ってもらうしかないけどさ。自分次第だからね。ここからの努力は。
ハリー君を見て居ると道場計画をやっぱり復活させた方がいいような気はするんだよ。浅瀬で燻っている冒険者の努力不足なだけな気がするんだよね。星1つでも5人いればケルピーも狩れるはずなんだよなあ。…鉄迎派だけの話じゃないと思うんだよね。ミズチは無理だが。装備を揃えて技まで持って行って星4つが5人でギリギリ勝てるかどうかだと思います。それを考えると星6つ推奨なのはあってると思う。ハリー君の様な意地悪な才能で無いなら星6つが5人いれば十分いける。錬金術ギルドの推奨は間違っていない。
ただ本当に冒険者が訓練するかというところになるんだよな。何か訓練させる方法は無いだろうか。不純でも何でもいいから理由を作ってやらないと訓練しないと思うんだよね。僕じゃあ理由を作れないから流行らないと思います。道場計画は本当にいい計画だと思うんだけどなあ。何か訓練させる動機はないものか。
妊娠組も元気にお喋りしています。歩く方がいいとダイアナさんが言っているので皆仕事もしながら歩きながらという生活をしています。エイミーはアランのお世話を主にしていますが。…アランがちょっとだけハイハイし始めたんですよ。ちょっと早いような気がするんだけど、こんなもんなのか? まあ、まだ1,2歩くらいなんだけど。はい回るほどにはなってない。それをハイハイと言っていいのか知らんけど、ちょっとずつ成長しています。相変わらず僕が抱くと泣くんだよなあ。なんでなんだろうか。エイミーやメイドさんなら泣かないのに。
ルクスは相変わらず。気ままに生活している。ほぼほぼアランの隣で寝ているんだけど、結構散歩にも出てきているらしく、畑でも見るんだよなあ。何してるか解らんのだけど、スケルトンをじっと見たり、カータンと何か話しているのか鳴いているのを聞くんだよね。…カータンは話が出来るのか? エイミーと話ができるのはまあ、解らんでもない。テイム魔物だからさ。テイム魔物同士は話せるのか? それとも僕らが聞き取れない音を出しているのだろうか。うーむ、解らんけど、何か解り合ってるならいいんじゃないかな。
さて、今日はレイドも無いし、構想を練っているんだが、思いつかないんだよね。この間は色々やってみたんだけど、謎が増えたんだよな。何をしたかというのは簡単だ。酸素があるのかどうかの実験だ。スライム燃料を保存瓶の中で燃やして消えるかどうかの実験をしたんだよ。科学に多少の知識があれば結果はおのずと解る実験だな。スライム燃料を燃やして蓋を締める。普通はそれで火が消えるはずだ。…消えなかったんだよね。1時間きっちり燃え続けました。…なんでなんだ? 燃焼に酸素を使っていないのか? そんな訳で、毛皮の毛を毟って同じように燃やして見たんだが、消えないんだよな。…この時点で前世の僕とは世界が完全に違うというのが解ってしまった。文明が衰退した後の可能性とか色々と考えていたんだが、古代都市が出てくるとか夢があるもんな。でもその可能性は無いという事が解った。…魔境や霊地、才能がある時点で解ってたといえば解ってたんだが。
そんな訳で、僕の中にある科学知識の殆どが役に立たないものだという事が解った。…まあ、科学の知識が何処まであるのかという疑問もあるんだが。…それじゃあ何で物が燃えるんだろうね? 火属性が関係しているんでしょうか? 精霊使いがいる関係上、精霊がいることは解っているんですよね。精霊が関係しているんでしょうか。…待てよ、何で蒸留は出来たんだ? あれも科学知識じゃないのか? …余計に判らなくなってきたぞ。水が沸騰するという現象は科学といえば科学だろ。酒が蒸留できたのも酒の沸点が水よりも低いからだ。その辺は適用されているのか? …まあ、前世での名前が被っている物がある時点でよく解らんのよなあ。トマトはトマトなんだよ。でもマヒジュなんてものは、前世の僕は知らない訳で。大豆だと思って使ってたからね。用途も大豆だから大豆じゃないのかとは思ったんだが、マヒジュらしい。…解らん。
科学的考察は無意味な気がするなあ。後はなんだろうな。何か出来ないかなー。とりあえず、冒険者ギルドに行ってみましょうか。何か面白い話が聞けるかもしれませんからね。そんな訳でやってきました冒険者ギルド。何か面白い話はないかなあ。
「すみません、駄弁りに来ました。」
「ん? …ああ、騎士爵の錬金術師様か。今日はレイドじゃ無いんだな。」
「ええ、ちょっと構想が纏まらなかったので家に閉じこもっているよりかはいいと思いまして。」
「そうか。…そういやあ、また変なもんを作ったんだって? 風呂屋ってやつ。あれは良かったな。貴族ってのは毎日ああいうのに入ってるのか?」
「いえ、知りません。自分でやってみたらハマってしまって。」
「ありゃあ解体ん後とかに行くと良いな。汗が一気に落ちて気持ちよかったぜ。その後のエールがまたたまらんな。しかも冷たいのがいい。あれは流行るのも解る。」
「ですよねー。僕も毎日入ってますからね。」
「流石に毎日は入れねえが、冒険者も結構行ってるって話だしよお。知ってる奴らばっかりだったがな。」
「解体をやっていれば冒険者の顔も覚えますわね。…解体ってオークが主ですよね? あとウルフ系の毛皮と。ウルフは食べないんですか?」
「まあな。食うのはオークだけだな。ゴブリンが食えないのは知ってるだろ? あれは何しても不味い。ウォーターウルフはなあ、不味くは無いんだが、筋張っててよお。噛み切れないんだ。コッコドリッロはゴブリン以上に不味かった。あれも食えねえ。ラグーンウルフはウォーターウルフよりも筋張っててな。あれも食べられなくは無いが、買って食べるかと言われたら食べねえ。ケルピーも同じようなもんだ。ともかく硬い。不味くは無いが、オークが取れるからな。無理して食うことはねえ。ミズチはなあ、美味かったんだが、あれは高すぎて買い手がおらんだろ。…それでもオーク以下だったな。ケルピーよりは美味かった。…スティナラニアは、あれは駄目だった。油が多すぎてな。しかも食ったら次の日から腹を下してな。7日くらい仕事にならんかった。食べるなよ。これは絶対だ。」
「…油が多かったんですか。しかも下したと。」
一部の鯨肉みたいだな。蝋でも入ってんのじゃないか? 絞るか? …錬金術でいけそうだな。蝋か。面白そうだな。確か蜜蝋で琥珀が出来たよな。ハニーアンバーだっけか。ソーサリーアメジストを閉じ込めるか? …いい気がするな。成る程、琥珀か。明度が良ければ宝石としても使えそうだな。何色になるだろう。黄色系統か? それとも水属性で混ぜるから青系統になるのか? いいねいいね。構想が湧いてきますね。
「…なんか考え込んでんな。食うなよ。腹下すぞ。」
「食べませんが、錬金術で使えそうだなと思いまして、今、去年の分の肉は残ってますか?」
「流石に捨てたぞ? 今頃スライムが燃料に変えただろ。魔境のゴミ捨て場には大概ビッグスライムがいるからなあ。流石に食いきってるだろ。ヒュージスライムまでは見ないがな。ビッグスライムも沢山いたろ? あいつらが食べるから残ってないな。」
「残念ですね。それじゃあ今年狩った分は1体分ください。解体後の奴でいいので。というかぶつ切りにしておいてください。出来れば骨も一緒に。」
「まあ、どうせ捨てるんだからいいけどよ。錬金術って何でも使うのな。というか、今年もやるんだな。」
「もちろんです。今年は新しい騎士爵も出ると思うんですけどね。レイドでお金もばら撒いてますし、その分もちゃんと回収してますし。」
「てえと、ミズチか。まあ騎士爵が増えることに悪いことは無いからな。とりあえず、お前さんら4人は精力的で有り難いこって。冒険者も羽振りが良くなったし、ギルドも儲けが多くて特別報酬が出たからな。有り難い話だよ。」
「まあ、スティナラニアがあれだけ入ればギルドもウハウハですよね。錬金術ギルドに流すだけで大儲けですもんね。」
「おお、耳に痛い話だがな。それでも十分褒賞は出てるだろ?」
「十分出てますよ。…若干の赤字ですが。」
「それは仕方ねえだろ? 金を使うのも騎士爵の務めなんだからよ。しかし、お前さんは赤字じゃあ若干困るか。ソーサリーアメジストを買ってんのか?」
「買えますので買いますが、尻込みする値段ですからね。」
「その辺はしゃあねえだろ。うちも大魔金貨1枚出してんだから。…毎回小魔金貨で渡してるから配ってんだろ?」
「まあ、後で回収しますがね。星の川を買ってもらいたいので毎回出してますよ。」
「あれもなあ。高すぎんだよなあ。もうちょっと安けりゃ騎士爵が増えるんだがな。」
「流石に安くすることは出来ませんよ。1日に良くて4つしか作れませんから。冒険者全員分は無理です。」
「…そんだけしか作れんのか。なら納得だな。あれは好きな才能で作れんのか?」
「いえ、戦う系統の才能がランダムです。…魔法使いのが出来たとは聞いてませんね。近接武器だけです。」
「じゃあ、騎士爵だけか。魔導爵の分もありゃあなあ。魔導爵は今この領にいないんだよ。」
「魔導爵自体が少ないんじゃないんですか?」
「そうなんだよ。魔術師学校に皆行くだろ? 戻ってくる奴はいないことは無いが、戻らない奴は王都で魔導爵をとっちまうからな。賢者とかだと特にな。それに王都と同じような魔境ってのも悪いんだ。土魔法使いのいい奴は軒並み王都に残っちまう。他の属性の奴でここで狙うんなら星6つは欲しいな。火属性なら星9つでもどうなるか解らん。土属性なら星4つでも十分戦えるんだがなあ。」
「まあ、研究はしてみますがね。魔法使いの方のを。ソーサリーアメジストが使えると思うんですけどね。今、錬金学術院の方に問い合わせています。」
「…ソーサリーアメジストを使ったものを買えるのか? 錬金術ギルドで売ってるのは大魔金貨4枚だろ? それ使って作る奴を幾らで売るつもりだ?」
「…利益を削りに削って中魔金貨45枚って所じゃ無いですかね?」
「それほぼ年金の値段じゃねえか。手が出んぞ?」
「…借金してまで魔導爵が欲しいかどうかですけど、そもそも作り出せるかも解らないんですが。」
「まあ、作れてからの話か。作れたら魔術師ギルドに持って行くのか。…冒険者には魔法使いは少ないからなあ。」
「あー、やっぱり少ないんですか?」
「ああ、少ない。才能は錬金術師と同じくらいで出るんだがなあ。属性と星の数以外にも魔力量が物を言ってくるだろ? 星が沢山あっても魔力量が少ない奴ってのは居るからな。冒険者にならずに普通に仕事してる奴の方が多いんじゃないか? 星が沢山振られたらそれしかなりようが無いが、少なからず、他のにも振られんだろ? …それは錬金術師にも言えることだがな。」
「星1つでも使える錬金術と違って威力や使える魔法に制限がかかるんでしたっけ?」
「魔法に制限はないな。威力が変わる。後は魔力量だけだ。『エクステンドスペース』は魔力操作の技量って言われてるけどよお。限度は魔力量であるって話だぞ? まあ、限界まで行くやつの方が珍しいらしいが。」
「あ、そんな制限があったんですか。知りませんでした。」
「あー、その辺は貴族学校の方の領分だからな。平民は知らんのか。」
「まあ、『エクステンドスペース』の容量に困ったことなんて無いんですけどね。」
「普通はな。困るのは子供の頃くらいだろ。大人になれば…上達せん奴もいるが、錬金術師は魔力操作が仕事だろ? 困るわけねえよな。」
「むしろ困ってたらよっぽどだと思いますよ。どっちにしたって。」
「まあなあ。『エクステンドスペース』ほど不思議な物も少ないからな。」
「まあ、一番訳が解らないのが才能ですからね。研究者も王都にいるんですよね?」
「ああ、いるな。まあ結果は見えてるが。流石に神の関与することが解ってたまるかって話だ。」
「ですよねー。…そろそろ行きますか。構想も少し見えてきた感じですし。」
「そうかい。まあ、受付業務は朝以外は暇だからよお。また詰まったら駄弁りに来いよ。」
「そうします。ではまた。」
スティナラニアから蝋が取れそうなことが解りましたね。…本当に蝋なのかは解らんけど。まあ何でもいいですが。とりあえず、何か出来そうな気がしますから、この真夏待ちですね。自分で狩りに行くんですけど、解体はお任せしましょうね。蝋か。…何を混ぜたら取り出せますかね。錬金釜でいいとは思いますが、花水晶辺りを使いそうですか。それか水明草かな。…水明草の方がいいなあ。庭で採れるし。でも花水晶なんだろうな。両方使うかもしれんけど。さてさて、真夏になりませんかねえ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




