105話 18歳 腕のとれた少年再来、ハリー君訓練に苦戦
1月の中頃も終わりになったころ。風呂屋の改装を頑張っております。どうも、ヘルマンです。精霊樹の苗木はぐんぐん成長していって、天井にぶつかり、横に広がり良い感じの内装になったんじゃないですかね? まあ、このまま行きましょうね。冷蔵庫の構想も出来上がっていますので、カウンターの地下に冷蔵庫を作ってしまいましょうね。自宅にはすでに作っているので余裕ですよ。まずは氷結草を500本用意します。魔石を100個用意します。それを魔力操作で結界を編んで固定します。空調の結界と一緒ですよ。冷蔵庫の結界を張ります。氷結草は水属性の魔境霊地で採れる水属性の草で、真夏には採れない草なのだ。…集めていた僕グッジョブ。薬草学大全の2巻に載っている物ですから。庭でも採れるものですからね。集めてましたよ。そして、核になる魔石を精霊樹に埋め込み魔力流を操作してこれで完成。お酒をストックしておけば、風呂上がりの1杯が美味くなるだろう。冷たいエールを堪能するがよい。
後はお湯を出す錬金アイテムも照明の錬金アイテムも精霊樹に接続して、維持費を火属性の魔石だけにしてしまう。補給場所も精霊樹にしてしまってっと。これで手間もあんまりかからないだろう。そして、回転井戸用のスケルトンを8体置きまして、お風呂屋さんも稼働します。丁度昨日店長が見つかったからね。簡単に説明して、体を拭く用の布を大量に抱えて貰って持ってない人に売りましょうね。風呂屋の値段設定は小銀貨2枚。ゴブリン2体分ですね。これなら冒険者でも使いやすい。平民でも使えるよな。1日に500人来てくれれば十分な収入になる。酒も売るし、年に小白金貨数枚になるんじゃないかな。酒は酒屋からの仕入れ値を考えて売値を決めてくださいね。冷えてるんだから多少高くても売れると思います。…元を取るのは難しそうだが、十分なお店になるだろう。まあ、まずは僕が給金を払ったが。認知してもらわないと始まらないからね。一番最初は裏街の人たちが使うことになるだろうな。僕が冒険者に宣伝できるのは春先からだし。それまでは細々とやってくださいね。
そんな訳で、錬金術店の前で、ハリー君の訓練をやっています。まだ才能に愛してもらえてない様子。愛してもらえると体の使い方に無駄が無くなるから訓練時間が伸びるんだよね。大分体力も着いてきてはいるが、40分もすれば気絶する。剛剣を振り回しているからな。みっちり3時間振れる様にならないと魔境で体力が持たないぞ。雑魚狩りだけするなら体力は必要ないが、騎士爵を狙って貰いたいからね。みっちりと訓練しましょうね。…今日も40分くらいで気絶か。才能さんもそろそろ振り向いてあげてくださいよ。星は十分なんですよ。愛してあげてくださいな。…それともハリー君が気が付いて居ないのかだな。どっちだろうなあ。気付けば早いんだけどなあ。力で振るうんじゃなくて体全体で振るうんだぞと言っているんだけどなあ。まだ身体強化して腕だけで振ろうとしているからな。もうちょっとかかりそうかな。いつも通りリチャードに渡して店番をしていましょうね。うーむ、冷蔵庫という構想も降って来たし、暫くは構想は降ってこないだろうか? …一応、報告書は書きました。ケビンさんなんかは喜んで作るんじゃないですかね。お酒好きだったし。届くのはいつになるのか知りませんが。
さて、お店の方もあまり人が来ませんね。一応誰かしら待機してるんですが、僕まで話が来ないから、お店の奥で錬金術の構想を練ってます。うーむ、氷結草を大量に使ったからな。また氷結草で何か考えましょうか。空調は問題ない、冷房はあんまり要らないかな。作れるとは思うけど、寒くしすぎるのも体に悪いしな。他に冷やして得をするものがあるか? 製氷機があれば便利かな? 冷凍まで温度を下げないといけないな。…氷結草が足りないな。いや、結界じゃなくて錬金アイテムなら行けるか? そうすると維持費がかかりそうなのと大きくなりそうだよなあ。…精霊樹と錬金アイテムを繋げるか? 繋げられるのか? むむむ、解らん。出来るような気はする。照明の錬金アイテムとも繋げられたからな。氷を作るにしては大きくなりすぎるような気がするが…そんなに氷が必要かという話である。氷、今の所必要ないよな。何かに使えるかもしれんが、作っても使い道が思いつかない。まだ冷蔵庫で事足りてるもんな。暫くは保留で。氷をがっつり使いたいってなったら考えましょう。
「旦那様、お客様です。」
「お客? 解った。」
珍しいな。誰だろう。僕を呼ぶんだから知っている人だよな? …この子供は誰だろう?
「あの、文字の読み書きを覚えてきました。」
「…ああ、ならこっち来て、そこに座って。そしたらこれを全部暗記して。完璧に暗記して。注釈までしっかりと暗記すること。場所はそこを使ってもいいから。」
「はい、解りました。」
誰かと一瞬解らなかったが、魔境で腕を千切られたあの少年でした。記憶から引っ張り出して漸くだったよ。すっかり忘れてたよ。文字を覚えろって言ったのが夏だったっけ? 久しぶりに来たね。ちょっと予想よりも遅かったけど。まあ、あの計画自体は生きているからね。ゲシュケ高原に行かせる計画。光の霊地だからね、満月茸が採れるんだよ。それを20本採ってきてくれれば大魔金貨1枚の稼ぎだ。何の才能を貰っているか知らないが、魔境に来ているんだから戦う才能があるんだろう。という訳で、星の川を買わせましょう計画。実に気の長い計画だけど、近くに光の霊地があるんだもの。活用しない手は無いよね。戦う才能が無いなら無いで、採取に特化した冒険者になればいいだけだし、僕に損は無いという計画。損をするときは、逃げられたときか、火事で死んだ時くらい。まあ、ここに腕を千切られて運び込まれる程度には悪運が良いんだから死なんでしょう。
そして、いつも通り、お昼過ぎにハリー君の稽古を再開。1日に2回みっちりと稽古をしています。…休むのは嫌なんだってさ。早く才能に愛されたいらしい。その意気やよし。という訳で、気絶するまで剣を振りましょうね。…相変わらず、めちゃくちゃな剣筋。才能がまったく反応していない。
「ほらほら、才能にしっかりと話しかけて、体を才能に任せて。腕だけで剣を振るんじゃないよ。体全体を使って、才能で剣を振りなさい。剣筋が見えてきませんか? 見えてくるまで振りなさい。加減を覚えるのはまだ早いですよ。」
「はい!」
…とは言った物の、なかなかに才能さんはハリー君に厳しいようで。普通ならある程度は見せてくれるんだけどな。星7つの割に意地悪な才能さんだ。もう少し見せてやってもいいのにな。今のままだと星1つの才能に愛された者にも負けそうな剣筋なんだもん。…両手剣があってないんだろうな。僕の場合、武器も才能で選んだからな。始めから両手剣と決めていたハリー君とはスタートが違ったわけだ。…僕の才能さんは素直だったのもあるんだろうけど。
振り始めて30分くらい。息が大分上がってきていますね。そろそろ無駄な力がとれて剣筋が見えるときがあると思うんだけど…まだみたいだな。もう半月なんだし、見えてきても良い頃だとは思うんだけどなあ。
「剣筋が見えないかい? 今のままじゃあ魔境で通用しないよ。腕だけで振らない。身体強化に頼りすぎない。才能に身を任せなさい。そうしたら剣筋を見せて貰えます。」
「…はい!」
今日も駄目みたいですね。見切りはつけられます。今の疲労感なら剣筋が見えていても良いと思うんだ。才能に愛される才能もあるんだろうか。…まあ、1度愛してもらえさえすればいいんだ。そうしたら感覚が掴めるからさ。…今回も40分くらいか。まあ、まだまだ時間はあります。気を長くして行きましょうね。リチャードにハリー君を渡し、起きたらお風呂に入る様に言い渡し、店の奥へ行こうとした。
「あの、あの子はあんなに剣を振っているのに駄目なんですか?」
「ん? ああ、まだ駄目だね。それよりも君もちゃんと覚えないと駄目だよ。気になるのは仕方ないけど。」
「はい、僕も剣士の才能を貰ったんですが、あれくらい練習しないと駄目ですか?」
「うーん、あれでも足りない人も居ればあれ以前で良い人も居るからなあ。因みに剣筋は見える?」
「剣筋って何ですか?」
「ああ、じゃああれくらいやらないといけないかな。剣を振っていたら解るよ。君も勉強の合間に剣を振るかい? 気絶するまではさせられないけど、しっかりと覚えて貰わないといけないから。…いつ頃覚えられそう?」
「この本なら明後日には全部覚えられると思います。」
「よろしい。覚えたら君も参加していいよ。偶に復習で何日かに1回は勉強の日を作るけど、この冬は一緒に訓練しても良いよ。春になったら移動してもらうから。」
「この本の霊地に向かえって事ですか?」
「そう言うこと。採ってきて貰いたい素材がその中に書いてあるから。…保存瓶も沢山持たせるから目標数を見つけるまでの間の素材は売って生活費に当てるといいよ。保存瓶が欲しくなったら近くの錬金術師を訪ねること。保存瓶を売って貰えるから。」
「解りました。とりあえず、全部覚えます。」
うんうん、素直なことは良いことだよ。この冒険者を置いて行った冒険者たちもついに来なかったもんなあ。彼らは何をしているんだろう。何でもする気概があれば、彼らにも霊地に行ってもらう予定だったんだけどな。まあ、過ぎたことは放っておくとして、構想をまとめましょうね。製氷機はとりあえず、保留にしたんだったな。冷やしてどうにかなる物ってアイスくらいかな。…チョコレートがあればなあ。前世の僕も作り方を知らないって言っているから無理だろうな。材料がどんなのかも知らんし。むむむ、やっぱり製氷機はとりあえずは保留にしとこう。他に何か構想はないかなあ。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。