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10話 3歳 速車便襲来、大量高価買取

 春、畑では範囲開墾という人外じみた才能を使い畑を耕している農民を見ながらこんにちは、ヘルマンです。新年祭も終わったからもう3歳だ。新年祭、星振りの儀までが2歳、酒飲んでぶっ潰れた有象無象がいた日が3歳だ。この村は新年祭の夜に歳を数える習慣みたいだ。才能を振られる時に、皆がちゃんと6歳になってないといけないからね。そういう決まりなんだとか。産まれてから7回目の年越祭がその子の星振りの儀の歳だ。6歳と何か月かで星振りの儀を行うのである。まあ、そんなことは、どうでもいいが。とにかく星振りの儀が重要なだけで。


 雪が溶けた頃から父さん母さんリュドミラ姉シャルロ兄の4人で家に割り当てられた畑を横へ横へ範囲開墾していく。鍬の範囲をゆうゆうと超えた範囲を耕す様は、人間重機さながらだ。トラクターなんていらんかったんや。あ、爺さん婆さんは畑の割付が違うからここにはいない。まあ向こうも範囲開墾とかいう人外無双をやっていることだろう。向こうは熟練度が違うからな。それはそれは綺麗に耕していっているぞ。


 まあ僕は農業の方ではやることがない。跡継ぎでもないし、まだ才能を振り分けて貰ってないしで、戦力にならない。まあ、農業に才能を振ってもらう予定はないし、ずっと戦力外で良いんだが。僕は錬金術師志望、農家になんて余計な才能に星を振らないで欲しいね。という訳で教会に寄ってお祈りだ。どうか錬金術師に星を振ってくださいお願いします。


 今日はとりあえず少なくなった保存瓶の補充をお願いしに行ってから採取だな。何時もの様にジュディノアに寄っていく。ここに来るのももう何回目になるだろうか。いつも通り扉を開いて一声かける。


「ごめんください。」


「ちょっと待っとくれ!」


 いつも通りの返事が返って来たので、いつもの定位置に座って待つ。この椅子ももう少ししたらよじ登らなくても座れるようになりそう。だんだんと身長が大きくなってきているな。少し待つとジュディさんが奥から出てきた。


「丁度いい日に来たね。今日の予定は空いているかい?」


「? 予定といえば採取だけですが、なんですか? 珍しいですね。」


「ああ、丁度昨日早馬で手紙が届いたんだよ。今日ここに速車便で素材の買い取りに来るんだ。丁度いいから坊やも買い取って貰いな。…闇属性の売らない方がいいって言ってた素材は売ってないね?」


「はい、売るなら専門家に直接売った方がいいって言われた奴ですよね? ちゃんと残してますよ。」


「今日来る速車便が専門家からの大規模買取だ。私以外のヨルクの林の近くに住んでいる錬金術師にも早馬で手紙が行っているはずだよ。」


「っていうと、素材が高く売れるんですね。」


「そう言うことだ。これが買い取りのリストだ。この金額で買い取ってくれるんだから売って損は無いよ。」


 そう言って買取票を見せてもらう。闇暗中苔が保存瓶当たり大金貨2枚。漆霊闇苔が保存瓶当たり大白金貨5枚。闇属性の魔力茸が1本当たり小金貨5枚。闇甲穴茸が1本当たり大金貨5枚。闇天紋茸が1本当たり小白金貨5枚。…なんじゃこの値段設定は。


「あの…桁がおかしくないですか? 聞いていた行商人価格の100倍は出ているような気がするんですが。…漆霊闇苔は前に教えて貰っていたから解りますけど。」


「これが錬金学術院の上の方の金銭感覚よ。これでも安いとでも思っているわよ、彼ら彼女らはね。まあ、態のいい儲け話と思いなさいな。多分これ以上の買取価格で買ってくれるなんてことは無いわよ。」


「…はい、そうします。」


「じゃあ、このまま待ちましょう。あ、そうそう、先に保存瓶の引き渡しと雲母茸の引き取りだけしてしまいましょうか。じゃあ保存瓶を出すから片付けてちょうだい。」


 そう言うと500個一度にカウンターの前に並ぶ。それを一瞬で『エクステンドスペース』に仕舞う。ふっふっふ、僕だって成長しているのだよ。ちゃんと空中に出せるようになったし、沢山の吸い込みも成功しているのだ。500個の保存瓶の受け取りをもう一回こなし、今度は雲母茸をカウンターの前に出す。全部で530本かな、キリの悪い端数はまた今度だ。瓶の分を引いて大銀貨2枚と中銀貨6枚、小銀貨3枚だな。うんこれも大金のはずなんだが、これからのことを考えると、これでもはした金なんだよなあ。


 ジュディさんは買取を済ますと、窓に暗幕を張っていく。…そうかこれから日光に弱い素材を出すから日光は遮っとかないといけないよね。まあ、普段から暗幕を張れるようにカーテン状にしてあるのは、機能性が高い。室内だから風なんか吹かないし玄関に鍵を掛けておけば誰も入ってこれないから完璧だよね。…あ、だからこの店北側を向いてるのか。生活空間の方を南にする以外に理由があったんだ。準備が整って、後は待つだけ。…気になったことも聞いておこう。


「あの、今回のこの買取って何かやるんですか?」


「ん? ああ、今回は幽明派の教授が強い不死者を召喚するみたいだよ。素材や魔石を買い漁っているみたいだねえ。良くいけばエルダーリッチ辺りまで行くんじゃないかな。…ちゃんと制御も考えてやってくれているといいんだけどねぇ…。」


「最後が不穏なのが若干気になるのですが。」


「良くも悪くも研究者のやる事なんざ、危なっかしいものなんだよ。特に幽明派はアンデッドを召喚したり作ったりする派閥だからね。作るならいいんだ。限度ってものがあるから。召喚ってなるとどうなるか解らないね。10年前に召喚した時は、無数の弱いアンデッドが出てきて冒険者ギルドに依頼を出したはずだよ。アンデッドの退治って依頼で。幾ら鉄迎派でも数が多すぎて何ともならなかったみたいだし、王都に被害も出したからね。」


「錬金術…なんですよね?」


「そうだよ? 幽明派は説明しただろう? 闇属性の素材を取っておくように言ったときにさ。」


「半分聞き流していたと思います。そこまで過激だなんて思ってもなかったので。」


「まあ、過激な連中も中にはいるさ。ちゃんと穏健派だっているんだから、過激派が居てもおかしくはないだろう?」


「なんか、錬金学術院に行くのが不安になってきました。」


「大丈夫大丈夫。危ない研究をやるときには、ちゃんと避難命令が出るから。人命までいくことの方が稀よ稀。…術者本人はその人命の中には入ってないけどね。」


「行くところまで行ってますね錬金術師って。」


「まあ、一握りだけどね。才能が星以上に振り切れている奴らは。大半の錬金術師が大人しいから、私みたいに。」


「僕が錬金学術院に通っている間は大人しくしておいて欲しいです。」


「その辺は運が絡むんだよね。何かあったら大人しく避難することだよ。…おっ、来たな。」


 ドドドドドと低い音がだんだん大きくなってくる。…不安しかないんだが、この音に。…あ、少し静かになって…止まった。速車便ってどんなんだろう。後で見せてもらおう。扉が開き呼び鐘が鳴る。


「ちわー、ジュディさんいますかー?」


「ああいるよ。アンナ、久しぶりだねえ。」


「おや? 子供ができたんすか⁉ うわー何時結婚したんすか! 相手はどんなです?」


「いや、まだ独り身だから。この子はこの村の錬金術師志望の冒険者見習いって所かしら。この子の素材も買い取ってあげて頂戴な。」


「なんだ、ならよかったっす。買取は問題ないっすよ。質と量が欲しいって言ってたんで。貢献はジュディさんに載っちゃいますけど、しょうがないっすよね。」


 なんだかにぎやかな人だなあ。暗いよりはいいけど。


「じゃあ、まずはジュディさんから査定するっす。」


 ジュディさんが素材をぽんぽんと出していく、この人の検品のスピードがヤバい。早すぎる。50個単位があっという間に無くなっていく。それでも無くならない素材。一体幾つストックしてあるんだこの人。あっという間の作業が延々と続くこの不思議空間、一体いつまで待てば良いんだろうか。…結局小一時間掛かって査定は終了した。


「質、量共に問題なしっす。流石ジュディさんですね。良くため込んでいらっしゃる。」


「闇属性の買取なんて久しぶりだもの。そりゃあ貯まるわよ。…他のところも同じくらいかそれ以上に貯まっているでしょうよ。」


「ですよねー。査定は中魔銀貨6枚と小魔銀貨8枚、小白金貨3枚と中金貨2枚と小金貨5枚っすね。…ささぁ、次は少年の番っすよ。」


「は、はい。ではいきます。」


 サクサクと素材を出していく。闇暗中苔が412瓶。漆霊闇苔が6瓶。闇属性の魔力茸が3620本。闇甲穴茸が869本。闇天紋茸が149本。これが僕が貯めこんだ素材全てだ。20分ちょい位で査定が終わった。やっぱりこの人査定が早すぎる。


「質より量って感じっすね。漆霊闇苔が少なかったのが敗因だぞ少年。査定は小魔銀貨4枚と大白金貨2枚、中白金貨8枚っすね。よく頑張ったぞ少年。」


 敗因って、別に競ってないんだけどな。ずっとテンション高いんだけど、疲れないんだろうかこの人。それよりも小魔銀貨までいったよ。誰だよ大金貨1枚が大金とか言ってたやつは。ちょっとどころじゃなく金銭感覚がズレるぞこの野郎。そんな訳で買取が終了した。


「では、次のお宅が待ってるんで、私はこれで失礼するっす。」


 そういうといったが早い、さっさと出ていく。…ちょっと待って、速車便見たいんだけど⁉ 僕も慌てて外に出る。そこには足が8本ある馬、スレイプニル風のゴーレムが4頭立てで馬車…戦車? に繋がっていた。


「それでは、少年またどこかで会いましょう。」


 ドドドドドドドドドとすさまじい足音と共にものすごい勢いで走り去っていった。早すぎて危ないけど、うるさいから直ぐに危険だってわかるなあれなら。…この国の街道が馬車3台分くらいある理由がよく解る光景だ。あれが真ん中を走るから轍が端に寄ってるんだな。勉強になりました。


 嵐のような時間だったが、めっちゃ儲かったな。今までの稼ぎが小銭かと思うくらいには儲かった。…今日の稼ぎは忘れた方が良いのかもしれない。こんな稼ぎが毎回あってたまるかよ。平民には一生縁のない程の金、身を崩さない様にしよう。時間はまだ午前、採取にいかないといけないのかなぁ、この空気。もう少しジュディさんとこで駄弁っていこう。


「どうだった、速車便は。凄いものだっただろう。」


「確かに凄かったです。8本足の馬のゴーレムなんて初めて見ました。それにすごく速かったです。あっという間に遠ざかって行ってしまいました。」


「ヨルクの林の周囲には8つの村が東西南北とその間くらいにあるんだけどね。あれは1日1周走破するからね。今日の夜半にはもうカウツ町に帰っていくだろうさ。」


「確か乗合馬車で次の村まで1日掛かりましたよね? それを1日で1周するんですか?」


「ああ、そうだよ。早馬を昨日の内に出したのも、追い抜かない様にする配慮だからね。まあ、町中ではゆっくり走っているからじっくりと見るなら町中くらいだね。」


 ヨルクの林の外周は、歩きか乗合馬車で約1日で次の村にたどり着く。それを1日で1周走破するとかヤバすぎる。…この速車便の存在を知らない奴は真ん中を歩いて跳ねられたりしないのだろうか。…年間何人も跳ねられるんだろうな。冒険者ギルドで教えてくれるんだろうけど、話を聞かない奴も多いし。多かったら今頃勉強してるよね。人対超高速質量体でどっちが勝つかなんて目に見えている。スクラップになれば良い方だろう。意識もないままに粉々になるだろうから。轢くじゃなくて弾け飛ぶだろうからな。


「さて、これで坊やも学費の心配は無くなったんじゃないかな、流石に平民も受け入れているのに魔銀貨なんて入学金で取らないだろうからさ。」


「…ですね。これで足りなかったらどうしていいのか分からないです。大金貨だって大金だと思ってたのに。」


「大金貨は大金だよ。それを忘れると今回の依頼みたいな金遣いになってしまうからね。…まあ貴族の錬金術師にはよくあることなんだよ、金銭感覚のおかしい奴らが。…それに錬金学術院にいったらそんな奴らに囲まれるんだ。身持ちはしっかりとしておいた方がいい。それと素材のキープもしておいた方が多分良いよ。学生になったら山のように素材を使う事もあるんだ。お金で買うんじゃなく、先に採取で持っておいてもいいかもね。」


「ジュディさんの時はどうだったんですか?」


「私かい? 私らの時は上級ポーションの調合なんかを山のようにやったね。永明派の講義に出ていると湯水のごとく魔力茸を使うから。まあ、多少は苦学生ってのをやっていたもんだよ。講義で使う素材は幻玄派や鉄迎派の講義で集めて、永明派や造命派の授業で使うって感じでカツカツだったんだ。家のお金には手を付けたくなくてね。金があれば他の派閥をやっていたかもしれないねえ。」


「王都の周りには良い採取地があるんですか?」


「王都の周りには確か、風属性の強い霊地と水属性が強い魔境があったはずだよ。だからそれ以外の、土、火、闇、光属性の素材は持ち込めるなら持ち込んだ方がいい。ここでは良い闇属性と土属性の素材が取れるから、採れるだけ採って持って行った方が後が楽だよ。…尤も、授業内容が変わっていたら解らないけどね。」


「参考になります。上級ポーションを沢山作ったのはなんでなんですか?」


「金になったからさ。上級ポーションの材料は快命草100本と魔力茸10本だ。快命草なんかは二束三文で買えるが、魔力茸は買うと小銀貨5枚だ。だから中銀貨5枚で上級ポーションが作れる。で、上級ポーションは中金貨1枚で売れるんだ。王都には魔境も近くにあるから飛ぶように売れてね。苦学生の金策にはもってこいなのさ。後は魔石の作製だね。質の悪い冒険者から買い取った質の悪い素材があるだろう? あれを大量に集めて魔石を作るんだ。普通の素材なら1個で魔石を作れるんだけど、質の悪いのは何個も集めて漸く1個の魔石になるのさ。それを造命派に売っていたね。沢山の素材から魔石を作るのは簡単なんだけど、手間なんだ。中銅貨数枚が中銀貨1枚に化けるんだから、苦学生にはいい稼ぎになるんだよ。上級ポーションの方はある程度錬金術になれないと難しいからね。」


「やっぱりお金が掛かるんですね、錬金術って。」


「出ていくのも多いけど、入ってくる金もまた多いんだ。だから苦学生でも何とかやっていけるんだよ。そして卒業までの3年間で頑張れば小魔銀貨だって夢じゃないんだ。他人の二束三文の金から、100倍程度の価値を付けて売り払う。正に名前の通り錬金術なんだよ。1度増え始めると簡単に大きな金になるのが錬金術の良いところでもあり、悪いところでもある。傲慢にだけはなってはいけない。傲慢に呑まれてはいけない。傲慢になると出ていく金の方が増えていずれ破綻する。そんな学生も何人もいるんだ。だから錬金術師は謙虚でないといけない。傲慢は金を、闇を喰うからね。それは覚えておきな。」


「わかりました。傲慢にならない様に気を付けます。それにしてもジュディさんって苦学生だったんですね。」


「まあ、私はわざと苦学生をやっていたといっても過言ではないね。姉が魔術師学校で傲慢に喰われちまってね、家の金に手を付けたんだ。それを父が激怒してね。そんなこともあって、私は家の金に手を付けない、苦学生をやろうと決めたわけだ。まあ、今ではいい思い出だ。」


「僕は苦学生をやりたくないので今から素材を貯めておこうかと思います。お金は今回の件で十分に貯まったと思うので、思う存分に錬金術を学んで来ようと思います。」


「そうかい、まあ頑張りなさいな。まあ坊やの場合はまずは星振りの儀を乗り越えないとね。」


 けらけらと笑うジュディさんに絶対に星が振られることを主張しつつ、しばし雑談を続けた後、採取に出かけた。時刻は正午前、まだまだ十分に時間はある。これからはお金のことを気にせずに思い切り採取していこう。貯めこんで貯めこんで悠々自適の錬金術ライフを送るんだ。今年からまた頑張ろうと意気込み、自分の星振りの儀まで全力でやってやると決意し直すのだった。


 まあ、決意し直したからって採取物が変わるわけでもなし、今日もいつも通りの成果ですとも。…高額素材が無くなってしまったので、補充したかったが、だからと言って必ず見つかるわけでもないし、気楽に採取していこう。お財布は重くなったけど、素材のストックは心もとないからね。


 てなわけで、いつも通り夕方まで採取。魔械時計があるからぎりぎりまで採取できるんだよね。やっぱり時計は便利だなあ。今日の収穫もまあまあでした。ああ、早く星振りの儀をしたいなあ。絶対に錬金術師の才能が振られると思っている僕だが、偶に錬金術師になれなかったらどうしようとか思っちゃうわけですよ。弱気になるのは良くないと思うんだけどね。やっぱり結果が出るまでは不安なんだよ。そういう時は教会でお祈りをして気分を切り替える。まあ、雨の日以外は毎日やってるんだけどね。不安を解消するにはお祈りが一番なんだよ。よく解らないけど、よく解らない力が働いているんだと思う。こう、神様を近くで感じてるみたいな、そんな感じ。


 そんな訳で、今日も一つ、教会にてお祈りをば、錬金術師に才能を振ってくださいお願いします。…よし、これで大丈夫。この後は、いつも通りに家に帰り、糞尿処理の仕事をこなし、ご飯を食べて寝るだけ。『エクステンドスペース』の訓練も空中に出せるようになり、吸引力も付いてきたから練習はなし、ではなく中の広さを広げる訓練に移行してます。成長によって広くなるのは広くなるんだって。でも、訓練次第ではもっと広げられるようなのだ。…これはしっかりとした研究結果ではなくて経験則からの推論らしいんだけど、訓練できるっていうならするよね。保存瓶1本でも多く入る方がいいしさ。という訳で訓練は続行中、しかし睡魔に負けてそのまま寝てしまうのだった。


 朝、いつもと同じ朝が来ましたよっと。いつも通りに顔を洗い、朝食を食べる。そして自分の仕事をこなし、エドヴィン兄とマリー姉を待って教会に行く。今日も他の家族は絶賛範囲開墾中だ。今年はシャルロ兄も加わったから、家の畑の範囲は去年よりも広がるだろう。大体、畑の範囲も村長から縦幅を決められて、横は伸ばせるだけ伸ばしていい、そんな感じなのだ。だから農家の星の数が多いほど、畑が広くなるし、人数が多いほど、畑がさらに広くなる。土地は余ってるからね。この辺はヨルクの林以外は平地だからどんどん畑にできるよ、やったね。


 まあ、才能なしの僕たち兄弟は教会に行ってお祈りだ。実は教会も大繁盛しているのだ。この間の星振りの儀でシャルロ兄が星を5つも振られたのは何でだって言い出した奴がいたわけだ。そしたらシャルロ兄が教会でお祈りをしていたと言うじゃない? だったら俺のところの子供にも祈らせっかと教会に行かせ、せっかくだから文字の読み書き計算も教えて貰えといった訳で。現在の教会は託児所のような感じになってしまっている。この村には神父さんとシスターさんが合わせても、3人しかいないのに大変なことになっている。原因を作ってしまった僕がいうのも何だが、ごめんなさい。でも暇よりはいいんじゃない…とだけ言ってもいいよね。


 でも僕はもう読み書き計算は覚えているので、すし詰めの教会には入らず、林の中へレッツゴー。今日も今日とて素材の採取ですよ。昨日からはもう素材を売らないってことに決めたし、自分用の素材をがっぽがっぽするのだ。将来、錬金学術院に行ってから楽をするために。錬金術三昧を味わうために。なるべく苦学生を避けるために。不純な動機も無くはないが、なるべくなら楽をしたいわけで。未来で楽をするために今日も一日がんばるぞ。


面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 淡々と日常を描き、少しずつ成長して行く物語を楽しみにしています。 ご都合主義の技が出てくる稚拙な文章ではなく、表現力勝負な作者さんにこれからも応援します。 楽しい作品をありがとうございます…
[良い点] 学費問題が一気に解決しましたね。 小さなきっかけで村の子供たちの学力や識字率が上がったのもうれしい。
[良い点] 今回も面白かったです。地に足の付いた面白さって言うか、ファンタジーなんだけれど荒唐無稽すぎないバランスが良いです。
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