クロスロードの禁忌
(ノエルは俺とは違ってすべてを持っていた。優しい家族、あたたかい布団、友人、未来、夢、希望。俺は彼女が憎かった。すべてを持ってる彼女の笑顔を真正面から見れなかった。
結論をいえば、俺はノエルを憎みきることはできなかった。
太陽があるから日陰がある。日陰者が太陽に挑むのは、無理な話だ。
俺は、いつもなにかに怒っているはずだった。笑い方なんて知らないはずだった。
だが、ノエルの前では自然と笑っていた。
俺には、なにもないと思っていた。自分が不幸なのだとふてくされていた。
生まれてはじめて幸せを感じた。彼女との出会いに希望を見出し、二人の未来に夢を抱いていた。
あの頃に戻れるのなら、俺はなんだってする。
なんだって……)
サリオとクロスロードはとある場所へと歩いていた。街と空は赤く染ってなく元に戻っていた。
サリオが無言のクロスロードに話しかけた。
「どうした?ほうけた顔をして……」
「いや、少し昔を思い出していた。気にするな、よくあることだ」
「医者として忠告する。克己薬を使うのはやめろ」
「…………」
「君の資料はアヴァリスにもある。複数の禁忌を体に施術し、それを強引にコントロールしている。俺も患者に禁忌を施術したことがあるから、わかる」
「禁忌の術式はーつだけでもコントロールは難しい。だからこその禁忌なんだが……」
「術式の抑制と励起のために薬剤を投与しているんだろう?」
「……お前には関係ない」
「記憶の混乱は克己薬の影響だ。まっとうに生きたいならすぐにでもやめたほうがいい」




