カフェでの会話
「私がプロの冒険家だったのは、だいぶ昔のことですよ」
「いえいえ。遺跡の発掘に貢献した、凄腕の冒険家って聞いてますよ?」
「買い被りですよ。お嬢さん」
「そんなレイルさんに質問。魔術による攻撃に強くて、ドラゴンなみに力が強くて、人間を恐れない」
「そんな魔物に、心当たりはありませんか?」
「ふむ……見当がつきませんな」
「バイト君はどう?」
リアがレクスに聞いた。
「ええっと、レクスです。それって最近話題になってる「シースの魔物」ですよね」
「当たり。魔術生物学部のフィールドワークなの」
「フィールドワークで魔物を追うなんて、危なくないですか?」
「危険っちゃ危険だけど……あたしは鍛えてるからね」
「魔物を、甘く見ない方がいいですよ。お嬢さん」
レイルがリアに注意を促し奥の部屋へと去っていった。当然鍛えているからって少女一人でどうにかなる問題ではないのだ。
「ぼく……魔術工学部でよかったなあ……」
「あらら、バイト君も魔術学園に通ってたのね」
「通ってるんです。コーヒー、どうぞ」
「どもども~。ふー」
「えっと……リアさん」
「リアでいいわ。レクス」
「マスターは……レイルさんは、冒険家時代のことは、話してくれないと思うよ」
「じゃあ、レクスが聞いてよ」
「僕、魔術工学部なんだけど……」
「それって関係ある?」
リアは、カウンターの写真に目をとめた。
「この写真、若い頃のマスター?隣のきれいな人は、マスターの奥さん?」
「そうだけど……あの……亡くなってるんだ。あまり聞かないでくれると……」
「ゴメン。あたしデリカシーゼロだったわね。おわびに何か頼むわ」
「あ、ありがとう……ございます」
「ところでオススメはなに?」
リアは帰っていった。レクスがこんなにも異性と長い間会話するとはレクス本人も驚いていた。
「女の子と10分以上もしゃべってしまった」
「明日は雨かな……?」