手品師
昔、売れない手品師がいました。
目立つ仕事が来ないため世間に認められずにいました。
道端で手品を披露する毎日ですが、
彼にもファンが現れます。
たまたま見に来た少年が彼の手品を気に入り、明日も見てみたいというので、
手品師は、明日も仕事はない、またここに来る
と約束します。
その晩、手品師に緊急の電話があり、
明日の手品ショーに出る大物手品師が急用で来れなくなった。
手品師の腕を知るマネージャーが連絡をくれたのです。
代わりに出てくれないか
君の腕なら見た人全員が認める、
大きな舞台でやれば一躍有名だ。
これを手品師は断ったのです。
明日は大事なショーがあり、客を待たせていると。
そして手品師は翌日も道端に立ち、少年に手品を披露しました。
これからも彼は、無名のままでしょう。
しかし、彼は名声よりも大事なものを見つけ出しました。
その後少年は、彼から3年の間、手品を学びました。
そして。
少年が手品を学び終えた時、手品師は突然、地面に伏せてしまいました。
その際、手品師は少年がファンになった原点。
弟子が最初に見た手品を披露しました。
手品師は、
名声よりも大切なもの。
1人のファンであり弟子である少年に見守られながら、
静かに息を引き取りました。
その時の手品師の表情は、
とても満足そうな、満たされたような、優しい表情でした。
完