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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第1章 君を好きになった
8/61

06 予想外の出来事

 4月21日(金)深夜。俺の携帯電話ディスプレイの時刻は午前2時30分を示している。けど、全然眠れずにいた。俺は本当に変な子かもしれない。バスに乗っていたときにリョウに被せてもらった上着から香る、あのワックスの匂いが忘れられずにずっとドキドキしていたんだ。

「……ハァ〜」

 ため息ばっかり漏れてる。今日はもう眠れそうにないな。そんな風に思っていたときだった。

 コツ、コツ――。

「?」

 窓を誰かが叩く音がする。

「……?」

 けど、すぐにその音は止んだ。気のせいかな。

 ブーッ、ブーッ!

「わっ!」

 俺の携帯が震えた。メールだった。そして、ディスプレイには『リョウ』の表示。


――――――――――――

<0001>

 4/21(金) 02:32

宛先:リョウ☆

S b:よっ

――――――――――――

起きてたらお前の部屋の窓

開けて(・ω・)ノシ



 かわいい顔文字使っちゃって。いやいや、今はとにかく窓を開けなきゃ。

「よっ」

「どしたのさ?」

「いや、眠れないからお前んトコ遊びにきちゃった」

 たかがそれだけのために俺の部屋に? なんか嬉しいかも……。


「……あれ?」

 私が目を覚ますと、三宅くんの布団がもぬけの殻になっていた。

「三宅くん……?」

 微妙に開いた窓。ひょっとして、抜け出した。

「どうしたの?」

 知未が目を覚ましたみたい。

「あのね、三宅くんがどっか出たみたいなの」

「えぇ? こんな夜遅くに……先生に見つかったらマズいじゃない」

 知未は慌てて窓のところへ行き、そっと開けて外を見ていた。

「あ! こころの班のとこにいるじゃない……」

「こころのトコ?」

 ということは。

「大澤くんもいるってことだね」

「!」

 私の一言に、知未の目の色が変わった。

「レナチィ、行くよ!」

「い、行くってどこに?」

「決まってるでしょ、三宅くんのとこ!」

「えぇ!? あ、ちょっと待って……」

 玲菜は窓を乗り越えて行った知未の後を慌てて追おうとして空を見上げ、思わず声を上げた。

「スゴーい……綺麗……」

 月が傘をかぶっていたのだ。玲菜はしばらく見上げてから、知未の後を追った。

「みーやけくん!」

「わっ!」

 知未が突然声をかけてきたので、亮平と賢斗は小さな悲鳴のような声を上げた。

「そんなに驚かなくてもいいじゃん! 私。藤岡と柳原だよ」

「なぁんだ……おどかすなよ。っていうか、メールとかしてから来いよな〜」

「だって私、三宅くんのメルアド知らないもん」

「あ、そっか。じゃ、赤外線で送るよ」

「ヨロシク〜」

 うまいなぁ、知未ったら。ひょっとして……大澤くんのも狙ってる?

「あ、大澤くん」

 やっぱり来たか。

「大澤くんのも教えてもらっていい? ついでだし」

 ヒャー! まったく、ホント上手だなぁ。

「あー、うん。いいぜ」

「やった! ありがとうね」

 赤外線でやり取りする3人。ちょっと私、ハミッてる……?

「ねぇ」

 三宅くんが声を掛けてくれた。よかった。ハミッてない。

「よかったらさ、柳原さんのも教えて」

「あ……ゴメンなさい。私の携帯、赤外線ないの」

「そうなの? じゃ、メルアド直接教えてもらうわ」

「あ、うん!」

 私は慌てて携帯を取り出し、アドレスを見せた。

「じゃ、俺のヤツ送るね」

 三宅くんが準備をしてくれる。

「あれ?」

「どうしたの?」

 知未が三宅くんの携帯を覗き込んだ。

「電波がゼロだ」

「えぇ? ここ、別に山の中じゃないのに」

 そうだ。ここは静岡県の伊東市だ。市街地の中にあるホテルだから、電波が悪いはずなどない。

「待って。何か……音がする」

 私は思わずギュッと知未の腕を握った。

「見ろよ、あれ」

 大澤くんが空のほうを指差した。パッ、パッと何か明るい閃光みたいなのが空を走る。

「なんだ……?」

 三宅くんも不安げだった。次の瞬間――。

「えっ!?」

 私の足が浮いた。ゴオオオッと凄い音がして、ホテル全体が揺れ出した。

「キャーッ!」

 私と知未は抱き合って震える。三宅くんが這いつくばって、私たちを隠すように覆いかぶさった。上からも大澤くんの部屋からも悲鳴が聞こえる。おそらく、いま聞こえたかん高い悲鳴はこころの声だ。けど、すぐに地響きにかき消されてしまった。

 スゴい揺れだ。立っていられない。こんな地震、初めてだった。

 ピシ――ッ!

 目の前でガラスに亀裂が走った。

「リョ、リョウ!」

「え!?」

 ガラスが割れる寸前だ。俺は気づけば、リョウと柳原さんと藤岡さんの上に覆いかぶさった。

 パァン! パァン!

「!」

 ガラスが割れて、俺の頬をスパスパ切った。血がドクドク、出て行く。

「賢斗! 賢斗!」

 リョウの俺を呼ぶ声だけが、聞こえる……。




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