03 メンバー表
【2班】
M01 秋田 俊希 F02 猪川 美優
M05 大澤 賢斗 F16 前橋こころ
M18 山崎 琴弥 F19 矢野あゆみ
「あーあ……」
ちょっと期待してたんだけどな。リョウと同じ部屋になれること。
「ま……世の中そううまくはいかないか」
フーッと大きくため息をついた。
「おいおいおーい。帰ってこーい」
「あ、ゴメン」
同じ班になった山崎 琴弥が俺のことを呼ぶ。
「それじゃ、まずは自己紹介しようぜ」
「そうだね! じゃ、まずあたしから。あたし、前橋こころっていいます! 美術部に入ろうかな〜と思っています。ヨロシクね!」
ショートカットの快活そうな子。美術部っていうより、空手部とかその辺が似合いそう。
「ちょっとアンタ。大澤くんだっけ? あたしのこと絶対運動部が似合うって思ったでしょ〜?」
「な、なんでわかったんだよ?」
「やっぱり! だいたい初対面であたしのことジーッと見た人はそう思ってるの! 経験上、バッチリわかっちゃう」
ヤベェな、この女。すぐに考えてることがバレそうだ。
「じゃ、その前橋さんは運動部ピッタリと思ってる君、どうぞ!」
山崎が俺を指名した。しぶしぶ俺は立ち上がり、自己紹介をする。
「えっと……上野島中学出身の、大澤 賢斗です。小学校から陸上やってました。ここでも陸上続けようと思ってます。ヨロシクお願いします」
「大澤ってさ、ひょっとして『グランドの』」
「わーっ! なんでそれ知ってんだよ!?」
「だって、葉島中学では有名だったぞ?」
「言うなって!」
とんでもないことになった。アレをここで言ってもらっちゃ困る。
「ちょっと、何なのよ?」
やばい。前橋が興味津々だ。
「なんでもねぇよ」
「なんでもないことないでしょー?」
グイグイと前橋が俺の袖を引っ張る。やめろ! 新品の服が伸びるだろ!?
「『グランドの王子様』だよなぁ」
聞きなれた声がするので振り向くと、リョウがニヤニヤしながら立っていた。
「キャー! あたしその人知ってる! それって、大澤くんのことだったの!?」
ガクンガクンと俺の首が揺れる。前橋が俺の両腕を掴んで揺らすせいで、俺の視界はグラグラしっぱなしだ。
「そうなの?」
リョウの後ろから顔を出した女の子が、かわいらしい声で俺に聞いた。
「う、うん……恥ずかしながら」
「スゴいなぁ。私、運動苦手だから尊敬しちゃう」
初対面の女の子にこんなに見つめられたのは初めてだ。でも、あまりドキドキしない。俺って、きっとオカシイんだ。
「今さら照れる必要なんてないだろ? あんだけ噂になったんだし」
ニッとリョウが笑う。
「ところでさ、君、名前は?」
さっきから俺を見つめる女の子に名前を聞いた。
「あ……私、藤岡 知未っていいます。この……三宅くんと同じ班です」
「へぇ〜。何? リョウって初対面の子は苦手なのに、女の子なら平気で挨拶とかできるんだ?」
リョウの顔が真っ赤になった。
「バッ、バカ言うんじゃねーよ。そんなんじゃねぇから」
でも、その顔を見るたび寂しくなる。なんでって?
俺の恋は――叶わないんだ。
そう、言われている気がするから……。
野外活動の説明とかが一通り終わって、休憩時間。次はクラスごとに健康診断がある。俺たちA組はいちばん初めだから、この休憩時間中に着替える。
「うわ、山崎! お前ガタイやべーな」
クラスメイトが琴弥を茶化した。
「まーな。体操部だし、こんなの普通だよ」
琴弥は意外と体格がいい。体操部ってこんなに体格良くなるんだ。知らなかった。
「……。」
リョウはどんな体格してたっけ。割と背は高いから、きっと華奢な感じだろうな。
「大澤?」
「へ?」
「もう皆移動するぞ?」
琴弥に呼ばれてようやく周りに人がほとんどいなくなったことに気づいた。
「悪い悪い。すぐ行くよ」
俺はサッサと着替えて廊下へ出た。
「遅いよ」
待っててくれると思った。リョウなら。
「悪い」
「……?」
リョウが不審そうに琴弥を見つめる。
「あ、コイツ俺と野活の班が一緒の、山崎」
「山崎 琴弥です。ヨロシクな」
「あ……み、三宅です」
まただ。初対面の人とは緊張してうまくやれないのが、リョウの欠点。
「コイツさぁ、初対面の人と話したりすんの苦手なんだ。悪いな」
「うるせぇよ、バカ」
リョウが俺の頭をコツン!と軽く突いた。それだけでなんだか嬉しい。靴箱に行くまでに、突然琴弥がリョウに聞いた。
「三宅の班のさ、柳原ってどんな感じの子?」
「柳原?」
リョウと同じ班で、同じ出席番号の、柳原 玲菜という子だろう。
「あー、アイツか。スッゴい控えめでさ、藤岡と同じくらい静かだから、俺としては接しやすい」
「おとなしいのか?」
「かなりな。誰だっけ、賢斗の班のあのうるさそうなヤツ」
「前橋だろ?」
俺は苦笑いしながら言った。確かにアイツ、うるさい。
「あー、そうそう。それとは正反対。かなりおしとやかかな」
「そっかー、そっかそっかー!」
琴弥が嬉しそうに笑う。何を考えているのかはすぐにわかる。単純だ、コイツ。リョウもすぐにわかったみたいで、ニヤニヤしながら言った。
「山崎。お前、柳原に惚れただろ?」
「……バレた?」
「バレバレだよ」
リョウも鋭いところがある。俺のことも……バレてなんかないよな? 少し、不安になった。
「賢斗」
急に呼ばれるとドキッとする。
「何?」
「山崎のこと、応援してやろうぜ」
屈託のない笑み。サイコーだよ、リョウ。
「……おう」
もし。もし、俺が君に恋の相談をしたら――同じように答えてくれるだろうか。
ダメだろうな。
だから、言わない。
俺はリョウと一緒に琴弥を茶化しながら、保健室に向かった。微妙に、距離を開けて歩きながら……。