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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第2章 揺れる想い
43/61

40 踏ん切り

 山崎くんと分かれた後、私はすぐに宮部先輩に電話を入れた。

『はい、もしもし?』

「あ……宮部先輩。私です」

『あぁ、玲菜ちゃん。どうしたの?』

「すみません、今日会ったばかりなのに」

『いいよ~全然!』

「あの……お願いがあるんです」

 私は丁寧に説明した。秋に、市内の絵画コンクールがあること。課題が人物画であること。そして、私が宮部先輩を描きたいということを。

『わ、私でいいの?』

「いえ。むしろ、先輩で是非お願いしたいです!」

『……。』

「ダメ……ですか?」

『ううん! ちょっと緊張したけど、うん、いいよ!』

「ほ、本当ですか!?」

『もちろん! ねぇ、今度はいつ会える?』

「私は基本暇なので……先輩の都合の良い日に」

『本当? それじゃ……あぁ、練習あるからお盆の頃になっちゃうけど平気?』

「全然問題ないです!」

『じゃあ、8月の13日でお願いしようかな!』

「はい! 私もよろしくお願いします!」

『いえいえ。じゃ、またよろしく~』

「はい! 失礼します」

 私は電話を切った後、すぐに絵の具のチェックをした。

「あ~……切れそうな色が何色かあるな。明日にでもまた買いに行かなきゃ」

 ウキウキ気分でベッドに寝転がり、そのままいつの間にか眠っていた。

「ん……」

 次に目を覚ますと、電気も点いたままだったことに気づいた。

「いけない! いま何時!?」

 時計を見ると、午前3時を指していた。

「やだぁ! お風呂も入ってないのに……どうしよう」

 ひとまず、階下に行きお風呂場を覗いた。どうやら栓は抜かれていないようだった。

「追い焚きすればいけるかな」

 リビングでガスを点火し、すぐに追い焚きを始めた。

「……。」

 鏡の前で自分の胸を見つめてみる。

「宮部先輩のほうが大きい……な……」

 そんなことを考えていると、顔が熱くなってきた。

「もう! バカみたい。早く入って寝なきゃ」

 とにかく急いで服を脱ぎ、浴槽に浸かった。

「ん?」

 私はふと思い出した。

「まさか……先輩……」

 不安になってしまうが、時間が時間だけにもう確認もできない。

「それはないよね! いくらなんでも……」

 宮部先輩は天然で有名だ。でも、絵のモデルになる=ヌード……なんてことはいくら先輩でも考えないだろう。天然だからって、そこまで思考は行かないハズ。

「一応確認……しといたほうがいいよね」

 万が一、ということもある。絵を描く場所は七海市役所の隣、市役所公園の噴水前と伝えてある。そこでヌードなんて考えには普通、たどり着かないけど念のため明日、確認を入れておこう。そう思いつつ私は浴槽から出て、頭を洗い始めた。


「おっはよー!」

 私がテンション高めにフルートのパート練習部屋に入ると、佳菜ちゃんこと井上 佳菜とサキティこと大谷 沙希が目を丸くした。

「どうしたの? えらくテンション高いじゃん」

「それがねぇ、聞いてよ!」

 私は一連の出来事を説明した。

「え! 柳原さんって……確かこないだ絵画コンクールで優秀賞もらってた、彼女?」

 サキティが驚いて譜面を机の上に置いた。

「そうなの!」

「すっごーい! そんな子に、モデルになってって言われたの!?」

「そうなのー!」

 サキティが耳打ちしてきた。

「まさかと思うけど……由美ちゃん、脱ぐとか勘違いしてない?」

「やっ、やだ! いくら私でもそんなこと思うわけないじゃない!」

「ですよね! 良かった~そこまで天然じゃないか!」

 サキティは笑いながら楽譜をもう一度手にした。

「ん?」

 佳菜ちゃんがジッと私を見つめている。

「どうかした? 佳菜ちゃん」

「いえ……なんでも」

「そう?」

「それより、ロングトーンしましょうよ!」

「うん……」

 私はなんとなく、佳菜ちゃんに違和感を覚えながら楽器を手にした。

 練習後、昇降口に行くと玲菜ちゃんがいた。

「あれ? どうしたの? 美術部?」

「いっ、いえ! あの……確認しておきたいことがあって」

「何?」

 そういうなり、玲菜ちゃんは小動物みたいにトコトコ駆け寄ってきた。

「あの……、モデルなんですけど……その……ヌ……」

 それだけで言わんとしていることがすぐにわかった。

「やだなぁ、もう! 玲菜ちゃんまでそんな風に思っちゃって~」

 玲菜ちゃんは真っ赤になった。

「す、すみません……」

「いいのいいの。聞きたいことって、それだけ?」

「はい!」

「そ! じゃ、私ちょっと急ぐからまたね」

「はい!」

 玲菜ちゃんは小さく手を振って私を見送ってくれた。昇降口を出るとすぐに、佳菜ちゃんに会った。

「あれ? どうしたの?」

「いえ。ちょっと人を待ってるんです」

「そうなんだ? じゃ、また明日ね」

「はい! 失礼します」

 私は何も考えずに、いつもどおり佳菜ちゃんに手を振って学校を後にした。












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