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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第1章 君を好きになった
31/61

29 俺なんかを……?

「あ……ゴメン! 待った?」

 亮平が焦った様子で俺のほうへ駆け寄ってくる。私服の亮平、久しぶりだ。ドキドキする……。

 もう、季節は7月上旬。半袖じゃないと、とてもじゃないけどやっていけない。けど、半袖だと俺がやっていけない。

 亮平の格好が、タンクトップだ。それに、カーゴパンツなんか履いて、ちょっとこう、脛の辺りが見えてる。タンクトップのせいで、ほとんど上半身は丸見え。腕と、なんていうんだっけ……ほら、えっと……。ヤバい。混乱してる。あぁ、鎖骨……が見えて、エロい。

 違う!

 今日は亮平と買い物だ。

 何の買い物かって? 実は俺たちは、この夏休み前にちょっとした小旅行へ出かける。クラスである程度親しくなってきたので、その絆をさらに深めようってわけ。いいと思わない?

 亮平とは幼なじみだけど、俺は亮平の全部を知っているわけじゃない。知らないところだってたくさんある。何時に寝て、何時に起きて、今はどんなパジャマを着ていて。今は布団で寝てる? それとも、ベッド?

 ほらね。知らないことはたくさんある。幼なじみって言っても、こんな感じだ。

「賢斗?」

「え?」

「どうしたんだよ。ボーッとしちゃって」

「いやいや! そんなことないよ」

「だったら、その足……」

「え……あ――!」

 泥だらけの水たまりに、俺の足がドップリ浸かってる! うわぁ! もう、どうすんだよぉ。靴の中に染み込んじゃって……あーあぁ……靴下もビショビショだ。

「ヒー! もう最低だぁ……」

「落ち着けって。とりあえずさ、そこの公園行こう」

 七海市商店街の北側、小田急電鉄七海駅の中央広場がある。そこへ俺と亮平は一緒に行った。

「ちょっとそこで待ってろよ」

 亮平が俺をベンチに座らせるだけ座らせて、すぐに立ち上がった。

「え? ちょ、どこ行くんだよ?」

「すぐに戻るから」

 亮平の姿がどんどん遠のいていく。仕方なく、俺はおとなしく待っておくことにした。蝉の鳴き声が聞こえる。ミンミン……ジージー……いろんな蝉がいるんだな、なんてことを考えていたら、明らかに蝉の声とは違う声が聞こえてきた。

「あの……大澤賢斗くん、ですよね?」

 ふと目を開けると、見たことのない女の子がいた。

「そうですけど。何か?」

「あの……えっと……私のこと、知らない?」

 えぇ? そんなこと言われたって……。

「そ、そうだよね! だって……仕方ないよね」

 よく見ると、なんと七海高校の制服を着ている。そんでもって、学年バッチの色が俺と同じ色だ。ってことは、俺と同じ学年?

「ごめんなさい。俺、よく君の事知らなくて……」

「いえ! 構わないんです……。あの、私、畔上(あぜがみ) 菜穂(なほ)って言います。七海高校の1年H組です。教室遠いから、大澤くんは私のこと、知らないだろうけど」

 ホントごめん。俺、知っててG組までだった。

「う、うん。それで、畔上さん? どうしたの?」

「あ……えっと、その……!」

 畔上さんは真っ赤になった挙句、突然俺の前に手を差し出した。その手の中には、手紙が握られている。

「わっ、私……あなたが好きなんです!」

「……へ!?」

「手紙に、気持ち書いてきました! 読んで下さい……。返事は全然急ぎません! なんだったら、夏休み明けでもいいくらいで……。で、でも、返事はください! イエスでもノーでも、必ずお願いします!」

 そう言うとすぐに畔上さんは走って行ってしまった。

「あっ! あ……」

 やがて、蝉の鳴き声だけがまた戻ってきた。

 心臓がドキドキしてる。亮平の隣にいるときとは違う、心臓の音だ。

「おーい! 賢斗」

 亮平が戻ってきた。俺は慌てて手紙をカバンにしまい込み、何事もなかったように亮平を迎えた。

「おかえり! どこ行ってたんだ?」

「ゴメンゴメン! ほら、これ……」

 そう言って亮平は箱を差し出した。

「何? これ」

「いいから、開けてみろよ」

「うん」

 開けてみると、以前から欲しかった青いスニーカーが入っていた。

「りょ、亮平!? これって……」

「やるよ!」

「ちょ、ちょっと待った!」

 だってこの靴、6000円くらいしたぞ!?

「知ってるよ、俺この靴の値段! 6000円くらいしたんじゃ……!」

「いいから、いいから! お前の誕生日プレゼントなんだ、これ」

「え?」

「ちょっと遅くなったけど。だってお前、全然学校来ねーんだもん」

 俺の誕生日は7月7日。今日は7月12日。

「……あ、ありがとう」

 ヤベェ。俺、顔が真っ赤だ。

「どういたしまして!」

 嬉しい。亮平からプレゼントだ……。

 けど。

 畔上さんからの告白。どうしよう……。

 俺の気持ちが揺らぐ。俺はどうしたらいいんだろう?

 どうしよう……。




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