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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第1章 君を好きになった
27/61

25 千切れそうな、絆

「俺……亮平のこと……」

 言うよ。俺はもう、ごまかさない。

「俺、亮平のこと、好きだ」

「……!」

 亮平の目が丸くなった。あまり感情を顔に出さないイメージのあった亮平が、驚いて目を丸くしてる。幼なじみの俺でも、なかなか見なかった様子だ。

 でも、その顔を見て怖くなった。この「好き」は恋愛感情の、好きだもん。友達としての「好き」じゃない。それは、世間的に考えると、受け入れられないものだ。

「亮平は、俺のこと、好き?」

 よし。はぐらかす方向へ持って行こう。

「えっと……あのさ」

 絶対、亮平がいま聞いてるのは「恋愛感情としての好き」かどうかだ。

 大丈夫。今なら、まだ、間に合う。

「あれ!? ひょっとして、何か勘違いしてない?」

 俺のあっけらかんとした言葉に、亮平の目がまた、丸くなった。

「俺、友達としてなら、亮平のこと好きだぜ?」

「……。」

 いい。絶対、上手い顔してい言えてる。俺ってひょっとして、役者とか向いてるんじゃねぇの?

「あ、何? 亮平……もしかして、俺のこと恋愛的に好きとか!?」

「バ、バカじゃねーの! 俺は……お前がその……栗山に、あの写真撮られてから様子が変だから……その……」

 顔が真っ赤。俺、好きな人にこんな顔させるなんてサイテーだな。

「栗山も栗山だよな~。あんな写真撮るなんて。あんなことやってる暇あるんなら、水泳の練習ちょっとでもやってろっつーの」

 なんとかして、この状況を打破したい。そのためには、俺の気持ちを隠して、亮平に勘付かせないようにしないと。

「だいたい、男同士で好き合うとか、漫画の世界かっつーのにな」

「……。」

「亮平だって、そう思わない?」

 亮平の目が、まっすぐ俺を捉えた。それから返ってきた言葉に、俺の心臓がまた飛び跳ねる。


「俺は、男同士でも、好き合うってアリなんじゃないかって……思う」


「え……?」

 その言葉をかき消すように、チャイムが鳴り響いた。昼休み終了5分前の、予鈴だ。

「でも、絆を千切るくらいなら……」

 そこから先は、亮平は言ってくれなかった。

「戻ろう」

「……うん」

 これ……ひょっとして、認めたほうが良かった? いや、そんなこと……ありえない。俺は頭の中でそんな都合のいい考えを振り切り、亮平の後について教室へと戻ろうとした。でも、苦しくて、苦しくて。言えない気持ちが辛くて。俺は逃げるように、こう言った。

「俺、お手洗い言ってから帰るよ」

「……OK」

 その後、亮平とは正面玄関で別れた。別に教室のある階でトイレに行けばいいんだろうけど、なるべく距離をとっておきたい。その気持ちが抑えられなかったので、1階のトイレを使った。

 トイレに入って、用を足す。

「あーぁ……なんで俺っていつもこうなんだろう」

 自分の気持ちに正直になれない自分が一番腹立たしい。いつまでこんな気持ちになっていればいいんだろう。

 その時だった。

「私は……好きな人いるので。ごめんなさい」

「!?」

 聞き覚えのある声。

 急いでチャックを閉めて、手を洗ってコッソリ覗き込んでみた。すると、見慣れた姿が目に入った。

 柳原と、あの栗山だった。

「でも、俺、真剣に柳原のことが好きなんだ!」

「ありがとう……。その気持ち、すごく嬉しい。でも私には……別に好きな人がいるの」

「俺がソイツのことを忘れさせてやる」

 柳原が首を振る。

「ダメ。私の……初めて真剣に好きだと思った人だもん。忘れられない」

「……なんで。なんで俺の気持ちがわからねぇんだよ!」

 栗山が怒鳴った。柳原の小さな体がビクッと震える。そりゃそうだろう。高1とはいえ、体育科に入学した栗山の身長は180センチ近くある。155センチくらいの小柄な柳原にしてみれば、かなり威圧感がある。

(え?)

 栗山の顔が、強引に柳原の唇へ近づこうとする。

「あ……嫌!」

 おい、それってちょっとマズいんじゃねぇの?

「!」

 口を塞がれた。ちょ、おいおい! それ……ヤバいって!

「ちょっと! 何してるの!?」

 女の人の声が、聞こえた。


「……先輩」

 宮部先輩がいた。

「あなた、1年生? もう、予鈴鳴ってるよ」

「……チッ」

「ほら、そこの女の子と、そのトイレの傍にいる子も!」

 ギョッとして見てみると、大澤くんがいた。

「まったく! 1年生からサボリ癖つけちゃ、ダメだからね?」

「……!」

 あぁ、もう。宮部先輩、本当に可愛い。

「……はい」

 あれ? なんか、栗山も顔、赤くない?

「さ! 戻ろう戻ろう!」

 先輩……なんでそんなタイミング良く現れたの?って、聞いてみたい。

「あの、先輩……」

 今までにないくらいキツい目で、宮部先輩が私を見た。

「後で話、いいかな?」

「は……はい」

 私、何かした? 先輩の目が、怖い。いつだったか、こんな視線をたくさん感じた気がする。

「あ……」

 思い出した。大澤くんと三宅くんの件で、黒板に落書きがあった、あの日の教室。クラスメイトみんなの視線。あの視線に、そっくりだ。

 私……誤解された?

 先輩の背中が拒絶しているように見える。

 気のせいだよね……。

 そう言い聞かせながら、私は大澤くんの少し前を歩いて、教室へ戻った。





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