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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第1章 君を好きになった
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20 改めましてのご挨拶

「おめでとう!」

 全校集会。私は、全校生徒の前で校長先生から賞状をもらっていた。

「やるじゃん、玲菜!」

 後ろからこころと知未が嬉しそうに駆け寄ってきた。

「私が一番驚いてるんだけどね」

「でもさぁ、あの絵、雰囲気的にウチの校内だよね?」

 こころの一言にドキッとした。わかりにくいように描いたのに、なんでわかるんだろう。

「え? どこでそんなのわかるの?」

 知未が不思議そうに聞く。

「いや……なんとなく、雰囲気よ雰囲気」

「雰囲気って……。あぁ、作者に聞けばいいじゃない!」

 知未が私のほうを見る。作者……作者……あぁ! 私か。

「ねぇ、どうなの玲菜。あの絵、学校内で描いたの?」

 ウソなんかついたってここは意味がない。正直に言っておこう。

「そうだよ! 学校の中で描いたんだ」

「へぇ〜! じゃあさ、あのモデルはいるわけ?」

「モデル?」

「そうよ! あの絵のモデル!」

 良かった。さすがにそこまではわかんないか。

「モデルは……別段いないよ?」

「そうなの?」

「あえて言うなら、自分?」

「やぁだ、聞いた知未! ちょっとこの子、ナルシスト入ってるかもよぉ?」

「アッハハハ! なんだ、玲菜っておもしろいとこあるね〜」

 笑う知未とこころ。

 ゴメンね。ウソついちゃった。でも、しょうがないんだよ。自分が一番、大事なんだもん……。


「玲菜ちゃん、まだ帰らないの?」

 美羽先輩が帰る支度をしながら聞いてきた。私はまだちょっと自分の道具の手入れをして帰りたい。

「すいません。もうちょっと手入れして帰ろうと思って……」

「うーん……まぁいいんだけど、新人展覧会も終わってこれから中間テストだから、ほどほどにね?」

「はぁい! じゃ、お疲れ様でした!」

「お疲れ! また来週ね」

 そう。来週の水曜日まで部活はない。中間テストが明日木曜日から水曜日まである。うっとうしいけど、勉強は学生の本分。しょうがないかな。

「よしっと……」

 片づけにメドがついてきたので、そろそろ帰ろうとしたときだった。

「あのぉ……」

 誰かが美術室に入ってきた。でも、逆光でよく顔が見えない。

「はい?」

「あ、ちょっとお聞きしたいことがありまして」

「はい? なんでしょう……」

 近づいて顔を見て心臓が飛び跳ねる思いがした。

 宮部先輩だった。

「あれ……?」

 先輩も私を見るなり首をかしげた。

「あぁ! あなた、入学式のときの……」

 覚えててくれた。それだけで、嬉しかった。

「はい……あの時はお世話になりました」

「やだ。あれくらいどうってことないよ!」

 やっぱり優しい先輩。

「ねぇ、そういえばさ」

 宮部先輩は私の隣に立った。フワリとリンスの香りか何か、いい香りがする。

「私たち、自己紹介してなかったよね!」

「あ……」

 そういえば、私の名前を知ってくれてるけど、私も直接ご挨拶はしてなかった。

「そうですね……」

「だね! じゃ、改めまして……」

 宮部先輩が優しく笑う。まぶしい笑顔って、こういうことを言うんだろうな。

「宮部由美子と申します。2年E組です。ヨロシクね!」

「柳原玲菜です。1年A組です」

「1年A組ね! よし、覚えた」

 宮部先輩はニッコリ笑う。いいな。心からの笑顔だ。

「ね、玲菜ちゃん!」

「はい?」

「これから、時間ある?」

「はい……あ、ちょっと片づけてからになりますけど?」

「一緒にお茶して帰らない?」

 この一言に、私の心は躍るしかなかった。





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