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青い恋〜ボクラ、コイシタ〜  作者: 一奏懸命
第1章 君を好きになった
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15 支えてくれる?

「……。」

 いいのかな、私。っていうか、なんでこんなことに……。

「何飲む?」

「おっ、お気遣いなく……」

「いいよ。俺が呼んだんだからさ、遠慮しないで。いろいろあるんだぜ。なっちゃん、小岩井のアップルジュース、冷たい紅茶に牛乳……は飲まないか。麦茶も冷やしてるし。コーヒー沸かそうか?」

 すごい。普通、こんなに飲み物用意してる家あるかな。

「じゃあ、お言葉に甘えてなっちゃんを……」

「了解!」

 大澤くんは笑顔で答え、下へ降りていった。大澤くんの部屋に置いてきぼりのような感じになった私は、時間を持て余したので気づいたら大澤くんの部屋をグルリと見渡していた。

 8畳くらいの広めの部屋。フローリングの上にオシャレなカーペットが敷かれている。色はグレイ。出窓が玄関側に、お隣さんに向かう窓は()りガラスの窓。カーテンは葉の絵柄が綺麗な薄緑のカーテン。てんとう虫の形をした掛け時計。家具は勉強机、洋服ダンス、本棚がメインで、植木やCDデッキ、CDラックが置いてある。

 本棚にはスポーツ系のマンガがたくさん。あひるの空、エリアの騎士、ダイブ!!、テニスの王子様、スラムダンク、奈緒子、涼風……。少年漫画ばっかりだね。さすが男の子。

 ふと、本棚の上にある写真立てに目がいった。この本棚、そんなに背が高くないから私が座ってても十分、視界に入る位置にあった。

 三宅くんと大澤くんだった。この服は西七海中学の制服だから、中学校の頃の写真だろう。文化祭かな。ラフな服装をした二人が仲良く肩を組んで写ってる。

「仲良さそう」

 微笑ましい感じになって私が一人笑っていると、急に大澤くんが声を掛けてきた。

「いいだろ、その写真」

「あっ……ごめんなさい、勝手に」

「いいよ別に。はい、ジュース」

「いただきます」

「どうぞ」

 私はジュースを少し口に含んでから、大澤くんが何か話してくれるのを待つことにした。時計の秒針の音しか聞こえない。その時間が妙に私を緊張させる。

「何から話そうかな」

 不意に大澤くんが口を開いた。

「な、何からでも」

 私はとりあえずそう答えた。

「何からでもかぁ。困るな、それは」

 大澤くんは苦笑いしながら首をかしげた。大澤くんが飲んでるのは麦茶だ。麦茶を少し飲んでから、大澤くんはようやく話を始めた。

「柳原は、好きな人いる?」

 ドキッとした。ひょっとしてこの人は、私が女の子を好きになってることを知ってる? ううん、そんなこと考えたって無駄。だって、そんな証拠はないじゃない。でも、ここでいないなんて言ったら自分にウソをついてる気がする。なら、答えはこうしかないじゃない。

「いるよ」

「そっか……」

 大澤くんは優しく笑った。

「それは、叶いそう?」

「うーん……」

 多分、98%くらい無理だよ。

「無理っぽいかも」

「なんだ。初めから諦めるの?」

「……そうかも」

 だって、同性だもん。無理だもん。

「でも、俺よりは可能性あるんじゃない?」

「え?」

 あぁ、そうか。大澤くんは私の恋の相手が女の子ってことを知らないんだ。

「そんなの……」

 そう言って言葉を止めた。私は、いま大澤くんが男の子を好きだという前提で話を進めてる。こんなの、失礼じゃない?

「大澤くんはどうなの? 好きな人、いるの?」

 フッと笑った。ちょっと自虐気味にも見える。

「そんなの、わかりきってることじゃん」

 その言葉はまるで、自分に言い聞かせているようにも私は感じた。

「いるよ」

「そうなんだ」

「わかってるだろ?」

「……。」

 返せない。何も、言えない。

「俺は、亮平が好きだ」

「……。」

 スゴい。こんな風に、自信持って言えるくらい、好きなんだ。

「キスしそうになったのは亮平に悪いことしたけど、俺、やっぱ亮平が好き。さっきだって、追い返したけど……あれは……」

 わかってる。三宅くんを傷つけないため、だよね? だったら、私はそれ以上言ってほしくない。

「わかってる」

 私は大澤くんの口を塞いだ。

「えぇ?」

「それ以上言わなくていいよ。私、わかってるから」

 だって、私だって君と似たようなものだもん。

「軽蔑しない?」

「全然」

 私がそう言うと、大澤くんは大粒の涙を流し始めた。

「ほん……とうに?」

「うん」

「……。」

 びっくりした。

 大澤くんが、私の肩に顔を載せてきたんだ。

「お、大澤くん……?」

「ゴメン……ちょっとだけ……貸して」

「……わかった」

 大澤くんはしばらくグズッた後、小さい声で言った。

「俺のことさ……支えてほしい」

 私は目を丸くした。

「私なんかで……いいの?」

「あぁ。頼むよ、柳原……」

 同じ感情を抱く仲間として、拒否なんてできない。

「いいよ」

「ホントか……!?」

「うん」

「ありがと……」

 大澤くんはようやく、笑ってくれた。でも、この笑顔は学校ではもう見れないようになるなんて、思ってもみなかった。





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