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回文章怪奇譚

twitterでお世話になっております、FALISE様から頂いた《記憶》『反転』です。

「そんな御都合主義、今どきあり得ませんって」


京香は続けて、胡散臭そうに言い放つ。


「……だって、結局その世界は上手くいかなかった(・・・・・・・・・)んでしょ?」


ああそうだ、否定はしない。ただ肯定の意は示さない。


「そうとも取れる。少なくともあの世界に住む人たちは世界の規則(ルール)に縛られ、真の意味で自由の翼を得たものは少なかった」


「曖昧ですよ……いつもそうだけど、今日は一段と」


「そうかい? 僕はもともと明言は避ける性格(たち)だからね」


僕は京香に、苦笑いしつつ微笑みかける。


あいも変わらず抽象的です、と口を尖らせる京香。


「けどまあ、あそこに懐かしさはあった。それは僕も大いに認めよう。遊び心があったというのも」


そう。それこそが今回の主題だった。遊び心が創った戯れに過ぎない。


戯れ、にしては手が込んでいるとは思う。


つくづく、彼奴(アイツ)はよくこんな変わった記憶を仕入れてくるな。


どうしても具体的な話は出来ないが、彼奴が興が乗った結末が、これ。



「……それにしても、回文なんて聞いたのは久しぶりです。あれですよね。前から読んでも、後ろから読んでも意味が通じるっていうやつ」


意味が通じる、というよりかは同じ言葉になるのが回文なのだと思うのだが、まあ意味が通じてもそれは回分の一種と捉えることも出来よう。怪文であるのは間違いなさそうだが。


「怪文……そう、回文だ。(まさ)しくそうだった。逆の順番でも意味が通った会話ができてると知った時は何とも楽しかった」


僕は懐かしげに呟く。


そうなら、それぞ怪文ですよ、と不服そうな京香。




「……俄かには信じられない話ですね。それは会話全てが反転しても意味を持つということですか? それは本末転倒に近いところがあるとも取れますが」


「というより、口に出る言葉全てが、全体を通して反転し得るというイメージだ」


「ならば、結論部分が会話の始まりになり、会話の始まりもまた結論になり得ると」


「少し近いかな。実際に体験して貰うのが一番分かり易いんだけどな……」


言葉そのものが裏返っているのではなく、文全体が逆転しているのですか、と京香が問う。


「そもそも、言葉の意味が理解できないのです。全てが逆の世界、というイメージが掴めないです」

だが、京香は尚も首を傾げる。


信じられないというのはわかる。だがまあ、そういう世界も在るのだ。今度機会があったら連れて行ってやりたいところだ。


抽象的な話しか出来ないのは申し訳ないと思ってる。だがまあ、具体例を挙げるとなると難しいのだ。


「いや、本当なんだって。僕は実際に見てきて、こうして君に話しているんだから」


僕の必死の説明に、それでも強情に、彼女は答える。


「いいえ。やっぱり、反転しても世界が成り立つなんて信じられません。だって、言の葉は一方通行でしょう?」





くるりと廻して

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