01
そっぽを向いたカノンの顔をじっと見つめる。
「………………………」
「………………………………………」
だんだんカノンの汗の量が増えてる気がする。
「もういいよッ」
あ、カノンがキれた。
そのままどっかに行ってしまう。
私は笑おうとした。
けれど笑えず、顔を歪めただけだった。
私は溜息をついた。
息が苦しい。
涙が溢れてくる。
「私は・・っ」
なにがどうなってるのか全く分からない。
視界がぼんやりとなってくる。
嗚呼、カノンを苛めなければ良かったなぁ と、何故か思った。
瞼を閉じる。
私はもやもやとしたまま眠りに落ちていった。
――――――――――――――――――
「く、るし・・・・・・・・・い」
なんとか声を出した。
「ごめん。―――ごめんねぇ・・・ふふ」
ママはただひたすら謝っている。
このままじゃ殺される。
ぷつりとここで 切れてしまう。
私の存在が此処から消える。
皆の記憶からも、いつかいなくなる。
苦しい。
目を閉じたらそのまま逝ってしまいそうな気がした。
もう少しでくっつきそうになる瞼を開けて、私はママの顔を見た。
―――――笑ってる。
――何かが切れる、音がした。
それでもいいと、思ってしまった。
そう思わなければどうなっていた?
私はここにいない。
けれどもしかしたらママはまだ生きているかもしれない。
メイドも、他の人たちも。
カノンは私と出会わず、おそらく一人で旅をしている。
そうだ。それにスーは死ななかった。
私はこんなにも、人の人生を変えてるんだな、と。
思った。思ってしまった。