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二十話 装備更新

「電子遊戯同好会SMO支部のギルド敢闘賞受賞及び、カイルのシルバー昇格を祝って乾杯!」

「「乾杯!」」

「我らの栄光と勝利に!」

「「乾杯!」」


冒険者ギルド鉱山都市シエフィルト支部の二階にある食堂は、討伐イベントを終えた冒険者たちでごった返していた。俺たちはその一角で祝杯を上げている。頼んだのはもちろん金貨一枚セットだ。


「金貨一枚セットはやっぱ違うわね」

「ああ」


俺はノーラの舌鼓を打ちながらの発言に同意した。

今日の日替わり金貨一枚セットは現実世界のイタリアという国のコースメニューだ。

無論、素材はこの仮想世界で取れた物を使っているが。


金貨一毎コースは前菜、主菜、主菜の二皿目と副菜、デザート、食後のコーヒーで、それを給仕付きで楽しめる。

前菜は梨を牛型モンスター、ビッグホーンの生ハムで巻いたものが出てきた。

主菜は凶暴な人型キノコ、バーサクマッシュルームの希少部位を使ったパスタという麺料理。

主菜の二皿目はワイバーンのステーキ。ステーキには付け合わせとして副菜のサラダが付いている。

デザートに周辺の農村から取り寄せられた果実の盛り合わせが出され、最後にコーヒーで締めだ。


俺は皆と出される料理を歓談しながら楽しんだ。

下のランクの日替わりセットが不味い訳ではないが、これと比べたら流石に劣るのは否めない。

金貨一枚セットでこれならば、もう一つ上の白金貨セットになったら一体何が出てくるのだろうか。


「いや~食った食った」

「ルッカ、はしたないですよ」


膨らんだ腹をぽんぽん叩くルッカをリリウムが諌めている。


「それでリーゼ、今回の報酬は幾らだったんだ?」


俺たちの野営地襲撃報酬はリーゼが纏めて受け取りに行った。

そうしておいて、俺達が食堂のテーブルを確保しなければ場所が無くなりそうだったからな。


「フフフ、見て驚くがいい!」


リーゼがインベントリから硬貨を取り出し、テーブルに置いた。

テーブルの上には白金貨が十三枚置かれている。

今回の報酬の内訳はこうだった。


野営地の早期発見報奨金が金貨四枚。

オークの部位や野営地の戦利品からの分配金が六人分で金貨六枚。

討伐報酬が一人当たり金貨十枚で六人分合わせて金貨六十枚。

俺の討伐数が上位に入ったのでそれの報奨金が金貨十枚。

敢闘賞を取った物に与えられる報奨金が金貨五十枚。


合計で金貨百三十枚。

リリウムやルッカの装備代に鉱山都市までの旅費を取り返してもまだ余る金額だ。


「これは今後必要になった時に為にプールしておくが、一部はカイルの装備更新の為に使うという事で皆、それでいいな?」

「私はそれで問題ないわよ」

「アタシも問題ないよ」

「私も問題ないです」

「…カイルもいい加減初期装備から防具を更新するべき」

「ちょっと待ってくれ。俺は剣と盾が良いものだから装備は今のままでも大丈夫だぞ」


俺抜きで報酬の用途が決まりそうなので口を挟む。

それに対してノーラがこちらに顔を膨らませながら言った。


「あのね、今回の敢闘賞はカイルがあそこで動いたから貰えたの。謙遜もそこまで行くとちょっと嫌味になるわよ」

「討伐数上位の報奨金もカイル一人の稼ぎだ。我もこの金でカイルが装備更新するのは当然だと思うぞ」


ノーラの言葉をリーゼが肯定する。横を見れば他の三人も頷いている。二人に同意見のようだ。

ここは俺が折れた方が上手く話が進むか。


「皆の好意を無下にする訳にもいかないな。ここは有難く頂戴しておこう」

「最初からそう言えばいいのに。それじゃあこの後解散したらログアウトする前に二人でタナカさんの店に行きましょう」




          ※




「おや、また来るとは思っていたけど速かったね」

「臨時収入があったんです」


俺とノーラはシエフィルトの冒険者ギルドで皆と別れた後、転移装置でロントにまで戻り田中武具店を再び訪れていた。


「あんたが作ってくれた剣と盾、役に立っているぞ」

「剣と盾を見せてくれるかな?」


カウンターにここで買った剣と盾を置く。


「どれどれ…」


タナカは剣と盾を調べ始めた。


「剣に刃こぼれやへこみは無し、盾の方も問題は無さそうだね。こうも上手く使ってくれると職人として冥利に尽きるよ」


タナカはしばらくしてから満足したのか剣と盾を俺に返した。


「それで、今回のご用件は?」

「防具を新調したい」

「予算はいかほどで」

「ノーラ、リーゼから幾ら預かってる?」

「金貨三十五枚よ」


ノーラがカウンターに白金貨三枚と金貨五枚を出した。

俺の討伐報奨金と敢闘賞で得た報奨金の半分か。


「三十五枚ね。シルバークラス向けの防具一式を用意できるよ」

「それでよろしく頼む」

「シルバーに昇格してからもしばらくは使える防具と思ってくれていいよ」

「タナカさん、カイルはもうシルバークラスよ」

「おや、この前来た時はまだカッパーだった筈だけど」

「あれから色々あってね…」


ノーラがここで剣と盾を買ってから今までの事をタナカに説明した。


「それはそれは。僕の見立てだと次に来店する時はスチールクラスだと思ってたんだけど、君は僕の見立てをことごとく上回ってくれるね」

「今回のシルバー昇格は運があっただけだ」

「人はそれを、『何かを持っている』って言うんだよ。それじゃあ注文を聞こうか」

「一番大事なのは武器を自由に振りまわせる事。次に軽さ。最後に防御力だな」

「可動域が広くて、防御があるとなると…チェインメイルはどうかな?」

「あれは肩に重量が乗るから好みじゃない」

「それだと、今のスタイルをそのまま強化して、胴周りの防御を強化する感じでいいのかな?」

「ああ。それで頼む」

「よし、それじゃあステータスカードを見せてくれるかな?」


タナカにステータスカードを見せる。


「うん、予想通りのスキル構成だ。分かってても、もう次のクラスを取っているのには驚くね」


戦いの後ステータスを確認したらオークとの戦いでレベルが上がっていた。

スキルはいつも通りステータス上昇スキルと、鎧を新調することによる装備重量の増加を見据えて鎧の修練を取得した。


レベル ファイターLV10 エリートナイトLV4


取得済みスキル

STR上昇Ⅲ AGI上昇Ⅲ

VIT上昇Ⅲ 剣の修練Ⅰ

盾の修練Ⅰ 鎧の修練Ⅲ


「用意してくるからしばらく待ってて」


タナカが店の奥に消えて行った。以前のように商品を見ながら時間を潰していると、タナカが黒色の鎧一式を抱えて戻ってきた。


「用意出来たよ。早速説明を兼ねて着てもらおうかな」


今まで着けていた防具を全て外し、用意された防具を付ける。

着用し終えるとタナカが説明を始めた。


「まずは胴回りからだね。今使ってるのとほぼ同じ形のブレストプレートに、肩当てとラメラー構造の腹鎧を追加してある。腰と太ももに付ける腰鎧も追加したけど、これは腰のベルトと腹鎧に連結して重量を分散できるようにしてあるよ。

次にガントレットだけど、盾を持つ左手は軽装備にして、剣を持つ右手を重装備に作ってる。もちろん剣を振るのに問題はないようにしてあるから心配しないでくれ。

ブーツはロングブーツに脛と足の上部と底を金属で強化したものだね。これも動きやすさを重視して仕上げたよ。それで、着心地はどうかな?」


店内を歩き、武器を構え、防具の感触を確かめる。これまで若干不安だった腹と足まわりに防御が追加されて心強い。防具の重さもステータスの上昇とスキルの効果で今までと変わらない程度に収まっている。


防具

衣服 冒険者の服(布、革製)

頭 無し

胴 コンポジットアーマー(黒鉄鋼製)

腰 コンポジットアーマー※胴とセット品(黒鉄鋼製)

腕 ナイトガントレット(黒鉄鋼製)

脚 アーマードブーツ(革、黒鉄鋼製)


「満足する出来だ。全部でいくらだ?」

「素材台と技術料を合わせて、それまでの防具の下取り金を引いたら金貨三十五枚ぴったりだよ」

「買った」

「どういたしまして。それじゃまた来る日を楽しみにしているよ」


装備を一新し終えた後はシエフィルトに戻りログアウトした。

明日は皆と現実世界で会う事になっている。楽しみだ。

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