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十五話 オークの襲撃

次の日。

ログインした俺とノーラはセーフポイントで電子遊戯同好会と合流し、鉱山都市へ馬車の旅を再開した。

馬車は何事もなくセーフポイントから騎士団の駐屯地、橋、農村と通過し、二つ目の橋を渡った。このまま進めば目的地の鉱山都市だ。


挿絵(By みてみん)


馬車の中では昨日と同じくトランプを用いたゲームや、リーゼが持ちこんでいた盤上ゲームに興じている。

俺はサクヤと将棋というこの世界での駒を用いた盤上ゲームを、ノーラ、リーゼ、ルッカは大富豪を、リリウムは魔導書の読書をそれぞれ楽しんでいた。


「…王手」


サクヤが駒を王手に進めた。

玉を逃す手を考えるが、全て塞がれている。


「また負けた。チェスは一度勝てたが、将棋は全敗か」

「…カイルは初めてにしては強い」

「サクヤはボードゲーム強いよね。う、それパスで」


ノーラはまた大富豪で負けそうになっている。


「似たような盤上で駒を使う遊戯なら遊んだ事はあるからな」


この手の遊戯は世界が違っても、似たようなゲームになるようだ。

チェスは駒の動きさえ覚えれば慣れ親しんだゲームとルールがほぼ同じだったため、サクヤから勝ち星を取れた。

しかし、将棋は取った駒を再利用できるルールに慣れていない事もあって一度も勝てなかった。


「サクヤは我が声を掛けた時も一人でAI相手に将棋をやっていたからな。これで終わりだ」

「アタシもー」

「ああ~また負けた」


ノーラがカードをテーブルにぶちまけた。

運要素が絡む札遊びで一度も勝てないというのは、何か呪いにでもかかっているのではないだろうか?


「もうトランプもUNOも飽きた」


ノーラがテーブルに突っ伏しながら呻いている。


「ふむ、それならTRPGなんてどうだ?ルルブとダイスも用意してあるぞ」


リーゼがインベントリから本と賽と筆記用具を取り出し始めた。

彼女はロントで大量にゲームを買い込んでいたが、誰が作っているんだろう?


「この手の遊戯道具は誰が作っているんだ。NPCか?」

「生産系のプレイヤーに、昔ながらのトランプやボードゲーム、著作権切れのゲームブックやTRPGシステムを製造する人たちがいるそうですよ」


リリウムがページをめくりながら答える。


「ゲームの中でゲームをやるのか」


暇つぶしとして現在進行形でゲーム内ゲームを遊びながら言うのもなんだが、これは本末転倒ではないだろうか。


「リアルってのもここまで来たらも考えものだよねー。ゲームの中でやる暇つぶしアイテムに需要が出るなんてね。でも家にいたままでこうやって皆と遊べるから、これはこれで楽しいけど」


ルッカが、ノーラがぶちまけたトランプカードを集めながら言った。


「電子遊戯同好会は現実で集まったりしないのか?」


突っ伏したままのノーラに聞く。


「学校にいる間なら物理的な部室に集まる事もあるけど今は長期休暇だからね」

「休みの間に一度リアルで集まりませんか?私カイルさんと顔合わせしてみたいです」

「あれれ?リリウムもカイルに興味津々だったり?」

「ルッカ、そういうのじゃないです!」

「おーっと危ない危ない」


リリウムが繰り出した魔導書をルッカがヒョイと避けた。


「ふむ…今度皆で街に行く時に、ノーラがカイルを連れて来ればいいのではないか?」

「うーん、どうするカイル?」


テーブルに突っ伏していたノーラが、リーゼの言葉に顔を上げてこちらを見て来た。

額にカードが張り付いているぞ。

そうだな…嘘がばれたら少しマズイが、現実世界で時子以外の日本人とも交流してみたくはある。

俺はノーラの額から落ちたカードをルッカに返しながら頷く。


「今度そういう機会があったら俺も連れて行ってくれると有難いな」

「じゃあ来週に皆で街にでも行く時にカイルも連れてくるね」

「現実で皆と合うのを楽しみにしている」

「…リーゼとリアルで合ったらびっくりするかも」

「ん、どういう事だ?」


サクヤがボソリと気になる事を言った。


「リーゼはリアルだと…」

「あー!あー!あー!」


何かを口にしようとしたサクヤの口を、リーゼが青い肌を赤くしながら塞ぐ。


「ともちゃん、今隠しても来週にはバレるでしょ」

「ノーラ、ネットと、リアルは、別!」

「な、何か知らんが、来週分かるのなら今は聞かなくてもいいぞ。ほら、次はTRPGってゲームをやるんじゃなかったのか」

「感知に何か引っかかったよ!」


踏み込むとよろしくなさそうなので、話題をそらそうとしたその時、ルッカが何かにピクリと反応した。

それと同時に、遠くで響く角笛の音が馬車にいても聞こえてくる。


「あの音は確か…オークの角笛。ノーラ!」

「そうねリーゼ。みんな、戦闘になるわ」




          ※




なだらかに傾斜した平原を通る街道に停まる馬車めがけて、オークの一隊が傾斜を駆け上がって来ている。


挿絵(By みてみん)


オークは身長180センチ程の、野蛮な人型モンスターだ。

肌は暗緑色、灰色、緑がかった灰の三種類。顔は獣じみて、口からイノシシのような牙が突き出る。

髪は黒く、ろくな手入れもされていない為に脂ぎっており、血のように赤い瞳には暴力と憎しみが漲る。

分厚い筋肉を獣の皮で出来た悪臭漂う服で覆い、顔には戦化粧を施している。

オークの武器は粗末な石斧や棍棒で、粗悪な武器という点を武器の頑丈さと筋力で補っている。

奴らは自ら何かを作り出すよりも、それを他種族から暴力で奪う事を常に考える。

オークが信じるのは力と暴力、それだけだ。


「カイルとサクヤは前衛、リリウムとリーゼは馬車の手前から呪文で援護、ルッカは馬車の上から射撃。私は前衛の補助。リーゼ、これでいいわね?」

「我もそれでいいと思う、馬車と援護は任せろ!」


オークと接敵する前に急ごしらえで作戦と隊形を整える。御者のNPCは馬車の中に隠れさせた。

迎え撃つ準備が整う頃には、もうオーク達はかなり近くに迫っていた。

オークの数は十二。


「リリウム!呪文の準備はいいか?」

「はい!大丈夫です」


俺が確認するとリリウムはしっかりと頷いた。

先程立てた即席の作戦はリリウムが重要な役を担う。

新調したリリウムの魔導書がさっそく役に立ちそうだ。


「コロセー!」

「「「オオオオオオオオ!」」」


叫びながら突撃するオークと俺たちが接触するまであと数メートル。

その時、リリウムの呪文が発動した。


「<石のスパイク(ストーン・スパイク)>!」

「グオッ!」「ガッ!」


俺達の前方からオークの集団までにかけて地面から、薄い石でできた小型のスパイクが飛び出す。

それによって、多少皮膚が頑丈とはいえ素足のオーク達は、突撃を中止せざるをえなくなった。


「ガアアア!」「グアアアア!」


先頭にいてスパイクをまともに踏み抜いたオークが二体、たまらずこちらの足元に転がってくる。

俺が一体の首を刎ね、もう一体はサクヤが槍で喉を突く。


「ガッ」「ゴボボ…」

「醜い豚め、我が炎に身を焼かれよ!<火球(ファイヤー・ボール)>!」

「グオオオ!」


傷付いた足のせいでリーゼの火球を避けそこなったオークが丸焼きになり、豚の焼けた匂いを周囲にふりまく。

リーゼが放った火球を合図に俺たちも攻撃を開始する。

俺たちのブーツは底がしっかりと強化されている為、オークと違って足を傷つける事もないし、移動も阻害されない。


「シネ!」


一体のオークが棍棒を大きく振りかぶり、叩きつけてくる。

オークは痛みに強いが、それでも足の傷と痛みは動きを鈍らせている。

精彩を欠いた攻撃をかわし、剣でオークの腹を裂く。


「ググ…ヒキョウナ、ニンンゲンメ」


膝を突いたオークが、腹から血を流しながらこちらを睨みつけてくる。


「最期に教えてやろう。これは人の知恵というんだ!」


俺はオークの首を落とし、次のオークと対峙する。

横ではサクヤが足が遅くなったオークを、オークの間合いの外から槍で確実に仕留めている。

その後も戦闘は順調に進み、正面から俺とサクヤを突破しようとしたオークは足を止められ、各個撃破する事に成功した。

俺とサクヤを迂回しようとしたオークはルッカの矢とリリウムの魔法で足止めされ、ノーラのメイスとリーゼの火球で始末された。


戦闘が終わった後は皆でカードで死体から素材を剥ぎ取り、矢を回収する。

オークが身に着けていた装備は奴らの臭いが染み付いていたので纏めて焼いてしまう。

積み上げたオークの装備から俺はあるものを探すが、それは見つからなかった。


「皆、オークの角笛を見なかったか?最初に聞えたあれだ。ルッカは見なかったか?」


パーティーの中で一番物を探すのが得意なルッカに尋ねる。


「いや、見てないよー」


ルッカは首を横に振った。

ということは、この襲撃を指揮したオークはまだ生きている可能性がある。

オークが襲撃して来た方向の斜面にそいつが居ないか探してみる。

すると遠方に、巨大なイノシシに跨ったオークが森の中へと消えて行くのが見えた。

やはり指揮官は生きていたようだ。

だが、今すぐには再び襲ってこないだろうし、オークが森に引っ込んでいる分にはわざわざ追って殺すほどのものでもない。

先に進んでしまえば大丈夫だろう。


「撃退できたし先を急ぎましょ」

「ああ」


そう言うノーラに従って俺たちは再び鉱山都市への旅を再開する。

その後はトラブルもなく、鉱山都市シエフィルトに無事入る事が出来た。

旅の成功を祝ってシエフィルトの冒険者ギルドで軽い打ち上げをしてから今日はログアウトした。

少しだけキャラの設定を変更している部分がありますので、活動報告に目を通して戴くと有難いです。


追記 この時点でのノーラとリーゼのクラス、スキル、装備品


ノーラ クレリックLV10 バトル・クレリックLV3 

種族 ヒューマン


習得済みスキル

回避モーション補正Ⅱ 攻撃モーション補正Ⅲ

SP回復増加Ⅲ 鎧の修練Ⅱ 

神聖のオーラⅢ(パッシブスキル 補助魔法、回復呪文の効果補正+周辺の悪属性のモンスター(アンデッド、デビル、デーモン等)にバッドステータス)


装備品

武器 

メイス(鋼鉄製)

魔導書『護りの聖典』


防具

衣服 クレリックの服(布製)

頭 無し

胴 チェインメイル(鋼鉄製)

腰 クレリックのスカート(布製)

腕 ガントレット(鋼鉄製)

足 プレートブーツ(鋼鉄製)

装飾品 クレリックの法衣(布製)




リーゼ・アイヒベルク ウィザードLV10  ウォー・ウィザードLV2

種族 ハーフデーモン


習得済みスキル


SP上昇Ⅱ SP回復増加Ⅱ

呪文ストック消費SP軽減Ⅰ 魔法威力上昇Ⅲ

魔法射程増加Ⅱ 魔法範囲増加Ⅱ


装備品

武器

炎術師の杖(鋼鉄製)

魔導書『赤の書』


防具

衣服 無し

頭 炎術師の帽子(布製)

胴 炎術師のローブ(布製)

腰 炎術師のスカート(布製)

腕 炎術師のグローブ(布製)

足 炎術師の靴(布製、金属製)

装飾品 炎術師のマント(布製)

セット効果 炎属性の呪文の魔法攻撃力増加

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