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1.追いかけられる

ほのぼのとした話を書きたくて書きました(*^^*)


 今日のお弁当にはタコさんウインナーをいれた。他にも赤くみずみずしいトマトとか卵焼きだとかを入れた普通のお弁当だった。

 それを食べるのもいつもの場所で、でも一つだけいつも通りではない、まあ、いつも通りになりそうだけど。そんなところがある。


「それ葉ちゃんが作ったの?」


 隣にイケメンがいることだ。そのイケメンはパンをゆっくりと咀嚼していつも通りの飄々とした態度で、そう聞いてきた。


 いつも通りお弁当を食べるのを邪魔された彼女は小さなため息をついた。



 彼女の名前は遊里 葉といって、どこにでもいる平凡な女子高生だった。

 対して、彼女の横にいる男は柳井 柊といって薄茶色の髪の毛に整った綺麗な顔立ちのイケメン。


 ____なんでこんなことになったんだろう。


 彼女は目を閉じて思い出す。










 数ヶ月前まで、自分は恋をしていた。幼馴染で、スポーツが得意な顔が整った人に。

 顔が整っている、と言っても横にいるきらきらとした先輩ほどではないけれど。



 中学生くらいから恋心を自覚していた。中学生三年生の時に告白してOKを貰って付き合い始めた。

 毎日がきらきらしていて世界が綺麗に見えた。今から考えると恋に溺れていたのかもしれない。


 彼女の性格は落ち着いた性格だった。あんまり気持ちが表情に出ないことが悩みだったけれど幼馴染はわかっていると思っていた。


 十年間以上も一緒にいるんだからわかっていると信じていた。



 高校生になった冬の真ん中くらいの頃。


 放課後。幼馴染に呼び出され、なんだろうと思って行くとそこには自分よりもずっとずっと綺麗な人がいた。

 隣のクラスの子だったけれど、自分のクラスに噂が届くくらいの綺麗な人。


 あ、と思った。最近幼馴染の態度がよそよそしかったのはこれのせいか。


 幼馴染の発した言葉は一言


「別れてくれ」


 なんで?と問えば お前は表情が無くて可愛くないし、飽きた。と幼馴染は言った。


 その時理解した。この幼馴染は自分のことなんて好きじゃなかったのか、と。

 告白されたからなんとなく付き合ってなんとなく一緒に居ただけだった。


 それだけだから、幼馴染は言って綺麗な人の肩を抱いて何処かに行ってしまった。綺麗な人の口元は弧を描いていて勝ち誇っているように見えた。


 自分と幼馴染の関係はバッサリなくなってしまったのか、と理解した時には目から涙が溢れ出ていて。

 座り込んで人の気配がない、体育館裏で泣いた。


 友達の言葉を思い出した。

 なんかあんたの他に女の子とたくさん遊んでいるらしいわよ、と。


 嘘だと決めつけていたけれどそんなことなんてなかった。精一杯尽くしていたはずなんだけど捨てられてしまった。



 泣いて、泣いて、泣いて、どれだけ泣いても涙はまだまだいっぱい残っていた。


 十年間の長い時間。自覚しなかった時も含めての。

 その恋が終わった時間はあまりにも短くて、




 何十分経ったんだろうか 、彼女にはわからなかった。どれだけ泣いてもまだ出てくる塩辛い水が頰を伝う。風が冷たい。


 下を向いて、ずっと泣いていたからわからなかった。


 ふと上を向いて、見上げると空ではなく、人がいた。



「やっと上を見たね。はじめまして、遊里ちゃん。はい、これハンカチ。」



 綺麗な男の人が立っていた。



 その綺麗な人はネクタイから見るに二年生の先輩だ。

 でもその時はどうでも良くて、この人が誰だってことも顔が綺麗だってこともどうでもよかった。


 いつまでたっても人がいることにびっくりしてハンカチを受け取らない自分に苦笑した先輩はハンカチで目元を拭った。


 ぽんぽんと背中をさすられて、嗚咽がだんだんと小さくなっていく。










 ____いつの間にか眠っていたようで、目がさめると保健室だった。


 横にいるのはさっき忠告してくれた親友の英里だった。


「葉、大丈夫!?心配したんだから……行ってくるって言って帰ってこないってどれだけ心配したか……」


「英里……?」


 葉はゆっくりと周りを見渡した。手の中に握っていたのはさっきの先輩がくれたハンカチ。


「でもびっくりしたわ……あんたから電話が来たと思ったら柳井先輩の声で保健室まで来てくれって言われた時は何事かって思ったわよ」


 どうやら先輩がここまで連れて来てくれたみたいだった。泣いたせいでぼうっとする頭で思ったことはハンカチを返さなきゃということと人前で泣いてしまった、ということ。


「で、何があったのよ?」



 優しい声で英里に問いかけれると止まった涙がまた出てきそうになった。






 ……まあ、その後、ハンカチを先輩に返しに行った時にいきなり好きだよ、と言われその日から毎日お昼ご飯を一緒に食べるような仲になってしまった。


 最初は反対していた英里もある日を境に先輩に連れられていく私を笑顔で見送るようになった。


 今日も、そうだ。英里はむすっとした顔をみせる私に笑って背中を押したのだった。



 隣にいる先輩をちらりと盗み見る。

 ____本当に綺麗な顔だな。


 女子としては大変苛つく。


 そして私はタコさんウインナーを口に運び先輩の質問に答えることにした。




前作に沢山の評価ありがとうございました。

この作品は不定期更新となりますが、楽しんで見てくだされば幸いです。

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