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21 乙女の……




 若い男たちに担がれていったメルロさんを笑顔で見送った、新婦さんことフィーナちゃん。

 ふんわりと柔らかく、それでいてどこか凛としている雰囲気の子だ。

 そして思っていた通り超可愛い。


 新郎のいない隙を狙って彼女に話しかけようとしたタイミングで、フィーナちゃんの友達がやってきた。



「フィーナ! おめでと〜!」

「ありがとう!」



 彼女たちはみんな美しい踊り子の衣装を着ており、もれなくお酒が入ってすでに楽しくなっちゃっている。

 おへそ、生脚、豊満なお胸、露出多めなグラマラスなハイパーお色気お姉さんたちだ。



「うわっと!」

「やぁ〜っと、くっ付いた! ていうか、一気に追い抜かされたぁー!」

「もうキリヤちゃん聞いてくれる〜?」

「え、聞きたいです! ぜひ!」

「ちょ、ちょっと、恥ずかしいよ」



 ぐるりと肩に腕を回された私は、期待していた通りの大きな餌にバクリと食い付いた。



 どうやら二人は幼い頃から特に仲が良く、成長するにつれて恋愛感情も育まれていったと。しかし関係が壊れることを恐れ、お互いに好きだと言い出せなかったらしい。

 幼馴染み問題だ。

 焦れったい日々を過ごしていたのだけど、今日ついにメルロさんが告白を通り越し、なんとプロポーズ!


 こんなに嬉しい日はないと、友達の一人が泣きながら話してくれた。

 話題の人物は恥ずかしくて真っ赤になりながらも、嬉し涙を浮かべていた。



 その後は新婚さんイジリしたり、私のことを聞かれたり、里での暮らしについて聞いたり。

 なんとここにいる半分以上の子はもう既に婚約しているらしい。

 ゴールイン一番乗りはフィーナちゃんだそうだ。

 そして婚約がまだの子も、ちゃんといい人がいるんですって!


 そう。ここはリア充の巣窟。魔境だ。


 私はこっちに来てからずっとトラ充だけどな!


 赤髪の人がいるじゃんと騒ぎ回るアイツを指差され、全力でそれはないと返す。

 私はこう、自分よりも年上で、余裕があるというか、そういう大人っぽい雰囲気の人がタイプだ。


 たとえばそうね、部活の先輩とか。

 わ、わたしっ、先輩のことが……いえ、いち部員として、応援してますっ、……大会、頑張ってください!

 みたいな!

 笑われた。何故。なにゆえ。


 久し振りに同年代の女の子達と楽しくお喋りすると嫌でも思い出す今は懐かしき高校。

 うむ。彼氏はいないが楽しかった。

 それで良いのだ。それで良いのだ!

 生きてきた環境が違うからしょうがないのだ!

 自分とのギャップを感じることこそ、異文化交流!



「それにしてもアンタ本当によく食べるのね。牛になっても知らないわよ」

「ふふふふ。ならないんだな、これが!」

「あーらそう。なら意地でも牛にしてやるわ。口を開けなさい」

「ちょ、ちょっとアナ! ダメだってば!」

「んっふっふ、何でも来なさーい!」

「ユカリちゃんも!」

「ほら、良いって言ってるじゃない」

「ならこれ食べて!」

「よーし、私のも食べなさい!」

「あー!」


「……はぁ」

「トラジロウ君、ごめんね」

「いや、良いんだ。こちらこそ騒がしくしてすまない」

「うんん、みんなが騒がしいのはいつもの事なのよ。それに楽しいでしょ?」

「あぁ、そうだな」

「トラジロちゃん! ごめんそこのコップ取って」

「ん、ほら。こぼすなよ」

「ありがと」






「ハ!? アンタ男だと思われてたの!?」

「ウソー! やだありえなーい!」

「おもわれてたの! 三日も一緒にいたのに! ここにきて初めてできた……友達? えっと、知り合い、先生、んー……仲間? だったのに!」

「うんうん」

「このデンジャラスでダイナマイトなお胸を触っても、首をかしげてさ!」

「ふ、うふふ、うふふふ」

「イケメンのくせに! イケメンのくせに!」

「えー、でもぉ! そんなに食べてちゃ、男と勘違いされても仕方ないんじゃな〜い?」

「そ、それは……!」

「色っぽくないし、ぜ〜んぜんダメー」

「お色気……」

「ふふ、あはは!」

「その服だって男用なんでしょ?」

「う、うむ……」

「あっはっは!」

「ううう……あれ、トラちゃん……」

「トラちゃんならさっきメルル様と一緒に遊びに行ってたわよ。今は……レオン君と一緒にいるわね」

「そっか……うう、ユカリちゃん悲しい」

「あっはっはっはっは!」

「ユカリちゃん泣かないの! そしてアナは笑わない!」

「あっ、ごめーん。私、踊ってくるね。彼と!」

「うう、リア充め……! 末長くお幸せに!」

「あっはっは……んああ! そうだわ!」






「あっはははは! どお? アナちゃん私似合ってる?」

「もちろんじゃない、バッチリよ!」

「ありがとチョー嬉しー!」

「早く行きましょ!」



 女の子達と美味しいものをたくさんの食べて、たくさん飲んで、いつの間にか楽しくなっちゃった私。


 踊り子のお友達に衣装を着せてもらって、フェイスペイントをして、同じ格好をして一緒に広場に踊り出た。


 みんなの綺麗な羽の代わりは紺色のマフラー!

 あれだ、風神様みたいな感じに!

 エジプトの踊り子みたいな感じに!



 広場は踊り子だけじゃなくて、おじいちゃん、おばぁちゃん、ちっちゃな子まで楽しく騒いでいる。

 スマホでもバッチリ激写しましたよ!



「見てなさい、こうして、こう!」

「こうして、こう!」

「そうよ! うふふ、センスがあるわ!」

「ありがとう!」



 どうせやるなら本格的に!

 衣装を着て!

 楽しく踊るべき!


 メルロさんもフィーナちゃんも、楽しそうにペアダンスを踊ってる!


 風の民が羽根を広げて舞うその姿は!

 タンチョウのように美しく!

 サンバのように情熱的!



 そして! 私は日本人!

 お祭りならば! 踊るべき!



「こう!? こう!? アナちゃん出来てる!?」

「できてるわ! アナタ、ほんとイイ身体してるじゃない! それに柔らかいのねっ」

「毎晩ストレッチしてますもの!」

「それなら、こうよ!」



 見よう見まねでステップを踏んで、ジャンプして、腰を振って、声を上げる。

 全身でリズムを刻むのだ!


 すこし不恰好だろうけどそんなんはこの際どーでもいいのだ!



「ほら行って来なさい!」

「行ってきます! レオーン! ライオン丸ー!」

「ん……はぁ!? お、おま!」

「うふふん、どう!?」


 どやどや! お姉さまたちと同じこの格好は!


「どうって……」

「女にみえる!?」

「……みえ、る」

「なに!? 聞こえない! みえる!?」

「……みえる!」

「みえた!?」

「みえた!」

「んんんー、いやっほー! アナちゃんみえたってー!」

「ぶふっ、あっはっはっは! ……まぁいいわ。こっちいらっしゃい!」

「じゃあねー! アディオース!」



 たまにアレンジも入れて、アナちゃんのようにくねらせて!

 激しく! そして嫋やかに!


 いつか映画で見た、流し目が素敵なお姉さんのごとく!

 セクシーに! そして艶やかに!



 刮目せよ!

 プリティーゆかりちゃん渾身の、ムンムンお色気!



 トラジロー! ねぇ見てー! ほら見てー!




「アワワワワワァア!」

「あわわわわわぁあ!」



 口に手をぽんぽん当てながら叫ぶ。


 あぁ、もう楽しくて堪らない!

 シルヴェスティ様に感謝を捧げます!







「おい、ネコ。あいつヤバくねェか?」

「飲ませちゃった……おさけ……」

「やっぱしか。……おお……おおお……」

「はぁ……どうしよ、大丈夫かな……ん!」

「……うおお……!」

「レオン!」

「……はっ。ん、ココか?」

「そう! そこ!」

「そうかココかァー! ほれほれほれ!」

「あああ〜」

「俺様のナデナデで! 落ちないヤツは! いねェんだぜ! あー……、ヤッベふわふわ、ほんと触り心地最高なのなお前」

「あぁそこ、もっと! もっとー!」






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