16 いざ、冒険者ギルドへ
「……ん、んん……んあ?」
「あ、起き、うにゃ! は、離せ!」
「……んふふ」
「あぁもう! ユカリたす、手伝ってくれ!」
朝早く起きてトラジロウと近くの川でお風呂というか水浴びを済ませ、チェックアウトするための荷物整理をしていた時のことだ。
ノートに昨日教えてもらった貨幣価値の事を書き込んでいる途中、ベッドの上で暇をつぶしていたトラジロウの悲鳴が聞こえた。
何事かと見てみると、ふわふわ青毛の赤ちゃんは赤髪の筋肉男にガッチリホールド&ほっぺすりすりされていた。
でんきタイプなんだから麻痺にして逃げればいいのでは、という考えが浮かんでハッとあの事を思い出した。
「今行く!」
「……んふ……」
「早くー! もう、こうなったらッ」
「で、電気はダメ! 朝から喧嘩はもうやだよ!」
「早く、はやくして……」
こちらに背を向けてトラジロウを抱きこむレオンの太い腕を両手で掴んだ。
お腹に力をいれて持ち上げようと踏ん張る!
けど!
「く、なんだこの筋肉オバケは! ……ぐっ、重い……!」
「頑張ってくれーッ!」
「こんのワガママっ、ダイナマイトボディめッ!」
「ブフッ」
「ふんっ、ぐぬぬ、ぬぅっ! ほ、ほらトラちゃん今だ! だあぁ疲れたぁ……え。うぉわ!」
今度は私が引っ張られて、すっぽりと太い腕の中に収まってしまったのだ!
「ユ、ユカリ! 今助ける! こ、こんのぉ!」
「と、トラジロ早くー! ひっ、この変態! ムッツリ! スケベ!」
うっわ、首の匂い嗅ぐのやめて! こんの変態が! キッモ! あっ、あ、やめ、ほっぺやめて! うわ、じょりじょり、ヒゲ生えてるじゃん痛い! ってかレオンまだお風呂入ってないじゃん。せっかくお風呂はいってきたのに! ふざけんな! 助けてトラジロォ!
つっぱり棒のように硬い腹や胸に手を当ててぐぐぐっと必死で距離を取る。
そしてたまたま、レオンの顔がチラッと目に入って気がついた。
こいつ、笑ってない?
全力でつっぱりながら彼の喉や口元を見ていると、むにゃむにゃした後ゴクリと唾を飲み込んだ。
「ねぇ、起きてるんでしょ、ふぐっ」
「……ふふ」
「それは本当か」
「たぶん。テレビでね、ふんっ、唾を飲み込んだら寝たフリだってやってた!」
「へぇ」
「……」
「トラジロウ、私ごと……ビリビリでお願い」
「わかった」
「…………」
トラジロウがレオンの背中に二本のツノを突き刺したようだ。
心なしか今、口の端がひくりと動いた。
はっはーん。それでもやめない気ですね。
このままだとスタンガンの刑ですよ処しますよ。
「準備いい?」
「あぁ」
「さん、にー、い」
「あー、よく寝た! いやー、今日もスッキリ良い朝だぜー! あれキリヤ君、こんな所でどうし」
「ふん!」
「痛ってェー!! ネコテメェ、今ちゃんと起きたじゃねえか!」
「やっぱり起きていたんじゃないか!」
「本当に寝てたらどォすんだ!」
始まりましたね。
じゃれ合う二人を横目で見ながら起き上がり、乱れた髪を手櫛で整える。そして頬を手の甲で優しく擦った。
はぁ……、せっかく。
「水浴びしたばっかなのに……痛った!」
「俺を汚いモノ扱いすんな!」
「ハッ、事実だろう」
「んだとテメェ」
「アナタも水浴びして来たらどうなんです? 今日はメルちゃんに会いに行くんですのよ」
「ふぁ〜、ん……そうしてくるわ」
レオンが面倒くさそうにベッドから降りると、頭とお尻をボリボリ掻きながら部屋から出て行った。
オヤジ臭い。
トラジロウは一生懸命毛を繕い、私はじょりじょりされた顔を洗ってから荷物整理に戻ったのだった。
******
「まだ一泊残ってるけどいいのかい?」
「ええ、とても食事が美味しかったし、いろいろお世話になったので!」
「ふふふ、そうかいそうかい。そりゃ嬉しいね」
「ありがとうございました」
「気をつけるんだよ。ネコちゃんもね」
〈ありがとう。トラだ〉
「はい! あとこの子はトラです」
一泊分残したままチェックアウトを済ませた。
風の民の元へ行けばもう此処には戻ってくることはないからね。
そう考えるとなんだかじーんとくるなぁ。
レオンもボードロ盗賊団がお縄になった今、この街に用事は無いそうで同じように引き払ったようだ。
さて、迎えに来てもらう時間まで何をしようかな。
あれこれ考えていると、レオンがさーて、と声を出した。振り向けばニヤリと笑った彼がこっちを見ていた。
私の血が付いていたあの深緑色のコートを羽織っている。フードは被ってないけどね。
普通の鞄とは別に肩に袋を担いでいる。
「俺はこれからギルドに行くケド、着いてくるか?」
「冒険者ギルド? 行く!」
〈おれも!〉
「よぉし! 逸れんじゃねぇぞ」
「はい!」
そういうとレオンはこっちだと言って歩き出した。
昨日とは違って逸れないようコートの裾を掴んで必死で後をついていく。
なんせ悲しくなるくらい腰の位置が高くて脚の長いこの人は、私の三歩を二歩で進むのだ。
たった一歩の違いだけど塵も積もればなんとやら、その差はどんどん広がる。人避けにもなるからこっちの方が歩きやすいしね。
「ここだ!」
〈おわっ!〉
「わぶっ! いっててて……」
急に立ち止まられて背中に顔面をぶつけてしまった。
低い鼻がさらに低くなると困るので、高くなれ高くなれと念じながら引っ張った。
トラジロウはというとぶつかる直前にレオンの頭の上に飛び乗ったので平気だったようだ。すぐ腕の中に下りてきたけど。
ほら、とレオンに促されて大男の陰から出るとそこには。
「おおおお!」
〈すごいなぁ!〉
二階建ての大きな建物がそびえていた。
謎の文字が書かれた大きな看板が正面に掲げられ、大きな一本角が生えた動物の頭蓋骨が入口の上にでかでかと飾られている。
超長いコロネみたいにネジネジした角がおでこにドーンとある動物だ。
あの看板には冒険者ギルドって書いてあるのかね。
扉のない開放的なエントランスからはたくさんの強そうな人達が出入りしている。
建物の中からも外からもガヤガヤと元気な声が聞こえてとても賑やかだ。
見た事もない色形の植物や動物の毛皮を荷車で沢山運んでいる人がいたり、道端で何に使うのかよくわからない物を売っている人がいたり。
すごいすごいすごい!
本当に異世界に来たって感じ!
もうなんかすごい! 感動!
自分の語彙力のなさにもある意味で感動!
「さ、とっとと入ろうぜ」
〈おれ達も入れるのか!?〉
「もちろん」
「早く行こうよ!」
「んな急がなくても」
背中をゆっくり押されて屋内に入った。
「うわぁー!」
そこは大きなレストランホールのようになっていた。
沢山のテーブルに沢山の人が座って仲間との食事を楽しんでいる。
興奮しすぎて大勢の人から注目されてしまった。
お上りさんな私とトラジロウに微笑ましそうな視線が向けられて、またすぐに仲間との会話に戻ってくれた。
恥ずかしいからちょっと抑えよう。落ち着こうね。
「こっちだ」
「うん」
レオンのコートを掴みながら冒険者たちの座るテーブルの間を進む。
弓や斧や剣、杖など様々な武器や防具を身につけた男女のグループが何かの作戦会議をしていたり、タバコを吸いながら一人本を広げて考え込んでる人がいたり、昼間っからお酒を飲んで騒いでる人達がいたり。
食べ物の匂いで食欲も湧いちゃう。
あそこの角にある厨房から、肉の焼ける美味しそうな匂いが漂ってきた。
食欲を誘う淫らな香りが鼻腔をゆっくりと通り抜けたその瞬間。
元気な声でお腹の虫がグォォオー! と鳴いた。
「はっ……!」
もはや虫じゃなくて獣。
周りには乙女の恥ずかしい音は聞こえてないはずだ。
授業中でもお腹の音って友達には意外と聞こえてなかったりするしさ。
腕にいるこの子もビクッとしたけどそれはお腹の振動のせいだ。
バレてない。絶対バレてない。
みんなはお腹を押さえて一瞬固まった私を見てるだけだ。
そうだ、そうそう絶対そう。
ちょっとそこクスクスしない!
「キリヤ」
目の前を行くレオンは立ち止まっていて。
残された最後の希望を打ち砕くかのように、ニヤついた顔でゆっくりと振り返った。
あっ、もしかしなくても聞こえてましたかそうですか。デデーン、縁アウトー。
「あそこでなんか買って、ココ座って待ってろよ。……ブククッ」
「ハイ」
そんなこんなで厨房へ行きオススメの食べ物を三人分頼んだ。
出てきたのはソーセージをパンに挟んだだけの大きなホットドック。大きなソーセージはパンの両端からはみ出すほどで、とても食べ応えがありそうだ。
「いただきます!」
三人掛けのテーブルに座って、はみ出た大きなソーセージに噛み付いた。
肉汁がピュッと飛ぶくらい皮はパリッと中はジューシー!
滴り落ちる黄金の肉汁を余すことなく口で受け止め、お行儀悪いけどちゅるると吸って、パンと一緒に咀嚼する。
鼻をツンと刺激するマスタード的な辛子の風味も抜群だ。うまぁい!
私の左手に持ったホットドックに噛み付く肉食獣も大満足のようだ。
頬に飛んだ肉汁をトラジロウが舐めとり、たまたま彼と同じタイミングで唇についた油をペロリと舐めて、また大きなホットドックにかぶりついた。
見事なシンクロである。
「美味しい! ね、トラジロウ!」
〈この長い肉うまい!〉
「それはソーセージって言うんだよ」
〈ソーセージうまい!〉
「うまい!」
「何回も言わなくたって見てればわかるぜ」
「えっ誰」
「よう、お前初めて見る顔だなぁ」
「あ、どうも。初めまして」
〈…………〉
「すまん俺の分も頼む!」
隣のテーブルに座っていた男性に話しかけられた。
レオンと同じで、いかにも拳で語りますっていう見た目の人だ。
彼の足元にはなんと殺傷能力が限界値をぶち抜いてそうなイカツイ斧が立てかけてある。刃を剥き出しにしたままだと怖いので、こう、袋をかぶせたほうがいいと思います。
男性のテーブルには彼の他に五人の男女が座っていて、全員が赤ら顔で面白そうにこっちを見ていた。
そのうちの二人がホットドックを買ってくると席を立った。美味しいもんね。
トラジロウが私の膝の上に来てくれたので、一旦ホットドックをテーブルに置いた。
手についたパン屑を払い落としてからいつものように腕を回す。
「お前、ひよっこ冒険者だろぉ?」
「そうね、さっき叫んでたもの。うわぁあって」
「なっ! さっきのは……忘れてください」
そう言うと周りの人にゲラゲラ笑われた。
何がそんなに面白いの。
あ、この人たちも昼間っからお酒飲んでる……。
顔も赤いし超酔っ払ってるじゃん。
あぁ、楽しくなっちゃってる人たちか。
弱そうな私に会話の照準が向けられてしまったとな。
「なぁなぁ、小僧。おまえ、赤獅子似のあの男とどんな関係なんだ? もしかしてコレかぁ〜?」
「違います」
「ギャハハ! コレだってよ〜!」
〈コレって何だ?〉
「さぁ……」
小僧って言われてさらに小指をピンと立てられた。
もし私が知ってる意味と同じだったら、それ相当ヤバいことになりそうだけど。
というかそのハンドサインの意味が何であれ、お兄さんの表情からして絶対よろしくないもので間違いなさそうだ。
そんなことより!
「お兄さん、赤獅子を知ってるんですか?」
「そりゃモチロン知ってるぜ」
「えっ、そうなの? そんなに有名なんですか?」
「アナタ赤獅子を知らないの!?」
「田舎から出てきたばかりで……詳しい事はなにも」
「あいつは冒険者の間で、ちょぉっとだけ有名な奴でよぉ〜」
「ちょっとアンタ!」
するとすぐに隣のテーブルの女性がバンっと机を叩いて立ち上がった。
赤獅子を知らないのかと叫んでいた彼女だ。
多分酒が入ったコップを持ちながら私達のテーブルまでよたよた近づいてきて、なんと隣の椅子に座る。さらに肩に手を回されて顔がぐっと近くなる。
大きな胸をすぐ近くで拝めるのは素晴らしいことだけどお姉さんも酒臭い。もうやだ……。
「何がちょっとだけ、よ!」
「だって悔しいだろうが! 少しくらい曲げたっていいだろ! なぁ、小僧!」
「はぁ」
「坊やも可愛くて私の好みだけど、赤髪の彼はどストライクだわぁ」
「そうなんですか」
「あら〜、ネコちゃんは可愛いでちゅね〜」
〈うわやめろ! 酒臭い!〉
あぁ、お姉さん、それ私のホットドック……。酔っ払いってなんなの。
それに私は女だからさ。可愛いって言われたのはすごく嬉しいけど。女だからね。
酔っ払いに何言っても無駄っぽいからもう訂正しないけども。
奥のカウンターにいる噂の赤獅子さんご本人を見ると、なんと彼はこっちを見ていた。
カウンターに怠そうにだらんと寄り掛かって長い脚を組んでいる。
目が合った気がしたので手を振るとレオンも面倒くさそうに振り返してくれた。
ありがとう、そしてお願い早く帰ってきて。
うーむ。確かに引きで見るとガッチリしてる凛々しいイケメンだ。
堀が深くて逞しい、精悍で男前なお顔。
それに加えて私のたった一個上なのに、周りにいる強そうな肉体派に劣らない体格。
羨ましいほど長い手足はその筋肉をむさ苦しくない程度に魅せている。
これはもしかしなくても相当モテるんだろうなぁ。黙ってれば二枚目。
じゃなくて!
絡まれてるのを見てないで助けてください。ヤバい目が死にそう。
「いやーん、今みた? 赤髪の彼、
私に手を振ったわ! ね!? 見たでしょ!?」
「ハイ、振ってました」
「はぁーん……ステキ……」
お姉さんが凭れかかってきた。
うわぁ顔が近い近い近い。
首筋にお姉さんの顔が、ああ。くはは、息がくすぐったい。
わ、レオンがめっちゃこっち見てる超ガン見されてる。
早く終わらせて助けてくださいの微笑みを送ると、私の念が届いたらしくレオンはゆっくりとカウンターの奥を向いた。
よし、頑張れ、頑張ってレオン!
ちょ、ちょっと、お姉さん胸元にお酒垂れてますよ!
待って、抱きつくならこれで拭いてからで!
あっ、服が汚れちゃう……よし、これで大丈夫と。
……なんでレオンはチラチラこっち見るの。
あ、心配してくれてるのね。
私なら大丈夫だから早く終わらせてねのサムズアップをしておいた。
「あの、お姉さん。赤獅子ってどのくらい有名な人なんですか?」
「よく聞いてくれたわ!」
そう尋ねるとお姉さんはコップの中の物を豪快に一気飲みした。
ああぁ、イッキして大丈夫なのかな。
レオンといいボードロといい、異世界人は色々と丈夫なのかもしれない。
お姉さんはガンっとコップをテーブルに叩きつけて手の甲で口を拭った。
「いいわよぉ〜、私が教えてあげる!」
「ありがとうございますお姉さん!」
「おいおい、小僧やめとけって」
たとえ酔っ払っていたとしても、人生の先輩のありがたい言葉をきちっと受け取っておくべきだったのだ。
「赤獅子はね、冒険者じゃなくて賞金稼ぎなの! それもとても有名な賞金稼ぎグループの一人よ。金狐、黒鴉、白兎、赤獅子って言う四人なんだけどぉ。アナタみたいな人以外、コッチの仕事をしてる人ならその名を知らない人はいないと思うわ! それなのにね、まるで本体のない幽霊みたいに、彼らの正体を知っている人はいないのよ! まさに謎に満ちた四人組! 正体は誰も知らないんだけどね、なんと出会ったことがある人からの情報ならいくつかあるのよ! ま、信用できるかわからないけど。夢があるじゃない! それで、彼らに捕まった、とある賞金首の話ではね……、いい? 赤獅子は燃えるような赤い髪と翠の目をしたとびっきりの男前なんですって! キャー! ほかの三人もびっくりするくらいの美男美女らしくって、もう誰でもいいから私を捕まえてーって感じよ! 私もお尋ね者になっちゃおうかしらぁーん! なぁーんてね! キャー! はずかしー! そうなのよ! こういう特徴的な容姿の情報が出回るとね! おれがあかじしだぁ〜! とか、しろうさぎだぁ〜! とか勝手に名乗るクソ野郎がいるの! だからどの情報がただしいのかは、じつのところよく分かってないのよね……ハァーン……。ニセモノはクソやろうだわ。それで、彼らのスゴイところは何かっていうとね! ほら、冒険者も賞金稼ぎも、イライをこなしてせいかつするでしょ? その活動するとき、援助がないと大変だ〜か〜ら〜、アタシたちも含めてほとんどの人は冒険者になるのはボウヤも分かるでしょ? ギルドの支援を受けたいもの! ボウヤはまだ知らないと思うけど、賞金稼ぎって後ろ盾は何もないし、依頼も自分達で見つけなきゃいけないのよぉ〜! ほんっと援助がある無しでは大違いよ! だって私たちはただクエストを達成すれば良いんだもの! それだけに集中できるから楽チンなの! まっ、全員が支援をもらえるわけじゃないんだけどぉ〜。えっとぉ? なんだっけぇ? ああんっ。それでね、賞金稼ぎは大変よ。自分でシゴトを見つけるんだもの。そぉねぇ〜……ダンジョンに潜ってお宝を探したり、キャラバンの専属の護衛をしたりするのがフツーといわれてるわね! そのほかはぁ〜、もう便利屋みたいなもんよ。だから賞金稼ぎに自分から進んでなる人は少ないの、ってゆーか、人数も少ないわね。ほとんどはナニかの理由でギルドから外された……ワケありの人なのぉー! 仲間殺しだったり、ね……。でも! 彼らはチガうとアタシはしんじてるわ! 彼らったら本当に賞金首しか狙ってないってウワサだし、たまにどこかの街にお金をバラ撒いたりするってウワサだし。あ、せかいじゅうでモクゲキしょーげんがあるのよ! もしかしたら今も私やアナタのすぐ近くに誰かがいるかもしれないのよぉー! はぁ〜ん……。賞金首を捕まえに……きた……とか……ん? ……あっ! あーっ! ついきのう、ボードロ盗賊団がお縄になったって言ってたじゃない! きっとココに来たのよ! いますぐ探しにイかなきゃ、って、ちょっとダレ!? 今ちがうって言った奴! ちょっとくわしくおしえなさいよ! ……うん、うん、そうなの……。なぁんだちがうのね……。そっか。あーん、ざんねんだわぁ! アンタありがとね。お礼に投げキッスをあ、げ、る! んまっ、んまっ! ハァ!? ちょっとはヨロコびなさいよ! あっ、ごめんねアナタ! もうほんっと私ったら。ハズカシー! ふぅ。うーん、それにしても、ぼーけんしゃになった方がぜっっったいラクなのに、どうしてならないのかしら! ほんとーにフシギだわ! でもそこがミステリアスでステキなのよね〜! それでね、──」