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推しが押してくる

推しが押してくる ━番外編4━静紅、ちょっと未来の話

作者: 神尾瀬 紫

はじめましてさんも二度目以上ましてさんもこんにちわ。

神尾瀬 紫です。


今回はS.S.S番外短編を静紅で書いてみました。

はたしてこのカレは誰なのか。

ヒントは、すでに登場済み。

予想してみてください。

予想が当たった方には、賞品として短編リクエスト権とかどうでしょう?

いらない?


それではどうぞ、楽しんでください。

 


いつものカラオケ中。

 曲と曲の間に静紅が言った。

「ねえさんはクリスマスどうすんの?」

「そうだなぁ。叶多さんと普通にディナーかな?」

 そう答えた紫づ花は反応を見るために言葉を切る。

 静紅は端末をピコピコいじりながら、口を尖らせた。

「そうだよね~。いいなぁ、にいさん張り切ってるんだろうなぁ。」

 紫づ花が苦笑いする。

 日常のデートでは贅沢を嫌う紫づ花の為に、イベントでは張り切って豪華なプランを考える叶多の姿はすでに風物詩だ。

「静紅ちゃんは誰か誘ってくれる人いないの?ほら、この間バイト先の人に告られたって。あと、お客さんにも声かけられたって。」

「え~。よく覚えてるね。でもまだ誰からも誘われてないし。」

 そこで静紅の歌が始まり、話は中断した。

 リズムに乗って体を揺らしながらある人のことを考える。

 静紅を誘いたそうな叶多の仕事仲間のことを。

 しかし静紅が彼をどう思っているかがいまいちわからない。

 誘われてないならチャンスなのに。

 紫づ花はそんなことを考えながら、静紅のグラスも持ってドリンクのおかわりに立ち上がった。

 帰ってきたときに両手が塞がって扉が開けられないのは、いつものことだ。


 ・・・・・・・・・・・・・♪・・・・・・・・・・・・


 収録が始まる少し前、パイプ椅子に座って台本を読み返している時、上から声が降ってきた。

「叶多さんはクリスマスどうすんの?」

 見上げても、立って明後日の方を向いている表情は見えない。

「もちろん紫づ花とディナーだよ。今年は夜景がすばらしいホテルのレストラン。」

 声だけでわかるドヤ顔が独り身にはうっとうしいからそっちは見ない。

 叶多がその顔のまま畳み掛けてきた。

「お前はどうすんの?静紅誘うの?」

「べ、別に、付き合ってる訳じゃないし、静紅ちゃんは忙しいかもしれないし。」

 慌てて言い訳をする青さに苦笑いをする。

 叶多は少し意地悪を言った。

「ああ、静紅、モテるらしいな。紫づ花が言ってたけど、バイト先で結構声かけられてるらしいぞ。」

 案の定、焦った表情で振り向く。

「静紅ちゃんかわいいから、引く手数多だよね~。だってさ。」

 今度は気色の悪い裏声で紫づ花の真似をしている。

 そして急に真面目な顔で腕を引っ張った。

 内緒話のように顔が近付く。

「付き合ってる訳じゃないんだったらいいのかよ、他の男に持っていかれても。俺はそれが絶対に嫌だったから毎日チャトって口説き通したんだよ。それが出来ねぇんだったら、何が起こっても傷付くな。」

 ドキッとした。

 普段飄々とした優しい先輩からの厳しい言葉が心臓に突き刺さった。

 すぐに腕を離され、その顔を見直すが、すでに台本に向かっていて表情を窺い知ることは出来なかった。

 だが、“ひくてあまた”の意味を聞ける雰囲気ではないことだけは、わかった。


 ・・・・・・・・・・・・・♪・・・・・・・・・・・・


「お先でーす。」

 仕事が終わり、まだ働く仲間に声をかけて外に出た。

22時過ぎ。ビュッと強い夜風に、コートの前を合わせる。

 思っていた以上に寒さを感じて、紫づ花が作ってくれたマフラーをグルグル巻き付けた。

「静紅さん。」

 背後から声がかかる。

 誰の声か瞬時に判断した彼女は一瞬顔をしかめて、神業のような笑顔で振り返った。

「なんですか?」

 彼はバイト先の後輩。確か10歳くらい若い、大学生だ。先日告白されて、断ったつもりなのだがなかなか諦めてくれない。

「クリスマスさぁ、俺と一緒にどう?」

 どう?とか言われてもそのドヤ顔気色悪い。

 こっちがその気ないの早く気付いてくれないかな?

 静紅は心の内をしっかり笑顔の仮面に隠す。

「あ、クリスマスかぁ。もう先約が入っちゃったの。ごめんね。」

『じゃ、お疲れ様。』と、手を振って駅までの道を急ぐ。

 あんまり邪険にすると、同じ職場で働きにくい。でも興味がない相手にいい顔をするのは時間がもったいない。その間を縫うようにかわしているが、もうめんどくさい。

「ねえさんは私がモテるとか言うけど、女子力マイナスだからなぁ。」

 冷たい風を、マフラーに顔を埋めてやり過ごす。

 その時、スマホが震えた。

 着信相手を確認すると声が半音上がる。

「もしもし?えへ、ちょうど仕事終ってお店出たとこ。」

 話しながら小走りに建物に寄る。ここなら風避けになって話しやすい。

「え?クリスマス?え~、どうかなぁ。ん~?まぁ仕事は昼間だから夜は暇だけどぉ。」

 職業病ではない笑顔が出ていることに静紅は気付かない。もちろん普段とは違う甘いしゃべり方をしているのにも。

「どこで?・・・え、ほんと?はは、絶対にいさんの入れ知恵でしょ?どうしようかなぁ。まぁ、暇だし、行ってもいいよ?そのレストラン美味しいって噂だし。」

 脳裏には叶多の仕事仲間の優しい顔。

 少し弱気でオドオドとするけど、時々見せる気合いの入った男らしい顔が好きだ。

 静紅の機嫌を取るような声音も、嬉しそうに跳ねる言葉も、自分を喜ばせたい一心なのが伝わってくるから。

 カレシじゃないけど。

 この誘いを待っていた。

 静紅は喜んでいることを悟られないようにぶっきらぼうな言葉を選びながら、脳内のスケジュール帳のクリスマスイブに花丸を付けた。


━━━END

いかがでしたか?

今までS.S.Sを読んでくれていた方はモヤモヤしそうな(笑)

読んでなかった方は気になってしまいそうな(笑)

でも、まだ未来のお話です。

彼がカレになるまで、もう少々・・・?もっとかな?(笑)

お待ちください。


ありがとうございました。

またお会いできたら幸いです。

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