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ソウル・オン  作者: きたみなみ
1/5

①夜中

始めにお断りを。


・男の娘もしくは性転換のロゴに惹かれてこの作品を読み始めようとした方々にとって、この作品はそれらの要素が極めて薄く、期待を大きく外れることになるため、それでも読んでくださる場合は普通の作品と考えてお読みください。


・少しばかり残酷な描写が時折登場します。吐き気やそれに関連する症状が出た場合は、無理して読んでくださる必要はありません。それでもなお読んでくださるならば、感謝感激の至りです。


・超不定期更新の予定です。不定期に予定もクソも無いと思うかもしれませんが、事実その通りになるはずです。五話ほど読んで、「あ、この作品面白い」と少しでも感じてくださったならば、ブックマークなどをし、長い目で見守ってくださいますようお願い申し上げます。


以上がお断りの三点です。他にも、この作品を読んでいる最中、「この表現分かりにくい」とか「この書き方おかしい」「もっとこうやって書いたほうが良いよ」と言う意見がありましたら、どんなに些細なことでも構いません。少しでも思った、感じたことは、感想のところにドンドン書き殴ってください。それにより私は、より成長することができると思います。


どうかこの《ソウル・オン》をよろしくお願いします。私はまだ駆け出しの、一歩目が地面についているかついていないかと言う、スーパー初心者です。拙い文章だとは思いますが、この作品を書き進めていく上での更なる成長にご期待ください。


それでは一話目の、はじまりはじまり。

#1



「悠〜、ちょっとコンビニ行ってビール買って来てくんない」

現在テレビ前のソファーにて、夕日ビールの十本目を全て飲み干した俺の愚姉が、台所奥にあるダストボックスに向けて残り汁を撒き散らしながら空き缶を投げ入れた。


「未成年にアルコール買わせるつもりかお前は。自分で買いに行け」

俺は呆れ顔で反対した。

「ええ〜いいじゃんそんくらい。つれないなあ」

「液体石鹸の方のアルコールなら買って来てやらなくもないが」


隣のソファーに座ってドライビールをがぶ飲みしている酔っ払いは、俺の姉の神連真(かみつれまこと)。シャツと短パン一丁で髪ボサボサなのとは対照的に、何故か顔とプロポーションだけはモデル級のダメ美女。


「ふふふ。そんなこと言っても良いのかなあ〜?その気になれば、あんたを飢え死にさせる事も出来るんだけどなあ」


両親が蒸発し、まだ中学生なので働けないため、一応はこの愚姉(できそこない)に養ってもらっているのだ。

今は製造会社のOLをしているが、現二十二歳にして4回程退職を余儀無くされているため、次は何時(いつ)辞令が出されるか不安でしょうがない。

俺は進学を希望しているので姉貴には更に借りが出来てしまうことになるが、就職した暁には、即座にそれまでの借金を返済し、逆に俺に借金をさせるという壮大な目論見があるのだ。

______くくく、今からニヤケが止まらない。


「もしも俺を飢え死にさせようとしたなら、育児放棄として警察に通報する。姉貴は一応俺の保護者だからな」

「くっ、汚いぞ」

「はっ、どっちが」

「………じゃ、ジュース」

「ま、そんくらいだったら行ってやるか」

「ほんと!ありがと〜。流石私が惚れたオ・ト・コ」


見た目が見た目なだけに、こんな事を言っても全然違和感が無い。寧ろ可愛いとまで思う。

実の姉相手にこんな事思ってるなんてバレたら身の破滅だろうな。精神的に。


「んじゃ、はい」

俺は酔い潰れて寝っ転がっている姉貴に向けて、広げた掌を差し出した。

「なに、この手?」

「千円くれ。勿論ツリは返さない」

「本当、ちゃっかりしてるわね。母さんに似て」


俺達の母さんは相当がめつかったらしく、美人の色香を使って様々な商品を値下げしてもらっていたそうだ。一度写真を見てみたことがあるが、この母あって俺と姉貴あり、という風な感じだった。

姉貴は机に置かれた何本もの空缶の横にある財布をとり、野口先生を二指(ふたゆび)で取り出した。


「はい、千円。道端で落としたら自腹で宜しく。その(あと)弁償」

「姉貴も意外とちゃっかりしてるよな」

「そりゃあね。じゃ、行ってらっしゃ〜い」

「おう。ヘルシーア買って来るから」

「え、ちょっ、止めて!それ凄い苦いんだから。せめてCiCiレモンにして」

「じゃあ、レモン十個」

「いらないよそんなに!じゃあ、なっちゃん」

「オレンジーナな」

「ん〜〜〜〜〜〜!………悠の、好きな物買って来て」

「了解了解。行ってっきま〜す」

マムシドリンク買ってやるか。酔っ払いを元気ハツラツに、ってか!



#2



もう二月。夜の風は凍える様に寒く、全身をピリピリとした痺れが襲う。手袋をし忘れて既に(かじか)んだ手は言うことを聞かず、まるで老人の様にプルプルと震えていた。ポケットに入れている分、幾らかは風が遮られているが寒いのは変わらない。

マフラーでもしてくれば良かったな。


「おっと、ここだっけ」


出来るだけ顔に風が当たらない様に俯き加減で歩いていたら、知らぬ間に少しコンビニを過ぎていた。


<ファミコンマジック>


通称ファミマ。もはや何を言いたいのか意味不明だが、品揃えが豊富で値段も他と比べて少し安いため、ここ()の地域に住む人は皆このファミマを贔屓にしているらしい。

当然、俺ら姉弟もだ。

二十四時間営業とは言え、女性を夜遅くに働かせるわけにはいかないので、必然的にゴツい男が担当になることが殆どだ。

現に今、茶髪グラサン耳ピアスゴリマッチョが超絶に崩し切った制服を着て一本だけ立てた小指で耳糞を穿(ほじ)っている

______あんな手で商品触ったらぶっ飛ばすぞ。


「えっと、マムシドリンク、マムシドリンクっと」


品物棚を眺めている時、ふとグラゴリさんの方を振り向いたら、その横にマムシドリンクが何故か超人気商品として山積みにされていた。

超人気商品なのに在庫山盛りか。小売業界の在庫過多品による裏事情が透けて見える。

でだ。その山積みにされたマムシドリンクは、あの茶髪グラゴリの真ん前にあるんだよね。

超絶に取る気が失せてきた。

だが、そんなことを思っても始まらない。パッと取ってパッと買えば良いだけだ。

______よし、行こう!


「あ、あの〜………」

「あぁん」

「あ、いや、その………」

声も見た目通りドスが効いている。道端の不良グループにガン付けられるくらい怖い。

だが、こんなところで屈するわけにはいかない!


「何か御用ですか」

あ、意外と真面目そうだ。

と思っても、怖いもんはしょうがない。

「ま、マムシドリンクを………」

「何本ですか」

「な、何本………?」


チラッと横目で値段を確認した。そこにはデカデカと<消費税増税前特別サービス、税込100円ポッキリ!>の文字が書かれていた。くっ………。


「じゅ、十本」


蛇の様な狡猾な眼で睨まれ続けて、遂に屈してしまった自分が情けない。折角一本だけ買って、お釣りの900円を財布にぶち込もうとしたのに。勿体無いったらありゃしない。

くそっ。店番がこんなグラゴリじゃなかったら………。


「毎度、ありがとうございます。千円になります」

「あ、はい」


愚姉から奪った千円を取り出す為に(おもむろ)にポケットに手を突っ込み、姉貴から頂戴した野口先生を一人引っこ抜いた。くしゃくしゃだが大丈夫だろう。

しかし、その千円をグラゴリさんに渡そうと前に差し出した瞬間、普段起こるはずのない異変が起こった。


「おい、てめえら。金を出せ!」


そんな怒声が聞こえた方に振り向くと、黒いニット帽を被ったグラサンマスクが全身黒ずくめにして立っていた。唯一白である筈のマスクでさえ真っ黒だ。それも立体の紙マスクで、グラサンもゴーグルの様に目全体を覆う形だった。徹底している。


「あの、花粉症、お酷いんですか」

「ちげえよ!」

違ったようだ。

そりゃあ、右手に拳銃、左手に袋。此処まで来たら分からない方がおかしいよな。


「全身黒ずくめでモデルガン握り締めてコンビニに来るのが趣味な(かた)ですか」

「それもちげえよ。何でそんなピンポイントな趣味を持たなきゃいけねえんだよ!強盗だ強盗!分かったらさっさと金出しやがれ!」


拳銃を肩の高さまで上げ、銃口がこっちに向けられた。しかし、不思議と恐怖は感じない。

本物の拳銃持ってんだったら一般のコンビニ襲うなよ、せめて銀行行け。あれ?と言うことはあれ、モデルガンか。そうなのか。


「______お客様」


自称強盗が拳銃を突き付けて歩み寄って来たとき、グラゴリさんが俺と自称強盗の間に介入して来た。流石、見た目がゴツい奴もこういう時には頼りになる。


「な、なんでえ………」

グラゴリさんの威圧が余りにも凄まじかったのか、自称強盗は少し後ずさった。正直、拳銃持ちの強盗よりこっちの方が恐い。


「他のお客様にご迷惑になります。速やかにお引き取り願います」

俺だけだがな。

「くっ………、び、ビビってたまるか!と言うか他のお客様って、一人しかいねーじゃん!」

「関係ありません。お客様は神様です」


なんか違う気がする。

コンビニ店員がお客様に向かって『神様』はおかしいだろ。客足が伸びない老舗なんかは別だろうが。

「俺は家族を少しでも裕福にしてやれるように、牢屋行き覚悟でこんなことしてんだ!諦めてたまる______」


「お引き取り、願います」


「はいすいませんしたあ!」

グラゴリさんの自称強盗は涙目ですごすごと引き下がった。勿論引き止める気はない。多少可哀想な気もするが、この家族も、父親を犯罪に手を染めてほしくないだろう。この場合は、この選択が最も正しい筈………。


「______お客様」

だが、グラゴリさんが自称強盗を引き止めた。

何故だ。


「はい、なんで、しょうか」

強盗は涙で溜まり切ったゴーグルの中から、若干水気が染み出していた。

「これを」

グラゴリさんの手には一つの弁当が握られていた。まさか、渡すつもりじゃないだろうな。

「これ、は?」

「弁当です。流石にそのまま返すと言うのは、余りにも不憫ですので、せめて一晩だけでも美味しい物を召し上がってください」


グラゴリさんは満面の笑みで弁当を手渡す。

「ありが、とう、ございます………!」

自称強盗は泣きじゃくりながらお礼を言い、それを受け取った。

本気で弁当をあげるとは………。見た目に似合わず優しいな。


「お客様、家族は何人いらっしゃいますか?全員分あげましょう」

「四人ですが………。流石に悪いです。俺等には、弁当代すら返せるかどうか分からないんです。お気持ちだけ」

「これらは全て私の奢りです。でももし、今後就職して、お金に余裕が持てる様になって私を覚えてたら、また此処に来てください。そして、この弁当を私に奢ってください。それだけで、充分ですよ」

「本当に、本当に、ありがとうございます………!」


自称強盗は(こうべ)を垂れて土下座した。そんなに嬉しいのか。

しかし、このグラゴリは見た目と性格が全くの真逆だな。俺だったらこの後、

『うっそでっしたー。騙されてやんの(笑)』

って言いたい。


「頭を上げて下さい。ああ、それ。他の四つと纏めて温めます。少し待っていてください」

「は、はい。何から何まで、ありがとうございます」


グラゴリさんは一度自称強盗に手渡した弁当を再び受け取り、新しく商品棚から取って来た弁当と共に、レジにあるレンジを総動員して一気に温めた。ヤケに手慣れてる。

《《《《《チーン》》》》》

レンジのタイマーが一斉に鳴り、ホカホカの弁当をレジ袋に詰めていく。五つ目を詰め終わり、再び自称強盗に弁当を渡した。

______渡すときに手と手が触れ合った瞬間、俺の心に電撃が走った。

俺は何を思ったのか、スイーツコーナーへ向かい、一個二百円の高級シュークリームを五つ手に取った。


「お、おい、お客様」

「あのこれ、俺からも」


グラゴリさんの優しさに触発されたのか、知らぬ間にそのシュークリームを自称強盗にあげてしまった。この俺にも慈悲深いところが有ったと言うのか。超意外だ。


「ほ、本当に、ありがとうございます!」

「おい、それは______」

「いえいえ、とんでもないです。ですがまあ、このグラゴ______店員さんと同じ様に、もし覚えていたら此処に来てください。俺も此処は贔屓にしていますので、運が良ければ会えるでしょう」

「あ、ありがとうございます!お二方には、必ず、必ずお返し致します。今日はどうも、ありがとうございました。俺はこれで失礼します」


と強盗は言い残し、夜の闇に吸い込まれる様に去って行った。

一件落着。

しかし、真の目的であるマムシドリンクを買おうと手に取った瞬間、ふとある事実が頭を掠めた。


「______お客様」


本日三度目の『______お客様』だ。

「はいなんでしょう」

「あのシュークリーム、消費期限切れてますよ」

「知ってます」

そう、俺は知っていた。あの高級シュークリームが全て消費期限切れだったということを。賞味期限ではない、消費期限が切れていたのだ。

マムシドリンクを探しているときにチラッと、その袋の横にある黒くて(かす)れた数字が見えてしまったんだ。


「では何故?」

「金が無くて困っている五人家族が全員下痢になって公園の公衆トイレのドアを叩いている姿が目に浮かんでしまったからです」


即答だった。


「______お客様」


四回目。段々と飽きてきたな。

しかし今回は、次にグラゴリさんが言うことが何と無く予想出来た。


「もう千円、追加にしますか」

「………いえ、マムシドリンクを辞めにします」


シュークリーム一袋二百円×五袋=千円。理性が欲求に負けてしまったな。今後はこういうことが無い様に精進しよう。

帰ったら、ゲンコツ覚悟かな。



#3



「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

ドスの効いた声で、お客様が帰られる時の定番の台詞(セリフ)を言った。多分、この時間帯にファミマに来ることはもう無いだろう。と言うか、意地でも行きたくない。

手ブラで落ち込みながら夜の道を歩いていると、公園で何かを叩いている音が聞こえてきた。

やっべ、ニヤケが止まんねえ!


「……………」


路頭に迷った五人家族の行く末を考えながらニヤニヤしていると、目の前に、又もや不可思議な人物が現れた。

街灯が点々と灯る一本道。黒ずくめの人間が何かが入っているビニール袋を持って、電柱に影を潜めて前方を伺っている。


______動いた!


と思いきや、次の電柱に隠れた。

何がしたいんだこいつ。

黒ずくめとは言っても、さっきの自称強盗とは違う。何と無くだが、こっちの方が背が高くて細身な気がする。それにマスクをしていない。

街灯に照らされた姿は、髭は長くて白っぽく、亀仙人を思い出される。髪は、ニット帽を被っていて見えない。

くそっ、ハゲだったら激似なんだけどな。

携帯があれば今すぐ百十番を押したのに。姉貴が『中学生で携帯は早い!せめて大学から』とか言ってるから、周りは殆ど持っているのに俺だけが無い。

『中学生は流石に早いと思うけど高校でもダメってなんだよ。おかしいだろ!』

って言ってやりたいが、うちの経済事情は全て姉貴が握っているし、こればっかりは育児放棄で訴えられないしな。今のところは、高校に行ったらバイト始めて自力で買おうと思っている。

さて、あの不審者をどう料理してくれよう。

俺は運動神経には自信があるから、特攻を仕掛けても良いが、暴力沙汰になるとマズイ。見知らぬおじいちゃんをボコボコにしたというニュースが広まれば、うちはタダじゃ済まないだろう。タダでさえ貧乏なのに、慰謝料払えとかなんとか言われたら、いろいろ終わる。


______動いた!


が、又次の電柱に隠れた。本当、何がしたいんだこいつ。ん?

不審者(かめせんにん)が元居た所に、何か四角い物が落ちていた。微かだが、ピンク色に見える。四角くて、ピンク。

も、もしや………!

其奴(そいつ)が電柱を二本移動し、前を伺っている隙を突いてその場所へ向かい、それを手に取った。

正解(ビンゴ)


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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「なんっっっっだこりゃ!!!」

つい叫んでしまい、不審者がビクッと震えて此方を見たが、ギリギリのところで電柱の直径に収まるくらいに縮まり、事なきを得た。


「ふぅ〜、あっぶな。それにしてもあのエロ仙人、こんな趣味を持っていたとは。ふっ、弄りネタゲット!」

そういや亀仙人もエロかったな。方向性は違うが。

「はっ、しまった!」

隠れる為に少しの間目を離してしまった。

直ぐさま電柱から顔だけを覗かせたが、杞憂だった様だ。さっきと同じ場所に居た。何処まで慎重なんだあいつ。


______動いた!


そろそろいい加減にして欲しい。さっさと突っ切れよ、どうせ誰も居ないんだから。確かにエロ本を隠して持ち帰るのだから慎重になるのは当たり前だが、流石に度が過ぎている。まあ、中身が中身だから分からなくは無いが。

おっ。又もやエロ仙人の居た場所に、街灯に照らされて銀色に光る物を見つけた。今度はあいつが動くのを待たず、速攻でその場に向かった。


「カメラ………?」


この流れで行くと、その中身をリプレイするとヤバイものが出て来そうだが遠慮無く電源を入れさせてもらった。画像表示を選択し、ローディングの後に出て来たものは………。


「おいおい………」


それは、小学校の金網の外から隠し撮りされた女の子達の写真だった。

グラウンドで元気に遊び回る娘。

一輪車を必死に漕いでいる娘。

二人並んで仲良くブランコに乗っている娘。

怪我をして泣きじゃくっている娘。

特に、怪我をして泣きじゃくっている娘の写真はお気に入り登録されていた。もうドン引きを突き破って哀れに思えてくる。

しかし、これは流石にマズイだろう。写真手であると思われるこのエロ仙人の事を全く意識していない事から、盗撮だと一発で分かる。これもう、うん、確実に警察沙汰だ。俺が介入して良い問題じゃない。

だが一発弄らなきゃ治まらない。さて、どうするか………。


「お、これはなかなか」


ピーンと、流星の如く俺の脳内に降って来たそれは、これ以上無いってくらいの弄り方だった。あのエロ仙人が仰天する顔が早く見たい。

直ぐさま準備し、前を伺っている隙を見て一気に近付いた。


「あの。これ」

右手にカメラ、左手にエロ本。

カメラの画面には泣きじゃくっている娘を。

エロ本には見開きのロリエロ全開画像を。

「落としましたよ」

それらを目の前に突き付けながら声を掛けた。

エロ仙人が驚愕の表情を浮かべた。


「______な、なななななななんじゃ貴様はァァァ!」


やっと声を出したと思ったら、思いっきり叫ばれた。超五月蝿(ちょううるさ)い。


「タダの中学生」

「そう言う事じゃないわい!

「ロリコンジジイを弄れることに快感を覚えている、ヤケに運動神経が良いタダの中学生」

「どこがタダじゃ、どこが!………何が望みだ。言うてみい。何でも叶えてやる!その代わり、その代わりその娘達を返してくれ!頼む、後生(ごしょう)じゃ!」

「片方はお前のじゃねえよ。いや、機種と本本体はそうだけど。イタ過ぎるよ」


と言うか。


「本当に、何でも叶えてくれるのか。ジジイとは言え冗談とは言わせないぞ」


正直、ロリコンの事よりもこっちに興味がある。多分、年金暮らしだと思われるこのエロ仙人が、本当に何でも望みを叶えてくれるのだろうか。どうせ口からデマカセだろうがな。


「くっ、つい口を滑らしてしまったわい。………お主、口は硬い方か」

「友達が告白されたのを知ったら、三分経ってから広めるくらいには口が硬い」

「驚く程に信用出来ないのお。まあ良い。どうせ広めれない様に呪印を組むからの」


呪印、だと………。本格的に痛い人になってきたなこのエロジジイ。厨二でロリコン。シュールな組み合わせだ。


「その顔………お主、信じとらんじゃろう」

「いやいや全然、そんなことはないですよ。………自分の、生きたいままに生きれば良いんです」

俺に出来る最大限の笑顔を向けて、エロ仙人の肩に手を添えた。

「何故儂は中坊に慰められなくてはいけないんじゃ。もういい、記憶を消してやる。本当は、人間相手に手荒な真似はしたくないのじゃが」

「おぉっと、厨二乙な必殺技の炸裂ですか」

「ぬかせ」


エロ仙人が俺の頭に右手を(かざ)し、何かブツブツと良く分からない言葉を発している。

______その途中、急に意識が飛び、目の前が真っ暗になった。


「______い、おい悠!大丈夫か、しっかりしろ!早く起きないと、お姉ちゃんが人工呼吸してあげるぞ!」

「うおぉう!」

貞操の危機を察知し、速攻で飛び起きた。

「まったく、夜道で寝るとは何事だ」

「ああ、ごめん。って、何で俺、こんな所で寝てたんだ」

「私が知るか」


姉貴は少し怒り気味に突き放した。俺は弄るのは好きだが、苛められるのは好きじゃない。

そして、もしも俺が押される様な時は、逆に押し返すのが俺のモットーだ。


「こんな夜中に中学生を外に出す方が悪いんじゃないのか」

「うぐっ!ま、まあ、それはもういい」

逃げたな。この小心姉(チキン)が。

「そ、そんな事より、ジュースはどうした?」

「は?」

一瞬だけ、この愚姉が何を言っているのか理解出来なかった。


「ジュースは?」


あ、思い出した。そういや、ジュース買って来いって言われたんだったな。

いやはや、完っっっ全に忘れていた。


「………言い訳をしても良いか」

「特別に許す」

「コンビニでグラゴリさんに会って強盗が来たから俺がシュークリームをあげて帰りにロリコンで厨二なエロ仙人を見つけたから苛めた」

「ごめん、もう一回言ってくれる?」

「マムシドリンク買いにコンビニ行ったらグラゴリさんに会って強盗が来たから俺がシュークリームをあげて帰りに公衆トイレが満員でロリコンで厨二なエロ仙人を見つけたから苛めた」

「なんか長くなってないか。とどのつまり?」

「ジュースは………無い!」

「ざけんなこの愚弟!」


その後なんやわんやで和解し、帰宅後、ベッドへ突っ伏した。

………眠い。

※意見がありましたら感想のところにお書きください。

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