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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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聖堂を照らす光

「あれが異形です。醜く恐ろしい。あれらがこの世にいて何か得がありますか?」

「テメェ、ミノスに何しやがった」

「私は何も。ただ彼女は人間と異形の間に産まれ我々天使の力に触れて異形の力が暴走しているーーと報告は受けていますが」

「主、魔力を全て使い果たすように仕向けるのじゃ。もうあと一、二発強力なものを使えば動けなくなるはず……」

 アリアがここに来るまで死闘を繰り広げてある程度魔力を削ってくれたらしいが流石に傷つけないようにして戦うのは困難だったらしくいつもの余裕は全くない。

「そうか。なら好都合だ。どうやら俺の後ろにいる天使をどうしても殺したいみたいだからな」

 魔の血のせいか悠斗よりもその後ろに視線が送られている。

「おやおや予想以上の魔力です。やはり魔の血を受け継ぐ者は侮れませんね」

「いいか、そこから一歩も動くなよ。それで片がつく」

 狙いはどうやら天使の野郎共。

 一体奴らにどんな恨みがあるか分からないがこれは助かる。

 どこに攻撃をしてくるかどうかが分かればその射線上に立ってそれを剣で弾けばいいだけ。

 呻き声と共に発せられた魔力の塊は冷静に対応した悠斗は頭で思い描いように天井へと弾く。

「ほう、今のを剣だけで弾くとは流石ですね」

「別にテメェに褒められても嬉しかねえよ。それよりあれで元に戻ったのか」

 先ほどの一撃で全ての魔力を使い切ったらしく、異形の姿となったミノスはその場に倒れたがそれ以外の変化は見受けられない。

「いいえ。魔力が枯渇したからといって彼女に流れている魔の血が消えたわけではありません。元に戻すには……」

「それは私がやります悠斗さん」

「エル、どうしてここに?」

 そういえば途中から歌声は聞こえなくなっていた。どうやらエルは決心をしてこちらに来たらしくその目にはいつもは感じられない勇ましさがある。

「あの方に平和のためだと言われて地下で歌っていたのですが悠斗さんの言葉を聞いて気が変わりここに来ました」

「何故です? あなたの力についてもきちんとお話をしたはず。聡明な貴方なら正しい判断を下せると思ったのですが」

「正しいとかそうじゃないんですこれは。私がどうしたいかなんです」

 平和の定義は人それぞれ。

 エルの場合は争いをしないというものを主に考えていたようだが、争いなく平和になるなら何をしてもいいわけではない。

 それを悟ったのだろう。

「そう……ですか。なら仕方ありませんね。貴方もろともその異形と消えてもらいます」

「させるかよ!」

 マントを手の形に変え、爪を突き立てそれを止めようとしたが空を切り床に突き刺さるだけに終わった。

 ミカファロは悠斗の横を通り過ぎ、エルたちに襲いかかろうとしたがそれは下から幾つもの炎の柱が翼を貫き止められた。

 咄嗟に悠斗の攻撃だと判断してエルたちに背を向けたが既にそこには誰もいなかった。

「こっちだ」

 声が聞こえた時にはもう遅く、ミカファロの体は悠斗の拳で軽々と吹き飛び聖堂の壁へ突っ込んだ。

「ったく、手間取らせやがって。つーかもう一体はどこ行きやがった?」

 いたとしても敵ではなかったが仲間を呼ばれると少し面倒だ。

「それよりもこちらをどうにかしないと魔力が戻ってしまいます」

「ああ、それは頼む。俺はしつこいハエ野郎にトドメをくれてやらないといけないらしいからな」

「ハエ野郎とは随分と嫌われたものですね」

 手応えはあった。

 だが傷一つついていない。

「分かってるならもう邪魔をするな」

「邪魔をしているのはそちらです。大人しくこちらに従ってくれれば何事もなく進んでいたのですが……」

「それは残念だったな」

 異形のいない世界。

 それが一体どんなものかは分からないが俺にとってはどうでもいいことだ。

 ただ俺の仲間に手を出した。それだけで戦う理由は十分だ。平和だとか難しい話は必要ない。

「ええ、残念です。この場所はとても気に入っていたので」

 どこか悲しそうに呟くとその体は徐々に輝きだした。

「悠斗様! 彼は自爆をするつもりです。あの魔力の量からして今から逃げても爆発に巻き込まれてしまいます」

 駆けつけたレイアが危険を知らせるが悠斗は焦る様子を見せることなく返答する。

「問題ない。こいつを遠くまで吹き飛ばせばいいだけだ」

 一歩踏み出して拳に魔力を集中させようとすると体が急に重くなる。

 横を見るとそこにはスヤスヤと寝息を立てているホグアがいた。

「しまった。こんな時に魔力切れか」

 リンクをしていたホグアも魔力はないし、アリアとレイアはミノスとの戦闘で疲労していて唯一余裕のあるエルは攻撃手段を持っていない。

「全ては平和のため」

 聖堂は光に包まれ辺りを照らし、その光は分け隔てなくそこにいる者全てに注がれた。

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